【クトゥルフ神話TRPGリプレイ】忘却の結末【part.06】
【前回のあらすじ】
わからないことが多すぎる。伏原は、目的不明の少女ハルカの事情を探るために、十二様と鬼子について、調査を続ける。しかし、大間々で暮らす洋一に尋ねても、八宮神社や十二神社はほとんど忘れ去られてしまっている。この地域にかつて存在したはずの信仰と、鬼子の伝承を紐解く調査が、いよいよ本格化する。
目ぼしい本に当たりをつける
伏原「ウェブ検索を使って、一気に当たりをつけていきたいですね。それなら、短い時間でできませんか?」
KP「つまり、たくさんの本を手に入れておきたい、ということですね。」
伏原「そういうことです。ちょっと情報が足りなさすぎる気がして。」
KP「しかし、背伸びをすれば、情報が爆発してしまいますよ?」
伏原「気をつけます。というわけで、検索機を起動して、これまでのキーワードで本を検索していきましょう。」
KP「結局〈図書館〉ロールが必要になるんですけど、参考までに、どういったワードで検索するのか、教えてもらっていいですか?」
伏原「まず『鬼子』でしょうね。あとは『動物信仰』『日本』『歴史』あたりじゃないですか?それから、できればこの辺の歴史を扱った書籍が欲しいので、『大間々』『歴史』でも検索してみましょうか。」
KP「なるほど、では、ロールをお願いします。」
〈図書館〉ロール→成功
KP「鬼子について検索すると、次の書籍が目に入りますね。」
伏原「出たな、キーパーお得意のリアル書籍参照。」
KP「例によってリアリティのためです。それから…」
KP「こちらの書籍も見つかりますね。」
伏原「ああ、うん、たしかに、ちょうどこういう本を読みたかったんです。」
KP「ちなみに、『大間々』『歴史』では、何も出てきませんよ。」
伏原「まあいいでしょう。では、洋一に頼んで、これらの本を貸し出してもらいましょう。」
KP「あなたにずっとくっついて歩いているハルカを見て、洋一は感心していますよ。『よくまあこんなに懐かれたもんだ。』と。」
伏原「無害なおにいさんだと思われてるんだろうな。あと、ほら、強そうだから、守ってくれるってね?」
KP「そんな会話をしながら、図書館での貸し出し作業は終了です。さて、これからの行動予定は?ちなみに、現時点で昼の2時半です。」
伏原「結構経ったな。」
KP「洋一の家と図書館は真逆ですからね。これにまんじゅう屋との往復を含めれば、結構なものです。そのうえ、午前中にウェブ調査してるじゃないですか。」
伏原「まぁ〈図書館〉ロール3回でこれだと思えば、ましな方ですかね。とりあえず、洋一を送り届けましょう。」
ハルカの機嫌取りを忘れない男
KP「さて、次の行動はどうしましょうか?送り届けて、なんやかやと3時過ぎですが。」
伏原「本を読んでる間、ハルカちゃんを退屈させちゃいけないな。なんかゲームの一つでも買ってあげましょうかね。」
KP「金遣いが荒いですね。」
伏原「尊敬するプレイヤーが、情報を得るために金を惜しむなと教えてくれたので。」
KP「なるほど。では、また往復になりますが、大間々の南に大きめのショッピングセンターがあるので、そこで買うことにしましょうか。ついでに、ツノ隠すやつ、買ってくださいよ。」
伏原「うーん、移動時間がかさむなぁ。」
KP「で、何を買ってあげるんですか?」
伏原「3DSと、ポケモンでも。」
KP「オメガルビーとアルファサファイアどっちにするんですか?」
伏原「アルファサファイアの方で。」
KP「カイオーガの方が女の子ウケしそうですからね。」
ハルカ「何これ?ちっちゃなテレビ?」
伏原「あれ?ゲームしたことないの?」
ハルカ「ゲーム?わたし知らないよ?」
伏原「『前の人』たちは買ってくれなかったの?」
ハルカ「うん。でも漫画は知ってるよ?あとね、ケータイでテレビ見たことある。」
伏原「袴は買ってもゲームは買わなかったんだな…。『前の前の人』は、かなり変態かもしれん。」
ハルカ「わー!映った!映ったよ!テレビが二つある!」
伏原「ハルカちゃんは癒しになりますなぁ。文字が読めるでしょうから、説明書を読んでもらって、自分でプレイしてもらいますね。その間に、僕は読書といきましょう。」
雲行きは怪しく、意志は強く
KP「で、ツノ隠すやつを買ってくれないまま、帰ってきちゃったんですが。」
伏原「あ、忘れてた…。」
KP「まさかツノ萌えでもあるんですか?」
伏原「だからビジュアルイメージないでしょ!萌えらんないでしょ!?」
KP「とりあえず、本を読みますよね?どちらからお読みになりますか?」
伏原「じゃあ、「鬼子」論序説からいきましょうか。」
KP「では、次の内容がわかりますね。」
「鬼子」論序説(非引用)
生まれついて歯の生えている子供を鬼子と呼ぶ地域では、赤子をただちに棒で殴り殺すことはない。代わりに、地域で定められた土地に鬼子を捨て、誰かに拾ってもらうことで、汚れを禊ぐという慣習がある。そのうち特に特徴的なのは、山に子供を捨てるというものである。
山に子供を捨て、それを拾ってもらうという文化には、以下のような世界観が関係していると思われる。まず、山とは、村の人々にとって異界、あるいはそれにつながる場所であり、そこに子供を残すことは、子供を一度殺すことに相当した。その後、再度別の人に拾われて村に帰ってくることで、子供は再誕生を経たものと考えることができた。つまり、穢れを禊いだとみなされたのである。
KP「おおむね、以上のような内容が論じられていますね。」
伏原「大間々における異聞がどうなっているのかはわからないんですか?」
KP「はい、主に九州の事例を扱っていたようです。」
伏原「うーん…では、インターネットで調べてみます。」
〈図書館〉ロール→成功
KP「たしかに、大間々の鬼子伝承は、生まれつき歯の生えた子供を鬼子と呼び、誰か他の人に拾ってもらう、というもののようですね。北の山がそのための場所に選ばれてきたようです。」
伏原「ということは、『沙紀ちゃんをあの家庭から引き離して、誰かに拾ってもらう』というのが、伝承通りの行動というわけですね。北の山の具体的にどこなのか…まあ、十二神社なんでしょうけど…。」
KP「早速、シナリオの目的が見えてきましたね。」
伏原「でも、そんなことをやりたくない、という人はいるはずですよ。そしてあなたがそれを想定していないはずがない。つまり、この伝統を打ち破るために、忘れ去られた過去を調査し尽くせばいいっていうシナリオなんでしょう?」
KP「無理せず素直に赤子泥棒やったらどうですか?」
伏原「いや、同レベルのボディーガード、洋一がいるから、成功可能性は低いですし、そもそもそんなことはやりたくない。それに…」
KP「それに?」
伏原「ハルカちゃんの発言から考えると、この現象は、もう何度も繰り返されてきたはずなんです。たとえこの一回を、自分の心苦しさを代償に乗り越えたとしても、この連鎖を止めないと、悲劇は起こり続ける。」
KP「おおっ!主人公っぽいねぇ!」
伏原「とにかく、わたしの目標は二つ。『沙紀ちゃんを渡辺家から引き離さない』というのと、『ハルカちゃんをこの連鎖から解放する』に設定します。」
KP「なかなかタフなルートを選択しましたね。では、次の本、読みましょうか。」
謎は深く、深く湛える
伏原「『神様になった動物たち』でしたね。」
KP「何を探すんでしたっけ?」
伏原「ええと、豊穣の神としての山羊神です。」
KP「そういうことでしたら、目次を見てすぐにわかりますね。そんな項目ありません。日本では、山羊は神格化されていませんね。」
伏原「なん…だと…。」
KP「ここのあたりから、このシナリオの難しさが本領を発揮し始めます。」
KP「もしもあなたが、『沙紀ちゃんを拉致して山に捧げる』という決断をするなら、もうシナリオは後半に突入していると言っていいでしょう。」
伏原「それは、やらないと決めましたよ…。」
KP「もし、これを望まないなら、あなたは、小説の名探偵にならなければなりません。」
KP「ここから先の情報は、分散した情報を結びつけ、推測し、仮説に基づいて媒体を選択していかなければ、獲得することができません。そして得られた情報も、多分に『忘却』を含んでいることでしょう。」
伏原「忘れられた歴史、ですか。」
KP「この大間々に積もり積もった歴史と、神々の理を紐解き、あなたの望むエンディングを勝ち取ってください。」
KP「さあ!あなたの物語をはじめましょうか!」