【ソード・ワールド2.0リプレイ】動き始めた歯車【英雄志望と二つの剣2nd season 2-1】
<前回 |第1シーズン|2nd−1|カシウス過去編|2nd−2|←イマココ
前回のあらすじ
帝都に用があると言ってパーティからの離脱を求めたサラー。平原任務中に市民が持っていた強力な毒矢がどこから横流しされたのか、あるいはフレデリックの保護について帝国側が異様に長い間もめていたことを訝しがったのか……その真意はサラーのみが知っている。その一方、新しい冒険者が一人、また一つの物語を伴ってアイラットへ向かおうとしていた。出会いと別れが、魔剣クラウ・ソラスを巡る物語の歯車を大きく動かし始める……
GM:冒険者たちが草原から帰還して2日後、帝都レシトリア、ブラックバーン上院議員の邸宅での一幕から物語を開始します
GM:というわけでクキバミさん、登場を願います
クキバミ:あいわかった
GM:クキバミさんは既に書面では通知されていましたが、ブラックバーン氏から仕事の依頼を受けることになります。使用人に案内され、ブラックバーン氏の応接室に通されたところからシーンを開始しましょう
クキバミ:「失礼する。クキバミ、ただいま参上つかまつった」
PC6 クキバミ タビット/17歳/男
魔動機都市ムートランドで生まれ育ったタビット。舶来の異国文明について書かれた本でカブキなるものを知って以降、その顔に熊取を描いて口調を真似ている。どう考えても頭のおかしいタビットだが、この世界の住人から見ても頭のおかしいタビットだ。そのせいかどうかは知らないが、魔動機都市ムートランドでも決して人々に受け入れられていたわけではなく、今もこうしてパーティを組まずに単身で活動している。
ブラックバーン:「ようこそいらっしゃいました。タビットの客人には調度が合わないかもしれませんが……」
クキバミ:「いや構わん。多少のハンディを克服してこそ漢よ」ぽふっと座り
ブラックバーン:「ふぉっふぉっ、レイチェルから伺っていた通りの方とお見受けしますな」
クキバミ:「そちらこそ、さすがのブラックバーン家。この美しい調度品、この時代に揃えられる者はそうおりますまい」
ブラックバーン:「いえいえ、まだまだ私どもなど……帝国の権威あっての商売でございますからな。さてそれで……」
ブラックバーン:「お呼びたていたしましたのは他でもありません。近々我々のところで大きな魔動機の輸送計画がございましてね」
クキバミ:「ほほう」
ブラックバーン:「それと一緒に娘をアイラットまで奉公に出そうと思いましてな。そこで娘に誰か信頼できるものを伴うよう尋ねると……」
クキバミ:「そこで我に白羽の矢が立った、と」
ブラックバーン:「というわけですな」
クキバミ:「娘さんとは日頃から友好を築いていただいている身。喜んで引き受けましょうぞ」
ブラックバーン:「それはありがたい! レイチェル*1は多少無理をするかもしれませんが、くれぐれもお願い申し上げます。それから……」
ブラックバーン:「運ぶ魔動機というのも大物でしてな。たしか『クィンドゥーム』というのでしたかね。兵器には疎くてかないません」
クキバミ:「なんと、かなり強力な魔動機ですな! これも例の件に関係が?」
ブラックバーン:「そうですな、よもや帝国が最前線になる日が来るとは……まったく嘆かわしいものです」
ブラックバーン:「ともあれ大切な兵器です。素人が触れないように目を光らせておいてください」
クキバミ:「承知いたした。このようなときだからこそ物資を届け、人の助けになるが我が務め」
ブラックバーン:「では、ひとまず道中娘のことをお願い申し上げます。それから先は娘と相談してお決めください」
クキバミ:「心得申した。必ずよき知らせを届けましょうぞ」
GM:というわけで、クキバミはレイチェル・ブラックバーンとともにアイラットへ向かいます。
GM:道中、レイチェルは「私がフレデリック・ヴェルチお迎えの使者になるんだって、なんか緊張するね」とか言っています
クキバミ:つまりその迎えの席で我は彼らと出会うのだな
サラー:……ここでGMがクィンドゥームの名前を出したのには絶対理由があるわよね
レイラ:それなんなんですか?
アーク:農作業用ロボットだよ
サラー:対人兵器満載のね
レイラ:うわぁ……
GM:さて、それから2日後、ラマンの別荘にて冒険者たちは一堂に会しております。フレデリックと帝国行きについて相談しましょう
フレデリック:「……つまり、私が皇帝に引き取られるということだけは決まっているわけだな」
レイラ:「そうですね、ここよりは安全でしょう」
フレデリック:「安全、か。しかしどうせまた閉じ込められるのだろう? まったく嫌になるな」
サラー:GM、また少し調べておきたいんだけど、帝国はダインハイト奪還作戦のために出兵する様子などはないのかしら?
GM:はい、ありません。最も出兵に積極的なのはフロンタです。ここの難民たちの食糧事情も知っていますし、日々小競り合いをしているので相手の力量も知っていますからね
GM:ただ、噂としてはトップ4にもう一人積極派がいて、それは天才と呼ばれている若娘スカーレット・ヒューリーですね。今は帝国騎士団第2位、つまり皇帝の一個下の立場です。
サラー:「……アタシが一緒に行くわ」
レイラ:「サラーさんが!?」
フレデリック:「警護のものを受け入れる予定はないと聞いていたが?」
サラー:「使用人ならいいのでしょう? ま、ダメって言われても押し通すわよ。あっちにはそれなりのコネもあるの」
サラー:「もう気づいてると思うけど、アタシも元は帝国騎士団にいたわ。それなりに顔も利くつもりよ」
レイラ:「……」
フレデリック:「実際誰かが随行してくれるのは心強いが……というのも姉上は帝国嫌いでな、姉譲りで私も正直帝国はあまり好きではない」
カシウス:「たしかに、一人で行かせるのは気が向かなかったんだ。俺も帝国……とくに帝都にはあまり近づきたくないし、信用なんて程遠いっていうのが本音だ。サラーなら信頼して任せられる」
レイラ:「たしかにサラーさんが一緒なら安心ですが……」
サラー:「それから、ノイちゃん。あなたも一緒に来てもらえないかしら?」
ノイ:「そうだね、使用人って言い訳が一番通るのがわたしだろうし」
レイラ:「なら私もっ……一緒に行くことは、できないでしょうか?」
ノイ:「いや、レイラは……」
サラー:「難しいでしょうね。あなたの場合、所属の問題が大きいわ。まだ公国騎士団員じゃない」
レイラ:(ポンコツ二人と残されるのはいやです!!)
サラー:(気持ちはわかるわ!!)
レイラ:「たしかに、正式に退役したわけではありませんが……」
フレデリック:「わざわざ警護なしで使用人のみ同行と言ってきたのだ。何かわけがある」
サラー:「……それに、帝国騎士団も一枚岩ではないようなのよね」
レイラ:「まさか、皇帝陛下も魔剣を探していると?」
フレデリック:「魔剣といえば、お前たちは冒険で何か知ったのだろう? アークからの手紙は読めたものではなかったが……なあアーク」
アーク:「……ごめん、僕にはよくわからなくて」サラーに叩かれたのがまだ尾を引いて元気が出せない
サラー:「……」
フレデリック:「このところアークの様子が
サラー:「フレデリック様」
フレデリック:「なんだ?」
サラー:「確認をしておきたいのだけど、あなたはこれから帝国領内に連れ込まれるわ。そこからどうなるのかはわからない。ただ、それでもあなたのやるべきことがあるはず」
フレデリック:「ああ、もちろんだ」
サラー:「あなたのやるべきことと、その“覚悟”、お聞かせ願えるかしら?」
フレデリック:「私がやらねばならないことはダインハイトを取り戻すことだ。ここに閉じ込められていたとはいえ、アイラットの状況を理解しないほど頭が悪いわけではない」
フレデリック:「膨れた人口を保つためには土地がいる。今のままではもって2年だろう。だから私は、私がお前たちに頼んで連れて来てもらった彼ら彼女ら、私の父が守って来た民のために、あの土地を取り返さなければならない」
GM:と、そこまでをスラスラと口にすると、フレッド特有のいたずらっぽい笑みをニッと浮かべて
フレデリック:「私の特技は家出だからな。いつまでも黙って皇帝に閉じ込められてなどいないぞ」
サラー:「それなら、あなたは戦えますか? たとえば、そう……」一呼吸、面々を見回して
サラー:「アークと」
フレデリック:「……」
アーク:「……」
フレデリック:「愚問だな、サラー。アーク、お前はどうだ?」
アーク:「僕は……」今のアークじゃ答えられないと思う。そのまま口ごもるよ
フレデリック:「私は、初めて会ったときの約束を忘れていない。これは『競争』だ! 私がアークと戦うことがあるとすれば、それはどちらが魔剣を手に入れるか、それを競う時だけだ」再び歯を見せてニッといたずらっぽい笑みを浮かべます
アーク:「……」
レイラ:場の空気が和んだことに少しホッとしましょう
サラー:(器が出来上がりつつある、か。ヴェルチ家の血なのかしらね)
*1:カシウス過去編に登場した女の子