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【クトゥルフ神話TRPGシナリオ】アンドロイドは名状しがたき夢を見るか(改訂版)3/6

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探索者たちは行方不明になった知人の捜索をするうちに一つの研究室にたどり着く。その研究室では、他の研究室と共同で、高機能のアンドロイドを生み出すことに成功していた。しかし、そのアンドロイドの動作がおかしいようだとも耳にする。いったいこの研究室で何が起こっているのだろうか? そして奇妙なアンドロイド、ミーミルとは、いったい『何』なのだろうか?

このパートでは探索の折り返し地点になる重要な情報が掲載されている。

「血の結社」 地下


 「血の結社」の地下に降りると、扉が二つだけある小さな廊下に出る。一方の扉はボイラーとポンプ室だ。他方の扉には、見覚えのある奇妙な記号があしらわれている。その記号は失踪したカルティストの部屋で見たものと同じもので、やはり強烈な視線を感じる。扉に向かって〈聞き耳〉をすると、何かざわついた拍動音のようなものが聞こえる。

心臓の血液の儀式跡

 扉の向こうは照明がついていない暗い部屋だ。部屋に入ってすぐに、その部屋全体から心臓の鼓動のような音が複数聞こえることに気づく。音の聞こえる壁際の方を照らすと、そこ に人間の心臓と思われる臓器が15個ほど、むき出しの状態で置いてある。そのうち5個ほどがなおも拍動しているのを目にすることになる。

地下儀式場の描写例

 開いた扉から差し込んだ光は、象に似た頭部を持つ、太った熊のような石像に差し込んだ。子供くらいはあるその石像の前には、蓮の花のように平たく開いた燭台が並んでいる。えも言われぬ血生臭さに緊張を増した鼓動だったが、探索者はすぐに違和感を覚える。いつの間にか噛み締めていた奥歯の力を緩め、胸のあたりを触る。探索者の頭を包むように唸っているのは、自らの拍動音だけではなかった。複数の鼓動が恐る恐る踏み出した探索者の左右に存在していた。右の壁に光を差し向けたとき、そこには赤い拳大の肉塊が脈打っていた。それも一つではない。生きたままの心臓がむき出しのまま棚に並べられていたのである。

正気度判定

むき出しで脈打つ心臓 1/1D6

 さらに部屋の中央には赤黒いシミが残っている。〈アイデア〉に成功すれば、それが致死量を超える血痕であることがわかり、おそらくはここで15人の心臓が切り出され、どういうわけかその心臓の一部が動き続けていると推測できる。

魔道書の発見

 この部屋には『Blood of Harts』と題された英語の書籍が置かれている。手にとって軽く目を通すだけで、ここで執り行われていた儀式に関する情報だとわかる。

Blood of Harts

 この内容を理解するためには〈英語〉技能に成功し、8時間を費やす必要がある。
 『ツァンの清められた刀身』という道具で心臓を切り出すことで、生きたままの心臓を切り出すことができる。また、その心臓には人間の“本質 essence”が残されており、特定の魔法陣を描いて心臓をその中央に置き、呪文を唱えることで、正気度と引き換えにその心臓に宿っている“本質 essence”を吸収することができるとわかる。ここでいうessenceとは、ゲーム的にはPOWのことであり、すでに停止している心臓が10あることから、何者か(おそらくは西田)が10人分のPOWを吸収していると推測できる。
 また、「ツァンの清められた刀身」で貫かれた者は、その生命の“本質 essence” を完全に失うとも書かれている。もしも取り出した部位を刺されれば、そこに宿っていた“本質 essence”は完全に失われる。
 この本を読み、以上の情報を理解した探索者は〈クトゥルフ神話〉技能に+3%して、1/1D3の正気度判定を行う。

 なお、心臓の血液の儀式を習得するためには、この書籍に対する24週間の研究が必要である。研究を通じて1D6の正気度を失うことになる。習得後であれば、ツァンの清められた刀身があれば、必要時間1時間で、1D6の正気度を消費して、 心臓からPOWを移動させることができる。

正気度判定

Blood of Hartsを読む 1/1D3
Blood of Hartsの研究 1D6の減少

「血の結社」日本支部調査後のイベント

  西田の消息が掴めずじまいに終わった探索者たちのもとに、珍客が現れる。

ミ=ゴの襲撃

 「血の結社」を調査した帰り道、新宿駅へと向かう路地に差し掛かったとき、〈アイデア〉による判定を実施する。成功すればどういうわけか人影がまったくないことに気づき、警戒態勢をとることができる。これに失敗したとしても、〈幸運〉に成功するか〈聞き耳〉に成功すれば、敵の先制攻撃を回避することができる。特に〈聞き耳〉に成功すると、羽音のような低い音がブーンと唸るのを聞く。それは明らかに昆虫のサイズをはるかに凌ぐ存在によって発されている音であるとわかる。
ミ=ゴは、背丈1.5m程度のピンク色をした甲殻をもつ飛行生物だ。胴体には体躯に比べて大きな背びれのような膜の張った器官が二つついており、それを激しく動かしているあたり、翼と考えられる。その翼には関節肢とおぼしき節がいくつかついているが、決してそれが前足というわけではなく、それとは別に節が複数ついた腕らしき器官が前方に伸びていて、その先にはエビのハサミのような器官がついている。そのハサミの中には複雑な文様がついたドアノブのような金属塊を器用に携えている。なお、普通なら頭のあるはずの位置には短い触手に覆われた渦巻き状の楕円体がついているだけだ。

正気度判定

ミ=ゴの目撃 0/1D6

 この路地では前後から1匹ずつ、合計2匹のミ=ゴが現れる。バイオ装甲を身にまとっているほか電気銃を持っており、戦闘には危険が伴う。どちらか一方を怯ませて、走って逃走するのが最善の判断だ。

血の結社日本支部の焼失

 ここで2体ともを撃破しなかった場合、翌日には「血の結社」日本支部が全焼し、中から若干名の焼死体が発見されたというニュースが舞い込むことになる。
 このニュースは、敵が「血の結社」だけではないことを印象付けるために是非とも必要なイベントだ。もしも猪瀬奈々と連絡先を交換していれば、この事件をきっかけに彼女のほうから連絡が寄せられる。なぜか夜間に支部を訪れていた幹部3人が焼死したほか、信者たちの名簿も焼失してしまったと報告を聞くことができる。そのうえで、探索者たちが事件に関わっていないか、もし何かこの事件に関わることがあるなら教えて欲しいと尋ねてくる。

 ここで探索者たちがミ=ゴのことを話すと、西田の自宅が攻撃される前に調査を行っておかなければならないと猪瀬は焦りを見せる。猪瀬は時間がないから手伝って欲しいと探索者たちに要求し、西田の住所を教えてくれる。東京の南西、目黒区の自由が丘駅で猪瀬と待ち合わせることになるだろう。
 ミ=ゴのことを猪瀬に伝えなかった場合、一応の礼を述べた後、電話は切られる。このあと、猪瀬は単独で西田の自宅へ調査に訪れ、その帰りにミ=ゴの襲撃を受けて命を落とすことになる。さらに翌日には西田の自宅で火災が発生し、宗教結社を狙った宗派対立抗争かなどという憶測が飛び交い始める。

西田の自宅

 自由が丘駅から北にしばらく進んだ先に、レンガのような外装をもった二階建ての洒落た家があり、それが西田の自宅である。猪瀬はそれが当たり前のことであるかのように、門を抜けて裏手に回ると、窓ガラスにガムテープを貼り始める。もしも探索者たちが〈鍵開け〉の技能を持っていて、それによって玄関 を抜けることができる旨言わない限り、彼女はまったく周囲を顧みることなく窓ガラスを割って、鍵を開けて侵入する。
 室内は落ち着いたトーンの家具で整えられており、非常に洗練されたセンスが伺える。あまり家財は多くないが、初めの失踪者と明らかに異なり、何一つ箱にしまわれておらず、すべていつでも使える状態で棚に置かれている。非常に綺麗に整理されているため、探索者たちが侵入したリビングに変わったものがないことがわかる。
 西田の自宅にあるもので今回の調査に関わってくるのは、彼の書斎に残された日記帳(3冊)と、チャウグナー・フォーンをかたどったと見られる石像、そして「ツァンの清められた刀身」である。もちろん、書斎の扉には例の記号が刻まれており、探索者たちは強烈な視線を感じることになる。

西田志垣の日記1:中央アジア調査旅行記

 一冊目は中央アジアへの調査旅行記である。西田は東京大学大学院人文社会系研究科アジア文化分野博士課程に在籍していた過去を持つインテリだ。彼は文献調査だけにとどまらず、現地調査に赴いて文献収集とインタビュー調査を行ったらしい。
 この日記を読むには2時間が必要である。すでにチョー=チョー人について知識がある場合、この日記を流し読み(15分)しただけでも以下のことがわかる。
 まず、西田は調査滞在のためにチベットやネパール、ブータン、インドなどに滞在し、その間にチョー=チョー人と呼ばれる奇妙な種族に遭遇している。それどころか、チョー=チョー人からその秘術を聞き出すことに成功し、ツァグナ・ヴァウンとそれにまつわる伝承の多くを記録するに至っている。その内容は以下の通りだ。
 まず「ツァンの清められた刀身」と呼ばれる刀を用いて、人の心臓からエネルギーを吸い出す手法に関わるもので、これは日本語で「心臓の血液」の儀式として記録されている。また、ツァグナ・ヴァウンを復活させ招来するための儀式が存在することも書き記されている。しかしその手法については教えてもらえなかったと書かれている。これに関わる付記として、「白い侍者」が自ずと術を理解して神を復活させるだろうという伝承に言及されている。この日記を読んだ者は〈オカルト〉技能に+2%する。
 さらに、このシナリオで二度も登場した謎の記号についての記述を見つけることができる。それは記した人間の魔力を使って、 その記号が存在するところに現れた人間の存在を看取できるものだ。彼自身もチョー=チョー人によってこの術を教えてもらい、実際に使用できるようになったと記されている。

西田志垣の日記2:翻訳者時代の記録

 この書籍は流し読みしても詳しい情報はわからない。やはり2時間をかけて読む必要がある。 日記の二冊目の前半は、帰国後の研究と先の洋書(Indigenous Beliefs of Mountainous Regions in Central Asia)の翻訳作業を行っていた時期の日記である。
 帰国後、様々な資料を収集した西田志垣は、「チョー=チョー人が語るツァグナ・ヴァウンという神が実在する」という仮説へと突き進んでいく。インド神話に伝わるガネーシャを中心に研究を行いながら、この象神とよく似通った存在が世界各地で夢と関わる存在として頻繁に登場することを見出す。ほとんど伝播の経路も、他の地域の独自の神話との連続性も不明な象神の登場は、そうした存在の実在性を主張する傍証となっている。
 翻訳作業を終えた西田志垣は再び中央アジアへ渡航し、チョー=チョー人との接触を試みた。この時までに西田は『Blood of Harts』を手に入れており、チョー=チョー人の儀礼にもかなり通じていた。さらにはかなり精神も狂人めいてきていることが文面から感じられる。
 再びチョー=チョー人に接触した西田は、ついにチョー=チョー人らに認められ、ツァグナ・ヴァウンの復活と招来の儀礼を教えてもらうことに成功する。それは彼がすでに狂人になり、ツァグナ・ヴァウンの招来のために死力を尽くす狂信者になってしまったことを意味していた。
 しかし、まだ彼にはあるものが足りなかった。それはチョー=チョー人からも失われてしまった「ツァンの清められた刀身」と呼ばれる道具である。帰国後、西田志垣はツァンの清められた刀身に関する情報を収集していたことが日記からわかる。
 この日記を読んだ者は、〈オカルト〉技能に+2%、〈クトゥルフ神話〉技能に+1% し、0/1D3の正気度判定チェックを行う。なお、この日記を24週間かけて詳細に研究すれば、1D6の正気度消失を代償に「チャウグナー・フォーンの招来」の呪文を習得することができる。

西田志垣の日記3:現在の日記

この日記も2時間かけて読み通す必要がある。冒頭10月18日の日記に「『ツァンの清められた刀身』を謎の黒人から譲り受けた」という記述がある。彼はこの日に金庫を買って、彼の書斎のデスクの下に置いてこの祭器を保管することにした。これをきっかけに彼は宗教結社での心臓の血液の儀式を開始する。ツァグナ・ヴァウンの招来を実行するためには強靭な精神力が求められるからだ。
 しかし、彼は伝承にある「白い侍者」という言葉に疑問を抱く。彼はツァグナ・ヴァウンとの接触の儀式を行い、夢でその神格と接触する。その夢は以下のように記録されている。
 「大岡山のあたりで、夜、一人で歩いていると、唐突に全身を電撃が貫く。その痺れに意識を失わんばかりになるが、私はそれを耐えきることができる。すると、よく身動きが取れない私の前に、人間の子供くらいの大きさの奇妙な羽虫が現れ、私を連れ去っていく。大学の研究室に運ばれ、一度そこで私の意識は途絶えてしまう。次に目が覚めたとき、自分が機械の体を持った「白い侍者」になることができる。どうやらそこで、私は新しい名前を得るらしい。「ミーミル」と」
 記述を見る限り、当人もなんのことなのかわかっていないようだ。それでもその日の夜、予言通りの行動をとってみると日記に書き記し、日記は途絶えている。
 この日記を読んだ者は、〈オカルト〉技能に+1%、〈クトゥルフ神話〉技能に+2%する。また、0/1D3の正気度判定が必要になる。なお、この日記を24週間かけて研究すれば、1D6の正気度喪失代償に「チャウグナー・フォー ンとの接触」の呪文を習得することができる。

西田の自宅の焼失

 西田の自宅は「血の結社」が焼け落ちた翌日の夜にはミ=ゴに襲撃され全焼する。もし同タイミングで潜入していた場合、先のミ=ゴの襲撃を生存したミ=ゴ(最低1体)と遭遇戦になる。察知などの処理は先の路地での展開を参考にすること。なお、ここで全焼するまでに情報収集に失敗した場合、西田の自宅の周辺で俣木涼子と出会うことで救済措置とする。

俣木涼子の登場

 警視庁の俣木涼子刑事は相次ぐ失踪事件の捜査を担当している。俣木が自ら現れる展開は二通りある。まず「血の結社」および西田の自宅の両方が焼失した際に、その両方から各種の書籍類を回収できていない場合、血の結社の焼け跡あるいは大岡山で接触される。もう一つは探索者が1人か2人で戦闘系の技能を習得しておらず最後のミ=ゴとの戦いに生き残る見込みがなさそうなとき、探索者が佐伯ラボか丸山ラボを訪れた際、身分を偽って取材に訪れている。
 もちろん、俣木は警視庁や警察関係施設で事前に出会っている可能性がある(資料2/6、補助的な探索箇所内、警察署の節を参照)。その場合はたとえ俣木が身分を偽っていても、探索者たちにはすぐ彼女が刑事だとわかる。彼女に話を合わせるかは探索者たちの自由だ。
 俣木は彼女なりの調査によって情報を掴んでいる。探索者たちが物語の展開についていけない程度の情報しか得ていない場合には、彼女を利用して状況を整理しよう。

俣木涼子の情報

 最近この周辺で行方不明者が6名ほど発生しており、その中には西田志垣も含まれている。西田志垣の宗教組織もかなり怪しく行方不明者を出していたため警察がマークし続けていたが、西田が突然消えてしまったために警察も困惑している。その前触れのなさから、大学周辺の行方不明事件と関わっているのではないかと考えている。
 こうした状況下で宗教関連施設への連続放火事件が発生した。このことから西田に敵対するなんらかの組織が存在すると考えられる。別の行方不明者三人の足跡が大学への訪問を最後に途絶えていることから、西田に敵対する組織がこの近辺にいるのではないかと考えている。

 つまり俣木涼子はお助けキャラクターである。彼女は取材などと理由を繕って佐伯ラボ・丸山ラボに潜入する手助けもしてくれる。彼女は事件が相次いでいることから調査を急ごうとする。彼女の提案を断った場合、彼女は単独で丸山ラボへ向かい、脳だけの綺麗な姿になってしまうだろう。彼女を生かすためには、やや早急ながらともに丸山ラボへ突入する必要がある。