【ソード・ワールド2.0リプレイ】アイラット平原は雨模様【英雄志望と二つの剣2nd season 1-12】
前回のあらすじ
食料を奪われた農民は、理不尽な逆恨みでカシウスを攻撃した。カシウスの幻覚症状を収めたところで、サラーは農民にダガーを手渡し、恨むなら自分を殺しなさいと言い放った。その姿に冒険者たちは困惑する。
サラー:「気がすむまでやりなさい。……アタシでよければね」
農民の心に向き合う漢女
カシウス:「なっ、お、おい……」戸惑うばかり
GM:では農民はダガーを受け取りましょう
レイラ:農民のダガーを叩き落したいんですが
サラー:眼光でそれは制します。
レイラ:うぅ……
ノイ:わたしは見守ってるよ。わかるきがするから
アーク:「サラーは死にたいの?」
サラー:答えないで背を向けたままよ
GM:農民は受け取ったダガーを見て、サラーを見て、もういちどひひっと笑います
アーク:「でも、僕にはサラーが必要なんだ」剣を抜いて農民に攻撃するよ
レイラ:私も少し遅れますが動きます
GM:ちょうどそのとき、座ったままですが、深刻な表情でそのダガーを大きく振り上げています
サラー:アークの前に体を入れて、農民をかばうわ。ぶつかった衝撃で倒れようと構わない
アーク:!?
GM:サラーの体がアークにぶつかったとき、カシウスやレイラの視線の先で、農民は振り上げたダガーをサラーに向けては振り下ろしていません。ただ自分の目の前の地面に乱暴に突き刺しています
農民:「あああああああああああ!」何度も、繰り返して突き刺します
アーク:「……」
サラー:アークが止まったのを確認して、その様子を見守るわ。今の彼には、必要な時間なのでしょうから
サラー:落ち着いたら、何があったのか、誰が亡くなったのか、葬式はじめ手伝えることがないか、今後についても尋ねておくわ。……もっとも、この男次第ではあるけれど
GM:いえ、サラーは十分にこの男にとって大切なことはしてくれたと思います。お金のときと同じく、力を借りることは拒みましょう
サラー:それなら、ただ一礼して祈りを捧げて去ることにするわ。立ち尽くしているでしょうみんなと帰りましょう
GM:了解です。では、ここでこのイベントは結びましょう
なぜかGMより先に事実を語る漢女
サラー:「……さて、聞きたいことがあるなら、答えるわ」
レイラ:「いったい、あれはどういう……!?」
サラー:「あれはただの復讐、エゴ、八つ当たり……なんていえばいいのかしらね、とにかく、どこにでもあるようなことよ」
カシウス:「だったらなんで、あいつはサラーを攻撃しなかったんだ?」
サラー:「彼が取り戻したからよ。アタシたちが奪ったものをね」
アーク:「……」
サラー:「何を奪ったか、わかる?」
ノイ:「……“誇り”でしょ」
サラー:「その通り」
サラー:「彼には食料を譲れない理由があった。病気の村人もいたのかもしれない。でも、騎士たちはその食料を奪うという役目があった。どちらも、それぞれの正義に従っていただけ」
レイラ:「……」
サラー:「そこに横槍を入れた」アークをちらり
アーク:「……」
サラー:「もちろん、アーク。あなたが彼を殴ってまで行ったことも決して悪ではないわ。あなたの正義の思いから行動した結果なんでしょう?」
カシウス:「じゃあ、あのとき、あいつを助けていればこんなことには……」
ノイ:「それは違うよ、カシウス。そうすればわたしたちはきっと騎士団から追及されてた」
レイラ:「でも、誇りのために人を傷つけようなんて、間違ってます」
サラー:「そうね、間違ってるかもしれないわ。でも、だからといって、あの男をもう一度殴り飛ばすことが正解なのかしら?」
レイラ:「……」
アーク:(でも僕は、あいつよりサラーの方を助けたかっただけ……助けるべき人を助けるために、自分の気持ちの通りに動いただけ……)
サラー:「アタシのほうがあの男より守るべきだと思った?」アークの前に立つわ
アーク:「……だって、仲間だから」
サラー:頬を叩くわよ
アーク:にらみつける
サラー:「あの日、お前は“すべてを救う”と言った。“その覚悟”に、俺は憧れた」
アーク:「……」
サラー:「……俺を失望させるな」
サラー:そのまま向き直って4人の先を進むわ
アーク:「……正しい覚悟って、なんだろう」サラーには聞こえない声で、小さくこぼすよ
フロンタ隊長への報告
GM:さて、なんだか気まずくなったところで報告のシーンに移りましょうか
GM:みなさんが騎士団の元に報告に行くと、まずはルーンフォークの秘書官が応じ、次いで依頼者である隊長のもとに通されます。何か他の用事もあるのかもしれません
フロンタ:「サラー、冒険者諸氏も、二つの件で礼を言う。まずは討伐完了との報告が届いている」
サラー:「報酬がもらえればそれでいいわよ。色つけといてよね、大変だったんだから」きゃるるん
フロンタ:「……はぁ、そうか……今はそういう調子だったな。報酬だが、額面通りに整った。まったく帝都の奴らを騙すのは骨が折れる」
サラー:「あらあら、いつから腹芸を? 師匠らしくないわね」
フロンタ:「らしくないなどという言葉をお前がいうな。よほどそちらの方が変わり身している」元から眉間に皺の寄った顔をしていますが、いっそう苦い顔をしつつ
GM:なお実際、この人は本来はあまりそういう手段で金をこさえるようなことをしない人です
フロンタ:「それから、徴税に協力をもらったとの報告も来ている。すまないな。手間をかけた」
サラー:じゃ、師匠に太矢をなげとくわよ、ぽいっと
フロンタ:「……まったく、苦労をかけたようだな」
サラー:「その件に関わった農民が所持していた矢と同じものよ。一般人が持つには、随分と危険な代物じゃない?」
フロンタ:「ここから先は、冒険者の関わることではない。つまり、政治の問題だ」
レイラ:「……」むすっと
フロンタ:「冒険者になったなら、冒険者らしく詮索はよしておくことだな」
サラー:「そ。……じゃ、報酬を頂いて失礼するわ。あんまり背負い込むと額が広がりますわよ」
フロンタ:「……」恨めしそうな目
フロンタ:「ああそうだ、ようやく帝都側でフレデリック・ヴェルチの処遇が決まったらしい」
アーク:びくっ!
サラー:ほぅ
レイラ:遅いですね
フロンタ:「私はダインハイト奪還の象徴として、この土地で難民の士気を保つのに貢献して欲しいと希望したのだが……皇帝陛下がうるさくてな」
ノイ:(皇帝が?)
フロンタ:「なんでも、匿名人物の報告によれば、極めて重要な情報を持っている可能性があるそうだ」
カシウス:怪しい
レイラ:怪しいですね
サラー:あー、いや、これはたぶん……*1
フロンタ:そう言うと、サラーの表情を伺います
サラー:小さく肩をすくめて、やれやれってジェスチャーを返しておくかしらね
フロンタ:「近々、フレデリック・ヴェルチを迎えるために帝国商会と合同の大きな隊が来るらしい。その日までは彼の身辺警護にこちらからも補助員を出そう」
フロンタ:「そして往路では物資も運ばれてくる。それが到着すればダインハイトの奪還作戦まで騎士団は忙しくなる。しぜん、君たちの出番もあるだろう。必要があれば追って下知を出す」
サラー:「……」
フロンタ:「伝えることは以上だ。あらためて、冒険者諸氏にも感謝する。くれぐれも、報酬の一部は難民支援にあてるように頼む」
カシウス:「ああ、わかった」
レイラ:「ありがとうございました」
サラー:思ったより、帝国内部はやばい状況みたいね
ノイ:そうなの?
サラー:だってこの人、ハゲてるけど騎士団三大隊長の一人よ。その人の意見が通らず、皇帝の命令で要人を迎えるにも帝国商会が同行するし、一緒に運ぶ荷物も難民支援のものではなく、支援は私たちを通じてこの人が個人的に行ってるだけ
レイラ:たしかに……
サラー:帝国商会と合同でと言えば聞こえはいいけど、いったいどちらが主導してるのかしらね
カシウス:……帝国商会か
アーク:カシウス、知り合いじゃなかったっけ?
カシウス:いや、帝国商会とは仲が悪いんだが、仲良くしてたやつがいてな。あいつ、どうしてるかなぁって
ノイ:女だ、間違いない
レイラ:カシウスさん一体何人たぶらかしてるんですか……
シナリオ終了!
GM:というわけで、第2シーズン第1シナリオ、「アイラット草原は雨模様」シナリオ終了です
カシウス:お疲れ様でしたー
アーク:おつかれさまでしたー
レイラ:雨模様なのは草原じゃなくPCの心情なんですが……
GM:あらレイラさんそこにお気づきとはありがたいですね
ノイ:シナリオ開始時点から予想されていた心の雨降り
第2シーズン第1シナリオ
「アイラット草原は雨模様」シナリオクリア報酬 4260G(うち任意の金額を難民支援へ)
経験点 1580点
名誉点 43点
GM:というわけで、成長処理をお願いします
*1:第1シーズン3ー幕間でのサラーの秘密行動伝書鳩を示唆していた。この時点ではまだプレイヤーたちはこの秘密行動を知らない