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中国脳:脳とはいったいなんなのか?

というわけで、早速中国脳について扱っておこうと思います。

 

中国脳とは、だいたいの物は金と軍事力でなんとかなるし、国内の物は化学物質があったり作りが雑で危険なので、海外産のものを食べたり使ったりしたほうがいいという…

 

違います!

 

中国脳というのは、一種の思考実験です。

 

まずは中国人全員に携帯電話を配りましょう。13億のiPhoneが配られて、一台9万円ですから、117兆円が必要です。いやぁ、思考実験でよかった。

 

それで、iPhoneには特殊なアプリが搭載されています。それは電話がかかってきた番号に応じて、この13億台のうち5台の電話番号を指定するアプリです。

この無料iPhoneをもらう条件はただひとつ。この5つの番号に直ちに電話をかけるという義務を受け入れることです。その仕事さえこなしてくれれば、タダでiPhoneが手に入ります。

 

・・・嫌な予感に気づきましたか?

 

ネズミ講の原理です。はじめ1つだけ着信した電話から、5人へ電話がかけられます。この5人がそれぞれ5人、合計25人に電話をかけます。以下125人、625人、3125人、15625人、78125人、390625人・・・と指数関数的に電話の応酬が始まります。

1回の電話処理が5分で終わると見積もれば、中国13億人の生活は1時間もしないうちに電話を掛け合うだけのものに変化してしまいます。ひっきりなしにかかってくる電話に応じて5人の番号にワンコールを発信し、それが終わるか終わらないかのうちにさらに電話がかかってきて5人の新しい電話番号を提示される・・・ちょっとした悪夢です。

 

さて、この思考実験は指数関数の恐ろしさを示す思考実験ではありません。

 

ここでこの電話アプリの管理センターに行ってみましょう。

そこには脳をかたどった不思議なディスプレイと、その上を光が走っていく様子を見つめる研究者たちの姿がありました。

 

よく見れば、この脳みたいなディスプレイ、小さな携帯電話の模型が組み合わさって作られています。そして5分おきに5つの光を別の携帯電話に飛ばしているじゃありませんか!

そう、このアプリの開発者たちは、中国人民にiPhoneを配ることで、人間の脳の中で発生している電気信号のやり取りを再現しようとしたのです!

 

実験は大成功したようにも見えますが、研究者たちの面持ちは暗いみたいです。

その理由が、この思考実験の中核をなす疑問です。

 

「たしかに、脳みたいに信号を飛ばしあってるんだけど、この電気の動きって、本当にものを考えているとか、理解しているっていうことができるのかな?」

 

ある研究者はそうため息をつきます。

 

 

これが中国脳という思考実験の問題意識です。

人間の脳は、それの活動を通じて体を動かして知性を表現することができます。しかしこの中国人民iPhoneネットワークは、動かすべき体も持っていませんし、そもそも何かを考えているわけではありません。よくわからないうちに信号が駆け巡っているだけの集合です。

 

このことは、私たちが「知性的なもの」を何に見出しているのかということを照らし出してくれます。たしかに人間の知性の由来は脳にあるのですが、脳そのもの活動は必ずしも知性的ではありません。その活動を表現する体が伴って初めて、人間は知性をそこに見いだすのです。

 

つまり、もしも中国人民iPhoneネットワークに知性を見出すなら、次の作業が必要になります。

まず、電話の接続パターンを分類していきます。山東省あたりで電話が活発な状態と、広東から四川に活発状態が移動するパターンと…このような分類によって、この擬似脳の読み解き方を知らなければなりません。

さらに、ネットワークの外から電話がかかってくるように設計します。この入力電話の番号を「観察情報」と呼びましょう。これによって、中国人民iPhoneネットワークには観察情報に対応した新しい通話状態が次々に生み出されることになります。

この新しい通話状態こそ中国人民iPhoneネットワークの「思考」に他なりません。それぞれの入力に対してなんらかの結果が作り出されるので、そのパターンに次々に名前をつけてあげましょう。

最後に用意するのは、電話接続パターンによって特定の動きや言葉を発してくれる小型ロボットなり3Dキャラクターです。こうすれば、現在の中国脳のパターンに対応した運動が行われるようになり、さながら知性を持った存在として活動を始めてくれます。

 

つまり、知性を理解するためには、それを表現する媒体が必要になります。媒体が存在しなければ、そこには知性的なものを見出すことはできません。

 

たとえば蟻の行列がなんらかの情報を人間に発している可能性もありますし、大気の運動は知性そのものである可能性もあります。それらはただ、読み解き方、表現のされ方がわかっていないだけかもしれないのです。

 

 

最後に、前回お話しした言語ピンボールゲームの思考実験を思い出しましょう。

投げ込まれたボールの速さと重さと大きさの組み合わせにタイトルをつけてあげます。すると必ずボールデータに対応するポケットに転がり落ちていくことになり、そこに書かれていた言葉を読み上げます。これで言語を理解するピンボールの完成です。

 

ここまででお分り頂けた通り、理性の裏舞台に理性はありません。人間の頭の中にあるのも、このピンボールや中国脳と変わりないのです。

装置それ自体はただの「現象」です。その「現象」に法則性を感じ取ったとき、人はそれを「理性」と呼ぶのでしょう。

 

 

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