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長期キャンペーンの運営とリプレイ化って実際どんな感じなの?【英雄志望と二つの剣の裏側1】

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 このブログではすでに2年以上にわたって、ソード・ワールド2.0キャンペーン「英雄志望と二つの剣」が連載されています。物語の世界を感じてもらうために、普段のリプレイではプレイヤー目線での議論や裏側でのてんやわんやは省略されています。今回から3回にわたって、そんなてんやわんやの方にフォーカスを当てて、ゲームマスターやプレイヤーの目線から、長期キャンペーンについて語り合います。

 第1回の今回のテーマはずばり「長期キャンペーンの運営ってどんな感じなの?」という話です。英雄志望と二つの剣にご興味の方はもちろん、長期キャンペーンを企画している方にも気づきがあるかもしれない、実体験に基づく対談形式のレポートです。

ハカセ:というわけで、本来なら「ノイちゃんラジオ」の時間でしたが、中の人が収録現場をジャックしたというテイでお届けいたします。

ハカセ:改めまして、GM兼シナリオライター兼リプレイライターのハカセです。正式には早瀬コウですけどね。そしてお相手は
うっかり:プレイヤーとしてレイラの中の人をやってて、あと上のロゴ含めて全ての画像を用意してます、うっかりです。どうぞよろしく

ハカセ:第3シーズンまでリプレイが終わりましたが、これまでの合計字数って何字になると思いますか?
うっかり:いやぁ測りしれんなぁ
ハカセ:なんと71万文字です。
うっかり:うっへw えげつない量やな

ハカセ:15シナリオですからねぇ……クライマックスまでに90万字くらいになるんでしょうか……
うっかり:えぐいなw しかしまぁここまで全然一筋縄にはいかんかったよね
ハカセ:ですねぇ……振り返れば苦労ばかり。とはいえ、ですよ
うっかり:はいはい?

ハカセ:こんな長大な物語のあるキャンペーンをたった一人のGMでやり抜いて、それをリプレイにまとめたという経験を持つ人は少ないんじゃないかなと思うんです
うっかり:他にいるかもしれんけど、少ないのはたしかやろうね
ハカセ:なのでその経験から見えてきたことというのを改めてまとめてみようかなと
うっかり:俺が提案したわけやね
ハカセ:はい。やってみましょう


遠大なキャンペーンを描く

 そもそもなぜ25シナリオ(当初)のキャンペーンを描こうとしたのか?

すべては約束からはじまった

うっかり:そもそもなんでこんな無茶なこと始めようと思ったん?
ハカセ:はじめにTRPGをプレイし始めた友人たちにお願いされたからですね
うっかり:そうなの?

英雄志望の前の前

ハカセ:僕がサークルとかプレイコミュニティとか持つ前ですね。台湾で3人だけで遊んでた時期に、長大なキャンペーンを要望されて企画したんですよ
うっかり:それはソドワの?
ハカセ:はい、ソード・ワールド2.0です。
うっかり:そのときから筋は同じ感じやったの?

ハカセ:いえ全然。公式の世界であるザルツ地方を舞台にしていて、わりと普通の冒険者の話でしたよ。いちおうここに印刷済みのシナリオブックが
うっかり:コピー本ってやつやな
ハカセ:しかし結局これを遊ぶ前に僕が帰国することになって実現しなかったんですよ
うっかり:はー、それでその約束を果たそうってことで企画したんか
ハカセ:実はそうなります。もっとも、彼らはプレイヤーとしては参加していないんですけどね

sites.google.com↑当時のシナリオの一部が公開されている

フィネア地方の創造

ハカセ:そのとき80シナリオ分のアウトラインを作ることにしていたんですが、これがまぁ大変で
うっかり:そらそうだわ
ハカセ:今回は実現可能なラインまでシナリオ数を下げることにしました。25シナリオですね
うっかり:英雄志望の形になったな

なぜオリジナルの地方を作ったのか?

ハカセ:このときにいくつかの要素が変わりました。
うっかり:そのへんから俺も相談受けてるな。一層のことオリジナルがええんやないのって話はした気がする
ハカセ:はい。たしか相談してオリジナル地方を作ることになったと思います

ハカセ:僕としては、僕が扱いたいテーマとかソード・ワールド世界への疑問みたいなものを扱うためにオリジナルにしました
うっかり:始めから物語がやりたいって言ってたもんな
ハカセ:はい。公式の世界は共通見解を作るという目的上、歪みがなくて、大きな物語には適さない印象だったんです
うっかり:あまり変化せん日常系的なんがええもんな、TRPGの世界観って
ハカセ:そうですね。無限に進まない時間の中で冒険を反復するのが普通のプレイですから。まぁこの辺は次回に詳しく……

参加プレイヤーの負担軽減

うっかり:プレイヤーとしては、オリジナルの方が助かったのよね。オリジナルだから、いうたらこっちがなんか変な設定足しても許されるやん
ハカセ:なるほど、そういう見方もありますか
うっかり:いや大切よ。そんなにソード・ワールドプレイしてたわけちゃうからな、俺なんて

ハカセ:僕の視点では、むしろ山ほどの設定資料を初めから用意していたこともあって、プレイヤーには負担をかけたかなと思っていました
うっかり:そのへんはあれやな、公式のやつよりは自分の知り合いが描いたやつの方が読めるってやっちゃな
ハカセ:なんかそう言われたら黒歴史ノートみたいですねw
うっかり:世界観を作るなんて紙一重よな

www65.atwiki.jp

プレイヤーとモチベーション

ハカセ:この辺で前史は止めておきましょうか。ここまでの話をまとめると……

うっかり:こんな無茶に思える長期キャンペーンも、プレイしたいっていうプレイヤーの声と、それを実現しようっていうゲームマスターの熱意があればできるってことよな
ハカセ:そうなりますね。ただ……構想段階についてはかなりのところ技術的な問題です。シーズンごとにどこまで物語を進めるのかとか、どの伏線をどこに置くのかとか……
うっかり:そのへんはな。シナリオ数が多いと大変やろな
ハカセ:はい。しかしそのあたりは技術の問題で、本質的には長大なキャンペーンの障壁ではありません

うっかり:やっぱり遊びたいと言ってくれるプレイヤーが一番よな
ハカセ:それなしにはゲームマスターは務まりませんからねぇ……

うっかり:あとはプレイヤーたちが面白いと思えるような設定資料を渡すのも有効やね
ハカセ:長いキャンペーンはプレイヤー側の負担も大きいですからね、モチベーションコントロールは大きな課題かもしれません


計画通りには進まない

 長期キャンペーンの構想ができたとしても、思惑通りに進むことはない。どのあたりから計画は乱れ始めたのだろうか?

システム上の計画変更

うっかり:それで、話聞いてたら結構始めの計画とは違うのよな
ハカセ:はい。もう全然。
うっかり:どこがどう違うとか、地味に聞いたことないのよな

キャラクターメイクで狂う

ハカセ:そもそも僕は何処の馬の骨とも知らない冒険者を期待していたんです
うっかり:そうなの?

ハカセ:実はこれまでにバックボーンのあるキャラクターを持ち込まれた経験がなくて、そういうものを扱うノウハウってないんですよ
うっかり:言われてみれば、クトゥルフとかソドワってあんまりキャラクターの過去とか関係ないもんね
ハカセ:ダブルクロスなんかはもろにキャラクターの過去を扱うゲームですけど、僕はあんまりやってませんから
うっかり:したらあれじゃないの、うちのレイラがあかんかったんちゃうの?

ハカセ:そうですね、レイラとサラーです。背景設定の細かい二人のキャラクターが提出された時点で、1回目の構想練り直しが発生しました。
うっかり:ああ、サラーもか。でもしゃあないわな、あれだけ背景がある世界やったら作りたくなるもん
ハカセ:ですよねぇ。その辺りから想定不足ですよ。あ、みんなこんなに世界設定に乗るんだって思いました
うっかり:乗るに決まってるんだよなぁ

うっかり:プレイヤーとしては、ゲームマスターに計画を変えて欲しいわけじゃなかったんよ?
ハカセ:はい、そう伺ってましたからね。しかしできる範囲で応えたいというのもゲームマスター心理ですよ

キャラクターの成長

ハカセ:もう一つの問題は、ソード・ワールドにレベリングがあることで、出せるエネミーが決まるという問題でかなり悩まされましたね
うっかり:あー、始めからどのシナリオでどのボスってのが決めてあったっていうもんな
ハカセ:はい。どのシナリオで何点経験点が入るから、だいたいこのくらいの冒険者レベルになって、このくらいのボスがいいよねと

うっかり:それが狂ったんや
ハカセ:はい……

うっかり:なんで狂ったん? 数字通りに出せば問題ないんやないの?
ハカセ:募集要項にも「成長プランはAAかABB、BBBを予定」と書きましたし、プレイ中にもそういう風に成長させるようお願いしたんですが……
うっかり:プレイヤーが守らんかったわけよな
ハカセ:はい、このゲームでは一点伸ばしが強いので、それを止めるわけにもいきませんし……
うっかり:逆に構成とか初期能力で伸び悩んだキャラも出て全員で悩んだりもしたな
ハカセ:そうですね、パーティ内に2のレベル差が生まれた。その後も戦闘系技能レベルの差は4とかまで広がっていきますからね

ハカセ:ともあれ、レベルが予定と乖離した結果、必ずしも予定通りのエネミーがいい感じのボスとは限らない状況になったんです
うっかり:プレイヤーとしてはなぁ、使いやすいように成長させたいもんな

ソドワのボスを決めることの難しさ

ハカセ:普通の卓なら全然問題じゃないんですが、これが物語を主題としたキャンペーンでは問題大有りなんです
うっかり:そうやろな

ハカセ:うっかりさん、ソドワのシナリオってどれくらい作ったことありますか?
うっかり:一回だけボスを選んでそれと戦うだけの感じの簡単なのを
ハカセ:そのときって、最初に冒険者のレベル帯にあったボスを選びましたよね?
うっかり:そうやね……あ

ハカセ:このキャンペーンではそうはいきません。ボスを先に選ぶと物語がちぐはぐになります
うっかり:そうよな、ちゃんと話の流れに噛み合う敵がおらんと
ハカセ:なんでこんなところにいるんだっていうボスはこれまで出ていないし、ちゃんと話の筋が通って見えるのはかなりの努力の結果なんです

ハカセ:つまり、このキャンペーンでは、まず物語が先に決まり、そこで出会うべきエネミーのイメージが固定されます
うっかり:それでちょうど合う感じの敵データがなかったらどうするん?
ハカセ:展開を無理のない範囲で書き換えながら、進めたい方向とマッチングする作業を繰り返します
うっかり:きっついな

ハカセ:そのうえで、成長プランを指示してまで最初に予定を立てたのに、プレイヤーたちに予定を覆されて修正が入るんです
うっかり:そこまできついなら、予定通りの敵を出してもよかったんやない?
ハカセ:そしたら一点伸ばしの主人公がなんの苦戦もしないで敵を刈り取るだけ、ほかのメンバーが微妙な活躍になって……
うっかり:リプレイとしておもんなくなると
ハカセ:現在に至るリプレイでパーティ内に気絶が出たりしているのは、思いの外絶妙なバランスの結果だったんです

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そもそもシナリオも狂い放題

ハカセ:まぁしかしそれも軽微な問題です。7つ目のシナリオでもうシナリオごと変更になってますからね
うっかり:それってプレイヤーのキャラクターを見て修正したシナリオからまたさらに修正したってこと?
ハカセ:はい
うっかり:いたたまれんなぁ

長期卓に参加し続けるのも難しい

ハカセ:これはプレイヤー達の行動が二つの意味で想定外だったことによります。
うっかり:2-2っていったらプレイヤーが一人連絡取れなくなったタイミングやんな
ハカセ:はい。シナリオ修正で吐くかと思いました
うっかり:あんときは大変そうやったな

ハカセ:ですが仕方ないんです。そもそも2年も同じ曜日に同じ人たちとセッションし続けられるなんて望み薄だったんです
うっかり:俺はもっと抜けると思ってた
ハカセ:そうなんですか?
うっかり:この2年半くらいで俺の周りでも5人くらい転職したもん
ハカセ:そうなんですよ、しょうがない。これはむしろ想定していなかった僕の方が悪い
うっかり:まぁそれはそうかもしれん

プレイ内容でも展開が変わる

ハカセ:ですがそれだけではありません。みなさんはシナリオ想定と違う行動をいくつかしたんです。
うっかり:そうやったんや
ハカセ:これはバックボーン設定の強い2キャラだけではなく、全体にですね。それでシナリオを書き換えました

うっかり:ちなみに具体的にはどの辺なの?
ハカセ:何箇所かありますけど、大きな変更といえばフレデリックの保護ですね。保護されない予定だった人物が冒険者たちの保護下に置かれたことで、物語が変わりました
うっかり:わりとそれ以外にやりようなかった気がするけど、予定外だったんや?
ハカセ:皆さんのそれまでのフラグの積立の結果、それが自然に感じるようになっちゃっただけなんですよね
うっかり:思ってた以上にプレイヤーに合わせとるんやね

ハカセ:ともあれ、この変化で第二シーズンはほぼ全面的に書き換えられました。数万字のシナリオロストですね
うっかり:キャラクターロストの比じゃないやん

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ハカセ:このように、長期キャンペーンでは初期想定がなければ伏線も張れませんし、経験点計算やボス想定とそれに合わせたシナリオ展開なども用意できませんが

ハカセ:すべてを4、5回は全部捨てる覚悟を同時に持たなければGMは務まりません

うっかり:地獄w
ハカセ:なのでこれから仲間達と20シナリオ以上の長期キャンペーンをしようと思っているあなたにはくれぐれも言っておきます。

ハカセプレイヤーの自由をどこで絞り、どうやって想定通りに進ませるのかをよく考えてください。普通のセッションみたいにプレイヤーの自由を許容すると、泣きを見るのはあなたです
うっかり:経験者は語る

それでもうまく進んだのはなぜなのか

 開始時点から予定とは違う方向に進み始め、進めば進むほど予定外が重なったキャンペーン。シナリオを書いては捨て書いては捨て、それでも期日までになんとか用意して……そんな繰り返しがなぜうまくいったのか。

世界設定を書いていたこと

うっかり:諦めんかったからなんやろうけど、それようやったな。実際わりと好きにさしてもらってるなぁと思うもの
ハカセ:これはね、普通に考えるのと真逆な理由なんですよ
うっかり:真逆?

ハカセ:普通、最初に設定がないから「設定を生やす」っていう方法をとるじゃないですか
うっかり:そうやね、遊んでるうちに設定が増えていって、だんだん自分たちの住んでる世界が決まっていくわな

ハカセ:今回は初めから「世界の設定の方が細かかった」からうまくいきました
うっかり:wikiよね
ハカセ:はい。あれに何度となく助けられました

知識的なフェアを作る

ハカセ:そもそもwikiというのは、僕がこのキャンペーンを開始するにあたって作成した「フィネア地方の解説をしたwiki」のことです
うっかり:あそこに書いてある情報のほとんどがキャンペーンのプレイ開始前に書かれてたのよな
ハカセ:これはTRPGにおけるフェアさを僕が追求していたからですね
うっかりプレイヤーとゲームマスターが同じことを知っている状態ってことよね

ハカセ:はい。政治的な話をするのに、皇帝の思惑とか議会の思惑を知らないでプレイさせられて、それであなたたちの行動は失敗でしたーって言うのは、ゲームマスターの横暴じゃないですか
うっかり:ゲーム内で調べて明らかになればーって感じやけどな
ハカセ:なので僕としては、プレイヤー側が自分のキャラクターと同じくらいの理解度を作れる環境を作りたかったんです
うっかり:俺はかなり読んだな
ハカセ:なんやかやと全員読んでくださったらしく、ありがたい限りですね
うっかり:プレイにどう使うかはプレイヤー次第って感じよね
ハカセ:僕は読まなくてもいいと言っていたんですが、結果的にそうなりましたね

wikiに助けられる?

うっかり:それで、そのwikiに助けられたっていうのはどういうことなの?
ハカセ:最大のポイントは、何をしたら世界がどう変わるのかがよくわかったということです
うっかり:抽象的やね。たとえばどの場面?

ハカセ:まずはサラーが帝都に手紙を送ることで、魔剣の重要情報が伝わってしまうというくだりですね
うっかり:第1シーズンの第3シナリオあたりやね
ハカセ:はい。するとWikiには「皇帝も魔剣の情報を求めている」的なことが書いてあったんです。だったら展開は「魔剣の情報を持っているあいつらを取り押さえろ」に変わるよね、と
うっかり:なるほどな

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ハカセ:そうして書き換えられた第2シーズンで、カシウスが女官を説得して味方に引き入れるくだり
うっかり:あれはプレイ中も言っとったな、書き換えないかんくなったって
ハカセ:ほんらい味方か敵かわからないまま別離するところが、和解してからになりましたからね
うっかり:これはWikiに何か書いてあったん?
ハカセ:はい、あのとき信頼関係を得るフロンタというキャラクターについて「政治家より武人でありたい」という旨の人物設定が書かれていました
うっかり:それであのとき帝国を敵に回す決断をさせられたわけやな

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ハカセ:とまぁこのように、変更を迫られる機会というのは何度もなんどもありましたが、その都度Wiki、細かい世界設定資料が僕を助けてくれたわけですね
うっかり:これは長期キャンペーンを予定してる人にも勧めたい方法ってことよね
ハカセ:はい。もう是非。キャンペーン始める前に死ぬほど書いておいてください

ゲームとして? リプレイとして?

ハカセ:それから、これはちょっとぶっちゃけたところもあるのですが
うっかり:ほいほい?

ハカセ:結局「やりたいことをやらない」という選択をとったことで、キャンペーンはうまく進みました
うっかり:これだけエネルギーをかけたのに妥協したんや
ハカセ:妥協というより、ちゃんとゲームとして面白いシナリオにしようという考えを捨てなかったんです
うっかり:なんか今になってシナリオ作った人がおるんやなと思うと胃が痛むわ……

リプレイとして面白い

ハカセ:そもそもリプレイとして面白いなら、面白さって3箇所くらいあります
うっかり:キャラの掛け合いが面白いといいよね
ハカセ:それもひとつです。他には「独特なデータ解釈やムーブにより難題を克服する」とか「セッションで起こりがちな劇的なダイス」とか
うっかり:このキャンペーンでいうダイス(1,2)を「カシウス」って呼ぶやつやね
ハカセ:それですそれです。ダイス運がめちゃくちゃないプレイヤーとかがネタになっていくのはリプレイならではですよね

うっかり:その意味ではデータ解釈とかはあんまり苦手やからなぁ。レイラのデータ方面は作るのお願いしたくらいやし
ハカセ:そうなんです!
うっかり:なに、そのカビラ口調

ハカセ:僕は「そのゲームに詳しくないと楽しめないリプレイ」はどうなのという問題意識がありました
うっかり:あーはーん?

ハカセ:なのでデータハック系の話は全然出てこないし、プレイヤーの相談も最小限に抑えられています
うっかり:たしかにな。プレイヤー発言とキャラクター発言の語尾とか揃えてあるし
ハカセ:僕としては、結局「これがTRPGセッションとして行われた」という留保なしに、楽しめる物語であってほしかったんです
うっかり:あー、プレイヤーとしては気持ちはわかるな

TRPGセッションという留保

うっかり:あれよな、プレイヤーとしてやってても、実際ダイスがのらなかったり、他のプレイヤーの受け答えが想定とは違ったりして、思うようにならんこと多いのよ
ハカセ:それです。物語としての完成度や美しさを求めるなら、根本的にTRPGをしない方がいいんですよ。盛り上がるべきところでダイスなしにクリティカルが出た方が、どう考えても物語としては魅力的になる
うっかり:でもそれはできんもんな

ハカセ:なのでリプレイの読者の頭に「TRPGだから物語的な盛り上がりに反することも起こるよね」とよぎらないよう、細かく加筆修正を行っています
うっかり:当然ダイス目は修正なしやもんな
ハカセ:それは当然。一つ一つのダイス目の意味や解釈をちゃんと作り出して、物語に回収していくんです
うっかり:……それ次のシナリオ作りながらリプレイでやるのよな?
ハカセ:そうですとも
うっかり:……はーーーーー

ゲームとして面白い

ハカセ:と言って、ですよ
うっかり:おう

ハカセプレイヤーがセッションそれ自体を楽しめなかったら意味がないんですよ
うっかり:それはなんか序盤から気にしてたな
ハカセ:結局楽しく快適なセッションの中でしか、いいプレイって生まれないと思ったんです
うっかり:そのへんは色んな考え方があるんやろ?

ハカセ:はい。リプレイを作るということを前提にするなら、プレイヤーにゲームマスターの思う物語的正解をなかば強いていくというスタイルもあるそうです
うっかり:えらい圧力やな
ハカセ:いえ、今回のキャンペーンを通じて、僕はその手法もやむを得ないと思いました。検討には値します
うっかり:そういうもんか
ハカセ:リプレイとして妥協しないということは、読者に対して責任を持つということですからね
うっかり:あー、そうやな、プレイヤーたちも一緒に作り手としてやるなら、監督と役者みたいな関係になるわけや

ハカセ:しかし僕は最後までそれはしないつもりです。あくまでゲームとして楽しめるように工夫を続けます
うっかり:あれよな、カードウィルダネス作ったりしたもんな、あと巨人と馬車で戦うやつとか
ハカセ:はい。キャンペーンを通じて登場した独特なゲーム要素は、リプレイとしては今一つつまらないと思います
うっかり:そこまではないかもしれんけど……

ハカセ:読者としては、戦闘もそうですけど、ウィルダネスや情報を抜くだけで明らかになる黒幕探し、マップ探索などの要素は読み飛ばしたいでしょう
うっかり:まぁなぁ……リプレイ全体が物語って銘打ってるから、リプレイとしては必要やけど……難しいとこよね

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やりたいことをやらない

ハカセ:この辺りははっきり言って未解決の課題ですね。
うっかり:そやね。プレイヤーとしても、どっちも必要やと思うもん

ハカセ:そして話を戻して、これが「やりたいことをやらない」という決断に関わります
うっかり:おう、そやったね

我を通したシナリオは1つ

ハカセ:実は僕が我を通したシナリオはいままでのところ3-5のひとつだけです。
うっかり:15のうち1つか……
ハカセ:他はいわゆるゲームとしての形式とか、リプレイとしての長さとか、プレイヤーの要求とか、そのあたりに合わせるように意識しました
うっかり:ほんまは全然違う形でやったかもってことよな?
ハカセ:はい。僕はもとはオープンで好きにやれっていうシナリオの方が好きな人でしたから
うっかり:そうなんや

ハカセ:街を作って設定を細かく書き込んで、5つの事件が同時に存在していて、プレイヤーたちの行動次第でそのどれかが見つかって、依頼を引き受けたらシナリオ開始っていう……
うっかり:なんや楽しそうやん
ハカセ:1シーズン遊ぶのに半年以上かかりますし、テキストでやることじゃないかなと思います
うっかり:あー、そうよな、リプレイのスケジュールもあるもんな

ハカセ:それに、今回集まったプレイヤーはこういうのが苦手な人とか、ソード・ワールドでのプレイ経験が少なくてこのスタイルで遊べるほどデータに強くない人も含まれていました
うっかり:俺もその一人やな
ハカセ:なのでやりませんでした。全部僕の指示する判定や処理をこなせば解決するシナリオにしました。多少の選択肢は残しましたけどね

何を楽しんでいるのか

ハカセ:だから逆に僕としては、プレイヤー側が何を楽しんでるのかなっていうのは尋ねてみたいですね
うっかり:あー、難しいな

うっかり:俺は一緒にリプレイを作るって立場でやってると思うから、絵を用意したりとかもするし、セッションもリプレイとしての展開とかの方が考えるのよな
ハカセ:そうですね、展開作ろうっていう意識を感じるプレイヤーも確かにいます
うっかり:やからかえってカードのやつとかダイス振るだけーっていうのの方が盛り上げにくいっていう気がするな
ハカセ:ロールプレイも挟みにくいですもんね

うっかり:けど実際ああやって楽に回した方が効率がいいのはたしかやし、難しいとこよね
ハカセチームメンバーがそれぞれどういうモチベーションを持っているのかを見ながら、全体をマネジメントしないといけませんからね
うっかり:まんまリーダーシップやな。会社の運営と一緒かもしれん
ハカセ:給与なしでチームを束ねるんですから、実は結構シビアだったり……
うっかり:2年続いてるならうまくやった方よ
ハカセ:そう信じたいところです……

まとめ:長期キャンペリプレイの苦労

うっかり:ずいぶん話したし、そろそろ一つ目のまとめに入ろか
ハカセ:そうですね。今回は「長期キャンペーンの運営ってどんな感じなの?」というトークテーマで、僕らの苦労について話しました

プレイヤー側の苦労

うっかり:プレイヤー側は、やっぱり物語にダイスがついてこんっていうのと、他のプレイヤーの言葉が噛み合わんことがあるっていうのがあって、長期間積み重なっていくと自分のやりたいこととズレていくっていうのがあるな
ハカセ:あとはリプレイを作るために集まっているのか、楽しむために集まっているのかっていうイメージの齟齬も生じやすいですね。この点はリプレイ作成を目指さないなら関係はありませんけど
うっかり:あとは2年以上続けるとなると、プレイヤーのリアル事情が変わって遊べなくなるっていうのもな、想定しとかんといかんわな

うっかり:逆にプレイヤーの負担を軽くしたのは、ゲームマスターが世界をちゃんと読める形で渡してくれて、それに乗っかればいいっていう環境を作ったことやね
ハカセ:セッション中にセリフを要求する場面を極力減らして、重要な場面でだけお願いするようにしたのも意味があったと信じたいですね

ゲームマスター側の苦労

ハカセ:翻ってゲームマスター側の苦労はといえば、まずはキャンペーン全体の構想をなんども書き換える必要がある点ですね。これまでにもう6回くらいは変更しています
うっかり:あとはシナリオのボスを物語にあうのにせんといかんっていうのが重そうやな
ハカセ:プレイヤーたちが来週も参加してくれるという保証はありませんから、遊びやすさと面白さをどうやって作り出していくのかを常に考えないといけなくなるのもかなり苦労します
うっかり:あとは毎週リプレイ書くのもな
ハカセ:はい。リプレイを作るために集まってもらっているなら、必ずプレイヤーの行動がリプレイとして発表されるという確証を与え続ける必要があります。その労力なしに、長期キャンペーンのリプレイ化は困難と言っていいでしょう

うっかり:プレイヤーもゲームマスターも苦労しながらやっとるっちゅうこっちゃな
ハカセ:ですので、安易な気持ちではとても実現しません。実行しようという方には、鋼の意思で実行してみて欲しいと思います

次回予告

うっかり:というわけで、これがあと何回かあるんやろ?
ハカセ:はい。ラストシーズンを前に、次回はフィネア地方という世界設定に隠された裏設定について語ってみたいと思います
うっかり:今度はつまり「自分のオリジナルの世界を作ってみたい」って人向けのフリートークやな
ハカセ:そうなります。というわけで、乞うご期待です!
うっかり:です!


次回へつづく