【ソード・ワールド2.0リプレイ】目覚めの鐘【英雄志望と二つの剣4-6】
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あらすじ
レイラたちは敵の親玉ノイルに遭遇するもノイルが変態だったため脱出のチャンスを獲得する。一方アークたちは冒険者の宿にフレデリックが逃げ込んできていると判断して急行し、そこで無事にフレデリックを保護したのだった。
事実を伝える
サラー:「落ち着いてお聞きください。…あなたの父上は亡くなりました。いえ…殺されました」暴れようとするなら、肩においた手に力を込めるわ。逃亡もさせない
フレデリック:「な、な、なにを馬鹿なことを言っているのだ!! 不敬だぞ!!」
サラー:「首謀者は第一分隊騎士団長のノイル。状況から、彼には蛮族との繋がりが見て取れます。あなたのお姉様はそのことに気がついていたようです」
アーク:「おにーさんの言ってること、嘘じゃないよ」
サラー:「現在、あなたのお姉様は剣の神殿にて決死の防衛戦に挑んでおります。私どもはクリスティン様より依頼を受け、あなたの護衛を仰せつかりました」
フレデリック:「では姉上は無事なのだな!? ならば姉上がその反逆者を抹殺するまでの護衛ということか!? そうなのだな!!」
サラー:「……正直に言うわ、フレデリック。あなたの姉上が勝つ確率は限りなく低い。敵はこの日のために、周到にそして強力な備えをしているわ。クリスティン様はたしかに優秀だった。だけど、時間がなさすぎたのよ」
フレデリック:「そ…そんな馬鹿なことがあるか! アーク、お前からも言ってやれ! 姉上は最強の騎士だ! 姉上が反逆者ごときに遅れをとることなど…起こりうるはずがない!」
アーク:「…あの騎士様は強そうだったけど、戦いじゃなにが起こるかはわからないよ…」
フレデリック:「アーク…アークまでそう言うのか!? 友達だろうアーク! 私の信じるものを、信じてくれないのか!?」
サラー:「…我々の任務は、あなたを無事にこの国から脱出させること。これはクリスティン様の“最後”の依頼です」
フレデリック:「脱出…? 姉上が…それを…?」と言うと、その場に崩れ落ちます
覚悟を問うサラー
サラー:「…アークちゃ…いえ、アーク。あなたもよく聞きなさい」
サラー:「いまからあなたたちが踏み越えるのは、死ぬよりも辛い道になるかもしれない。この国が堕ちるということは、この大陸が、そして大陸に住まう全ての人の平穏が終わるということ。そしてフレデリック。あなたはその中心にいると言っても過言じゃない…」
サラー:「ここから脱出できるかもわからない。脱出できたとしても、あなたを巡ってたくさんの敵が現れる。24時間、心休まるときなどない。…“覚悟”がいるわ。生き延びる“覚悟”が」
フレデリック:「覚…悟…?」
サラー:「アーク、あなたはまだ降りられる。いいえ、このお坊ちゃん以外全員がそう」
アーク:「…フレッドはこの街にきて初めての友達。僕は友達を見捨てない」
サラー:「…」
主人公の覚醒
アーク:「おにーさんなら、この状況をなんとかできるの?」
サラー:「無理ね。もちろん、アタシ“だけ”では」
アーク:「なら僕も力を貸す! なにをしたらいいのかわからないけど、なにもしないままじゃいられない! お願いおにーさん、力を貸して! 僕だって、僕“だけ”じゃ無理なんだ!」
サラー:「…なら、死ぬ覚悟もできるわね? 状況は最悪よ。そしてアタシたちはフレデリックだけは絶対に生き延びさせなければならない。アタシも、あなたも、全員が、命を捨ててもフレデリックを守らなければならないわ」
アーク:「…違う。誰も死なせない。僕も死なない。もちろんおにーさんも。最初っから犠牲があるなんておかしいよ!」
サラー:「…ッ! でも、あなたには、なんの力もない!」
サラー:「田舎から出てきたただの冒険者! 海で戦ったときも! レッサーオーガのときも! あなたに何かができたの!?」
アーク:「そんなの知ってるよ! でも友達を守りたいんだ!」
サラー:「あなたがなにをしてきたっていうの!? それでも、あなたは無責任に、彼を守ると言えるの!?」
サラー:アークの胸ぐらを掴んで、正面から睨む
アーク:「…何もしてないよ。僕はみんなの中で一番弱いかもしれない。けど、守りたいものを守る。力がないならもっと力をつける。だって、僕は…自分が弱いってことを知ってるから!」
アーク:「フレッドを守りたい。だから守る。でも、僕一人じゃ守れないんだ。だから…だからサラー! 僕に力を貸して! どうしても友達を守りたいんだ!」
サラー:「…ッ! それが、その考えが甘いって…ッ!」
GM:サラーが再び睨みつけたアークの瞳には、たくましく揺るがぬ意志の力が宿っていた。その瞳はサラーの知る無力な青年からは到底想像のつかない強い光を蓄えている。その瞳は現状に動揺するサラーの心と対照的に、すでに未来を…いや、違う。彼は自らの意志とともに、常に自らの生きる現在を見続けているのかもしれない。その一切のためらいのない瞳に、サラーは“これまでに見た誰にも劣らぬ”強さを見た。
サラー:(…アタシはこの瞳を知っている…。同じ瞳、無謀なほど真っ直ぐな…でも、あの人とは、義兄様とは、違う…何かが違う…?)
サラー:「…………面白い」
サラー:「アーク、誰も死なせないと言ったわね。そしてあなたも死なないと。友達は、守りきると。…その言葉、守れなければアタシがあなたを背後(うしろ)から射つ。その代わり、そのときまでは命を賭して力を貸すわ。…あなたの求める、甘っちょろい未来にね」
アーク:「ありがとうサラー。大丈夫。僕、諦めないから!」感極まって腕振りほどいて抱きつこう
合流する冒険者たち
GM:あ、ここしかないですね。カシウス、ノイ、レイラ、合流どうぞ
GM:というわけで、いいシーンがあったことなどつゆ知らず、お三方が冒険者の宿に帰ると、抱き合うアークとサラーの横でorz状態のフレデリックがいます
サラー:「あら、おかえりなさい」アークの頭ぽんぽん
カシウス:「ただいま…って、なにしてんだ?」
ノイ:「ただいま」
アーク:「みんなおかえり!」また大きなおねえさん向けの
レイラ:「ううう…」
ノイ:「まぁレイラも元気出して、ほら、フレデリックだよ」
レイラ:「! フレデリック殿!」やっと気づきました!
GM:フレデリックはその呼びかけにも反応せずうなだれています
サラー:「三人とも、状況を教えて。フレデリック様はしばらくアークに任せて」
ノイ:(アーク? サラーの呼び方が変わったな)「どうしたのサラー? 吹っ切れたみたいな顔してるけど」
サラー:「そうかしら? …そうね、少し甘く見てた子が度を超えた甘さを持ってたってだけよ。何事も、突き抜けるとバカにならないわ」苦笑
ノイ:「…そう、アークもなかなかやるんだね」
フレデリックのショックは大きい
アーク:「ねぇフレッド。僕はフレッドのおねえさんほど強くもないし、頼りないかもしれない。けど僕を信じて。絶対守りきってみせるから。そしてフレッドはおねえさんを信じてるんでしょ? ならきっと大丈夫だよ」
フレデリック:「…アーク…アークは前に無一文になったと言っていたな」
アーク:「うん」
フレデリック:「あのとき、私にはとても考えられなかった。私は公王の子で、ヴェルチの血を受け継ぐもので…でも、もう何もないんだ。…本当にこの街は、国は…なくなるのか? 私は一体どうすれば…」
アーク:「全力で生きればいいんだよ。僕は賢くないから国がなくなったらどうなるのかわからないけど、大変なのはわかるよ。でも、生きていればなんとかなるよ。だって僕がなんとかなったんだから。だからフレッドも全力で生きようよ」
GM:しかしアークと違って事態を受け止めきれないフレデリックは、ここで嗚咽を漏らして泣き始めます
ノイ:「フレッド。泣くなとは言わないよ。けど、今の状況、認識はできてる?」
GM:フレデリックは泣いたまま意固地に強く首を振ります。まるで認識したくないと言わんばかりに、顔は伏せたままです
ノイ:「…つまり、このまま私たちに引きずられて、また担がれて行こうっていうの? もしそうなら私は嫌だよ。サラのことだから言ったんだろうけど、もう一回言うよ。ここから出るのに足手まといを抱えていく余裕はないの。自分で立てもしないくせに、生き残ろうともしないくせに、生き延びるようなのは私は嫌い。わかるでしょ、フレデリック」
GM:サラーそんなひどいこと言ってないよ!!
ノイ:サラーなら言うだろうっていうわたしの思い込みだよ、てへっ
フレデリック:「う…うぅ…なら、わたしにどうしろというのだ!」歯を食いしばって真っ赤に目を腫らしたまま、立ち上がってノイを睨みます
ノイ:「自分で歩く。助けられてもいい。頼ってもいい。それでも自分で歩いて、自分が決めたことをする。それだけだよフレッド」
フレデリック:「そんなことはもう何度も!
レイラ:すっと近づいて、頭ぽふっと抱いて
GM:(ゴリラの握力で粉砕して)
レイラ:しません!
レイラ:「大丈夫です、ヴェルチ殿はきっと無事ですよ。ここは戦場になりました。そこにあなたがいれば、力を出せません。いまは無事を信じて退避しましょう」と優しい声で
フレデリック:「…あああっ! それが今のわたしにできる唯一の役目だというなら!」
レイラ:「はい、行きましょう」にっこり
カシウスはほら
サラー:レイラちゃんみたいな立場もなく、アークのように無知でもない。アタシのように秘密もない…ノイちゃんの言葉が一番真っ当で、事実を言い当てていて、力強いのよね
ノイ:わたしはそうやって死地から生き抜いてきたの
アーク:…あれ? カシウスは?
サラー:カシウスちゃんはねー…
ノイ:カシウスは…
レイラ:か、風のような人ですから…
アーク:いつものこの扱い。風ウス
レイラ:影薄のほうがよかったでしょうか…
カシウス:俺だって、まだ見せてない一面があるんだぜ
ノイ:えっ もっと変態だったの?
レイラ:まさか(2,2)も出せるんですか!?
カシウス:安定のこの扱い
レイラ:そうだ、先日預かった奇跡の首飾り、フレデリック殿に渡しておきませんか?
ノイ:…うん、いま一番大切なのフレデリックだ。渡しておこう
GM:了解しましたではフレデリックが装備状態とみなします
希望への逃走の開始
ゴリさん:「よし、まとまったな若造ども。この店を守るのが俺の仕事だが、どうやら話に聞く限り店じまいのようだな」サラーとともにカシウスの報告に耳を傾けていたゴリさん
ゴリさん:「たしかスカウトはカシウスだったな。若造じゃおぼつかねぇが、先導しろ」食料をまとめたカバンを背負いながら
カシウス:「…偵察には自信はないが、そういうことなら任せてくれ。だが…西門か…」
サラー:「全員いいかしら?」
サラー:「アタシたちはいまからフレデリック様を連れてこの国を脱出する。全員“覚悟”を決めなさい」アークをここで見てから
サラー:「全員が生き残る覚悟を、ね。死ぬより辛い道になるわよ!」
アーク:「うん、行こう!」
カシウス:「ああ、もちろんだ」
レイラ:「行きましょう!」
ノイ:「わかってるよ(わたしはいつでも、その覚悟で…)」
GM:では、ゴリさんと一緒に冒険者の宿を飛び出して、混乱の街の中を西門に向かいましょう!