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【クトゥルフ神話TRPGシナリオ】アンドロイドは名状しがたき夢を見るか(改訂版)5/6

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探索者たちは行方不明になった知人の捜索をするうちに一つの研究室にたどり着く。その研究室では、他の研究室と共同で、高機能のアンドロイドを生み出すことに成功していた。しかし、そのアンドロイドの動作がおかしいようだとも耳にする。いったいこの研究室で何が起こっているのだろうか? そして奇妙なアンドロイド、ミーミルとは、いったい『何』なのだろうか?

このパートではクライマックスの処理が記載されている。

TFEU ミーミルベース

 ミーミルベースへの侵入手段は、丸山を組み伏せて無理やり押し通るか、夜間に不正侵入するかのどちらかになるだろう。いずれにしても、ミーミルベ ースの扉には鍵がかけられており、その鍵は丸山が肌身離さず持ち歩いている。夜間の突入ならば〈鍵開け〉を行うか扉を破壊することになる。

ミ=ゴとの最終決戦

 ミーミルベースのうち入り口に近い部分は通常のサーバーコンピュータが本棚のように並べられている。部屋には強い冷房がかけられており、コンピュータの発熱に対して空冷の役割を果たしていることがすぐにわかる。通常のサーバーコンピュータの列を抜けると、そこに1匹目のミ=ゴがいる。戦闘を予想していなかったミ=ゴはバイオ装甲すら身につけておらず、ハサミによる攻撃しか行うことはできない。
 このミ=ゴを駆除すると、奥から2匹のミ=ゴが登場する(これまでのミ=ゴ戦で2匹のミ=ゴを倒していた場合ここでは1匹しか現れない。以下同様で、このシナリオ中合計4匹以上のミ=ゴが登場することはない)。今度も粘着質の装甲は身につけていないが、その代わりに奇妙な飾りのついたラッパのようなものを携えている。噴霧器による攻撃が行われるため、この戦闘には危険が伴われる。
 このとき俣木刑事が同行していれば、相手の注意を引いて探索者たちを奥に進むよう促してくれる。俣木刑事は拳銃を取り出して迷わず発砲し、ミ=ゴと交戦状態に陥る。

ミーミルベースの奥

 そこには奇妙な文様が刻まれた小さな石油管のようなものが並べられ、複雑に配線されている。最も手前の位置にはそれらの管の活性状態を示すと思われる計器が置かれており、その傍らに一冊の古い英語の本が置かれている。表題は「Nameless Cult」とあり、英語の書籍だとわかる。厳密には魔術書「無名祭祀書」の英語版(1845 年版)である。
 一方、計器上では明らかに一点だけが高い刺激状態にあることがわかる。該当する管は西田の脳が詰められた脳缶である。脳缶たちの側面は被覆されて中を確認することはできないが、上から見れば、それが人間の脳であることは一目瞭然である。脳の姿を直視したものは0/1D3の正気度判定が必要になる。

正気度判定

生きている脳 0/1D3

 西田の目論見を止めるためには、彼の脳を完全に破壊する必要がある。もしミーミルがまだ「ツァンの清められた刀身」を手に入れておらず、儀式を開始していないなら、西田の脳を特定したあたりでサーバールームに機械的な足音が響く。ミーミルの登場である。
 ミーミルはすぐにサーバールームの奥にたどり着き、今まさに起ころうとしている彼にとって最悪の事態を把握する。ミーミルはすぐに「やめろ!やめてくれ!」と叫び、妨害する探索者たちを組み伏せ始める。
 ここでミーミルとの戦闘になるのだが、ミーミルを止めるのは非常に容易い。「ツァンの清められた刀身」ないしは何かしら硬いもので、西田の脳を攻撃すればよい。知能を失ったミーミルはその場で機能停止に陥る。ミーミルを機能停止においやれば、探索者たちの長い戦いは終わりを迎える。


結末

 結末は複数あり、物語の展開に応じてゲームキーパーが演出するのが望ましい。

ミーミルの勝利

 第一にミーミルもとい西田の勝利による結末がありうる。ミーミルが「ツァンの清められた刀身」を手に入れると、チャウグナー・フォーン復活の儀式が開始される。現代的な研究室の姿は霧に包まれながら変貌を始め、深い緑に輝く角ばった結晶状の石に囲まれた洞窟が姿を表す。それは中央アジアのチャウグナー・フォーンが眠るという洞窟であり、いまや現実と夢の境界が破壊されようとしているのは明らかだ。この光景を見た者は1/1D3+1の正気度判定を行う。

正気度判定

混ざり合う現実と夢 1/1D3+1

 さらにミーミルが1ラウンドをかけて呪文を唱えると、深い闇へと続く洞窟の底から、吠えるような声が響く。

「白い侍者よ! よくぞ成し遂げた!」

 その声に続き、辺りを包んでいた霧が赤黒くその色を変える。血なまぐさい匂いが立ち込めたかと思うと、洞窟の奥底から赤黒い霧が吹き出し、洞窟は消滅して広大な赤く染まった世界だけが残される。瞼にへばりついた赤黒い霧を拭って前を見たとき、そこには人間の4倍以上はある巨体が顕現している。赤黒いドクロのような顔に長い牙を二つ携え、その中央 から長い鼻が伸びている。顔の左右には節の入った羽根のような耳が大きく広がり、胡座をかいたその姿は、これまでの調査過程で幾度となく目にした姿だ。
 探索者たちは唐突に理解する。それが紛れもない現実に存在する、顕現させてはならない存在だと。この神格を目にした探索者は1D4/2D6+1の正気度判定を行う。

正気度判定

チャウグナー・フォーンの目撃
     1D4/2D6+1

 この結末に至った場合、探索者はその神の鼻先で頭を包まれ意識を喪失する。その探索者が死亡したとするか、翌日狂気に体を強張らせた状態で保護され長期的な治療が施されたとするかは、キーパーとプレイヤーの相談によって決定する。

丸山の勝利

 二つ目の結末は丸山の勝利である。とはいえ、これは事実上誰も勝利しない結末だ。唯一の勝者はニャルラトホテプということになる。

探索を諦めたことによる到達

 この結末が導かれるのは、主に時間経過が原因である。二つの施設が焼失し俣木刑事が補助してもなお、探索者たちが探索を諦めたり丸山ラボへの突入を渋ったりした場合、概ね探索開始から10日後あたりには、丸山の首のない遺体が丸山ラボで発見される。
 ニャルラトホテプの目的はミーミルの起動に他ならなかった。すでにミーミルが動き出した以上、丸山の持つ役割はない。ニャルラトホテプはミーミルの事実を知る丸山を殺し、ミ=ゴと共にミーミルベースを人知の及ばぬ地下に移動させる。これによってミーミルに人間の脳が使われていたという事実は闇の底に葬られ、人類史上のオーパーツとしてのミーミルだけが残ることになる。この状態で探索を続けてもよいが、その結果たどり着くのはミーミルによるチャウグナー・フォーン招来という結末だけである。

ミ=ゴに敗北したことによる到達

 もちろん丸山ラボでのミ=ゴとの戦闘に敗北した場合にも、丸山が勝利する結末に至る。探索者たちも脳を取り出されて脳缶にうつされ、西田の送りつける異界のイメージに正気度を失っていくことになる。遠からぬ未来、次第に正気度を失った探索者たちはチャウグナー・フォーンの悪夢の只中に投じられる。チャウグナー・フォーンの鼻で拾い上げられ、身体が噛み砕かれていくのを経験することになる。
 このとき、チャウグナー・フォーンはこれまで夢に見た幻覚とは全く異なり、明らかにそこに生命をありありと感じさせる。その姿を見たものは、1D4/2D6+1の正気度判定を行う。以後、この悪夢は無限に繰り返され、死亡するたびに正気度を1D10消費してゆく。探索者は次第にチャウグナー・フォ ーンに身を捧げることを受け入れるようになるだろう。

正気度判定

チャウグナー・フォーンの目撃
     1D4/2D6+1

 キーパー次第では、脳だけになった状態で西田の思念と会話を許可してもよい。これは探索に失敗した探索者たちへの解答編という扱いになる。西田は「ツァンの清められた刀身」の所在を尋ね、探索者たちの脳へと直接に潜り込んでそのありかを見出す。後に続くのは、抵抗しようのない悪夢の連続とミーミルによるチャウグナー・フォーンの復活だけである。

探索者の勝利

 探索者が勝利するためには、西田の脳を破壊しなければならない。
 丸山のラボで活動していた最大4体のミ=ゴを駆除すれば、もはや脳缶にされる心配はない。あとは西田の脳を見つけ出して破壊すれば、ミーミルの目論見を止めることができる。
 可能ならば、彼の脳に宿ったすべてのPOWを失わ せるためにも「ツァンの清められた刀身」を利用するのが望ましい。「ツァンの清められた刀身」ならば、ひと刺しするだけで脳は溶けるように崩壊し、ミーミルも完全に機能を停止する。それ以外の方法では、物理的に彼の脳を破壊しなければならない。


報酬

 報酬は探索の過程で達成できた要素に応じて加算される。次の一覧を参考にして正気度の回復を実施し、獲得した物品についてはキーパーとプレイヤーが相談のうえ、可能な限り誰の目にも届かない場所に厳重に秘匿して保管するよう配慮しよう。それらの物品は猪瀬や血の結社はもちろん、その他のカルティストたちも手に入れたいと願っているものだ。不用意に扱ったり持ち歩いたりしていれば被害に合う可能性が十分にある。そしてなにより、不用意に紐解くようであれば、探索者自身が狂気の虜になってしまわないとも限らない。

報酬の一覧

西田の脳の機能停止に成功 2D6の正気度回復
4匹のミ=ゴをすべて駆除 1D6の正気度回復
連日の悪夢から解放された探索者 1D4の正気度回復

特殊な物品 「ツァンの清められた刀身」
      魔術書「Blood of Harts」
      魔術書「無名祭祀書」の英語版(1845 年版)