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電源・非電源ゲーム全般の紹介・考察ブログ

「その腕買います」をプレイしました【モジュラークトゥルフ収録シナリオ】

先日発売されたモジュラークトゥルフ、皆様もすでにお楽しみのことと思います。かくいう私も早速購入の上、収録シナリオで遊ばせていただきました。

 

今回遊んだのは「その腕買います」。PLはこのブログでは最初のプレイヤーだった「伏原さん」お一人をお招きいたしました。形式はボイスセッション。シナリオ資料通りに進行するなんてことはハナから諦め、どうやって楽しく時間を過ごすのかを考えて様々なシーンを追加しつつ遊びました。

以下、このシナリオを遊ぼうか迷っている方へ向けての参考情報を整理しておきます。

 

 

 

シナリオの概要とプレイ時間

 こちらのシナリオは、奇妙な教団グループに企業買収を仕掛けられた町工場を守るために、交渉カードを集めていると神話的恐怖に直面してしまうというシナリオです。クトゥルフ神話TRPGのシナリオとしてはかなり珍しい動機付けの方法を利用しており、その点だけでもシナリオを作っている方々にとって参考になるシナリオかもしれません。

 さて、上述の通り、随分と遊んで5つくらいの余計なシーンを追加してしまったのですが、それでもプレイ時間は4時間ほど。ボイスセッションでこのくらいということは、テキストセッションなら10時間程度は見た方がいいかもしれません(その場合演出をある程度カットするなどの配慮が必要)。

 

補足:加えられたアレンジについて

 私と伏原さんの場合、伏原さんの例の女性口説きたい病が発動されたことで、まるでギャルゲーかのような展開に修正されました。開幕シーンで慌てて病室に向かう町工場の娘(幼馴染)と病院の廊下でぶつかってしまうシーンに始まり、なぜか挟まれる恋愛専用シーンが3つほどありました。交差点で別れるシーンとか、自分でやっててその勢いに笑いました。

 そんなこんなで初めて伏原さんにTRPGで彼女ができたセッションとなりました。プレイヤー名は「池 面太郎(いけ めんたろう)」とかいうふざけた名前でしたが(苦笑

 

 

シナリオの評価とプレイ時の注意

良い点:ダイスロールを巧みに取り入れた設計

 シナリオは全体として高評価です。まずなによりもソロプレイでも十分遊ぶことができたというのは驚くべきことでしょう(もちろん様々な場面で技能ダイスを省略するなどしましたが)。その最大の特徴として戦闘技能が必須ではないという点は強調に値します。もちろんキーパーによってはそれを取り入れてもいいかもしれませんが、通常クリアする限りにおいて探索者に技能上の制約を課すことはありません。

 また、シナリオ後半に進むにつれてダイスロールの機会が増えるシナリオ設計も魅力的です。ダイスロールが多いとそれだけセッションに緊張感をもたらします。もしも複数人でプレイしていれば、互いの技能を活用しつつ展開する魅力的なセッションになっていたことは想像に難くありません。

 

悪い点:記述に物足りない点がいくつか

 とはいえ、幾つかの点が気になることもありました。

 もっとも気になったのは、無線から得られる情報の内容が「たしかに有効な手段であり数年は企業買収を遅らせることができる」と書いてあるものの、具体的な内容の例が(たとえ正しくなかったとしても)一つも書いていなかったことです。この部分が書いていないことで、後のロールプレイがふわっとしてかっこ悪くなるのを避けたかったので、何となくそれらしい答えを自分で用意する必要が生じてしまいました。

 もう一つは技能失敗への対応が書かれていないことです。とはいえこれは紙幅の都合上仕方ないかなとは思います。またシナリオ自体長いスパンで演出していっても問題のないシナリオなので、前半から中盤にかけては技能に失敗しても時間を取って再調させればいいのかなとは思います。無論そうなるとダレてしまうのも事実なのですが。

 逆に後半で技能失敗したら、死亡演出はキーパーに委ねられることになります。ダイスロールも多いぶん、生命に直結する失敗もいくつかあります。キーパーとプレイヤーの趣味による部分でもありますので、それぞれに緊急対応や死亡演出をアドリブで補いましょう。

 とはいえ、キーパーがどう演出するかが大切なシナリオという、クトゥルフ神話TRPGシナリオ全般に言える特徴を踏襲しているというだけのことです。公式シナリオに慣れているキーパーさんなら遊んでみて損はありません。

 

 

シナリオライターとして参考になる点

 久しぶりに他の人のシナリオで遊びましたが、同じく公開シナリオを書いている身として、非常に勉強になった点を挙げておきます。

 

動機づけの作り方

 企業買収されそうになっている会社を助けるという動機づけは非常に特殊です。もちろん直接には依頼や同情から行動に移ることになるので、「誰かを助けようとして動くシナリオ」という点では変わりありません。とはいえ日常的な動機から始まって次第に神話的恐怖に関わっていく展開には魅力があります。探索者はどこまで無茶するのか選ぶことになるのですから。

 

ダイスロールのバランス

 特にクライマックスにおいて、比較的細かくダイスロールのポイントが指摘されていた点は注目するべきでしょう。そのすべてを克服しなければシナリオをクリアすることはできませんが、3人以上のプレイヤーが協力すればなんとかなるようにうまく按配されている印象でした。

 とりわけダイスロールの実施箇所を明言することで、実際のセッションでの緊張感をコントロールすることができるというのは、私にとっては一つの発見でした。今後はこの技法を使ってセッションの緊張感を演出しやすい資料を書くよう心がけようと思った次第です。

 

解釈自由度

 これはどう言ったシナリオを目標に掲げるかにもよりますが、町工場の社長家族の家族構成や相手型の組織の事情など、多分に解釈の余地を残してくれている印象を持ちました。「あえて書いて指定はしない」ことにより、キーパーがプレイヤーキャラクターに合わせて微妙に解釈を変更できるようにしているとすれば、これは回しやすいシナリオの条件かもしれません。

 

 

まとめ

 「その腕買います」はクトゥルフ神話TRPGのキーパリングに慣れたキーパーさんにとって非常に扱いやすいシナリオです。それと同時に学ぶところも多いシナリオですので、是非とも一読してセッションに臨んでみていただければと思います。

 

 

クトゥルフ神話TRPG モジュラー・クトゥルフ (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

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