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クトゥルフ2010収録シナリオ「もっと食べたい」について

先日プレイしてみて、ちょっとだけ修正が必要かな、と思ったので、修正が必要だと思われる点を整理しておきます。

みなさんがこのシナリオをプレイする際に、参考にしていただけると幸甚です。

 

クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2010 (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2010 (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

 

 

表現はかなりぼかしますが、それでも、このシナリオについてネタバレを含んでいます。マスタリング経験があったり、プレイヤーとしてプレイしたことがある方を除いて、この記事の続きを閲覧することは避けたほうがいいかと思います。

 

 

1.問題点の整理

このシナリオが持っている問題点とは、ずばり「情報の不足」です。

探索者の一人が明らかな身体異常に見舞われているため、長期的な探索を行うことができません。それを見越してか、シナリオ設計上でも、探索可能な情報が限られています。むしろ、このシナリオでは、「特定の人物がどう考えても怪しいということさえ理解できれば、それ以上探索する必要などない」というスタンスが貫かれていると評価してもいいでしょう。

 

この点が問題になるのは、探索者が少数パーティだった場合です。

情報が不足している状態で、黒幕の本陣に突入する以外の手段が存在しないというのは、クトゥルフ神話TRPGでは致命的な状態と評価されます。ここで探索者が少数パーティによって構成されていると、「暴走した人物」を抑えるのに一人の手が塞がり、「例のアレ」を奪取することに集中できるメンバーがたった一人だけ、という状況に陥ってしまいます。

 

さらに、「例のアレ」が異常な性質を持ったアーティファクトであることが理解できていたとしても、それをどうすればいいのか、推測以上のものを事前に把握することができません。となると、突如登場した「黒いやつ」に対する警戒心から、思い切った行動をとることができません。結果として、慎重な探索者はこの一度きりのチャンスを逃してしまうのです。

 

 

2.マスタリングだけで問題点を回避する

シナリオの大きな改変をせずとも、マスタリングの工夫でこの問題を解決することもできます。

 

マスタリング時に、「黒」が「例のアレ」を「守ろうとしている」ことを、とにかく強調すればいいのです。

 

しかし、特に探索者たちが調べたわけでもない情報を、「シナリオを無事にクリアしてほしい」という良心から、GMが自ら提供するのは、なんだかクトゥルフというゲームのゲーム性を無視しているような気がします。

そこで、今回の記事で、どのようなシナリオ改変が可能か、検討してみることにしたのです。

 

 

3.シナリオ改変で問題点を回避する

(1)問題構造の詳細な検討

まずは問題構造を解きほぐしてみましょう。

このシナリオでは「黒」の正体がさっぱり掴めません。それがどうすれば静まるのか、ということまで含めて、まったく探索者たちに情報が渡ることはありません。

また、このシナリオで「例のアレ」について、本拠地に突入するまで、まったく情報をつかむことができません。その存在が「スケッチ」によって示唆されはしますが、まさかそれがああいう形で登場するとは、探索者たちはまったく予想することができません。

さらに、「狂信者」がもつ特異な「治癒能力」の由来も、まったく情報が与えられません。紅茶とケーキが出されることから、それが原因かと勘ぐってみたり、「紫」が原因かと勘ぐってみたり、なにか魔術でも使っていないかと勘ぐってみたり、プレイヤーはいろいろ思考することでしょう。結局、例のアクションが発生するまでは、何もわからずじまいです。

したがって、「例のアレ」と「黒」と「狂信者」と「その能力」の関係が、まったくつかめないのです。

 

(2)情報配置の再検討

失われている鎖の詳細を把握したところで、その情報をどの程度配置するのが妥当か、検討してみましょう。

まず、「例のアレ」の存在ですが、「スケッチ」を「女性」に見せることで、なんらかの情報を得られることにしていいのではないでしょうか。おそらくその存在が示唆されているだけで、探索者たちの意識は「例のアレ」に向けられることでしょう。

 

「例のアレ」と「黒」の関係については、「暴走した人物」の内心の声として伝えることが可能かもしれません。暴走しイベントが発生した直後から、「例のアレ」を「守らなければならない」という使命感が全身を突き動かします、ということだけを伝えて、以降のロールプレイを本人に委ねてみるのです。こうすれば、ノックアウト攻撃で気絶させられない限り、「黒」排除後の「暴走した人物」の口から、「例のアレ」の破壊を指示することが可能になります。

 

また、「はじめの被害者」の取材記録から、何日前に取材に訪れているのかをチェックできれば、制限時間を知ることができます。概ね4日程度が妥当でしょう。

 

一番問題なのは、「狂信者」と「治癒能力」の関係をどう伝えるか、という点です。他の情報から、治療中に「例のアレ」に意識が向くことはなく、「狂信者」に対する個人崇拝の感覚の方が強いことが示唆されています。このことから、カウンセリング中に「例のアレ」に意識が向く、という改変は整合性がとれません。

「治癒能力」が「狂信者」とは無関係で、「例のアレ」としか関わっていない、ということさえ伝われば、このシナリオは文句なしのショートシナリオとして完成します。でも、そんなことが可能でしょうか?

 

唯一の方法は、偶然道端で「狂信者」と出会った患者のコメントを、なんらかの形で探索者たちに伝えることでしょう(取材記録か、直接話すか)。つまり、「道端で話しても症状改善しない」という情報があれば、少なくとも「狂信者」と「治癒能力」の関係は切れます。その代わり、「部屋の中のもの」と「治癒能力」の線だけが繋がりを保つことになります。こうなれば、ようやく部屋の中のものへと注意が向き、それが全ての原因であることに思い至ることでしょう。

 

 

ということで、「もっと食べたい」の改変案でした。

もちろん、4〜5人以上プレイヤーがいれば、「黒」を2ターン程度引き付けることも可能でしょうから、こうした改変は必要ないかもしれません。一つの案として、ご笑覧いただければと思います。

 

 

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