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【リプレイ本】るるいえ あんてぃーく レビュー

クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえあんてぃーく<るるいえシリーズ> (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

近年次々に出版されている、クトゥルフ神話TRPGのリプレイ本のうち、比較的オーソドックスなプレイングを見ることのできる一冊です。現在書籍版とKindle版が出版されています。書籍版は文庫ではないため、少し割高なのが玉に瑕です。しかし、Kindle版なら、比較的お安く手に入れることができますので、そちらでの購入をお勧めします。

このリプレイでは、3つの独立シナリオを、同じプレイヤーキャラクターを使ってプレイしています。それゆえ、キャンペーンとしては、やや連続性が薄くなっています。

詳しくレビューしていきましょう。

 

 

1.本書の特徴

表紙にはメイド服を着た女性と女子高生が描かれていて、タイトルがひらがなで可愛らしく添えられています。この表紙絵は、クトゥルフ神話TRPGのプレイヤーのある層を購入から遠ざけ、逆にある層を購入へと走らせます。

 

まず強調しておきたいのは、このリプレイ本は、クトゥルフ神話TRPGとしてはかなりオーソドックスなリプレイであるということです。

すなわち、ハーレムものに仕上がっているわけでも、軽薄な恋愛ドラマに仕上がっているわけでもありません。かなりきっちりと、クトゥルフ神話TRPGをプレイしています。その意味では、本書の表紙から受けるライトノベル調のポップな印象は、その内容とは必ずしも一致しない、ということです。

もちろん、実際に、プレイヤーキャラクターにメイドと女子高生がおり、彼女たちはとても魅力的なキャラクターとして活躍してくれます。その活躍はいわゆるライトノベルのように、超越的全能の主人公、というわけにはいきませんが、シナリオの中に息づくキャラクターとして、宇宙的恐怖と戦ってくれます。

その様は、クトゥルフ神話TRPGというゲームの性質をよく表しており、プレイガイドとして非常に意義深いリプレイに仕上がっていると言えるでしょう。

 

そうした点から、クトゥルフ神話TRPGのリプレイ本を始めて読むという方には、この一冊をお勧めしたい、と感じました。

 

 

2.プレイヤーにとっての魅力

クトゥルフ神話TRPGのプレイヤーのうち、まだゲームプレイに慣れていない方にとって、このリプレイ本は極めて魅力的です

なぜなら、オーソドックスなプレイのスタイルを、ゲームの様子を楽しく読みながら、学ぶことができるからです。本書で使われている3つのシナリオは、すべてクローズドのシナリオで、初心者のプレイに最適なシナリオ構成になっています。まだクトゥルフ神話TRPGを始めたばかりのプレイヤーが挑戦することになるシナリオも、同じような構造をしていることでしょう。

それゆえ、クトゥルフ神話TRPGのシナリオが概ねどのような構造を取っていて、プレイする際に何を目標としてプレイすればいいのか、その大きな流れを理解することができます

 

また、キャラクターの作成についても、いいヒントが得られるはずです。本書の中では、4人のプレイヤーキャラクターが登場します。探偵に憧れる格闘家の女子高生、心理学の権威的学者先生、学者先生のストーカー兼メイド、そして歴史小説の作家の4人です。

クトゥルフ神話TRPGは、技能を自由に習得するというスタイルのために、パーティ内での役割が見えにくいゲームでもあります。その点、この4人は、戦闘・回復・隠密・知識という役割を前提にしつつ、それぞれの欠点を補い合うという、非常に優れたメンバー構成となっています。

それぞれのキャラクターが、どういった場面で活躍するのか、という点に注目すれば、キャラクターが持つ役割について、しっかりと勉強することができるでしょう

 

 

3.ゲームキーパーにとっての魅力

本書で利用されているシナリオは、比較的シンプルな構成を取っています。それゆえ、キーパリングやシナリオライティングに慣れていないゲームキーパーには、得るものが沢山あります

 

本書を通じて、プレイしやすいクローズドシナリオの構成手法を学ぶことができます

クトゥルフ神話TRPGのシナリオには、大きく二つの種類が存在しています。すなわち、クローズドシナリオと、オープンシナリオです。

このうちクローズドシナリオは、森の奥深くの洋館や、孤島など、行動範囲が制限されたシナリオのことです。行動範囲が制限されているため、不測の事態が起きにくいのが特長です。まだアドリブに慣れていない、初心者のゲームキーパーでも扱いやすいシナリオと言えます。

 

本書には、シナリオのアイディアが定まる場面も書かれています。それゆえ、ゲームシナリオの設計のために、はじめどのようなアイディアをもつとよいのかがわかります。その後、そのオリジナルの小さなアイディアから生まれた実際のシナリオが遊ばれている様子を見ることができます。

これによって、小さなアイディアからどのように肉付けして、ゲームシナリオとして組み立てていけばいいのか、ざっくりとしたイメージを持つことができるのです。

 

もちろん、シナリオライティングの指南書とはいきませんので、これだけでシナリオが書けるようになるわけではありません。しかし、今後クトゥルフ神話TRPGをプレイする際に必要になる、シナリオの自作能力の基礎の基礎を教えてくれている点で、非常に意義のある一冊と言えます。

 

これからクトゥルフ神話TRPGをプレイしたい方、面白いリプレイ動画ばかりを見てきたせいで、オーソドックスなプレイのイメージがつかめていない方、是非とも本書を手に取ってみてください。

 

クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえあんてぃーく<るるいえシリーズ> (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

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