【ソード・ワールド2.0】「生者の驕り」を公開【オリジナルシナリオ】
我ながら陰惨なシナリオができてしまいました。
この度、自分の参加しているGMリレーセッション向けに一つシナリオを執筆しました。前回担当時には「幻のゾウニを求めて」とかいう意味不明なジョークシナリオを作ったのですが(これも公開されています)、今回はかなり僕の個性を活かしたシナリオを用意してみました。
シナリオタイトルは「生者の驕り」。プレイ後の感覚として、後味の悪さを重視したシナリオでして、実プレイはまだなのですが、資料だけ公開してしまいました。作りとしてはかなりシンプルにして、テキストセッションのそう長くない時間でプレイできるようにしてみました。
というわけで、旧方式ですがこちらで公開しています。
今日はこのシナリオについての解説と、作るときに意識したことを解説しておこうと思います。
メニュー
1.冒険の暗部にフォーカスする
2.二項対立のメルティングポット
3.次のシナリオへ向けて
1.冒険の暗部にフォーカスする
今回のシナリオのテーマは「死別とアンデッド化」というものです。
ラクシア世界では、 冒険者たちは輝かしい活躍と楽しい友情の物語を紡ぐことになります。しかしその裏側では、盗賊を斬り倒し魔物の皮を剥ぎ、生存のために時として暗く直視しにくい事件にも直面し続けます。
それはたいてい何者かの死を伴います。普段の冒険では、それはあまり意識されませんが、今回は冒険の醜さをありありと見せつけていくスタイルのシナリオとなっています。
戦う相手はかつての冒険者、レブナント(アンデッド)と化したヒーローです。その高価な遺品を巡って、蛮族のスカベンジャーも冒険者たちを襲撃します。 スカベンジャーの襲撃によって、冒険者たちが今からやろうとしているのが、死体荒らしに他ならないことが明示されます。
戦闘後、冒険者たちが戦利品の回収を渋るようなら、 このシナリオは成功したといっていいでしょう。
2.二項対立のメルティングポット
こういう物語を含めたシナリオを作る際に僕が利用するのは、二項対立です。
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今回利用したのは、〈敵/味方〉、〈死/生〉、〈蛮族/人族〉、〈悪/善〉といったあたりでしょうか。これらの明瞭な境界を破壊し、自分たちの立場を悪人の位置へとスライドさせることを目標としています。
以下シナリオのネタバレ。
はじめ、自分たちは生者として死者の遺品を回収する依頼を引き受けます。依頼者と自分はフェアな位置にあり、冒険者たちはいつもの陽気さで依頼をこなすことができるでしょう。自分たちは〈生きた=人族の=味方で=善人〉なのです。
そこで出会うのは、死者の遺品を回収して売りさばき、生活の糧にしている人族の一団です。彼らには交戦の意思はなく、快く情報提供してくれます。とはいえ、その生業はあまり見ていて気持ちのよいものとはいえません。彼らは〈生きた=人族の=味方だが/悪人〉なのかもしれません。
そしていざ重要な遺品を回収しようとすると、かつての人族はアンデッドとなって冒険者たちを襲います。その純愛と無念が冒険者たちの心を打ち、〈死んだ/人族で/敵だが/善人〉というねじくれた構図が出現します。これにより、構造が揺らぎを含むことになり、冒険者たちは自分たちがいつ死んでもおかしくないこと、いつ悪に転じてもおかしくないことを自覚させられます。
次には先ほどの一団がその本性をあらわにし、冒険者たちに攻撃を加えることになります。彼らは〈生きた/蛮族で=敵で=悪人〉だったのです。そしてその戦いの最後に、敵は冒険者たちを非難します。「自分たちと同じことをやっているじゃないか」と。
これによって、揺らぎやすくなった冒険者としての地位は曖昧なものになります。目の前に並んだ蛮族とアンデッドの亡骸を見て、その所有物に手を出せば、まさしく同じ穴のムジナ。そうやって生計を成り立たせる冒険者という稼業は、決して善人のものではなく、悪人のやることだと気付かされます。
かくして自分たちの悪性や蛮族性、あるいは揺らいだ地位に自覚的になった冒険者たちは、依頼者のもとに帰ります。そこで冒険の首尾を尋ねられた冒険者は、そのあまりにグロテスクで過酷な、暗い冒険の実態を語るときに、言葉を濁してしまうでしょう。
はじめフェアな関係だった依頼者との間に、スラッシュ(/)が引かれます。依頼者が善性と生きた人間の代表格として冒険者にぶつけられ、自分たちが「それとは違う存在」だったのだと強烈に印象付けます。
3.次のシナリオに向けて
久しぶりにソード・ワールド2.0のシナリオをすぱっと1日でかけてしまったので、正直自分でも驚きました。こういう話を考えて執筆する能力がまだ枯渇していなかったかと安心させられたというのが適切な表現かもしれませんが。
また、様々な活動を通じて、資料の書き方にも工夫が加えられ、資料の見やすさもオンセ向きに改良されてきたように思います。これまでも、わかりやすい判定操作、回しやすいシナリオというフレームの中で、僕らしい個性あるシナリオを実現するというのが一つの目標でした。その意味で、今回のシナリオは僕の技術が1年かけて確実に向上したことをよく反映してくれたように思います。
そういったわけで、再びシナリオ執筆意欲が高まって参りました。
今まで実現できなかったタイプの、シンプルかつ奥深いシナリオを目指して、ますます励んでまいります。