TRPGをやりたい!

電源・非電源ゲーム全般の紹介・考察ブログ

成長要素とTRPGとリアリティ

一通りテストプレイを終えて、シナリオの微調整と資料の印刷に移行するところなのですが、ちょっと思い至ったことがあったので、メモがてらここに記しておくことにします。

 

これまで、ソード・ワールド2.0をプレイしまくっていて、TRPGでは成長要素が必須だと思い込んでいたのですが、そうでもないな、という結論に至りました。

むしろ、成長なんておまけでいいんじゃないか、と。

 

 

1.成長要素のもつ意義

TRPGにおける成長要素は、キャラクターの行動の選択肢を広げ、ゲーム内の行動の自由を存分に高めてくれます。その意味では、「できなかったことができるようになる」というのが、成長要素の最大の意義と言っていいでしょう。

 

成長することによって、これまで戦えなかった強大な敵と戦うことができるようになったり、これまではとてもできなかった強力な魔法を使ったりすることができるようになります。これによって、シナリオの難易度も高くすることが可能になり、これまでとはまた違った演出をシナリオに組み込むことができるようになります

 

その点では、同じゲームをやっていても、成長前と後では、全くゲーム性が変わってくることでしょう。前までは難しかった変装や記憶の操作が、魔法によって軽く行えるようになり、かつて頭をひねらなければならなかった問題が、今や魔法宣言だけで解決してしまうのですから。

 

 

2.成長要素に伴うルール条件

成長要素は、同じキャラクターを継続して利用するモチベーションを大いに高めます。それと同時に、幾つかのルール上の特徴を伴うことになります。

 

(1)キャラクターが死んだら成長が無駄になる!

成長していくことを前提にすると、キャラクターを殺すことが非常に難しくなります。

死ねないんです。キャラクターをロストすると、また1から成長し直さなければなりません。それにはあまりに長い時間が必要ですし、キャラクターをロストしたことをきっかけに、ゲームプレイをやめる、という事態にだってなりかねません。

 

しかし、TRPGでは、本来、キャラクターの死亡がルールブック内で想定されています。

もちろん、成長に重きを置いたゲームでは、簡単に死亡することがないように、ルール上も厳重な手続きが用意されています。それでも、それらのルールを越えれば、キャラクターは死ぬのです。いいじゃないですか、死んだって。

 

(2)途中参加のキャラクターはいきなり強い!

そして次の問題が発生します。

プレイヤーを逃がさないためには、他のプレイヤーのキャラクターと同じくらいの強さを持ったキャラクターを提供してあげなければなりません。そうでなければ、他のプレイヤーにとっての冒険と、彼にとっての冒険のレベルが全く違うからです。

 

それゆえ、新しいメンバーは、これまでの苦労などを一切積み重ねることなく、突然強力なメンバーとして登場します。なんとなく拍子抜けしてしまうのです。…今までの苦労はなんだったの?と。

 

 

(3)高レベルキャラクター作成ルールがある

もちろん、こんな事態に対応するために、高レベルキャラクターの作成ルールが備わっています。逆に言えば、初めから高レベルキャラクターを作成して遊ぶことだって可能です。ひと薙で100の敵をなぎ倒し、魔法を唱えれば国が滅ぶ、そんなメンバーで冒険を開始することもできます。

 

こうなると、もはや「成長要素」ではなく、ただの「選択肢の幅の選択」というルールにすぎません。選択肢が広がるのは、TRPGとして歓迎するべきではありますが、単純に威力が強化されたり、同じ種類の状態異常を広範囲にばらまけたりするだけでは、事実上選択肢の増加とは言えません。

 

※TRPGにおける選択肢の増加について

TRPGにおける「選択肢の増加」とは、結果としての行動が多様化するものでなければなりません。

もしも、戦闘メインのTRPGで、成長した結果、論戦が行えるようになれば、選択肢が増加したと言えます。また、本で調べるばかりだった探索活動に、スリで手紙を抜き取ったり、物陰から会話を盗み聞きしたりするパターンが加われば、選択肢の増加と言えます。鍵開け系技能による不法侵入の追加は、典型的な選択肢の増加と言えます。変装能力の獲得もそれとして扱って良いでしょう。

 

成長は、このような「新しい解決手段の獲得」のために用いられるべきであって、「既存の解決手段の強化」のために用いられるべきではありません。

 

 

3.「リアリティ」がない!

成長要素を基軸にしたTRPGの最大の問題は、そのリアリティです。

冒険を積み重ねていくうちに、新しい剣技を習得したり、魔法を習得したりするのは良いでしょう。しかし、あまりにも成長速度が早いのです。こんな異常なまでに成長の早い世界なのに、なぜ強い能力を持った敵が稀にしか出現しないのか、説明に窮してしまいます。

また、なぜそんな高い能力を有した戦士や魔法使いが稀なのかもわかりません。プレイヤーたちのキャラクターは、ゲーム内時間でものの2ヶ月もあれば、ヒヨッコからいっぱしの英雄になれます。1年もあれば、歴史上有数の能力を誇る神にも近い存在にだってなることができます。そんな簡単に伝説的存在になれるなら、それはもはや伝説的ではありません。

 

つまるところ、GMがもっと全力で殺しに行くべきなのです。そして、断固として初期製作レベルのキャラクターでのリベンジのみを求めるべきなのです。

 

その意味では、オープンワールド的な設定を作り上げてプレイするのが最適かもしれません。その世界内の時間を延々経過させながら、次々に生まれる冒険者たちの行動を世界に反映させ続けるのです。その世界が、もしも十分なリアリティを持っているなら、いつでも駆け出しの戦士や魔法使いのための仕事が用意されているはずです(たとえどんなに時間が経過していても)。

結果として、「大きな物語の主人公を追体験する」という意味での、コンピューターゲームに多いタイプのロールプレイングゲームは、TRPGには不向きということになります。むしろ、群像劇として進行する「一つの世界の物語」の中で、死なないように生きて見せるのが、成長要素つきのTRPGに求められるスタイルなのかもしれません(わりと死ぬので、成長要素を上り詰めるのは難しいのですが)。

 

そんなことを考えていると、「行動の幅を広げる」という点に特化した成長システムを持つTRPGを探してみたくなりました。

まだTRPGヒヨッコなので、どんなものがあるのかわかりませんが、見つけたらご報告してみることにしてみます。