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【クトゥルフ神話TRPGシナリオ】アンドロイドは名状しがたき夢を見るか(改訂版)2/6

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探索者たちは行方不明になった知人の捜索をするうちに一つの研究室にたどり着く。その研究室では、他の研究室と共同で、高機能のアンドロイドを生み出すことに成功していた。しかし、そのアンドロイドの動作がおかしいようだとも耳にする。いったいこの研究室で何が起こっているのだろうか? そして奇妙なアンドロイド、ミーミルとは、いったい『何』なのだろうか?

このパートでは、前半の探索で登場する各所での情報を中心に整理している。

補助的な探索箇所

 オープニング後に探索者たちが訪問しうる主要な探索場所についても以下に整理しておいた。

警察署

 失踪事件と聞いて警察に相談した場合、警察が把握している失踪事件で明らかに数が増えているのは大岡山付近だと説明される(ミ=ゴによる大学周辺での誘拐による)。そのほかの教団信者の失踪についても把握しているものの、宗教団体への捜査は難しいという事情もあって、公安の管轄になっていると説明される。そのうえで、失踪事件なんてものに首を突っ込むなと注意される。
 現在大岡山付近での失踪事件の調査を担当しているのは俣木涼子だ。彼女は警視庁に勤めているため、厳密には警視庁に行かなければ会うことはできない。しかし大岡山を含む大田区内で証拠品を当たっていたり、大岡山以外の失踪者についても事件性を調べているなどして偶然に遭遇する可能性がある(〈幸運〉で判定のこと)。

俣木涼子に対して〈信用〉に成功

主に彼女が調査している失踪事件では、失踪というより拉致ないし誘拐という表現が正しく、被害者は身辺整理をすることなく忽然と姿を消してしまっていると説明してくれる。教団信者の失踪とは状況が異なるため、何か別の失踪事件が同時に東京で発生していると考えた方が良さそうだ。

新聞社

 新聞社や週刊誌出版社を訪問した場合、この失踪事件を取材している人物がいるかもしれない(〈幸運〉で判定のこと)。存在していれば、これまでに発生した失踪事件のまとまった情報を持っている。警察同様、大学付近で頻繁に発生していることを説明する。この件について大学側は悪評を消そうとしていると主張し、警視庁はこれに対抗して敏腕の女性刑事を担当にしていると教えてくれる。
 しかし有用な情報はその程度で、あとは失踪者の一人の素性が読者にうけるような興味深いもので、それをことさらに語ってみせる。話として面白い語り口で聞くことはできるが、そうした情報が問題の解決に寄与することはなさそうだ。

インターネットでの調査

 現代人らしくインターネットでこの事件を調べると、新聞社の報道に行き当たる。それは小さな記事で、事実関係以上のことは記されていない。失踪事件は個別の事件としてひっそりと報道されており、現時点では、それらの失踪事件を「連続」失踪事件としては扱っていないようである。これまでに失踪した人は性別・年齢層・職業などを並べてみても、特に規則性は感じられない。

図書館など

 図書館には西田の著作と無名祭祀書・Blood of Hartsを除くすべての著作が収蔵されている。特に国会図書館を利用した場合は、西田の個人出版した宗教書も確認できる。ただし、探索者たちはどの分野の棚を調査するのかを宣言したうえで〈図書館〉による判定をおこなわなければならない(1時間が必要)。検索機を利用するなどと宣言された場合でも、検索ワードを宣言させ、同様に1時間の調査時間と〈図書館〉による判定を必要とする。

テーマを宣言して〈図書館〉で判定

 テーマに応じて以下の書籍を手に入れる。このとき書籍の大まかな内容(読めば何がわかるか、どのような効果が得られるか)も把握しているものとする。

獲得可能な書籍タイトル 陳列されている棚 注記・効果
「怪異!中央アジアに異人種の影!」 オカルト・超常現象
「夢に現れるゾウ」 大衆小説男性作家 幸運ロールが必要
「憎しみを力にかえる本」 宗教書 西田の著作。国会図書館のみ
「中央アジア山岳地帯の土着信仰」 文化人類学・中央アジア 西田による翻訳
「図説ロボティクスの最先端」 一般向け科学書・ロボティクス 工学関係を〈知識〉の半分で判定可能に
「ロボティクス入門」 科学専門書・ロボティクス 工学関係を〈知識〉の半分で判定可能に
「人工知能の基礎」 科学専門書・コンピュータ 人工知能関係を〈知識〉の半分で判定可能に

 表中で上3つの書籍は読むのに2時間程度しか要さない。内容の把握や整理にも技能判定は求められず、宣言と時間経過によって直ちに情報を得ることができる。
 表中で下4つに並べられた専門書は、読んで理解するために知識の半分か対応する専門知識技能で判定する必要がある。この判定に成功し、さらに8時間の読書時間を消費することで、その内容を把握することができる。特に下3つの工学系の専門書では、今回のセッションの間に限定して、その分野の知識について〈知識〉の半分で判定できるようになる。これは研究室に潜入する際に研究者や記者などと身分を偽ったり、交渉を有利に進めたいプレイヤーのための補助的なアイテムと考えてよい。
 「中央アジア山岳地帯の土着信仰」については、『血の結社』の本部に西田による注釈が書き込まれたものがある。図書館で手に入れて〈人類学〉などで判定して長時間かけて読み解くこともあるが、より一般には、西田の注釈が書き込まれたものを手に入れて、短時間で内容を把握することになるだろう。

カルティスト 猪瀬奈々

 連絡を取ったり新宿の雑居ビルにあるという教団本部に赴けば、猪瀬奈々という女性と会って話すことができる。
 少し痩せすぎてはいるが、気が狂っているような印象を受けることはない。身長は160cm 程度で、肩までの黒髪を内巻きにして、大きな瞳からは可愛らしい印象すら受ける。服装も清潔感のある服装を着ている(季節によるが、例えば春先なら白のブラウスに淡いピンクのカーディガン、それに黒の膝丈フレ アスカート、細めのベルトにリボン柄のバックルがついてアクセントになっているという具合だ)。年齢は20代の半ばという印象を受ける。
 もちろん、彼女も実際には狂信者である。他の信者がするように神と合一(心臓の血液の儀式を)せずに、布教に重きを置いている。西田志垣に心酔しており、現在彼と連絡が取れない状態にあることで動揺している。
 さて、彼女とどのような理由をつけて面談するにせよ、彼女は信仰への参加を求める。いくらか会話をしたところで、次の判定を実施する。

猪瀬奈々に対しシークレット〈心理学〉

 成否にかかわらず、猪瀬奈々が何か不安を抱えており、特に西田について話したがっていないと気づく。

 特に成功した場合、西田が死んだか連絡が取れない状態にあることが彼女の不安の原因ではないかと推測できる。

 彼女は教祖である西田志垣が失踪したことを知っており、集会を行うことができない現状に焦りを感じている。それゆえ積極的に勧誘するものの、どこか最後の一押しが弱いという印象を受ける。この交渉術上の失敗については、〈説得〉判定に成功することでも看破できる。

猪瀬奈々に対し〈信用〉〈説得〉〈言いくるめ〉

 現在、教祖である西田志垣が突然行方不明になっており、信者たちの間で動揺が広がっている。西田志垣の見よう見まねで儀式を行っているものの効果が出ず、幹部たちの間でも西田の蔵書の研究や行方の捜索を始めている。

 ここで西田の蔵書の調査を申し出た場合、〈信用〉の半分で判定する。成功すれば、西田の蔵書の調査に同行することができる。失敗した場合「血の結社」の本部に忍び込むという方法以外に調査継続の手段がなくなることに気づくはずだ。


「血の結社」日本支部

 「血の結社」日本支部は、新宿の北の外れにある雑居ビル外の只中にある3階建ての小さなビルだ。猪瀬とともに訪れた場合、はじめ集会の部屋に通される。そこでしばらく儀式的懇談会の様子を説明される。その集会には何の魔術的な効果はなく、そのことは〈オカルト〉か〈クトゥルフ神話〉の技能判定に成功することで確信できる。

事務所通過時に〈目星〉を実施

 1階の事務スペースを通る際、鍵がかけられた板が目に見える位置にある。判定に成功した場合、この建物が地上3階・ 地下1階の構成をしていることがわかる。そのことを尋ねた場合、全員が「地下は物置などに使っている」と返答する。ただし猪瀬のみこの発言に対して〈心理学〉をシークレットで処理し、判定に成功すれば、地下のことは知られたくないと考えていることがわかる。

蔵書の調査に同行できた場合

 その後、もしも資料調査への同行についての信用ロールに成功していれば、3階の資料室に通してもらえる。資料室といっても、そこには背丈ほどの本棚が三つ並んでいるだけだ。西田の個人的な蔵書が収められており、事件を紐解く鍵になる書籍を発見できる可能性がある。

教団支部の本棚で〈図書館〉

 以下の本を全て同時に手に入れることができる。

怪異!中央アジアに異人種の影!
夢に現れるゾウ
中央アジア山岳地帯の土着信仰

怪異!中央アジアに異人種の影!

 この書籍を読むには2時間程度が必要である。この書籍はいわゆるオカルト本に属しており、中央アジアに人間によく似た人間ではない種族が生息していることを報告している。
 教団支部で手に入れた書籍では、特に西田による書き込みがある種族を発見する。その種族はチョー=チョー人と表記されており、チベットの山岳地帯で独自の信仰に基づいて生活しているらしい。「この集団は人類に伝わっていない秘術を伝承しており、彼らが何を目論んでいるのかは誰にもわからない」という風に、煽り口調で書かれている。
 この項目の脇には、西田によると思われる手書きのメモで、「守り手?」と書 かれており、西田がこの種族になんらかの意味で注目していたことがわかる。
 この本を読んだプレイヤーは、オカルト技能に+2%する。

夢に現れるゾウ

 この小説を読むのには2時間程度を要する。宗教教義とも密接に関わるアイデアである「夢の象」が、インドの神話ガネーシャを基にしていることがわかる。日本国内でも「夢をかなえるゾウ」(水野敬也 著) という書籍で有名になった神である。この書籍はどうやら「夢をかなえるゾウ」をオマージュして書かれたパロディ本だ。いつまでたっても夢の中から 現実の世界に現れてくれないゾウの言葉に従って生きているうちに、不幸のどん底に落ちていき、結果的に主人公は失踪していなくなってしまう、という物語である。
 登場するゾウもガネーシャとはやや異なり、ツァグナと呼ばれている。 ここでプレイヤーが確認を宣言するか〈アイデア〉に成功すれば、この書籍の出版年を確認できる。この書籍は1988年の出版であり、明らかに「夢をかなえるゾウ」(2007)よりも先に出版されていることがわかる。しかし、この一冊も初版本であることからわかるように、全くと言っていいほど売れておらず、Amazonなどでも存在を確認することができない。
 この書籍には各所に西田のメモがある。そのうち特に気になったものを整理すると、以下のことがわかる。まず西田は「夢に現れるゾウ」が実在する存在で、彼が言う「ツァグナ・ヴァウン」だと確信している様子だということ。第二には、この「ツァグナ・ヴァウンの夢」は、それを見る人間を破滅に導くという点に強い興味を抱いているということ。そしてこの夢を思いのままに操作する手段がないかという関心を抱いていることの三点だ。
 この本を読んだキャラクターは、オカルト技能に+2%する。

中央アジア山岳地帯の土着信仰

 この本を読むには本来8時間程度が必要だが、西田のメモが書かれているところだけを拾い読みするならば、3時間で済ませられる。
 イギリスの人類学者ブラウン・ファーディナンドによる著作の翻訳で、訳者は西田その人である。訳者紹介によると、宗教家になる前の西田は中央アジア地域研究で名の知れた若手であり、出版社から本書を翻訳する仕事を依頼され、出版までたどりついたようだ。この翻訳版書籍の出版年は2012年で、彼が宗教活動を開始する直前に出版されたことがわかる(英語版は1976年)。
 書籍の中には西田のメモがあり、メモの書かれた部分を拾い読みしていくだけで、以下の情報を把握することができる。まず中央アジア山岳地帯の奇妙な部族の間に、ガネーシャによく似たゾウのような神「Чаэгер · фон(ツァグナ・ファウン)」を崇める信仰が存在すること。この信仰に伝わる祭器のひとつ「ツァンの剣」が行方不明になっているということ(図説付きで、 それが象牙のナイフのようなものだとわかる)。そしてその紛失という言葉が何重にも○で囲まれており、線で繋いだ先に「ここにあるぞ!」と力強く書かれている。

不法に侵入する場合

 不法に侵入する場合、侵入から短時間で警備員が駆けつける。それまでに調べられることは少ないが、複数人ならある程度の情報を集めることができるはずだ。この場合、鍵棚を調べればすぐに地下が存在することがわかる。活動可能な時間はキーパーの裁量で測定する必要があるが、資料室で〈図書館〉判定をして気になる書籍を選ぶ場合、時間すべてを消費して「夢に現れるゾウ」を発見できる。その他の方法で探索する場合は、キーパーの裁量で与える情報を決めて良い。
 また、一定時間後に警備員が駆けつけるのだが、それに前後してミ=ゴが現れるというのも洒落た演出だ。警備員がミ=ゴの催眠術(ルールブックp287) にかかって操作されているのも面白い。ミ=ゴは西田の脳を利用したことで発生したイレギュラーの原因を探るために、西田の拠点を調査しに訪れている。このイベントを処理した場合、支部の帰りに発生するミ=ゴ襲撃イベントは省略される。