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絵本のような世界で繰り広げられる愛の物語【Last Day of Juneレビュー】

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 こんにちは。雰囲気の良いゲームをわりと多く紹介しているような気がしますが、今回もその例に漏れず、絵本のようなグラフィックデザインのパズルゲームを紹介します。

 「Last Day of June(ジューンの最期の日)」は、非言語であるにも関わらずストーリーテリングを目的としたゲームであり、そのグラフィックとシンプルなゲームデザインであなたに優しい物語を届けてくれます。

非言語パズルアドベンチャー

 このゲームをジャンル分けするときに、「アドベンチャー」という単語を付すかどうかは迷いどころです。しかしsteamのタグとしてアドベンチャーが付されているので、今回はそれをつけることにしました。まずはこのゲームがどういうゲームなのか紹介します。

非言語ゲーム

 このゲームにはたくさんのキャラクターが登場しますが、その一人として具体的な言葉を話すことはありません。全員がモゴモゴと何か音声を発しますが、聞き取れる言葉は一切発されないのです。それゆえ、プレイヤーは映像とキャラクターの動きから状況を解釈する必要があります。
 しかしその点で難を感じることはまずないでしょう。一見すると、絵本のようなグラフィックに加え顔も描かれていないキャラクターの感情や目的を解釈するのは困難に思えるかもしれません。しかしいざ遊んでみると、丁寧に作り込まれた身振りや映像表現によって、解釈は容易です。

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丁寧に描写するためイベントムービーはやや長い印象

パズルゲーム

 さて、キャラクターの状況や目的を理解できるとして、パズルとしてはどのようなことが課されるのでしょうか? 謎解きの内容はその章で扱うキャラクターによって微妙に異なります。しかし全員に共通するのは、時間制限のあるアクション要素や複雑な数理パズルは含まれないということです。
 行動を起こせる対象はわずかに輝いており、近づくとアクションキーを押すように指示が表示されます。何度失敗しても章をやり直すことができるため、ひとまずアクションを起こしてみるというのが定石になります。それぞれのオブジェクトに働きかけると何が起こるのかを見ていくうちに、自然と異なる結末への道筋が見えてくることでしょう。

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押すべきボタンと短い説明が表示される

アドベンチャーゲーム

 こうした謎解きは、第三者目線でキャラクターを操作することで進行します。マップは数件の家があるだけの村の中に限定されていて極めて小さい範囲です。この点からアドベンチャーゲームとは言いにくいところでもあります。
 それでもマップ範囲を広げていくアドベンチャー的な要素は関わっています。それぞれのキャラクターにはそれぞれの能力があって、特定の道を開くことができます。開かれた通路は他のキャラクターの過去でも開かれた状態になっており、全員の道を適切に解放することで、シークレット要素の全開放を達成することができます。

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例えば子供はボールで鉢植えをどかせる

愛の物語

 シナリオはある夫婦の愛を主軸に扱っています。主人公とその妻ジューンは幸せの絶頂にありました。お互いを想いあっている様子は見ていて微笑ましくなるほどです。
 ある日、二人が思い出の場所へ出かけることから物語は始まります。それはジューンが夫にサプライズプレゼントを渡す場所として、思い出の湖を選んだことがきっかけでした。

交通事故で妻を失った主人公

 しかし突然の雷雨が二人を襲います。慌てて車に飛び乗り帰る途中、見晴らしの悪いカーブを曲がると、目の前にボールを追いかけた子供が飛び出してきます。運転していた主人公は慌ててハンドルを切りますが、車は道路脇に衝突してしまいます。

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突然の事故により妻を失ってしまう
 この事故により妻を失い、主人公は車椅子での生活を余儀なくされます。くらい生活を送る主人公でしたが、妻の生前のアトリエに入ると、突如奇妙な現象が起こります。絵が輝き、その記憶を遡ることができたのです。
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隣に座る人を失った暗い生活

過去を書き換える

 この現象に気づいた主人公は、妻を救うために過去の書き換えに挑戦します。あのとき子供がボールを追いかけていなければ、事故は起こらなかったはずです。

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子供は遊び相手がおらず犬と遊んでいた
 過去の子供に成り代わり、別の結末を辿るように誘導します。サッカーボールを使って道を開き、飛んでいってしまった凧を回収すれば、それでおじいさんと一緒に凧揚げで遊ぶ過去に書き換えることができるのです。
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これで子供は道路に飛び出さないはずだ

たどり着く結末とは?

 喜ぶ主人公でしたが、目覚めると脚は動かず、隣にジューンの姿もありません。子供さえ飛び出さなければ事故は確かに起きなかったはずです。
 おそるおそる記憶を辿ると、主人公は別の光景を思い出します。対向車から落ちた荷物が散らばり、慌てて降りてきたドライバーをかわすために急ハンドルを切った末に、道路脇に衝突したという事故の記憶です。

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別の原因で事故が発生していた
 たった一つの過去を書き換えるだけではジューンを救うことはできません。主人公はこの事故の原因をも取り除こうと、再び過去に挑みます。果たしてジューンを救うことはできるのでしょうか……?

まとめ

 Last Day of Juneは非言語のパズルアドベンチャーです。印象派の絵画のような世界で描かれる愛の物語は味わい深く、グラフィックに好印象を抱く方ならプレイして損をした気分になることはまずないでしょう。
 1周のプレイ時間は3時間弱程度でしたが、全ての謎を解決してシークレットを揃えようとするともう少し謎解きに時間がかかるかもしれません。ちょっとした絵本を見るような気持ちで、ゲームが提供する体感的な物語の世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 2019年1月現在、Last Day of Juneの日本語版はSteamのみで配信中です。
 PS4やNintendo Switchについては、海外での配信は行われているようです。日本でも発売されることがあるかもしれません。

store.steampowered.com