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電源・非電源ゲーム全般の紹介・考察ブログ

世界観設定を伴ったシナリオ作り【ソード・ワールド2.0】

先日、wikiを使って情報共有を行いながらキャンペーンをプレイするというアイディアを紹介しました。結果として、私自身も現在進行中の大型キャンペーンプロジェクト「英雄志望と二つの剣」を実現させることに成功し、現在プレイが始まっています。

 

この大型キャンペーンを企画するにあたって、これまでのシナリオライティングとはまた違った技法を利用することになりました。今日は大きな物語を世界観ごと設計するときに必要なシナリオ作成技法について整理しながら、キャンペーンの設計について考察しようと思います。

 

議論の末に見えてくるのは、「面白いシナリオを作る」ことと同程度に重要な要素としての、「プレイヤーを没頭させる」ことと「半開きの世界(quasi-open world)」という意識です。

 

メニュー

1.プレイヤーキャラクターは「誰」なのか

2.小さな市民と物語

3.目的意識を作り出す

4.「半開きの世界」的ゲーム

 

1.プレイヤーキャラクターは「誰」なのか

 普段のセッションでは、キャラクターの個性を決定するとき主に内因性の個性を決定します。しっかり者とか、元気系とか、バカキャラとか、オネェキャラとか、そういう個性を決めてロールプレイに反映します。

世界観設定が濃い場合には、同時に外因性の個性を決定するとより楽しめます。つまり世界観の中のこの人とは知り合いとか、あの事件と関わっていたとか、そういう背景を設定してみましょう。

 

プレイヤーキャラクターはより一層世界の中に息づくことになり、世界の中で生きている一人の人物としてグッと輝きを増してくれるはずです。

 

2.小さな市民と物語

しかし、初めから英雄的な設定を組み込んでしまっても面白くありません。

初めから国王だったり騎士団長だったりする設定だと、物語にサクセスがないのです。そこで重要なのは、あくまで「小さな市民」にとどめることです。なんらかの大きな事件に関わっていたとしても、その影響力は未だ小さく、どちらかといえば翻弄された人間になることでしょう。

世界の荒波に翻弄された過去から、キャラクターは世界の中に立ち位置を得ます。いわゆる派閥を獲得するのです。それは政治的団体かもしれませんし、武装集団かもしれません。あるいは貴族であったり、スラムの生まれなのかもしれません。

そういった過去が物語的に組み上げられることで、プレイ開始時のキャラクターと世界観に対する意識は大きく変わってくるのです。

 

 

3.目的意識を作り出す

さて、プレイヤーたちに細かい設定を与えた以上、シナリオも相応に「濃い」ものにしなければなりません。実は、プレイヤーたちが世界観に没頭することで初めて実現する種類のシナリオが存在します。それが「情報量が多く、自由度が高いシナリオ」です。

 

突然1セッションだけのために集まったプレイヤーたちが、GMの作り出した濃い世界観に没頭するのは困難なことです。先日も強調した通り、世界観設定資料を読まなければ楽しめないシナリオはやはり失敗作です。

一方でプレイヤーたちが世界観に没頭できるように、プレイヤーキャラクターの設定を手伝ってあげれば、むしろプレイヤーたちは全く違うニーズを抱き始めます。すなわち、この世界観の中の「リアル」を体験できるシナリオです。もっとキャラクター個人の物語に寄り添いたくなるし、もっとこの世界と関わりたくなるのです。

 

ここにおいて初めて、深い裏事情のあるキャラクターや、深く考えなければ大きな過ちにつながってしまいかねないような、味のあるシナリオを楽しむ土壌が実現するのです。

なぜなら、キャラクターたちは立場に基づいて価値基準を持っているからです。「人間なら当然」とか「冒険者的には」といった曖昧な価値ではなく、「立場上こうしたい」という価値基準によって判断できるとき、ようやく自由度の高いシナリオを遊ぶための前提条件が整うのです。

 

 

4.「半開きの世界」的ゲーム

そこでたどり着く一つの理想形が、オープンワールドならぬ「半開き世界(quasi-open world)」のゲームです。

 

TRPGの自由度を生かしながら(オープン)、プレイヤーキャラクターたちの物語を軸にしつつ、それでいて大きな物語に巻き込んでいく(クローズ)。そういう大きなシナリオを実現するためには、様々な技術と工夫の積み重ねが必要だったのです。

 

この技術は私が通常発信している「シナリオライティングの技術」とは全く異なったものです。これは単発のシナリオを構築する能力では実現不可能なものであり、さらにいえば、複数のシナリオを結びつけた大きなシナリオを構築する能力だけでも実現不可能です。

 

したがって重要なのは、次の3点です。

  1. 個別のシナリオを面白く作る技術
  2. プレイヤーたちを世界に巻き込む技術(巻き込まれてくれるプレイヤー)
  3. プレイヤーの自由な価値判断をシナリオに反映する姿勢(半開きの世界)

これらの技術は、シナリオライティング単独の技術ではもはやありません。それはキーパリング技術でもあり、人々を束ねて継続的に巻き込み続ける運営技術でもあります。

本当の面白さは長期的なキャンペーンにこそあるとか、自分の作り上げた世界でキャンペーンをプレイしてみてほしいという方。徹底したwikiの書き込みとプレイヤーキャラクターたちへの配慮、そして展開の自由さを兼ね揃えたうえで、適切な運営力を持つように意識してみましょう。

 

実感としては、これはもはや遊びではありません。頭で処理しなければならない情報量が多すぎます(wiki参照)。

しかしそのくらいの意気込みでやらなければ、本当の面白さは実現できないようなのです。今回の企画運営を通じて、ロングキャンペーン設計および運営のノウハウをも発信していこうと実感するところでした。

 

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