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電源・非電源ゲーム全般の紹介・考察ブログ

1920年代アーカムでのマスタリングへ向けて(2)

前回

trpg.hatenablog.com

からの続き記事です。

 

 

時刻はすでに早朝7時。

 

現代日本シナリオを1920年代アーカムにパワーボンドするという、なんだか倒錯したリライトをしていると、わたしはあることに気がついてしまった。

 

…根本的に、アーカムはこのシナリオの舞台にならないんじゃないか?

 

 1.沼なんてねぇし、大河があるじゃねぇか

お手持ちのアーカムマップをごらんください。エンターブレイン社発行のルールブックの338ページです。

 

真ん中に、川、ありますよね?しかもでかいやつ。

 

この「とおりゃんせ」シナリオ、「舞台となる土地で水不足が生じて、そのとき泉ができて救われた」的な話が織り込まれています。

 

いや、この規模の川は…いくらなんでも、枯れないでしょ?

 

そうなると、泉とか沼とか、そういう奴を全部取っ払わないといけません(なお、干拓技術自体はかなり早期に開発されているため、「大きな沼や泉がなくなっている」という設定も可能ではある)。

…それってもう別シナリオなんじゃないの?とも思いましたが、このシナリオの製作者であるO-kuma様、神がかっております。シナリオの末尾に「改変例」として、いくつかのアイディアを書いておいてくださっているのです!!

 

これに頼るっきゃねぇよ!あんさん最高やで!

 

徹夜明けのテンションでわけのわからない独り言を口走りつつ、改変アイディア2、原因となっている邪神を変更するアイディアを採用します。

 

これなら、水とか関わらんで済むじゃないですか!ようし、一気に書き換えちゃうぞ!

 

…と、意気込んでいたのもつかの間。次の問題に直面します。

 

 

2.これ、キャンペーンだったっけ?

ひとつのシナリオでは満足いかないだろう、という理由で始めた二つ目のシナリオの改変作業。「アーカムに落とし込めばいい」とばかり考えていましたが、目指すべき点はもう一つありました。そう、連作で楽しんだからこそ面白い、キャンペーンとしての魅力を引き出すことです。

 

私がマスタリングできるシナリオは、「悪霊の家」と「死者のストンプ」、「もっと食べたい」、「奇妙な共闘」、「毒入りスープ」、そしてこの「とおりゃんせ」の6つです。このうち、1920年代シナリオは「悪霊の家」と「死者のストンプ」だけです。他はすべて、現代日本シナリオといっていいでしょう(「毒入りスープ」はオールラウンダーですが)。

 

それぞれで登場する邪神は、もちろん違います。

ツァトゥグァが2回登場する点で健闘してはいますが、他のシナリオでは邪神が全く関わっていない場合もあります。素人目なのでわかりませんが、こうも違っていると、キャンペーンになんてできそうにありません。

 

………………………

目についたシナリオに飛び込んで、「こいつ、改変できるぞ!」と意気込み、やってみたはいいのですが、すぐに行き詰まってしまった私。

素人GMであることを見切られて、「まだうまく改変できんようです!やります!」と、シナリオの個性が襲いかかってきます。

「何か接点はないのか!」

私が慌ててC(クトゥルフ)作戦の資料のページをめくると、ひとつのキーワードが目に飛び込んできた。

「これか!」

 

食屍鬼。グール。

 

「見える!僕にも接点が見える!…そこかっ!」

………………………

 

睡眠不足からくるニュータイプ妄想が、末期症状に達した頃、キャンペーンとしての縦の線が、非常に些細なクリーチャーによって作られることになりました。

 

 

3.そして今日の本題:アーカムの地下開発

いや、まぁグールはいいんですよ。「死者のストンプ」にだって絡められそうな気がするし、「奇妙な共闘」なんてそのものだし、「奇妙な共闘」と「もっと食べたい」は邪神の面で結構絡めやすいし、「とおりゃんせ」も邪神を変更したおかげでかなり絡めやすくなったし。

 

でも、こいつらって地下に住んでるじゃないですか。

1920年代アメリカの地下開発事情なんて、私が知っているわけがないじゃないですか。

 

というわけで、調べましょう。調べないと始まりません。

ええと、アーカムはマサチューセッツ州の街でしたね。マサチューセッツ州最大の都市といえば、ボストンです。実は、ボストンで地下鉄が走り始めたのは、NY地下鉄よりも3年早い1901年のことです(参考:マサチューセッツ湾交通局 - Wikipedia)。高架鉄道が都市の中心部では地下を走るという形式だったようですが、一応地下鉄ですね。

 

しかし、アーカムはボストンの北32kmの地点にある街です。

新宿の北32kmあたりの街を調べてみると、さいたまは通り越して春日部あたりです。ちなみに西に32kmで八王子あたりになるようです。

 

…遠い。

 

州で最大の都市で20年前に導入された地下鉄が、この地域まで普及するでしょうか?

さすがにまだ無理でしょう。

 

となると、地下鉄を使った演出は不可能と判断するべきでしょう。次です。

 

地下開発はどの程度行われていたのでしょうか?

地下街の開発は?下水道の整備は?電線の地下配線は?

 

地下街からいきましょう。

都市計画として地下街を巧みに利用し始めたのは、世界恐慌後のNY、1930年代のことだったようです(参考:ニューヨークの歴史(20世紀):世界の首都へ)。つまり、マサチューセッツ州の郊外住宅地であるアーカムに、地下街開発など起こりえません。

つまり、地下街の開発の結果、グールと関わることになる方針も不可能です。

 

下水道はどうでしょうか?

アメリカに下水道網が整備され始めたのは19世紀の半ば以降で、すでに活性泥による浄化システムも開発されていたようです(参考:下水道の歴史)。しかし、アメリカでは1920年代以降、下水を川に垂れ流しにするという事態が発生し始め、産業排水などを原因とするヘドロ公害問題が発生していくようでもあります。

新技術である活性泥浄化システムの導入、排水垂れ流しの回避、いずれにしても下水道網を再整備する時期として、1920年代は使いやすい時期のようです(なお、水道網の公営化によって、急速に水道普及率が上昇した時期でもあるようです)。

 

最後に送電線について確認してみましょう。

英語資料では、地下に埋めるのが当然と思っているのか、1920年代の送電線の敷設形式に関する記述が見当たりません。とはいえ、この時代に急速な電化が進んだのは間違いないので、「送電線の敷設工事のために新規開発中の住宅街付近の道路脇を軽く掘り返す」というようなイベントが起きても、特に違和感はないでしょう。…保証はし兼ねますが。

 

つまり、地下に生活する食屍鬼を出そうとするなら、下水道がベターということになりますね。

 

 

ふぅ。

これでキャンペーン全体の細かい設定がつかめてきました。なんとかなりそうです。

 

ここから先に行ったシナリオ調整については、実際にプレイし終わってから書くことにしようと思います。

 

 

(3)につづく