「すごろく」って思ったより奥が深いんじゃないか説
また一つ年が明けました。おめでとうございます。
みなさんはお正月は何をして遊びましたか?
少ない親戚が集まった僕の家では、子供と一緒にナンジャモンジャで盛り上がりました。
ところでお正月といえば、いくつか伝統的な遊びもあります。
福笑い・かるた・すごろく・独楽・凧揚げ……なるほど遊びの文化も様々に発達したものです。
今日はこれらのうち、なにを思ったのか、突然「すごろく」について考えてみることにしました。なかなかこれ、奥深いゲームなんですよ。
「すごろく」にもいろいろある!
人生ゲームに見るすごろくとリソース
日本人なら誰もが一度遊んだことがある……とまではいきませんが、存在くらいは知っている名作すごろくに「人生ゲーム」というものがあります。
人生ゲームは普通のすごろくにリソース(資源)の概念を追加したゲームです。プレイヤーたちは一番早くゴールに到達することを競うのではなく、ゴール時の所持金を競います。
僕が人生ゲームで遊んだのはずいぶん前のことなので、今の盤面がどうなっているかはわかりませんが、資金の概念があるものの、基本的に運に任せたゲーム設計になっていたことを覚えています。プレイヤーが意思決定を行うのは、株式や不動産の購入を行うか否かというポイントだけで、それら資産の売却高もランダムに決定されていました。
このため、戦略判断による優劣は発生しにくいゲームになっており、それゆえ大人も子供もフェアに楽しむことができるゲームとして受け入れらていたのだと思います。
巡回型すごろくの古典と現在
一般的なすごろくや人生ゲームは単線型の経路をたどるシステムでした。しかし、かの有名なすごろく「モノポリー」は違います。
リソースの概念もありますが、このゲームでは循環するマス目をひたすら回りながらゲームを進行します。ゴールを目指すのが目的ではなく、資産を増やして他のプレイヤーを破産させるのが目的だからです。
同種のゲームはよく知られたコンシューマーゲームとしても知られています。「マリオパーティ」というゲームでは、多くのステージで巡回型のルートが採用されており、プレイヤーたちはミニゲームを交えつつスター獲得数を競います。
しかしこれらのゲームでは、戦略性やプレイの巧拙がそれなりにゲームに反映されてしまいます。それゆえ、大人と子供が一緒に和気藹々と遊べるかと問われると、力加減・さじ加減が重要になってくるのも事実です。
リソースなき戦略すごろく「スピンデレラ」
「すごろく」といえば、ドイツボードゲーム大賞キッズ部門受賞作であるスピンデレラは紹介しておきたい作品です。
3匹のアリをゴールまで動かすのがゲームの目標ですが、同時に空中から垂れ下がったクモを操作してアリを捕まえてスタートまで戻すことができます。アリとクモ、どちらを何マス動かすのかはダイスで決定され、アリたちはいつもクモの動きに怯えながら進むことになります。
このゲームは逆にリソースの概念を消し去り、文字通り盤上に戦略性のレイヤー(層)を作ることで生み出されたゲームです。単調なすごろくに比べれば戦略性は高くなりますが、依然ランダムが占める割合も多く、大人も子供も楽しめる良作に仕上がっています。
「すごろく」だって協力したい
また、「虹の国」というすごろく型ゲームも紹介するべきでしょう。
このゲームでは、プレイヤーは全員が協力してコース上に散らばった「虹のしずく」を集めます。プレイヤーは前後に移動することができるので、時間をかければ全てのしずくを集めることができます。しかし、途中から全員の敵である魔法使いが追いかけてきて、プレイヤーに危機感をもたらします。
残念ながら現在Amazonなどから購入するのは困難なようですが、これも優れたゲームに違いありません。「すごろく」の基本システムを採用しながら、プレイヤーの協力を実現した点で優れたシステムということができるでしょう。
運×リソース×戦略=すごろく
様々な種類の「すごろく」を紹介しましたが、ここから見て取れるのは「すごろく」という基礎システムの広範な応用可能性です。「すごろく」をプラットフォームにして、様々なゲームの面白さをコラボレーションしてみましょう。
すごろく×RPG
たとえば、「すごろく」にロールプレイングの要素を入れてみるとどうなるでしょうか?
プレイヤーはいくつかのステータスを持つキャラクターを作り、コース上のランダムイベントをこなしながら(場合によっては巡回型のコースで経験値や資金を積み上げつつ)自分のキャラクターに適した「アガリ」を選択して、目標達成を目指すことになります。あるプレイヤーはレベルを上げて物理で叩いてゴールし、あるプレイヤーは強力な魔法でゴールするのかもしれません。
あるいは、協力型ゲームとしてこれを仕上げることができるかもしれません。それぞれのキャラクターが得意なイベントが設置されており、それらを誰か一人が克服することで勝利条件が整えられていくようなゲームが仕上がることでしょう。
こうしたゲームシステムのひとつとして、「TOKAIDO」は参考になるかもしれません。
プレイヤーは初めに個別の特徴を持ったキャラクターカードを受け取り、そのキャラクターの能力を活かしながら旅をします。コースは単線ですが、獲得ポイントを競うため勝利方法は自由です。
すごろく×格闘ゲーム
格闘ゲームのキモは、相手の技の射程と動きの隙を判断して、こちらの攻撃を当てることにあります。そこからコンボ入力の技量が問われますが、ここでは間合いの読み合いを取り入れてみましょう。
この点では、アン・ギャルドというゲームが参考になるかもしれません。
カードを使わずに間合いの読み合いを楽しむためには、毎回相手に隠してダイスを複数振って採用ダイスを選ぶ手順を取り入れたり、相手のコマとの距離がダイス選択に影響を及ぼすようなシステムを組み込む必要があります。
いくらかシミュレーションゲーム的な様相を呈しはじめますが、サイコロとコースを使ったアクションゲームというものも作れないことはなさそうです。
すごろく×ブラフゲーム
ダイスを隠すといえば「ブラフ」を思い出します。自分のカップに入っているダイスの数を誤魔化して、人を信じ込ませるブラフ(はったり)ゲームです。
この手のブラフゲームでさえも、「すごろく」のプラットフォーム上で実現できてしまうかもしれません。たとえば、毎回ダイスを隠して振って、プレイヤーがその目に従うかどうかは好きにして良く、インチキを見抜かれるとペナルティという設定にするだけで、ブラフゲームになってしまいます。
これではあまりに単純だというなら、リソースを交えてブラフ要素を作ってみましょう。コース上の指示に戦略性を増やしておき、プレイヤーがそれなりの頻度で意思決定をするように組んでみましょう。たとえば株券を買うか不動産を買うかを選ぶだけでも構いません。種類が人数と同じか少し多いくらいあるのが望ましいかと思います。
そのうえで、各プレイヤーには自分しか知らない勝利方法のカードが渡されていたとしましょう。もちろん、そのカードの中身を見破られると、他のプレイヤーに妨害されてしまいます。これらの要素を整えれば、すごろくにブラフゲームの要素を持ち込むことができます。
まとめ
「すごろく」は非常に原始的なゲームの一つだと考えがちですが、実は奥が深いゲームプラットフォームでもあります。原始的であるぶんシステムも単純で理解しやすく、それだけ様々な要素を追加する余地があります。実際に様々なすごろく型ゲームが販売されていることからも、「すごろく」の奥深さは裏付けられます。
ゲームの基本的な構造と「面白い」の作り方を学ぶ初歩的なプラットフォームとして、「すごろく」をベースにしたゲーム作りには学ぶところが多いかもしれません。長きにわたって研究されてきたからこそ、「すごろく」を考えれば「ゲーム」の姿が見えてくるといっても過言ではありません。
お正月をきっかけに、あらためて様々な「すごろく」を手に取り、遊んでみたりゲーム作りに活かしてみてはいかがでしょうか。