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トーキョー・ナイトメアは手軽に遊べる演出メインのシステムです

 発売からはしばらく経ってしまいましたが、僕も「トーキョー・ナイトメア」を遊んでみました。「トーキョー・ナイトメア」は、F.E.A.R.から発売された新たな“トーキョー”シリーズで、先行する「トーキョーN◎VA」からシステムを軽量化しつつ、時代設定を現代に近い近未来とすることで、初心者が接しやすいシステムを徹底的に志向して作られています。

 今日はこのシステムを遊んでみた感想とともに、皆さんにも是非オススメしたいトーキョー・ナイトメアの魅力をお伝えしようと思います。

 

トーキョー・ナイトメア1 基本ルールブック

トーキョー・ナイトメア1 基本ルールブック

 

 

 

 

近未来を舞台にした演出メインのゲーム

舞台は近未来トーキョー!

 トーキョー・ナイトメアの舞台は近未来のトーキョーです。「東京」ではありません、「トーキョー」なのです。

 

 トーキョーの街は、三つの意味で私たちの知っている東京ではありません。

 

近未来のテクノロジー

 はじめに、トーキョーには近未来のテクノロジーがあります。多くの道具がインターネット回線に接続され、個人情報や取引記録もオンラインデータとして管理されています。このためトーキョーのハッカーニューロはコンピューターを通じて様々な情報を思いのままに手に入れることができます。特に先進的な人々はコンピューターとの神経接続技術の利用さえも始めているのです。

銃や麻薬が身近なものに

 また、自由主義的政治改革が起こり、トーキョーでは銃や麻薬が流通しています。治安も悪化してしまい、政府の管理が行き届いていないこともあって、裏稼業も横行しています。プレイヤーは政府や企業の手先クグツとして裏稼業をこなしたり、フリーランストーキーとして事件に首を突っ込んだり、時には悪人レッガーとなって正義の欺瞞をあざ笑うことになります。

不思議な力が知られつつある

 発達したのはテクノロジーだけではありません。トーキョーでは、手品などではない本当の不思議な力が実在することが把握されつつあります。まだその存在は一部の機関だけが把握しているにとどまりますが、社会不安の中で重要な意義を持ちつつあります。そうした力を身につけ、人々を導く精神的指導者マヤカシや、自らの心を鍛える求道者チャクラも現れています。

 

キャラクターの「スタイル」を表現せよ!

 そんな近未来のトーキョーで、プレイヤーは一人のプロフェッショナルとなって物語を体験します・・・・・・・・。そう、このゲームの目的は戦闘でも情報収集でもありません。このゲームの目的は物語を演出・体験することにあります

 物語を演出するために、このシステムでは「スタイル*1」を中心にキャラクターを製作します。スタイルとは、キャラクターの生業や生き様、価値観を表現したもので、ルールブックの中に22種類のスタイルが用意されています。

 キャラクターを作る際には、はじめに3つのスタイルを組み合わせます。スタイルを組み合わせれば、ステータスや選べるスキルが決まり、プレイヤーの「こんなキャラクターを表現したい」を補助してくれます。

 

システムは軽量化されたトランプ方式

手札を切るから展開を作りやすい

 判定にトランプを使うシンプルなシステムも、遊びやすさを支援しています。プレイヤーは手札からそれぞれの判定に適した柄(スート)のトランプを切ります。絵札やエースの扱いは特殊ですが、非常にシンプルなルールで判定を行うことができます

 このシステムの特徴は、展開を演出しやすいことにあります。目標値がわかっている場合、判定が成功するか失敗するかは手札に明らかです。そのため、失敗あるいは成功を前提にした演出をすることができます。せっかく格好をつけたのにダイスで大失敗して物語が台無しになるようなことは起こりにくくなっています。

神業でドラマチックな演出を

 そうした物語演出を重視したシステムの頂点が「神業」です。「神業」とはキャラクターのもつ超越的能力のことで、キャラクターが選択した「スタイル」1つにつき1つずつ得ることができます。

神業はキャラクター表現の格好の機会

 「神業」の効果はTRPGでは掟破りなレベルで凄まじいものです。なんと必ず相手が死亡したり、逆に必ず命が助かったり、なんでも一つのアイテムを得たりすることができます。すべてのキャラクターはスタイル数と同じ3つの「神業」を持っているため、他のデータとは無関係に超越的な能力を3つ持つことになります。

 「神業」は自分のキャラクターの見せ場を作ってくれます。「神業」の効果を防ぐには「神業」を使うほかなく、ゲーム終盤の「神業」の応酬は劇的なクライマックスを約束してくれます。

終盤は残り神業で展開意識を共有できる

 特に終盤では、敵味方の残り「神業」で展開を計算することができます。味方の必殺神業が残り2つで相手の防御神業が残り1つなら、勝利は約束されています。プレイヤーとしては、このような状態を目指すために行動を選ぶことになります。

 クライマックス展開を計算できることで、物語演出という目標はより達成しやすくなります。この単純な例だけでも、どちらがトドメを刺すのが演出としてクールかを考え、数手前からその展開へ向けて盛り上げておくことができます。プレイヤー全員が残りの「神業」から同じ展開予測を自然と共有できるのは、実は非常に効果的なのです。

 繰り返しになりますが、「神業」はキャラクターの演出のためにあります。「神業」を演出上効果的に使うと経験点を得ることができるシステムになっていることからも、演出を重視したシステムの指向性がよくわかります。

 

トーキョーN◎VAは知らなくて大丈夫

 最後に強調しておきたいのは、トーキョーN◎VAを知らないでも楽しく遊べるということです。たしかにスタイルの名称やワールド設定に共通する部分はありますが、そんなものは一切気にする必要はありません。

 トーキョー・ナイトメアは、トーキョーN◎VAの過去の世界を舞台にしています。そう聞けば二つの世界は関係していて、トーキョーN◎VAの知識も求められるように考えてしまうかもしれません。しかし、ゲーム内のキャラクターは未来の世界を知り得ません。その点では、むしろ未来の情報を知っているほうが異常なのです*2

 だからこそ、トーキョーN◎VAを知らない状態は歓迎されます。トーキョーN◎VAは長年に渡って細かく設定されてきたワールド設定に定評があり、熱烈なファンの多いシステムです。それゆえコアなファンほどディープな知識を持っていて、初めて触れる方には近寄りがたい印象を与えてしまうかもしれません。しかし、トーキョー・ナイトメアは、むしろそんなあなたのために作られたシステムなのです*3

 

まとめ:こいつぁクールなRPGだぜ!

 トーキョー・ナイトメアは、スタイルを通じてキャラクターの生き様を表現する、演出メインのTRPGシステムです。システム・世界観ともに軽量化することで、“トーキョー”シリーズの世界に入りやすくした、優れた一作と評価することができます。

 その最大の特徴は、「スタイルを表現する」という特殊なシステムの目標にあります。システムが定めた何かになって活躍するのではなく、プレイヤーが選んだ「スタイルを表現する」という目標は、キャラクタープレイ好きのプレイヤーにとって大変魅力的なものに違いありません。

 この機会にあなたも、あなただけの「スタイル」を表現してみてはいかがでしょうか。

 

トーキョー・ナイトメア1 基本ルールブック

トーキョー・ナイトメア1 基本ルールブック

 

 

*1:ときどきこの記事内で振ってあるカタカナの聞きなれないルビはスタイルを表しています

*2:それはちょうどクトゥルフ神話TRPGにおいて邪神について知らないまま楽しめるのと同じような関係にあります

*3:実際には、トーキョーN◎VAでさえもそんな心配はいらないのだが