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TRPGをやりたい!

TRPGのトビラをひらこう!

キーパーとシナリオライターの役割の違いについて

以前ツイッターで言及したにもかかわらず、記事として整理していなかったので、今日やっておこうと思います。

 

たいてい、キーパーがシナリオを作り、当日のキーパリングも担当していることでしょう。その点で、キーパーの役割は、シナリオを作って提供する人という印象を持たれているのかもしれません。

 

しかし、キーパーとシナリオライターを分解して、キーパリングスキルというものを単独で取り出してみると、キーパーあるいはGMに要求されるスキルのあり方がよく見えてくるのです。

 

 

1.シナリオを書かないキーパー

多くの卓で、キーパー専のプレイヤーが誕生していることでしょう。その原因のひとつは、多くのプレイヤーがシナリオを書くことができないという点に起因するのではないでしょうか?

 

シナリオを書くとき、セッション中で利用する資料類はもちろん、プレイヤーたちの予想外な振る舞いをうまく制御するための合理的な状況設定など、不慣れな人にとっては難易度の高い作業を要求されます。このため、キーパーとシナリオライターは同一人物になり、シナリオの用意をできる人がキーパーを担当するという事態に陥ります。

 

しかし実際には、キーパーとシナリオライターは全く別のものです。

ルールブックやサプリメント、あるいはウェブ上にシナリオが多数掲載されていることからも明らかなように、シナリオを書かなくても、読み込みさえすれば、誰だってキーパーに挑戦することができるのです。

 

その意味では、むしろ、シナリオを書かないキーパーこそ、純粋なキーパリングスキルというものと向き合うことができます。なぜなら、自分の書いたシナリオを回さないとき、キーパーはシナリオ資料の解釈と、プレイヤーたちのためのアレンジを、一手に引き受けているからなのです。

 

 

2.キーパリングスキルの射程

したがって、キーパリングスキルは、楽譜に解釈を与えて、演奏を制御する指揮者のような技能として私たちの前に姿を現します。

 

楽譜はそれだけで音を奏でることはできません。それと同じように、シナリオ資料はそれだけでは卓を彩ることはできません。

シナリオ資料に書かれた、「◯◯は涙ながらに事情を打ち明けるだろう」という文字を、プレイヤーたちが引き込まれるような表現に落とし込んだり、シナリオ資料に書かれていないけれども、展開として必要になったらカーチェイスを行ってみたり、ただの道行く老人との会話を即興で構成し、魅力的な情報源に変更させてみたり、そういう創意工夫に満ちたシナリオの解釈を生み出すのが、「キーパー」という役割です。

 

シナリオ資料には、通常、事件の設定が一通り書かれているだけで、重要な場面を除いて、その演出は書き込まれていません。

この理由は、キーパーに演出の自由を与えるためであり、キーパーのキーパリングスキルを尊重しているからなのです。

 

したがって、キーパリングスキルとは、次の幾つかの要素を含んでいることになります。

(1)シナリオ資料を解釈し、肉付けを行う技術

(2)プレイヤーたちの行動に応じて、シナリオにアドリブを加える技術

(3)当然求められる、平等なルール裁定者としての技術

 

この技術をシナリオライターから明瞭に分離すると、TRPGシナリオライティングに求められる技術もまた、限定されることがわかるはずです。

 

 

3.シナリオ資料のミニマリズム

キーパーのキーパリングスキルが発揮される余地は、「シナリオ資料の行間」にこそあります。

 

このことから、シナリオ資料作成時に、演出を含めて書き込みすぎることは、キーパーに求められる役割を忘れさせることにつながることがわかります。

確かに、シナリオ資料は、細ければ細いほど、プレイアビリティが高くなるのは事実です。どんなアドリブやめちゃくちゃなプレイングにも対応できる充実したシナリオ資料は、多くのキーパーにとってハードルの低いシナリオとして親しまれることでしょう。

 

しかし、そうしたシナリオばかりを扱うと、キーパリングスキルの射程を誤解してしまうことにつながります。キーパーは、本来、シナリオ資料の行間を埋めなければならないのです。

 

この課題を克服するためには、シナリオ資料のミニマリズムを貫く必要があります。

つまり、シナリオ資料には極小の情報のみを掲載し、残りの肉付けを全てキーパーに委ねるというスタイルです。

 

このスタイルを採用したシナリオ資料は、極めて簡素なものになり、キーパリングに慣れない人が回そうとすると、情報不足からシナリオ資料の不備を指摘してしまいかねません。

しかし、そうしたミニマルなシナリオ資料は、むしろ、キーパーリングスキルに対する信頼を含んだ資料だと考えましょう。

 

様々なシナリオ資料の形式があり得る中で、キーパーとのコミュニケーションを実現するような、多様な演出を生み出しうる、豊かなシナリオ資料というスタイルが、ある種の魅力を持っていることも間違いありません。

 

自らの思い描いた物語を表現するシナリオ資料も面白いかもしれませんが、多様な演出を生み出しうる資料というスタイルにも、いつか挑戦してみるといいかもしれません。