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形式化された探索の難易度【TRPGの難易度を解きほぐす(3)】

前回の記事で難易度のパラメータとバロメータという概念を導入しました。

trpg.hatenablog.com

まず、シナリオライターやゲームマスターは、抽象的で複雑な難易度の高低を決定するために、いくつかのパラメータを操作することだけが可能です。また、一方のプレイヤーやシナリオ読者は、難易度を推し量るために様々な情報をバロメータとして利用していますが、シナリオやセッションの難易度を表現するバロメータの整備は不十分ではないかと提案しました。

 

今回から、具体的な考察が始まります。

まず、本シリーズではTRPGシナリオを大きく「探索」と「戦闘」に分割します。さらに探索をその形式によって「形式化探索」と「自由探索」に分類して、それぞれの難易度について考察を展開します。

 

はじめに形式化探索を扱うのは、パラメータを直接バロメータとして扱うその性質から、本シリーズ全体の議論を理解しやすくしてくれるからです。今回の議論は、難易度を考察することがどのような作業なのか、その典型的なパターンの理解につながるはずです。

 

メニュー

1.形式化探索と自由探索

2.形式化探索のパラメータ

3.形式化探索のバロメータ

4.行為選択の難易度とアトム

 

1.形式化探索と自由探索

探索を二つに分類するのは、そのパラメータとバロメータの関係の違いを反映するためです。

 

形式化探索の条件は、設定されたパラメータがそのままプレイヤーにとってのバロメータの役割を果たす探索です。

一方の自由探索では、パラメータは明示されず、プレイヤーは描写中の表現をバロメータにしてその情報の難易度とそれに比例するであろう重要度を推測する必要が有ります。

 

したがって、形式化探索と自由探索は、TRPGルールによって定められるわけではありません。自由探索を志向したルールでも形式化探索を行うことは可能であり、形式化探索を志向したルールでも自由探索の要素を組み込むことが可能です。

 

 

2.形式化探索のパラメータ

最も典型的な形式化探索は、次のような会話を導きます。

GM「探索パートに入りましょう。今回の情報は、噂話(8)と裏社会(11)にあります」
PL1「噂話ならわたしのキャラクターでもいけますね」
PL2「では裏社会はこっちで狙いますね」
GM「では、噂話からダイスロールをお願いします」・・・

この会話では、ゲームマスターが探索対象のパラメータを明示することで、プレイヤーたちが難易度を判断し、ダイスロールに進んでいます。

 

ここでゲームマスターが開示した情報は三つのパラメータです。

(1)目標値

まず、ゲームマスターはそれぞれの情報がどの程度の探索達成値を必要とするのかという水準を明言しています。この数値により設定可能なパラメータを目標値と呼びましょう。

目標値の特徴は、それぞれの探索行動の達成可能性を単一の数直線上に配置することです。数的な指標によって探索の難易度を左右する、最も基本的なパラメータと言えます。

 

ただし、目標値の具体的な水準は、TRPGルールによって異なります。

ルールによってダイス形式が違うため、達成される数値の期待値は様々です。そのため、同じ「11」でも達成しやすさは全く変わってしまいます。したがって、難易度のバロメータとして利用するためには、期待値との比較が重要になります。

 

(2)属性

同時に、探索対象には属性が与えられています。属性とは、異なるステータスを参照したダイスロールを条件付けるパラメータです。

属性は目標値と異なり、探索対象相互の難易度は数的に比較可能ではありません。プレイヤーキャラクターのもつ属性対応力との関係づけられて、初めて可測的なバロメータとして機能します。

したがって(具体的なプレイヤーキャラクターを前提としない)シナリオの段階で属性を難易度のバロメータとして利用する際には、別の方法でそれを数値化する必要があります。

 

(3)開示性

一見して二つのパラメータで探索難易度を決定づけているように見えますが、同時にもう一つのパラメータが設定されています。それが開示性です。開示性とは、そもそも情報が存在することがプレイヤーに明示されるか否かの設定を指します。

たとえば長・中編シナリオで、重要な情報の属性と目標値を開示するために条件をつける場合があります。「前半で3つの情報を取得すれば、次の情報の属性と目標値が明らかになる」といった展開は開示性をパラメータにして難易度を左右する典型的な方法です。

 

形式化探索を志向する場合には、これら三つのパラメータを事前に設定し、そのうえでゲームマスターがセッション中の「行動」においてこれらをバロメータとして伝達する必要があります。

 

 

3.形式化探索のバロメータ

パラメータを開示することで対プレイヤーバロメータとする形式化探索の特徴から、シナリオ難易度バロメータの設定は比較的容易です。

 

目標値をシナリオ難易度バロメータに反映するためには、期待値と出目の確率を考慮して、どの程度の確率で達成可能かを算出する必要があります。この作業はルール別に行う必要があるため、今後、数的処理を行ってルール別の簡易な計算法を開発しなければなりません。

 

簡単に難易度バロメータを導出できるのは属性パラメータです。一般に属性はその多様性によって困難さを増す性質を持っているため、シナリオ内に配置された属性数がバロメータとして機能します。*1

 

開示性については、すべてが開示されている状態をゼロ点として、開示に必要な条件数に応じて難易度を加算するという可測形式が十分利用できます。*2

 

 

4.行為選択の難易度とアトム

以上のように難易度計算の指針を立てたところで、もう一つの問題を考慮する必要があることを明言しておきましょう。

そもそも難易度の最小単位アトムをはじめに議論したのは、日常的に言われる(あるいは経験される)「難易度」があくまで複合物として構成されていることを強調するためでした。また、アトムは単純に和算されるわけではありません。あくまで複雑な立体構造(原子に対する分子)をつくり、集合としての「難易度」を作り出します。

 

それゆえ、難易度のアトムを解き明かすと同時に、それがどのように集合を作り出しているのかを分析しなければ、シナリオ難易度の正体を解き明かすことはできません

 

難易度のアトムが「行動」に対して発生していたことから、第一の難易度接合法則を提案することができます。それが行動選択です。行動選択とは、アトム間の難易度の差を考慮することを指します。

複数の難易度のアトムに直面するとき、プレイヤーはひとつの「行動」を選び取るために、それぞれの難易度を比較検討します。この際、他の候補に比べて明らかに難度が低い「行動」が存在するとき、プレイヤーは行動選択に苦労することはありません。

 

このように、行動選択によってアトムを結合した場合、他の選択肢との難易度の差として、「対プレイヤー難易度」が経験されます。厳密に可測的指標として利用するには、最低難易度の行動候補と、他の選択肢の難易度との差の平均を利用するなどの方法が考えられます。

なお、プレイヤーキャラクターのステータスに対応して属性パラメータが調整してある場合、プレイヤーによって異なる難易度分布を見出す場合があります。この難易度の多重性は役割分担によって克服されます。この点については、次次回に第三の結合法則「行動分担」として論じます。

 

 

今回の議論を通じて、探索方法が形式化されている探索の難易度を操作・伝達するために利用されるパラメータとバロメータを整理しました。また、ルール別にシナリオ難易度計測法を制作する場合に考慮するべきパラメータの種類とその数量化アイディアにも言及しておきました。

最後に、こうした個別の難易度のアトムが集合を形成する際の一つ目のメカニズムである結合法則「行動選択」を提案しました。

 

次回はパラメータがバロメータとして利用されない自由探索を同様の方法から分解したうえで、第二結合法則として「行動経路」を検討します。

*1:ルール横断的なバロメータに加工するためには、全属性数で使用属性数を割った、使用属性割合を利用する方法があるでしょう。

*2:なお、いかなる状況でも開示されない情報(あるいは秘密重要情報か逆にトラップ情報)を設置する場合には、パラメータがバロメータとして利用されていないため、自由探索として扱います。