TRPG動画からクトゥルフ神話TRPGをプレイしたくなった方へ
リプレイ動画でも話題のクトゥルフ神話TRPG。
「私たちもプレイしたい。」そう思っている方は意外と多いはず。
しかし、ルール紹介でも書いたように、クトゥルフ神話TRPGは、どちらかといえば上級者向けのルールです。マスタリングの難易度も高く、プレイヤーも十分に頭を使ってロールプレイする必要があります。
その点では、はじめてプレイするTRPGとして、クトゥルフ神話TRPGはあまりお勧めできません。まして全員がTRPG初心者ならなおさらのことです。できることなら、他のTRPGをプレイして、TRPGというものに親しんでから、クトゥルフ神話TRPGにも手を出してください。
…そうはいっても、「やっぱりTRPGするならクトゥルフでしょ!」と盛り上がる友人たちを諌めることもできないし、TRPGの普及を願う者として、「クトゥルフ神話TRPGをやりたい!」という気持ちを大切にしてあげたいのも事実です。
そこで今回は、視聴者からTRPGプレイヤーへ、大きな一歩を踏み出そうとしている皆さんのための記事を用意しました。
1.ルールブックを読みましょう
クトゥルフ神話 TRPG (ログインテーブルトークRPGシリーズ)
- 作者: サンディピーターセン,リンウィリス,中山てい子,坂本雅之
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/エンターブレイン
- 発売日: 2004/09/10
- メディア: 単行本
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「とにかく『クトゥルフ神話TRPG』がプレイしたいんだ!一刻だって待てないんだ!」という方も、ほんの少し押さえてください。
まず、ルールブックを読みましょう。世界観設定とか、人物や神格の紹介はこの際読み飛ばしてもいいでしょう。最低限読まなければならないのは、以下の部分です。
①キャラクター作成のルール(ルールブックp40・41)
必ず読まなければならないのが、キャラクター作成のルールです。幸いにして、クトゥルフ神話TRPGのキャラクター作成ルールはそう難しくありません。
まず、3D6で決めるものと、それ以外で決定されるステータスがあるということを確認してください。次に、ステータスから計算される値の計算式を確認してください。最後に、技能ポイントの計算式を確認してください。
この3ステップだけで、キャラクターが完成してしまいます。逆に言えば、この3ステップを確認しておくだけで、キャラクターの作成はスムーズに進みます。
②よく使いそうなところに付箋を貼ります
「ルールブックなんて、困った時に参照すればいいじゃないか。」という主張ももっともなことです。しかし、そう言っている人に限って、いざ困った場面に直面すると、「ルールよりもスムーズなゲーム進行を優先するべきだ。」などと言い出します。
どちらも一般的な考え方として間違ってはいないのですが、前提に間違いが含まれています。
「(ルールをある程度把握したら、あとは)困った時に参照すればいい。」
「(ルールをある程度把握したら、あとは)スムーズなゲーム進行を優先すべき。」
複数人で遊ぶゲームであり、コンピュータのような自動的な裁定者がいない以上、プレイヤーたちの「ルールを守ろうとする意思」、フェアプレーの精神は必要不可欠です。たしかに楽しければいいのかもしれませんが、「サッカーをしていたつもりが、気づいたらハンドボールをしていた」なんてことになったら、せっかくのTRPGをいつまでも楽しむことができずじまいです。
しかし、事前に目を通して暗記するには量が多すぎます。だからこそ、以下のページにメモ付きの付箋を取り付けて、素早い参照を行えるようにしてください。
●60ページ:抵抗表
(63ページに確認を忘れがちなPOT抵抗のルールがあることも記憶しておくとよい)
●66〜69ページ:戦闘のスポット・ルール
(そのまま武器表が70ページに、さらに続けて技能の解説があることを記憶しておくと、役に立つことがあるかもしれない)
●90ページ:一時的狂気表
狂気度喪失後に振る表はここにある。
③シナリオ「悪霊の家」(p295~)
はじめてプレイする時には、黙ってこれをプレイましましょう。
あなたがゲームマスターを務めるならば、しっかりとすべての資料に目を通しておいてください。あなたがプレイヤーならば、目を通す必要はありません。
このシナリオをプレイする利点は、ほとんど情報探索の必要がないことにあります。探索者たちはただ現場に行って、自由に探索して、小さな戦闘を行えば、事件は解決します。つまり、「シナリオ内で登場する謎を解くこと」よりも、「判定操作に習熟すること」に集中できるのです。
このシナリオを一通りクリアすることができれば、参加者はキャラクター作成から技能判定、戦闘処理、場合によっては狂気の判定まで、すべての判定を経験したことでしょう。これでようやく、一人前のプレイヤーの誕生です。もどかしいかもしれませんが、次回以降のセッションで、判定操作に煩わされず、ストーリーと謎解きを楽しむためにも、このシナリオでよく勉強することを強く推奨します。
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2.それぞれのTRPG観を尊重しましょう
いくつの、また、どのTRPG動画を見てきたかは人によります。
みんなで意気投合して開始したセッションでも、終わる頃には仲違い、なんてことも珍しくありません。ロックバンドが音楽性の違いで解散するなら、卓はTRPG観の違いで解散するのです。
本格的な謎解きホラーが好きな人もいれば、全力で戦闘を挑むスタイルが好きな人もいるでしょう。ロールプレイでたくさん笑いを取りたい人もいるでしょうし、とにかく発狂して死に至る無力な人間の姿を楽しみたい変わり者もいるかもしれません。
大切なのは「そのすべてを受け入れるのが、クトゥルフ神話TRPGだ」ということです。
「クトゥルフ神話TRPG」というゲームシステムは非常に柔軟性が高く、それゆえに、様々なシナリオとロールプレイを包み込んでしまいます。それは、現実の世界が多様な人間ドラマを包み込んでしまうことと変わりありません。「クトゥルフ神話TRPG」の世界も、現実の世界と同じように、それぞれの人生という物語を尊重する必要があるのです。
もしも喧嘩っ早いメンバーがいたなら、「謎解きをしないとだめだ」とPL発言で戒めるより先に、「私のPCが戦闘に巻き込まれないように、離れて隠れます」などの行動を宣言しましょう。きっと一人では戦えないことに気がついてくれるはずです。
あるいは、怯えきったロールプレイに集中しすぎて、謎解きに参加しないメンバーがいたなら、「もうそのロールプレイはいいから、頭使えよ」とPL発言をする前に、「私のPCが歩み寄って、両肩に手を置き、目を見つめて、落ち着かせます。GM、精神分析でいいですか?」などと言って、切り替えのチャンスを提供するとよいでしょう。きっと彼は優秀なロールプレイで謎を解いてくれることでしょう。
つまり、周りのメンバーが偏ったロールプレイをしたときには、方向修正のチャンスを“ゲーム内、PCの行動で”提供するのが最適な行動です。できる限りPL発言をすることなく、他のプレイヤーたちを物語の中に引き込みながら、バランスのとれたゲーム展開に持って行く努力を忘れないようにしましょう。
誰か一人が卓をめちゃくちゃにするんじゃないんです。卓は、みんなで演出し、バランスを取っていくものなのです。
3.初プレイ(特に初GM)は友人同士でやりましょう
最後に、できれば、という話なのですが、初プレイは友人同士で行うことを推奨します。
はじめてプレイする時には、目を通したはずのルールもおぼつかないし、シナリオが大きく予定を外れて対応できなくなることもあります。こうした事態が発生しても、友人同士ならば、相談に乗ってもらい、シナリオの方向を強制的に修正したり、ルールブックを確認する間待ってもらったりすることができます。
特にシナリオの強制的な修正は、オンラインセッションでは嫌われることが多いので、マスタリングに慣れるまでは、GMとしてのオンラインセッションは避けたほうがいいでしょう。プレイヤーたちのあらゆるアドリブに、アドリブで応答しながら、シナリオを即興的に作り出せるくらいになってはじめて、自由度の高い「クトゥルフ神話TRPG」の非クローズドシナリオのマスタリングが可能になります。
決して焦らずに、じっくりと練習して、オンラインGMデビューセッションを華々しく飾ってください。
とはいえ、プレイヤーなら話は別です。ルールブックの用意ができていて、初めてのプレイということなら、オンラインでもきっと歓迎されるはずです。
「動画勢」という言葉が、どこかネガティヴな響きを持って使われていますが、以前書いた記事のように、「行動する前に、一度他のPLに『〜しますけどいいですか?』と尋ねる。」姿勢さえ忘れなければ、まず心配する必要はありません。
気軽に、TRPGの世界に飛び込んでみてください。
それでは、これから始まる、あなたのTRPGライフを楽しんでください。