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どうやって探索の動機付けを行うことができるのか?【クトゥルフ神話TRPG】

クトゥルフ神話TRPGシナリオを作成するにあたって、重要な要素の一つが「探索の動機付け」です。今日隆盛している脱出ゲーム型シナリオでは目的を設定する必要がありませんが、通常のシティシナリオでは探索の動機を設定し、それに即した行動をとれるように誘導する必要があります。

 

今日は様々な動機付けの方法を列記し、それに応じた解決のあり方をセットで提案していこうと思います。シナリオの最終的なオチから逆算して、各プレイヤーに動機付けを与えることで、より雰囲気あるセッションを楽しみましょう。

 

 

 

自らの身に危険が迫る

もっとも強い探索欲求を生じるのが、自分の身に危険が迫っているパターンです。

  • 毎晩悪夢を見るようになった。
  • 見知らぬ部屋に閉じ込められた。
  • 殺人の予告がなされた。
  • 先祖の残した遺物に呪いについての情報があった。
  • 体の一部が変化し始めた。

こういった様々な形式で自分自身に迫っている神話的恐怖の片鱗をのぞかせることができます。探索者は最悪の事態を回避するために探索を行うことになります。

この動機続けを行った場合、シナリオの結末は「脅威を取り除くこと」にあります。脅威の原因を特定し、それを排除することではじめて、シナリオは完結するのです。たとえ怪しげな人物や存在の排除に成功したとしても、その相手が間違いなく脅威の原因であるという確証がなければ、シナリオクリアとは言えません。その点を頭に留めつつ探索過程をデザインして、物足りないシナリオにならないよう注意しましょう。

 

仲間の身に危険が迫る

PC全員に危険が迫っていなくとも、PCの一部に危険が迫っていれば探索の必要が生じます。公式シナリオの一つ「もっと食べたい」で利用されているスタイルです。

  • 仲間の行動が明らかにおかしくなった
  • 仲間の体に異常な紋章や変形が生じた
  • 仲間が連日何かに襲撃を受けている
  • 仲間のドッペルゲンガーが現れる

このように様々な方法でPCたちの一人に危険を迫らせることができます。

この動機付けで重要なのは、探索者たちが親しい知り合いであるという条件が背後にあることです。知り合いでなければ、担当医や警察など職業上の理由で対象を保護する設定を加える必要があります。

シナリオの結末としては、友人の身から脅威が去れば解決ということになります。脅威の原因と除去の方法が探索プロセスを通じて明らかになるように調整しましょう。そのうえで、仲間の身から明らかに脅威が去ったのだという内容の演出をもってセッションを終了させます。

注意しておきたいのは、最終的に事件の全てを解決する(他の被害者までも救済する)必要はないということです。少なくとも仲間の身の安全さえ確保できれば、それ以上脅威に首をつっこむか突っ込まないかは、探索者の自己責任なのです。

 

誰かの行方を捜している

親しいNPCが事前に行方不明になっており、その捜索を自主的に行おうとしているという設定も多用されます。

  • ある村/島を最後に知人が行方をくらませている
  • 友人の失踪について、情報を知る人物の元に話を聞きに行く
  • 友人が助けを求める手紙を送ってきた

これらの場合、友人を救出できるかどうかを事前に決めておきましょう。というのも、探索の最終目標は友人の所在の確認と可能ならば連れ帰ることに据えられるからです。友人の救出が可能ならばその所在と救出方法を探索で明らかにします。救出不能であるならその死亡の確認と原因の大まかな理解、人によっては遺体の回収が目標になるでしょう。

したがって、この動機付けであっても事件の全容を解き明かすことは基本的な目標にはなりません。限りなく真相に近い位置に捜索対象を配置するように気をつけましょう。それはちょうどピーチ姫がなぜかいつもクッパの部屋の後ろにいるようなもので、事件の全容を解き明かさなければ救出できないような配置が求められるのです。

 

 

助けが必要なNPCへの庇護欲求

だんだんと動機付けが怪しいものになってきました。

この動機付けでは、比較的弱い存在である保護対象を登場させます。そして探索者たちはこの対象の身に起こっている不幸を取り除いてあげようと結託します。

  • 邪神招来の依代にされてしまった子供の救済
  • 実験に使われている被験体を救済する

この方法ではいかにして庇護欲求を掻き立てるか、ヒロイン創造の技術が問われます。庇護欲求は社会的認識として弱い立場にある性質を積み上げることで成立します。かつては『女性であること』がその筆頭でしたが、今は女性も社会的に強い立場にあるので、『幼いこと』の方が優先されがちです。他の性質としては現在の困難に対して『無力であること』、『病弱であること』『言葉が使えないこと』『金銭的に困窮していること』…なんだか悲しくなってきますが、このような性質が現在広く認知されている弱い立場の性質です。うまく組み合わせて、探索者たちの庇護欲求を刺激しましょう。

 

依頼による調査の実施

実は公式シナリオ系で最も多くを占めているのが、依頼による調査動機の確保です*1。ファンタジーTRPGなどと同じように、依頼を受注して探索を行うスタイルも可能ということは忘れられがちなので、よく頭に入れておきましょう。

  • 幽霊屋敷の調査を不動産屋に依頼される
  • 昔儀式で呼び出してしまった化け物の封印を死に際に依頼される
  • 地下鉄で噂される怪現象の取材を命じられる

それでも、依頼に基づいて探索者たちが行動する展開では動機が弱いのも事実です。探索者たちが危険を顧みず事態に深入りすることはなさそうですし、途中で撤退することも認められています。

それゆえ、この形式の動機付けを利用する場合には、探索開始後しばらくして他の動機付けへと誘導するイベントを発生させるのが有効です。たとえば依頼されて調査を開始した洋館で、恐るべき脅威が現れた瞬間に館からの脱出が困難になり、自らの身に迫る危険を排除するという動機に切り替えるといった方法です。

シナリオの結末は依頼の達成によって実現しますが、他の動機にシフトさせることに成功していれば、他の結末でもプレイヤーたちは納得してくれることでしょう。

 

探究心をあてにする

さて、最も問題のある探索動機がこれです。これを利用してよいのは探索者が学者や児童などの好奇心豊かなキャラクターの場合に限定されます。

  • 街で噂の怪現象について調査したくなった
  • 奇妙な思想を掲げる団体について調査したくなった
  • この世界の真理を知りたくなった 

他にもさまざな探究心のあり方があるとは思います。これに難色を示すのは、シナリオの解決を探索者の好奇心が満たされることにおいてしまうからです。つまりシナリオ全体が解決せずとも、プレイヤーの方で「そろそろ満足です」と言われればセッションは終了せざるをえなくなります。

そこで探究心のあり方をいくらか具体化するよう心がけましょう。特定の文字列を解読したい、特定の書物を手に入れたい、特定の魔術の実在を確かめたい…このような具体的な目標を初期の探索で抱かせれば、そこがその探索者の目標ということになります。これによって、シナリオの解決ラインをプレイヤーの判断からキーパーの判断に引き込むことができます。

 

 

まとめ

いつもよりもやや長い記事で、探索の動機付けについて整理しました。

総じて言えることは、探索の動機付けは「シナリオクリアの条件」と表裏一体の関係にあるということです。シナリオクリアの条件から逆算して、それぞれのプレイヤーに探索の動機を与えるように心がけましょう。

*1:TRPGシナリオ作成大全Vol.6内「クトゥルフシナリオの「常識」」による