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【クトゥルフ神話TRPGシナリオ】チュートリアル・トンネル(改訂版)

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初めてクトゥルフ神話TRPGを遊ぶなら、その判定手順や進行方向を学ぶのに最適なこのシナリオを活用できる。多くのトンネルがそうであるように、このシナリオには一つの結末しかなく、ゲームキーパーを含めた初心者たちが快適に結末までの展開を楽しむことができる。

シナリオの概要

推奨プレイ人数 1〜3人
プレイ時間目安 テキスト2時間弱
舞台 現代日本、ほか
テイスト チュートリアル

はじめに

このシナリオは、初めてクトゥルフ神話TRPGをプレイするプレイヤーたちのために設計されている。シナリオは極めて短く、このシナリオを通じて技能判定を自ら提案できるようになるのがプレイヤーの目標である。

一方初めてキーパリングをするKPの方では、プレイヤーたちを無事に結末まで誘導することが目標になる。このシナリオの舞台であるトンネルと同じように、このシナリオには一つの結末しか用意されていない。キーパーは安心して情報を提供しつつ、セッションの平穏な終了だけを意識してキーパリングをすればよい。

キーパーの情報

トンネルの中で探索者たちを追いかけてくる粘液質の水はニョグタだ。しかしニョグタかどうかなんて特に関係はない。それは弾丸も効かないスライム状の巨大生物だ。つまりは物理的に排除することはできない敵が迫っていて、探索者たちは逃れなければならないわけだ。

探索者たちはどこまでも続くトンネルの中で探索を繰り広げる。後方からゆっくりと迫ってくる粘液の塊による時間制限のなかで、早急にこの空間の謎を解かなければならない。謎を解くためには指定された技能を利用して情報を獲得し、最適な行動を取る必要がある。探索者たちは無事に逃れることができるのだろうか?

プレイ前の注意点

このシナリオでは、プレイヤーが自ら技能宣言を行えるようになることを目指す。そこで各プレイヤーにはキャラクター作成前にノルマ技能を提供する。ノルマ技能はこちらから使用タイミングを伝えることはなく、プレイヤーが使えそうな場面で使うことを宣言するよう伝えておこう。いいタイミングで宣言することに成功すれば、成功率にボーナスを与えると伝えておいてもよい。
ノルマ技能はプレイ人数に応じて次の順で指示する。

1人目 鍵開け
2人目 言いくるめ
3人目 運転(自動車)

オープニング

時刻は夜の10時。探索者たちは1台の車に同乗して、山中のトンネルに通りかかる。それは良く見かける半円形の長いトンネルで、オレンジ色の低圧ナトリウムランプが照らしている。片側1車線に中央分離帯が続いている。ゆるやかなカーブになっているが、道の勾配はない。周囲には車の姿はなく、探索者たちの車だけが暗い路面に光を落としている。

早速探索者たちに判定操作のデモンストレーションを行う。

判定のデモンストレーション(オンライン)

ここで判定方法について説明を挟みます。
チャットに「1d100」と入力して送信してください。これで1〜100までの任意の数値が返されます。
ここで皆さんのキャラクターの〈アイディア〉の数値に注目してください。
「1d100」に続いて「<=」と入力し、さらにアイディアの数値を入力してください。

例:アイディアが60なら「1d100<=60」

入力が済んだら、送信してみてください。

判定のデモンストレーション(オフライン)

ここで判定方法について説明を挟みます。
判定を行うときには、10面ダイスを2個使います。
自分のキャラクターの〈アイディア〉の数値に注目してください。
10面ダイスを2個振りますが、あらかじめ一方を10の位、他方を1の位にすると決めておきます。

例:10の位のダイスが6、1の位のダイスが8→68

こうして得られた値を〈アイデア〉の数値と比べます。
〈アイデア〉の値よりもダイス目が低ければ成功です。
早速ダイスを振ってみましょう。

このデモンストレーション判定の結果に応じて、次の情報を提供する。

デモンストレーションによる〈アイデア〉

成否にかかわらず
  このトンネルで小鬼かゴブリンのような化け物を見たという噂がネット上でささやかれていたことを思い出します。

誰か成功した場合に追加
  化け物の目撃証言が出てから、この県道を走っていた車が行方不明になる事件が数件起こっていることを思い出します。

これを思い出した探索者には、他のメンバーに情報を共有するためにロールプレイの練習をしてもらおう。次のように説明するとよい。

ロールプレイについて

キャラクターの立場から発言を行うことを、ロールプレイと呼びます。
ゲームの中で誰かに話しかけたり、情報を共有したりするときに使います。
面倒なときには「〜の情報を伝えます」と宣言してくれても問題ありません。
雰囲気を共有する意味でも、積極的にロールプレイすると楽しくなります。

続いて、次の文を読み上げて、オープニングを終了する。

オープニング演出

探索者たちが運転する車がトンネルの中に吸い込まれていく。
規則的なオレンジの光が車内に差し込んでは、後ろに流れる。
幸いにして化け物はいない。緩やかな左カーブ。
ハンドルをわずかに傾けたまま、車は走り続ける。

しばらくして探索者たちは気づくだろう。
車の進む方向に、いつまでも出口が見えないことに。
カーナビゲーションの画面が反応しなくなる。

どこかで聞いたことのある怪異譚。
無限のトンネルが、今まさに探索者たちを飲み込んでいた。

この事態に遭遇したみなさん、ここでSANチェックです。
減少値は 0/1D3 です。

正気度判定

無限のトンネル 0/1D3

正気度判定のデモンストレーション

ここで正気度判定の方法を確認しましょう。
各プレイヤーに現在正気度を参照してもらい、1d100を振ってもらいます。
減少値の読み方は、正気度判定に成功すれば左の減少値を採用し、
判定に失敗すれば右の減少値を採用するという意味です。

ルールブック86〜88ページを参照しながら、正気度判定を行いましょう。

これにてオープニングは終了である。
ここで二つの判定操作の復習をしておくとよい。

オープニング終了時の説明

今日のセッションでは、二つの判定を利用します。

一つ目が技能判定です。技能を宣言して1d100を振って、出た値が技能の成功率より低ければ成功です。

もう一つは正気度判定です。私が指示したら、1d100を振って現在正気度と比べます。現在正気度との大小によって、正気度の減少操作を行います。

この二つを覚えさえすれば、今日は楽しく遊ぶことができます。

なお一般には、これ以外にも抵抗判定や戦闘のスポットルールをはじめ、他にも多くの判定ルールがあることは知っておく必要がある。しかしこのシナリオではそれらやや複雑なルールを運用せずに遊ぶことを想定している。やや煩雑な処理が求められる部分については、上記の基本的な判定法が身についてから、個別のシナリオで経験して学んでほしい。

プレイヤーの情報

乗っている自動車を停車させるところから探索が始まる。ゲームキーパーの方で「車を停車させて、探索を始めましょう」などと宣言し、スムーズにトンネル内の探索に入れるように誘導する。

行動可能な対象(共有メモとして公開)
車から出ずに行える行動
バックミラーなどで後方を確認
携帯電話で調査や通話を試みる
車から出て行う行動
トンネル備え付けの非常電話
押しボタン式通報装置と消化器
避難用トンネル通路

このシナリオでは、初心者であるキーパーにとっても扱いやすいように、あらかじめ探索可能な対象が限定されている。プレイヤーにはこのリストから一つを選んで調べるように伝える。

以下にそれぞれの処理を整理する。

バックミラーなどで後方を確認

直接見るにせよ、ミラー越しに見るにせよ、〈目星〉による判定を実施する。

トンネルの後方へ〈目星〉

〈目星〉に成功
カーブしたトンネルの先から、トンネルを飲み込むほどの大きな影がカーブする壁面にうごめくのを目にします。

〈目星〉に失敗
じっと目を凝らして、集中して背後の様子をたしかめます。するとカーブしたトンネルの先から、何かおぞましい気配が忍び寄ってくるのを感じます。

いずれの場合でも、追加で以下の情報を伝える。

つまり、このシナリオには時間制限があります。あまりにも長い時間を必要とする行動を避けつつ、トンネルから逃れなければなりません。
現在の行動可能な対象は残りの4箇所です。技能に成功すれば短い時間で成功したとみなし、技能に失敗すれば長い時間がかかったものとして扱います。
先ほどの判定によって、おぞましい気配が少し近づいてきました。

KPのコツ:情報の伝達

 キーパリングの小技として、判定の成功失敗が進行に影響を及ぼさないようにするという工夫がある。上の〈目星〉では、結果として得られる情報はほぼ同じだ。
 目星に成功した場合、プレイヤーは目星に成功したから気づくことができたと感じる。一方目星に失敗した場合、失敗したせいで正体がわからなかったと感じる。どうしてもプレイヤーに伝える必要がある情報だと感じたときには、この方法を使うことで欠かさずに情報を提供することができる。

 また、制限時間の運用とその伝達もキーパリングの小技である。それらしい恐ろしい図像の何かを盤上の地図に少しずつ近づけてみたりして、恐ろしい生物の接近を視覚的にプレイヤーたちに伝えよう。プレイヤー達の目を盗んで少しずつ接近させるだけで、プレイヤーに恐怖の感覚を与えることができる。

携帯電話で調査や通話を試みる

判定を実施することなく、次の情報を伝える。

電波が届いておらず、カーラジオを含むいかなる端末も外部との送受信ができない状態にある。
通常ではありえない事態である。

車から降りた探索者

以上の行動は車から降りずに行うことができるが、以下の行動は車から降りなければ行うことができない。
車から降りた際、すべての探索者は必ず次の判定を実施する。

車外に出て〈聞き耳〉判定

〈聞き耳〉に成功
腐った水のような、不快な臭いがあたりに立ちこめていることに気がつきます。
その腐敗臭はどこか朽ちた生物の死体を思い起こさせます。

〈聞き耳〉に失敗
臭いトンネルだと感じます。

KPのコツ:初心者にルールブックを勧める

 このシナリオは初心者用として組まれている都合、初めてプレイする人やルールブックを持たない人への体験として提供されることも多いだろう。そうした場合、この判定で〈聞き耳〉が匂いに対して実施されているという点から、次の補足をしてほしい。
 ルールブックにはこのようにどの技能がどういう範囲で活用できるのかが細かく書かれていて、それを見れば自分のキャラクターの行動の幅がわかるようになる。今日のシナリオでは複雑なものは登場しないと思われるが、より楽しもうとするなら、ぜひルールブックを自分の手元に置いて楽しんでほしい。

トンネル備え付けの非常電話

非常電話の受話器を取って耳元に当てると、喉をすりつぶした人の声らしきものが聞こえる。

「ニオグさまの いけニえ ハしル カンおケで ざシテ マテ」

この恐ろしい声を聞いたものは、SANチェックを行う(0/1)。

正気度判定

受話器のいびつな声 0/1

補足:ただのトラップで終わらせない

探索ではいつも良い結果が得られるとは限りません。
調べてもろくな情報が得られず、正気度の減少や耐久力の減少を受けてしまう場合もあります。

しかし、丁寧に考えれば、そうした情報も重要です。
今回の場合、怪しげな声が「車で座って待て、生贄よ」と話したので、探索者たちは車から離れて積極的に行動するべきだと考えることができます。
基本としては、このような情報の意味はプレイヤーが考え出していかなければなりません。

しかしゲームキーパーはその発想を〈アイデア〉などの技能によって補助して構いません。プレイヤーが自ら思いついてもスムーズに楽しいセッションとなりますが、キーパーが助け舟を出しても負担少ないスムーズで楽しいセッションとなります。

押しボタン式通報装置と消化器

押しボタンを押しても何も反応はない。
消化器とともにハンドアックスが置かれている。
鎖などを断ち切るのに使えるかもしれない。

アイテムの獲得

探索の途中で道具を獲得することがあります。
道具を利用する際にはキーパーに使用を宣言するだけで構いません。
早速ハンドアックスを使えそうな場所を探してみましょう。

※ハンドアックス技能の初期値は20%です。

避難用通路

避難用通路の中は暗くてよく見えない。
携帯電話や非常用の懐中電灯などで照らす必要がある。

照明で照らすと、その先に錆びた鎖が結ばれて南京錠がかけられた鉄の扉が見える。

【PL1のノルマ技能】
南京錠の扉に〈鍵開け〉

南京錠を開けることができます。探索可能な場所に【避難用通路の奥】が追加されます。

なお、一度の技能利用に失敗しても、手元の道具や技能を使って別の手段を考えましょう。
たとえば〈鍵開け〉の代わりに〈機械修理〉を利用したり、銃や斧、体当たりで破壊を試みたりするのはルール上も認められています。
※ハンドアックスによる開錠は何度でも試みてよいとし、回数が増えると怪物が近づく演出を挟んで焦りを促すこと。

避難用通路の奥

扉の先に移動すれば、また少しの時間を消費する。

そこには小さな人影があり、怯えて身を丸めている。

ゴム革が腐ったような皮膚に不潔な体毛が無造作に生えており、汚らしい印象を受ける。
この常識では考えられない生物を前にして、SANチェックを行う(0/1D6)。

正気度判定

食屍鬼の目撃 0/1D6

しかし化け物は意外にも怯えた様子で光に対して眩しそうに顔を覆って縮こまる。どうやら攻撃的な生物ではないらしい。

化け物「ヒェッ… ニオグさま…」

もしも電話の声を聞いた探索者が同行していれば、その声に聞き覚えがある。

【PL2のノルマ技能】
化け物に対して〈言いくるめ〉

怯える化け物から情報を聞き出すことができる。

「ヒだりの ミチは マやかシ。 ミギの カべが ほンモの」
探索者たちはハンドルを右にきって車を運転すればよいことがわかる。

なお、ハンドアックスによる脅迫でもこれを聞き出すことができる。攻撃を試みた場合のみ戦闘の処理を行うが、戦闘の処理は複雑なので、ゲームキーパーが初心者の場合には、攻撃を試みた時点で怯えから化け物がこの情報を口にしたとしてよい。


結末

この情報を手に入れれば、右の通路から脱出するルートが解放される(これ以前に同じ行動を取っていても壁に衝突する)。

通路の先から車の下に戻ると、背後から迫っていた黒い大きな影がついにその姿を表す。
吐き気を催すような匂いがあたりに充満し、油が浮いたように玉虫色に反射する黒いゼラチン質の塊がトンネルいっぱいに這いずり進んでくる。

この姿を見た探索者は正気度判定を行う(1D6 / 1D20)。

正気度判定

ニョグタの目撃 1D6/1D20

 

発狂の処理

このSANチェックで5点以上のSAN消失が発生すれば、次の説明を挟みます。

5点以上のSANを一度に失うと、次の処理をします。

〈アイデア〉による判定 → 成功したら発狂 / 失敗したら正常なまま

発狂した場合、狂気表というものを振るか、プレイヤーとキーパーが相談して狂気を選びますが、今回は「パニック状態で逃げ出す」を自動採用します。


この判定の末に発狂したとしても、絶叫しながら車に飛び乗って勢い良く車を発進させることができる。

これで右ハンドルを切って壁に向かえば、シナリオクリアだ。

 
もしもプレイヤーが3人いた場合、車が今にもゼラチン質の怪物によって飲み込まれそうになっているという演出を加える。

PL3のノルマ技能
〈運転:自動車〉で怪物から逃げる

成否にかかわらず化け物からの逃走には成功する。
技能に失敗した場合、抜け出したところでハンドルを失って車が一回転する。全員耐久力に1D3点のダメージを受ける。

いずれの場合でも、車が本来そこにあるはずの壁に衝突しようとすると、壁は姿を消す。自動車を持ち上げて何かに揺さぶられたような不安な振動の直後、反対に右向きにカーブしたトンネルが姿を表す。固唾を飲む10秒程度の後、トンネルの出口を抜けると、山間に街明かりを見下ろす見知った道路にたどり着く。探索者たちの緊張がようやくとけることだろう。

シナリオは終了だが、最後に報酬と成長の処理を行う。

報酬

正気度回復 1D6


セッション後の処理

このシナリオで利用した技能の成長を行う(ルールブック59ページ)。
耐久力を回復して技能の成長処理が終了すれば、無事にセッション終了である。

 
初めてのキーパリングお疲れ様でした。