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1920年代アーカムでのマスタリングへ向けて(3)

前回の記事

trpg.hatenablog.com

からの続きです。

 

クトゥルフ神話TRPGの、現代日本シナリオを1920年代アーカムを舞台にリライトしてみるシリーズ第三弾。

 

まだプレイしてはいないのですが、なんだか適当に済ませてしまっていたところがあったなぁと反省し、さらにこだわることにしました。

 

どこに?

 

・・・インディアンの設定です。

 

シナリオを改変した結果、「インディアン女性の助けを借りる」というシーンが生まれました。

 

まぁ、インディアンなんて言っても、この時代なら英語名使ってるでしょ。

 

そんな安易な考えで、英語名しか決めていませんでした。しかし、プレイヤーの中にこだわり派プレイヤーがいるために、そんなことでは「設定が甘いっす」とか言われかねないと思ったので、ここでインディアンとしての名前をつけておこうと思いました。

 

すべてはこの発想がいけなかった。

 

 

1.アーカムの地理と登場するべき部族

まず初めに行うべきなのは、アーカム周辺に住んでいた先住民族が何族なのかをたしかめることです。

 

アーカムはマサチューセッツ州ボストンの北32kmの地点にあるという設定の架空都市です。マサチューセッツ州はアメリカの東海岸、NYよりさらに北、五大湖から真東にいったあたりにある海沿いの州です。

 

もっとアーカムの位置をよく探してみましょう。

ルールブックには、「ボストンの北32km、セイラムの北8km」とあります。

セイラムというのは、地図上をボストンから沿岸を北に進んでいけばすぐに発見できる、海沿いの都市。ボストンの北北東といったところ。

ここからさらに8km。いったいモデルとなった街はどこなのか…。

 

と、思っていたところ、セイラムのWikipediaに興味深い記述を発見します。

「セイラム」の名は、17世紀末に起こった魔女狩りセイラム魔女裁判)でも知られる。ただし、事件の舞台となったのは本項のセイラム市(当時の名称は Salem Town)ではなく、約6km北に位置するセイラム村(Salem Village, 現在のダンバース)であった。セイラム村にはセイラム市から3人の判事が派遣され、審理が行われた。このときの判事の一人ジョン・ホーソーンは、ナサニエル・ホーソーンの祖先にあたる。一連の魔女裁判の一部は、セイラム市でも開かれた。

忌まわしい事件の舞台となったセイラム村はのちにダンバースに名を改めたが、セイラム市では童話などに登場する「魔女」のイメージが街のシンボルとして扱われるようになった。

2009年現在、セイラム市では街のいたるところに魔女のマーク(シンボル)が溢れている。

 

セイラム (マサチューセッツ州) - Wikipedia

そしてその最下部には、

と書いてありました。なんだ、結構はっきりしてるじゃないか。

 

つまり、アーカムは、都市の構造はセイラム市を模していて、その雰囲気は魔女裁判が実際に発生した旧セイラム村、現ダンバースを参考にしていたわけです(今度こっちも調べてみましょう)。

 

それにしても、こんな東海岸では、1920年代はおろか、独立戦争(1776〜)以前の段階でインディアンが駆逐されてしまっているのではないかと不安になります。

 

あまり期待せずに、入植前のインディアンの分布地図でも見てみましょうか…

 

 

2.ペンナクック族の土地だった

あー、初めて聞きましたよ、こんな部族。

イロコイ連邦のモホーク、オノンダガとか有名ですし、ナバホ、ショショーニーあたりなら知ってますよ。

 

でも、なんですか、この名前!?マイナー部族にもほどが…いや、落ち着きましょう。

 

ペンナクック族は、かのフィリップ王戦争にも参加した部族です。

フィリップ王戦争とは、ワンパノアグ族が起こした反植民者戦争で、2年間にわたってニューイングランド全域を戦火に巻き込みました。イギリス本国からの増援軍の到着により辛くも勝利しますが、植民市は事実上壊滅し、復興には長い年月を要したそうです。

 

この戦争で敗戦したワンパノアグ族やペンナクック族は、徹底的に攻撃され、その多くは奴隷として売り飛ばされていったそうです。つまり、17世紀末までに事実上部族体制は崩壊しています

 

そうなると、伝承の担い手としてインディアンを使うのは適切ではないように思われます。もう少し長生きした部族がこの辺りにいればよかったのですが…。

 

一応、参考までに、独立戦争まで生存したインディアン部族の代表格が、イロコイ連邦です。英国と同盟して革命軍と戦闘し、敗北後和平を結んでいます。五大湖の東に巨大な領土を有していて、度々フランス勢力と戦争を起こしています。

 

これはペンナクック族の生き残りがイロコイの土地に逃げ、イロコイの元で密かに伝承を語り継いでいた、とかいう展開になるんでしょうか。そして19世紀中に旧来の土地に帰還するペンナクック族を支援するために、インディアン組織が発足…いや、無理がありますね。

インディアンが権利主張を始めるのが20世紀半ば以降だったことを思えば、かつての土地に帰還するインディアンをインディアン自身が支援するという構図が1920年代に実現することを期待するわけにはいきません。

 

とすると、支援施設なんてなしに、「インディアンの伝承の通りに、人々に恐ろしい怪異が襲いかかるかもしれない」と考えた責任感の強いペンナクック族の生き残りが、独力で帰還して様子をうかがっている、ということになります。

 

んー、これもなぁ。

 

とすると、最終的な案は、『インディアンを使わない』ということになってしまいそうです。では、以前の怪異をいったい誰が収集して見せたのでしょうか?やはりブードゥーの仕業にするしかないのでしょうか?

 

謎が謎を呼ぶシナリオライティング。プレイ以前から解けないパズルが目白押しです。

 

引き続き頑張っていきます。

 

 

つづく。