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オリジナルの舞台設定を作るってどういう風にやってるの?【英雄志望と二つの剣の裏側2】

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 このブログではすでに2年以上にわたって、ソード・ワールド2.0キャンペーン「英雄志望と二つの剣」が連載されています。物語の世界を感じてもらうために、普段のリプレイではプレイヤー目線での議論や裏側でのてんやわんやは省略されています。ここで3回にわたって、そんなてんやわんやの方にフォーカスを当てて、ゲームマスターやプレイヤーの目線から、長期キャンペーンについて語り合います。

 第2回の今回のテーマは「オリジナルの舞台設定ってどうやって作ったの?」という話です。英雄志望と二つの剣にご興味の方はもちろん、オリジナルの舞台で遊びたいと考えている方にも気づきがあるかもしれない、実体験に基づく対談形式のレポートです。

ハカセ:というわけで、今回もノイちゃんラジオの予定でしたが、まだまだ語りつくせぬことは多い。私たちが放送局を占拠したというテイでお送りしてまいります

ハカセ:前回に引き続き、お届けしますのはシリーズのシナリオライターでゲームマスターを務めるわたくしハカセ(早瀬コウ)と
うっかり:ビジュアルイラスト全般とプレイヤーキャラクターのレイラを担当しているうっかりですー

ハカセ:いやーしかし、世界設定をどうやって作ったのかというのは結構難しい話ですよね
うっかり:とうぜんソード・ワールド2.0そのものの設定は借りてきたわけやんか
ハカセ:そうですね、僕らがやったのはそういう世界の中で生きている人たちと国の設定を作っただけですから、厳密に言えば世界設定を作ったってほどではないんですよね
うっかり:でもまぁオリジナルの地方を一つ作って、それがちゃんと物語に使えるようになっとるんやから、作らなかったわけでもないのよな
ハカセ:ですねぇ……まぁなので「世界設定を作った」という言葉の意味は結構少なめにご理解いただいて、その部分についてお話ししていこうと思います

プレイしやすい世界とは?

 世界観を作るにあたって、最初に意識するべきなのはプレイしやすい舞台設定を作るということだ。しかしどういう風に作ればプレイヤー達は世界の中にキャラクターの居場所を見つけていくことができるのだろうか。

国に思想あり

ハカセ:はじめに魔剣の設定を作ったのは当然なんですけど、実際には世界設定と一緒に作っていった感があるんですよね
うっかり:魔剣以外で最初に決まったんってどこなん?
ハカセ:やっぱり3つの国があるってところですね

ハカセ:僕の認識としては、国っていうのは権力装置なので、ウェーバー流の権力理論が必要だと思いました
うっかり:さっそく何言っとるのかわからんぞ
ハカセ:つまり、なんで国とか国王に統治権なんていう個人の自由を制約する特権が与えられてるのかをちゃんと設定する必要があるなと
うっかり:それマジなやつじゃないの?
ハカセ:はい、マジなやつです。日本は民主主義に基づく憲法が国民と国の契約に……
うっかり:カタイな。柔らかくいこ

神様・軍事力・自由

ハカセ:柔らかく……ええと、つまり、神様の代わりに国のお仕事してるから偉いんだっていう国と、一番強いから偉いんだって国と、みんなが自由にやれる場を提供してるから偉いんだっていう3種類を用意しました
うっかり:作中でいったら北レシトリアが神様で、強いのが帝国、自由がダインハイトやね
ハカセ:そうなります。こう並べた理由は、プレイヤーが自分の目線で見たときに、どれが自分の思想に近いか選べるようにしたかったんです
うっかり:俺がレイラを北部出身にしたのは、神様の教えに従うのが偉いって信じきってるところから始めたかったからやね
ハカセ:そういうのをしてほしかったんですよ。そういう風に、プレイヤーの側でも選びやすいかなと

うっかり:本編のほうでも、最終的には自由のダインハイトのやり方で進めようって感じになってきたもんな
ハカセ:そうですね。プレイヤーたちが自分たちの立場や主張を言葉にするのは難しいんですけど、陣営に入るのは難しくないと思うんです
うっかり:なるほどな。やから初めからそれぞれの違いをはっきりさせとったわけやね
ハカセ:これが今ひとつしっかり定義されていないと、自分たちが何と戦ってるのかもわからなくなりますからね

富の集中vs交易の促進

ハカセ:実は貿易面でもこういう対立を入れていました
うっかり:帝国商会と交易促進会議な。あったなぁ
ハカセ:計画経済と自由貿易の対立だったんですが……いちおうリアル世界でもこの対立は存在していますね
うっかり:せやけどこれはあまり活かされんかったな
ハカセ:はい。政治思想ならまだしも、経済思想なんてノる奴はいないんですよ(苦笑
うっかり:まぁ言われてもいまいちピンとこんしなぁ

ハカセ:でもWikiには小ネタがあって、実は交易促進側の思想はアダム・スミソアって人がまとめたって書いてあるんです
うっかり:ほう?
ハカセ:これ、現実社会で自由交易を奨励したアダム・スミスのパロディですね
うっかり:わかるかww
ハカセ:あと帝国商会側はケインズのパロディになってて、実は隠れ勢力としてマルクスも……
うっかり:そういう小ネタは仕込んであるのよな
ハカセ:もしプレイヤーが元商人キャラを作ってきた場合に、気軽に引用できるようにと思いまして……
うっかり:それはな、ハカセさん……おらんで
ハカセ:ですよねぇw

人族vs蛮族:神様が用意した対立

ハカセ:まぁ何よりの対立はゲームの方で用意されていまして
うっかり:人族と蛮族が戦うって設定よな
ハカセ:その通りです。二つの魔剣もそれぞれの陣営に1つずつ用意しておきました

人族という派閥

ハカセ:そもそも普通のセッションでは、プレイヤーキャラクターは人族という派閥にだけ属するんですよね
うっかり:蛮族を見つけたら攻撃する人間っていう共通項目やな
ハカセ:でもそれだけで25シナリオもやっていけるわけがないんですよ。それじゃ反復になりますから
うっかり:そうやね、いつも蛮族を見つけて倒して見つけて倒してーってしててもつまらんもんな

ハカセ:そこで多重の陣営装置を用意して、プレイヤーに所属をお願いしたわけです
うっかり:けど神様vs力vs自由以外になんかあったっけ?
ハカセ:権力と反権力ですね
うっかり:あー、あれか、騎士に食べ物全部持ってかれそうになってた農民をどうするかっていう
ハカセ:はい、そのあたりです。みなさんが自由を選ぶのは濃厚だったので、もう一つチーム分けをと思いまして

皇帝派vs共和派

うっかり:今のシナリオでも続いてる皇帝派と共和派の戦いやな
ハカセ:そうなりますね。これは封建主義と民主主義の戦いで、日本人にとってわかりやすいのは明治維新ですかね
うっかり:共和派を選べば冒険者が幕末の志士になるわけやな
ハカセ:そのイメージですね。もし皇帝側を応援するなら、逆に新撰組になれるわけですよ
うっかり:そういう未来もあったのか

ハカセ:それで具体的に人物を登場させて、事件を発生させて、調査させて、最後にどっちが気に入りますかと尋ねるわけですね
うっかり:あの頃は結構ふらふらしてたな
ハカセ:これはね、僕がそう仕向けたんですよ。だってこれ、どっちも悪人にしたんですから
うっかり:それよ! これどっちも悪いじゃんってなったわ。それも理由があるの?

ハカセ:これは、そもそも権力というものが少なからず悪性を帯びるという僕の個人的な政治信条が……
うっかり:プレイヤーを巻き込むなw
ハカセ:どちらに進んでも妥協というのも面白いかなと思いまして。この辺りは作為に関わりますから、また次回ですかね

世界は陣営わけでできている

うっかり:結構重要な話やったな。ちゃんと主義や主張の違う陣営を用意せんと、その陣営が他とどう違うのかがわからんわけよな
ハカセ:はい。所属しているキャラクターの違いとか、歴史の違いとかは実はあまり意味はないんですよ
うっかり:結局どういうことを信じてやってる団体なのかっていうのをしっかり作らんと、プレイヤーも選ぶに選べんと
ハカセ:その意味では、なぜ政治組織が分裂するのかとか、いろんな水準で勉強する必要がありますね
うっかり:やから今回ははじめに言ってた……なんやったっけ?
ハカセ:ウェーバーの権力論ですね。そういった学問知識を使ってはっきりと主張の違う組織を作ってみました

うっかり:他の作品から借りたりもできるのよな?
ハカセ:複数作品から借りる場合には、ちゃんと自分が理解しているか注意してくださいね、それから

ハカセ作品の引用をするときに、自分の言葉でその思想内容を説明できずに「あの作品のあれみたいな」ってなってしまううちは、絶対ミスります

うっかり:プレイヤーが知らんかったら終わりやからなぁ
ハカセ:理解が及んでなくてズレた描写したり、複数並べると違いが曖昧だったりしてプレイヤーが混乱するのが一番恐ろしいかなと
うっかり:あくまでプレイヤーのための舞台設定やもんな……


街の風土や生活文化を作る

 このシリーズでは、城塞都市に始まり開拓村や難民キャンプ、牧畜村落や魔動機都市など様々な街が登場してきた。
 それぞれの街の描写の中には、非常に奥深い理由が用意されている場合がある。これは世界に対する理解度を反映するものだ。

決して完璧ではない

ハカセ:政治組織の対立でもそうなんですが、結局のところ、僕らの生きている世界を、どういう角度からどれくらい理解しているのかがものすごく反映されるんですよね
うっかり:それはそうやろな。知らんことは書き込めんし、知ってることは気になるから書き込んでまうからな
ハカセ:その意味で後悔しているのが二つあります。僕の視野が狭かったことがわかるポイントですね
うっかり:なんやなんや

ハカセ:この世界、採石場が決まってないんですよ
うっかり:地味やなまたw
ハカセ:僕が中世都市建設における採石場の重要性を理解したのはかなりあとだったので、本当に後悔しました。ダインハイトなんてどこから石持ってきたんだと
うっかり:城塞作るなら石は相当使うわなぁ。そんで石がないと街も作れんから、立場が弱くなるよな
ハカセ:そうなんですよ! 政治バランスを決める資源なんですよ!! なのに見落としてる!!

ハカセ:もう一つも驚きの重要な要素です。魔晶石の採掘坑が設定されてないんです
うっかり:ほんまや、それも地味やけど政治の話するなら重要よな?
ハカセ:もう全くその通りですね。この他地域ごとの農産品とか降水量とか決めてなかったせいで、複雑な交易による国家間パワーバランスが……ぐぬぬぬ

街の描写にも理由がある

うっかり:まぁその辺はしゃあないやろ。逆にできとったこともあるんやろ?

石がない開拓村

ハカセ:はい。石の話ですが、リンディンフォーデという森の入り口にある探索拠点の前哨基地では、建物が全部木組みという描写がしてあります。

GM:リンディンフォーデのイメージは東南アジア村落部のやや短めのロングハウスが並んでいるようなイメージです。だいたい木造ですね
———第1シナリオ「少年は海を目指す」6より

うっかり:これは石が運べんから、森の木で作った集落ってことを伝えたかったわけやな
ハカセ:そういうことですね。同じ村ではのちに港が作られますが、石畳がないこともちゃんと言及されています

GM:港町の賑わいは……(中略)……テントのような露店で商売をするものから、仮組みのバラックやもう少しましなものでは長屋もあったりして

コーラル:アタイはこっちのが好きだな

GM:あいにく石畳がないため車輪付きの屋台で店を出すものはいないというのが残念なくらいです
———第14シナリオ「英雄志望の進む道」5より

なぜ放牧地なのか

うっかり:それいうたら、俺のキャラのレイラの出身地も羊放牧してるんやけど、あれはあのへん水がないからやな
ハカセ:そうなんですよね、寒くて背の高い木が育ちにくい地域で、そのうえ水も手に入れにくい……なら放牧しかなかろうという話になりましたね
うっかり:受験で家族離れ離れになる前の日の飯はその辺考えて、精一杯の豪華なメニューってラインで作ったな

レイラ:今日の夕飯はラムチョップのローストがメインで、あとは副菜にエンドウ豆のピクルスを添えて、主食が穀物入りのパンですね
———レイラ過去編「彼方に望む風景」2より

ハカセ:あとこの豆のピクルスはめっちゃこだわり見せてましたね
うっかり:海外でピクルス詰めるお手伝いしたことがあって、越冬食のイメージがあったのよ
ハカセ:そういう実体験も織り込まれると雰囲気でますよね。僕もいくつかの実体験が入っていたりします
うっかり:……それ細かいとこよな? 故郷が戦争で消えてたりせんよな?
ハカセ:さすがにそれはありませんよw

他にもこだわりは山ほどある

ハカセ:しかし、こういう細かい理由付けは山ほどあって、取り上げきれないんですよね
うっかり:そもそも全然使わんって言ってたのにダインハイトの地図用意したのなんてこだわりの極致やからな
ハカセ:ほんとですよ、用意していただいたのに完成した頃には街が滅ぶんですから、ほんと申し訳なくて

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ダインハイトの地図。完成直後に蛮族の総攻撃で失われた

ハカセ:まぁもうほんとに、描写にはちゃんと理由があって、結構こだわって作ってるんだっていうのはご理解いただきたいですね
うっかり:そこまでこだわっとるよっていうのは言わんと伝わらんもんな

全員が世界を作っている

ハカセ:とはいえ、わりと思いつきの設定も多いのは認めざるを得ませんね
うっかり:俺含めそれぞれのプレイヤーが思いつきでいろいろ出すからな
ハカセ:食べ物系とか甘い気がします。わりと気軽にお肉が出てくるんですが、この人口規模だったら、地域によってはお肉は相当な高級品だと思うんですよね
うっかり:庶民のタンパク源は豆やろうなぁ

GM:(前略)……なにか煮込み料理を作ってはいるようですが
コーラル:うん、うまいぜ
アーク:肉の煮込み料理なんて久しぶりに食べた!
コーラル:柔らかい肉だな……こんな肉はそうそう食えねぇぜ
———第7シナリオ「動き始めた歯車」7より


ミカ:「いえ、なんでもないんです。……そうだお礼に」といって、カシウスが見ていた店の肉も入ったずいぶんいい食事を一つ買います
———第8シナリオ「古の契約」2より

謎のお茶セコ茶

ハカセ:思いつきで出た設定といえば、セコ茶は欠かせませんね
うっかり:キャンペーンのオープニングでもう出たやつやな、主人公が故郷で作ってたっていう謎のお茶
ハカセ:あれ結局今に至るまで謎のお茶なんですけど、ちょっとあれを使って後付け設定の例にしてみましょう
うっかり:お、ええな

ハカセ:まずお茶ってそもそも奢侈品ですし、庶民向けじゃないと思うんですが
うっかり:冒険者の宿で普通に飲んでたよな。あとたしか「紅茶の代用品」ってセリフが出てた気がする
ハカセ:つまり紅茶はあるんですね、この地域
うっかり:アジアから運んでくるわけじゃないのに発酵させてるんやな
ハカセ:そもそも生姜湯とかのお茶じゃない飲み物って説も……みんなが好き勝手書いたせいで味が謎すぎますし……
うっかり:茶外茶やな。柿の葉とか
ハカセ:あー、言われてみればそういうのありましたね
うっかり:うわっ、調べたら虫糞茶ってあるやん……
ハカセ:それ以外を探しましょう!

うっかり:ん? 発酵させた方がいいものと思い込んでるから、実は生茶の緑茶なんじゃない?
ハカセ:斬新な説ですね
うっかり:紅茶がええものっていう理由があれば、これもあながち的外れにはならんで
ハカセ:お茶が高級品ということと合わせて考えれば、伝説上の開祖フィネアが遠征中本国からお茶を持って来させてて、紅茶しか飲めなかったけど、それで「あれ? 紅茶の方がうまいやん!」って言い出した結果、御用茶畑が紅茶生産に使われるようになって、貴族の飲み物になった……とかなら
うっかり:なんか人間臭い理由やなw おもろいから個人的にはこっち推しやな

ハカセ:まぁあくまで諸説あるということで

リアリティは細部に宿る

ハカセ:とまぁこういう風に後から解釈して設定を補強することもよくあります
うっかり:こういう細かいとこ楽しんでいくのよな、北国の発酵食品作りとか、寒中行軍の保存食とか……
ハカセ:リアリティは細部に宿りますからね。僕は正直言って食や農生産物には詳しくないもので、わりと甘い設定になりがちですね
うっかり:やからこうやって集まったプレイヤーたちが自分の興味のあるとこのリアリティを足していけばいいのよな

ハカセ:食べ物以外の面でも、誰にも言ってませんでしたけどちゃんとした設定があるものがありますよ


ディテールへのこだわりが世界を補強する

 世界のリアリティを表現するために、細かい部分にも理由や設定を用意してブレを少なくするように尽力している。

名前に見る身分制度

ハカセ:たとえばフィネア地方の設定では、魔動機文明語はドイツ語系の音ということになっています
うっかり:そうなんや? ドイツ語っていったら街の名前の「ダインハイト」もそれっぽい音よな
ハカセ:前の皇帝の「ホーエンシュヴァン」もそれっぽい音ですからね、歴史ある名家はドイツ語系になってますよ
うっかり:でも「ヴェルチ」って微妙よな。あれも歴史ある家系って設定やったけど
ハカセ:よくぞ聞いてくださいました

ヴェルチ家はヴェルヒ家

ハカセ:実は魔動機文明語発音ではヴェルヒ家なんですよ。でも綴りがWelchで、英語読み(交易共通語読み)するとウェルチ家なんですね
うっかり:でもヴェルチなんやろ? 混ざっとるやん
ハカセ:これは歴史ある家系だからこそ、公益共通語に存在しているV音「ヴェ」は残って、存在しない音「ヒ」は消えて、現代発音の「チ」に変わったっていう設定なんです。
うっかり:なんやその誰も気づかん設定はww
ハカセ:だから綴りだけを見たらウェルチだけど、あの公王家だけはヴェルチと読む特権階級なんです。同じ名前をいま名乗っても、ウェルチ家になります

貴族には英語名が多い?

ハカセ:そういったわけで、英語名は〈大破局〉以降に生まれた新貴族の家系ですね
うっかり:ファンタジーで英語名って普通やから気にせんかったな
ハカセ:作中では「ブラックバーン」「スミス*1」「ジェンキンス*2」「ヒューリー*3」「ベンハート*4」あたりがでてますね
うっかり:俺のキャラのレイラは「フェルンホルム」やけど、これは北欧系の名前を借りたのよな
ハカセ:北欧系言語は魔法文明語と関係があるという裏設定になってます。実はほかには「ラトヴィック」という名前が北欧由来です

うっかり:しかし逆に英語以外の名前ってファンタジーに馴染まんと思ってたけど、言われてみたら結構おるのよな
ハカセ:イラン系やインド系、東アジア系……結構いろんな名前を使ってますね。そういう名前は庶民の名前なんです

作中に登場した庶民階級の名前

カミラ・ペテルカ(東欧系、冒険者)、シン・イマオキ(日本、冒険者)、ラマン・ペール(インド、行商人)、ヤクーシャ・ヴェルチ(イラン+ドイツ、自由主義盟主の公王)、ミカ(フィンランド、人造人間ルーンフォーク)、セリン(不明、孤児)、カッツ(不明、孤児)、ロルフ・ゴリッツ(東欧系+不明、冒険者)

うっかり:ちゃっかりヴェルチのお偉いさんおるやんw
ハカセ:これもしっかり裏設定がありますね。貴族としてはキラキラネームだったんですが、そのおかげで庶民からの人気を得たとか、でもキラキラネームはやっぱりきついということで息子たち全員が英語系の名前になってるとか
うっかり:遊んでた自分らも気づかんわww

語られない部分にこそこだわりを添える

ハカセ:まぁつまり、いわゆるわかりやすい演出的な部分だけじゃなくて、気づかないようなところにちゃんと説明できるような法則性や文化習俗を入れ込んでおくと雰囲気が出るってことですね
うっかり:遊んでても気づかんかったけど、言われてみたら冒険者たちの名前ってみんな変やったからな
ハカセ:あとは慈雨神フェトルの信仰が広がった理由とか、ユークライント密林が形成される歴史とか……語ってない設定はかなりあります
うっかり:逆にいうたら、設定したもん全部をプレイのときに出さんでいいっちゅうことよな
ハカセ:そうですね、違和感を一つでも無くしておいて、自然な舌触りの世界観にするための配慮にすぎませんから……
うっかり:前回いうてたシナリオの話と合わせて考えたら、労力が途方も無いんよなぁ……

まとめ:思想・地理・文化・言語

ハカセ:そろそろまとめに入りましょうか。舞台設定を作るにあたって、僕らがどういうことに配慮したかという話をかいつまんで話しましたね
うっかり:これで“かいつまんで”ってのがなぁw ほんとにいろいろこだわって作っとるのよね

興味を持って知識を掘り下げる

ハカセ:総じて言えることは、まずリアル世界について歴史も含めてよく勉強しないと舞台設定は作れないってことですね
うっかり:特に政治劇を入れる場合はな、それぞれある種の極端さとか思想がないと、国がキャラ立ちせんのよな
ハカセ:国をキャラ立ちさせると、プレイヤーはその中から気にいる物を選ぶことで自分たちの立場を示すことができますから、遊びやすくもなりますね
うっかり:それ以外でも、結局自分の知っとることしか書き込めないのよな。やから普段からいろんなことに興味をもって調べておくといいよね
ハカセ:そうですね、調べると案外面白い話って転がってますからね

初期設定にこだわり過ぎない

ハカセ:もうひとつは、こだわり過ぎないってことですかね。プレイヤーと一緒に遊ぶための舞台になる以上、プレイヤーが世界に何かを書き込んでいくことはよく起こります
うっかり:肉が頻繁に出てきたり、謎のお茶が出たりな
ハカセ:そういう要素がでたときに「舞台設定上それはない」と蹴るより、「なぜそれが実現できているのか」の理由を考える姿勢を持った方が楽しめますね
うっかり:楽しんで考えれば舞台設定の補強になるもんな
ハカセ:そうやってプレイヤー全体で世界を少しずつ作っていくという姿勢もまた重要ですね

設定を明らかにすること自体は楽しいわけではない

うっかり:ほんでもできるだけ細かいところまで設定をしておいて、違和感を覚えんようにしといたほうがいいのよね
ハカセ:そうですね、でもやっぱりプレイヤーのために設定するので、「ここはこういう設定があって……!」っていうのを強調しすぎてもダルいかなと
うっかり:塩梅やな
ハカセ:ですね。限界まで細かく作りながら、こだわらず、押し付けない。そっと描写の一言に添えておく。このキャンペーンはそういう意識で舞台設定を作り、活用してきました

次回予告

ハカセ:というわけで、今回は「舞台設定をどうやって作ったの?」というあたりの話をしてきました。結論は知識の総決算でしたね(苦笑
うっかり:まぁそういうもんよな。今回話さんかったところもえっらい細かく設定しとるんやろうし
ハカセ:ともあれ、このフリートークも残すところあと1回となりまして、次回のテーマを発表しましょう
うっかり:次回は「リプレイで物語を描くってどこまでできるの?」ってことになってるな
ハカセ:僕がこのキャンペーンで描きたかったテーマに言及しながら、物語とリプレイの微妙な関係について反省していきます
うっかり:同じように物語の筋があるキャンペーンを作って遊びたいって人には参考になるかもしらんな
ハカセ:そうですね。それでは次回の更新でお会いしましょう


次回へつづく

*1:ノイル・フォン・ダインハイトの本名ノイル・スミス。新貴族だがその家名はあまり知られていない

*2:地図の子ことシェリー・ジェンキンス。貴族家系という設定だった

*3:帝国騎士団のトップ3の一人スカーレット・ヒューリー

*4:帝国騎士団トップ3の一人ドグラス・ベンハート