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【クトゥルフ神話TRPGシナリオ】狂惑の輪廻(改定版)後半

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 完全な入れ替わりを試みる魔術師に狙われた探索者は、徐々に自らの社会的な立場を失い始める。混乱の中、同じ現象に見舞われたというホームレスの男性は、入れ替わりをしようとしている人々は嘘を使って被害者を騙そうとしているという推測を述べる。しかしどうやってその化けの皮を剥がすことができるのだろうか。
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探索者の情報(後半)

怪しい人物

 なんらかの形で警察署にたどり着いたとき、あるいは警察に捕まらないように振舞っていた場合には、駅などで掲示板が視界に入る場面を設ける。これがシナリオ全体の結節点となる。つまり、探索する対象は自分自身ではなく、こんな面倒なことを仕掛けてきた他人であることに思い至らせるのである。

頃合いを見て技能なしで提供する重要情報

一枚の張り紙が目に入る。どこかで見たことのある老いた顔がそこにある。行方不明の張り紙だが、間違いなくその顔はどこかで見たことがある。いるべき誰かがいないのと、いるべき誰かが二人いるのと、どちらが不幸なのだろうか。そのいなくなった人のスペースに、私を入れてもらうわけにはいかないのだろうか?

張り紙を見て以降〈アイデア〉に成功

誰かが私の存在位置に入ってきたなら、誰かがいなくなっていてもおかしくない。質量と同じように、人間量は保存するのだ。とすれば、この見覚えのある顔にこそ、ヒントがあるのではないだろうか? その顔をどこで見たのか思い出さなければならない。ひょっとすると、解決の糸口は私がいた「私」という地位にはなく、この消えてしまった老人にこそあるのではないか?

 ここまで警察に捕まっていない場合、ここで警察官から次のように声をかけられる。

慎重なプレイによるボーナス情報

「ああ、あなた。その掲示、規則で外せないんですよ。諦めてください」探索者と同じ顔をした人物がこの張り紙を剥がすように要求していたらしい。

 この掲示板のイベント以降、自宅周辺を訪れれば、老人が近所に住んでいたことを思い出すことができる。

近隣の情報

 行方不明の老人をどこで見かけたのか思い出すためには、自宅近辺に近づくか、マンションの管理人、近所の住民などに老人のことについて尋ねる必要がある。
 なおシナリオ後半に入っていれば、知人などには急な引っ越しについての情報が出回っている。タイムリミットは残り数日だ。

老人についての聞き込み

写真の老人は、同じマンションあるいは自宅の近辺に半年ほど前に引っ越してきた人物で、何度かすれ違ったことのある“近所の他人”だ。つまりこの辺りに老人の自宅があるはずだ。

 ここで老人の住所を調べるためにどのような手段を取れば良いのか、プレイヤーが思いつかない場合、判定によって発想を補助する。

老人についての調査方法を〈アイデア〉〈法律〉で発想

マンションならマンションの管理人、あるいは近所の住民に尋ねることでたどり着けるかもしれない。すでに騒ぎを起こしてしまい自宅近辺が警戒されているなら、探偵に相談するのもいい方法かもしれない。

探偵事務所

 探偵事務所を探索者が求めた場合、古小路(ふるこうじ)探偵事務所を提案する。老人の調査を依頼すると、探偵は眉をしかめて訳知り顔で次のように訪ねてくる。

技能なしで提供

「その人、行方不明になったんでしょう? 半年ほど前にあなたの住むすぐ近くに引っ越してきて、ふいっといなくなってしまった。なんでそんな人のことを調べようとしているんです?」

探偵に事情を説明するか〈言いくるめ〉〈説得〉〈信用〉に成功

探偵はこの4ヶ月間、老人の依頼で探索者の生活を尾行し続け、報告書を作成していた。可能な限りのあらゆる情報を収集しており、同僚などにも聞き取り調査が行われていた。しかし3日ほど前に老人からの連絡が途絶し、突如行方をくらませたという。老人からは前払いの実費がほとんどだったため、探偵は報酬をもらえるなら協力すると申し出る(〈値切り〉の判定も可能)。

10万円の支払いあるいは〈値切り〉〈信用〉の成功

探偵が調べ上げた4ヶ月分の調査記録を得る。探索者の人柄や趣味・嗜好が徹底的に整理されているほか、契約してある様々なサービスの状況まで調べてあり、読めば読むだけ気味が悪くなる。

正気度判定

探偵の報告書 0/1

老人の自宅

 行方不明の老人の自宅はきちんと施錠してあり、侵入するためには自宅に潜入するのと同じ工夫が求められる。侵入した形跡を残してもよいと判断するなら、技能は何一つ成功せずともよい。

老人の自宅への侵入に成功する

 老人のノートが残されている。不老不死を得るための議論が展開されているが、肝心の肉体的な不老不死についてはすでに解決済みなのか論じられていない。
 このノートでは主に実際に不老不死になっても社会的な身分が同じだと怪しまれるということについて論じられており、転居を繰り返す方法では不十分として、誰かの身分を乗っ取る方法が最良の手段として結論づけられている。そこで「誰かの姿をとる魔術の研究が必要だ」と締めくくられている。
 ここで〈アイデア〉での判定を実施し、成功した場合次の正気度判定を実施する。

正気度判定

魔術の存在を確信する 1/1D6

 このとき探偵が同行していれば、最も重要なものは持ち去ったのだろうと助言し、部屋に押入られたときに相手が持ち込んだものがなかったかと尋ねられる。宅配便の箱がそれに該当する。もし探偵を同行させていなかったとしても、〈アイデア〉判定あるいは判定を免除してプレイヤーとの会話の中でこのことを伝えてもよい。

クライマックスへ

自宅への再侵入

 以上の情報を揃えた状態なら、たとえ警戒されていたとしても、探索者の自宅に再度侵入を試みることができる。ただし警戒されていたなら相応に慎重な態度が要求される。無理にでも通ろうとするなら、警察官とのもみ合いが発生することも視野に入れておこう。
 とはいえ、基本的に慎重な態度を見せていれば無理に妨害する必要はない。序盤と同様になんらかの技能判定に成功することですんなりと侵入が可能な状態になる。ただし、技能判定を駆使して相手との鉢合わせを回避しようとしていた場合を除き、魔術師は探索者が脱出するまでに自宅に戻ってくる。その場合でも様々な解決方法がありえるため、こちらは容赦なく登場させよう。

捜索宣言により自動発見

非常に見つけにくいところにあるものの、入れ替わりを試みた魔術師が持ち込んだ宅配の箱を発見することができる。バレーボールほどの大きさで、持ち去ることもこの場で開封することもできる。

宅配の箱を発見時〈聞き耳〉

魔術師の帰宅を察知する。このまま対峙することを選ぶなら追加の判定は不要だが、もし逃走を試みる場合、その方法に応じた判定が必要になる。〈隠れる〉やDEX×5などを利用する。

魔術師との対峙

 もし逃走に失敗した場合、箱の中身を見る前に魔術師と対決することになる。魔術師は箱を奪おうと死力を尽くすため、箱を奪取して逃走するには相応の戦闘能力が求められる。

探索者と化した魔術師

STR 7 CON 10 POW 19 DEX 9 APP ※ SIZ ※ INT 14 EDU 35
HP 13 MP 20 SAN 0
攻撃手段:パンチ50% ダメージ1D3
装甲:自己保護の創造による保護(ルールブック258ページ)
習得魔術:皮膚の制御・自己保護の創造
技能:聞き耳40% 変装50% 法律20% 目星30%

 相手を気絶させるなどした場合、相手の体を調べると奇妙な袋を身につけているのに気がつく。これを発見した場合、魔術解除による結末に移行する。

箱の中の品々

 うまく相手の行動を予測したり、素早く逃走したり、もみ合いの末離脱に成功した場合、箱の中を確認する十分な時間を得ることができる。箱の中には以下の品々が入っている。

持ち込まれた箱の中身


探索者の調査記録(探偵事務所のものに書き込みが加えられたもの)
大量の書き込みとメモが添えてあり、徹底的に研究されていることがわかる。まだこの資料を目にしていなかった場合、正気度判定(0/1D3)を実施する。
皮膚について
誰かと同じ姿に成りかわる呪文の研究。内容の把握に2時間、研究には4週間の期間が必要(正気度を1D6失う)。習得する呪文は皮膚の制御(ルールブック279ページ)
不老不死の研究
寿命を延ばす魔術の研究。内容の把握に3時間。研究には2ヶ月が必要(正気度を1D10失う)。習得する呪文は自己保護の創造(ルールブック258ページ)
記録
ただ記録と書かれた紙。8つの名前が書かれており、8番目に探索者の名前、7番目に行方不明になった老人の名前が書かれている。

 以上の情報を得ることで、ルールブック258ページ、自己保護の創造の項目に書かれている弱点を把握することができる。すなわち相手が老衰を避けるために持ち歩いているという身体部位の切れ端を入れた袋だ。探索者がこの袋を奪い取れば、相手の術は解けて死に至ることが予想できる。

結末

 概ね4つの結末が考えられる。

交渉による結末

 探索者が粘り強く警察や行政、知人などの信頼を勝ち取り、あらゆる手段で魔術師の行動を妨害し続けた場合、相手はあまりの妨害を嫌って入れ替わる相手を変えた方がよさそうだと判断する場合がある。この結末を迎えるために具体的なゲーム上の条件は設けないため、プレイヤーが意地を通そうとしたものの他の結末に至れなかった場合には、この結末を迎えたものとしよう。ただしそのためには例の箱を魔術師が持っていることが条件となる。
 相手は「面倒な性格だとは思っていたが、こんな調子だとこれから先も気楽にはあなたを演じ続けられなさそうだ」と言い、箱を伴って退出する。「1ヶ月くらいはよく似た人を見たと言われるかもしれないが、もう関わらないから安心してくれ」と言い残して立ち去る。
 しかし探索者はこの経験を通じて、こうした入れ替わりが社会のあちこちで頻繁に起こっているのではないかという恐怖を抱いたまま日常に戻っていくことになる。正気度の回復を実施せずにセッションを終了する。

魔術解除による結末

 魔術解除による結末は考えられる限り最もよい結末だ。袋の中身が放たれると、魔術師は急激に老衰しはじめ、見る見る間に皺に包まれて筋肉がしぼみ、体表面の水分が失われたと思うと、髪が抜け落ちながら頬や眼光が凹んでいく。しまいには声にならぬ叫びを残して灰色のしぼみきったミイラが床に倒れ臥す。この光景を直視すれば、正気度判定を免れない。

正気度判定

ミイラ化を目撃 1D3/1D10

 遺体は現在の世界で把握されている誰のものでもない姿をしている。この死体を届け出るにせよ、自ら処分するにせよ、そう悪いことは起こらないだろう。探索者の部屋にはミイラが残した爪や毛髪と、知るべきではない魔術が記されたノートが残ることになる。それらをどう扱うのかは探索者の判断に委ねられている。

報酬

正気度回復 1D10+1D6
クトゥルフ神話技能 1%
拾得物 魔術について書かれたノート

殺害による結末

 十分な調査を行わずとも、徹底的に相手を攻撃することでこれを殺害することもできる。しかし探索者が不用意に相手を殺害してしまった場合、相手は姿が変容しないまま死亡してしまう。これによって探索者を殺害した身元不明者として、探索者が逮捕されることになってしまう。自分にそっくりな人間を殺害した精神錯乱者として、しばらくの間ゴシップとなって世間を賑わすのかもしれない。

正気度判定

自分自身の殺害 1D3/1D10
狂人として収監 1D6/1D20

新しい人生という結末

 解決を諦めて新しい人生へ歩み出すこともできる。ホームレスや闇社会で新しい身分を買う、あるいは国外逃亡など、様々な方法が認められる。いずれの場合であっても、正気度の回復は行わない。また次にその身分を奪われる日はそう遠くないのかもしれないのだから。