【うろ覚えSWノベル】山賊退治ミッション:9(少女)
村人に尋ねると、すぐにミーナの家の所在はわかった。人々は一様に、山賊の襲撃以来ミーナが怯えてしまって、親しくしていた人以外には扉を開いてくれないと語って、彼女の今後を心配しているようだった。
「どう思う?ボブソンくん?」
ラビットはすでに解決策を知っているような口ぶりで、ボブソンに尋ねた。
「このぬいぐるみを貸そう。俺は下がっている。」
ラビットは満足げにぬいぐるみを受け取り、両手でそれを頭の上に抱えた。
もしタビットという種族を知らなければ、ぬいぐるみが二つ、重なって歩いてきたようにしか見えないことだろう。こんなものに警戒心を解かない少女があり得るだろうか。
「ミーナちゃん!ミーナちゃん!こんにちは!」
ラビットは普段から高かった声を、さらにもうひとつ高く作って、玄関から呼びかけた。
少女は玄関の扉をゆっくりと開けて、片目だけで来訪者の姿を見ようとする。そこには笑うタビットとその頭の上に乗ったくまのぬいぐるみの姿。少女の目には、二つの動くぬいぐるみが突然家を訪れてきたようにしか見えない。
「僕とお話ししようよ!」
ラビットが呼びかけると、ミーナは喜んで扉を開ける。くまのぬいぐるみを受け取ると、それを抱きかかえたまま、ミーナはラビットをリビングへ招きいれた。
「ミーナちゃん!もう一人、おじいちゃんがいるんだけど、一緒に入れてもいいかな?」
尋ねると、ミーナは少し心配そうな顔をしたが、明るく「いいよ」と答える。
ラビットがボブソンを招きいれ、三人は話し始めた。
「ミーナちゃんは怪我しなかったの?」
ラビットはいきなり本題に近いところから尋ねた。ミーナは注いだ水をこぼさないように、ゆっくりと木製のカップを運んでいる。
「うん。私は隠れたから、大丈夫だったの。お人形さん達は何をしにトーチに来たの?」
水を運び終えたミーナは、ラビットの隣の席につき、くまのぬいぐるみを抱いた。
「あの山賊たちをやっつけに来たんだ。」
「そうなんだ!お人形さん達はつよいんだね!」
「お父さんとお母さんは?」
ラビットが唐突に本題に入る。
「お母さんはこの前殺されちゃった。お父さんもあれで少しおかしくなっちゃったみたい。」
両親に起きた悲劇は、少女が受け止めるにはあまりに重すぎたようだ。少女は自らの母の死を、何か物語の中の出来事のようにしか、まだ考えられていないようでもある。
「お父さんはいつも帰ってきてくれるんじゃないの?」
ラビットが尋ねると、ミーナは少し不思議そうな顔をしたが、すぐに何かに思い当たったのか、質問に答えた。
「村長さん達から聞いたの?村長さん達は、お父さんが死んだって言うんだけど、お父さんは毎日夜には帰ってきてくれるんだよ?お昼にどこに行っちゃうのか、私はわかんないんだけど。」
「でも、お父さんの様子がおかしいって、さっきミーナちゃん言ってたよね?」
「そうなの。お父さん、全然話さなくなっちゃったの。きっとお母さんが死んじゃったから、すごく悲しんだと思う。」
ラビットは少し考える。ここに来るまでの聞き込みで、間違いなく父親の死体が確認されているという情報を得ている。ということは、この家を訪れる「父親」は、アンデッドか何かなのだろうか?
「お父さんに、足はあるよね?」
「??あるよ?」
「それならお父さんは生きているんだ。ミーナちゃん、安心して。僕たちが山賊を倒したら、きっとお父さんも元気になるよ。」
ラビットがミーナを励ますと、ミーナは「ありがとう!」と言ってラビットに抱きついた。初めて父親の生存を認めてくれたラビットは、ミーナにとって、山賊襲撃以降の孤独を初めて溶かしてくれた存在になった。
「ミーナちゃん、またすぐにくるからね!」
ラビットはそう言って、寂しそうに見送るミーナの元を去った。
ミーナの家の扉が閉まったのを確認したラビットは、声色を戻して、彼の結論を述べた。
「あいつの親父、シメるぞ。」
「そうっすね。」
ボブソンも、何の迷いもなく応じた。
小さな娘を騙し、その最後の親族を暴行する計画を立てる二人組は、村の広場で聞き込み調査を行う、あもちんぽとキリトのもとへ向かうのだった。