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クトゥルフ神話TRPG用シナリオ「忘却の結末」執筆完了

シナリオを一つ、書き終わりました。

 

以前からここでご報告していた、群馬県みどり市大間々を舞台にした、忌み子伝承をベースにしたシナリオです。本当は現地取材するべきなのでしょうが、国外在住ということで、グーグルマップのストリートビューで見ただけです。機会があれば是非とも、登場する神社などには参拝したいものです。

 

さて、早速ネタバレというのも芸がないので、リプレイ執筆まではネタバレをしないでおくとして、今日はタイトルの「忘却の結末」について、ちょっとだけ思うところを述べてみようと思います。

 

まず、何よりも、このタイトルにした理由ですが…

伝承が伝わらないとか、消えていくとか、そういう現象について考えさせられたという、シナリオライティングを通じた自分の感想が込められています。

これまで、日本の伝承って、あまり興味がなかったので、調べてきませんでした。しかし、やっぱり面白いというか、興味深い伝承が残っていて、それらを組み合わせると、非常に注目に値するフィクショナルな物語が生まれます。

しかし、私たちはそれを忘れてしまっている。そして、忘れてしまっているからこそ、いざ奇妙な事件に見舞われると、土地の伝承や謂れ、神社仏閣の歴史や怪異の物語などを、一生懸命、人類史の表舞台に引っ張り出してあげなければならなくなります。

 

…でも、クトゥルフ神話TRPGの探索者は、いったいどこまで知れば、十分に「忘却していない状況」になれるのでしょうか?

 

おそらく、なれないんです。

結局、あらゆるクトゥルフ神話TRPGの物語の結末は、どこかしら、「忘却」が含まれています。どんなに図書館ロールを繰り返しても、どんなに説得ロールを駆使しても、誰も知らず、誰も書き残してこなかった、そんな歴史の「忘却」が横たわっているものです。

 

この「忘却」を意識して欲しいからこそ、今回のシナリオでは、おぞましい量の情報を詰め込みました。

古事記から20世紀にまで至る過去の歴史と伝承、神道と妖怪についての知識、畜産や野生生物、語源についての考察など、多岐にわたる情報を収集・整理しなければ、すべての問題を解決することはできません。そして何より、それらの情報を整理してもなお、“すべて”を知ることはできません。

 

こんな「知識」たちが、人々や図書館、歴史資料館の間に断片的に散らばっている一方、その間に、たくさんの「忘却」が散らばっています。

その点では、探索者はむしろ、延々と「忘却」を追っていくことになります。どれだけ追っても、常に「忘却」が残されています。人類のあずかり知らぬ世界、クトゥルフ神話の世界です。

このシナリオでは、本当に追求し尽くした探索者だけが、ついにクトゥルフ神話の魔導書でなければ、得ることのできない知識に直面します。手元には一冊の魔導書があり、それを開けば、探索者が追い求めてきた「忘却」を埋めることができるのです。

 

…あなたは、そのとき、「知りたい」と思うのでしょうか?

 

人類にとって、「忘却」ということが、いかに重要であり、いかに逃れられない宿命であるのか、そのときに探索者は考えてくれるはずです。

 

そんな、人類に伝わる伝承の消極的「忘却」と、あえて知るべきではない知識の積極的「忘却」。

二つの意味での「忘却」が織りなす「結末」は、探索者ひとりひとりによって違います。

どこまでの情報を直視して、どこまでの情報を忘れるのか。何を知り、何を為すのか。

 

こうした楽しみ方ができるほど、このシナリオの充実度は高いと自負しています。しかし、まだ書き込みたい要素が残ってもいます。

 

公開については、プレイしてみて、もっと調査して、このシナリオの本当の意味での完成を期したいと思います。

 

ということで、とりあえずのご報告でした。

今夜から明日にかけて、伏原さんとテストプレイに興じてみたいと思います。