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魔法使いを作ろう(4) 3つの型を比較してみよう【ソード・ワールド2.0】

 長らくお待たせいたしました。前回下の記事で展開した3つの魔法使いビルドについて、ようやく時間を割いてデータを整理してまいりました。 

trpg.hatenablog.com

 

 改めて復習しておきますと、ソーサラー基軸の魔法使いには大きく三つの型があり…

  1. 魔法制御とファストアクションで範囲魔法をゴリ押す人間ソーサラー
  2. 魔力強化で抵抗突破を試みるウィザードハイマン
  3. 鷹の目で後衛まで拡大数魔法を叩き込む瞬間火力型ルーンフォークソーサラー

という風に特化させるのが良さそうだと考えるところまで考察を進めていました。

 

 本日はこの3つの型を実際に成長させていくとどのような結果を生じるのか、データ的に見てみようと思います。

 

 

 

魔力強化型は本当に抵抗を抜けるのか

 はじめに3つの型の行使判定ボーナスを比較してみましょう。ここで行使判定ボーナスを比較するのは、魔力強化型がソーサラースタッフを利用しているためです。ソーサラースタッフは行使判定ボーナスを+2しますが、魔力は上昇させません。相手の抵抗突破能力だけを比較するわけです。

 

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 こちらのデータをご覧ください。経験点1000点刻みでそれぞれの型を成長させた時の行使判定ボーナスをグラフで示しました。見ての通りでございます。魔力強化型ハイマン(赤)が他の型に比べて圧倒的な優位をもっていることがお分りいただけるかと思います。

 特にレベル11で種族特徴、魔力強化の双方が成長することで、他に追随を許さない圧倒的な行使判定ボーナスを獲得します。AA型の技能成長のため、中盤まで成長が鈍化するかと思っていましたが、他の型に一度も追いつかれることなく成長させることができるようです。

 ただし、レベル11以降ソーサラーだけを成長させています。ウィザードの魔力まで上昇させたい場合、後半の成長はいくらか鈍化すると考えてください。

 

小結

魔力強化型なら他の型より明らかに抵抗突破が容易!

 

 

与えるダメージ総量を比較する

計算条件の整理(まじめ)

 計算するにあたって、エネミーの構成を次のように設定しました。

ボスエネミー 1体
 配置 前衛
 射程 全員が選択可能
 抵抗 強化型のみ突破

前衛エネミー 2体
 配置 前衛
 射程 全員が選択可能
 抵抗 強化型、制御型が突破

後衛エネミー 2体
 配置 後衛
 射程 鷹の目型のみ選択可能
 抵抗 強化型、制御型が突破可能(しかし対象選択不可)

 使用魔法は乱戦エリアの味方に誤射しないもののうち、最大対象数を選択でき、なおかつ最大のダメージ期待値を弾き出すことができる魔法を優先しました。たとえば鷹の目型ではリープスラッシュ(短射程)よりエネルギーボルト(長射程)で後衛にもダメージを与えることを優先しています。また「射程:接触」および「射程:貫通」の魔法は候補に含めておりません。

 クリティカルについては独自の近似式を利用しました。クリティカル範囲のダメージの平均(A)をとったうえで、クリティカルする/しないだけで確率を算出し、クリティカルした場合には(A)の値を加算するものとみなし、これの総和式を極限(無限回のクリティカル)まで計算することで威力表のダメージ期待値としました。

 X軸に経験点を1000刻みで配置し、その時の魔力や使用魔法を計算してグラフとして描画しております。

 

 

計算条件の整理(ざっくり)

 「何言ってんだお前」状態になった方は、まとめると次の条件で計算しています。

  1. 敵の数が多くて拡大や制御が比較的使い勝手がいい
  2. ダメージの期待値(特にクリティカル関係)はだいたいで計算してる
  3. 1体に与えるダメージの多さより、敵全体に与えるダメージ合計が優先
  4. 右に進むにつれ経験点が増えて使う魔法や戦闘特技が変わっている

したがって、制御型と鷹の目型の与えるダメージ及び強化型(赤)が与えるダメージが急に増大しているポイント(拡大数の習得ポイント)以降のダメージは実際のセッションよりも少しだけ大きな値になっていると考えてください。

 

ダメージ比較の結果がこちら

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 まず誰もが驚くことだと思いますが、魔法制御型より鷹の目や強化型の方が出力が大きくなります。制御型が追いつくのはメテオストライクを習得したときです。他の型でメテオストライクを使うと味方を巻き込んでしまうので、この点は制御型の最も優位な点といえます。

 ただし魔力強化型は序盤に複数体攻撃を持たないために、レベル11まで*1火力としてははっきりと劣ります。その分深智魔法による補助を展開できるので、違った形での貢献を意識する必要がありそうです。

 

 

何かおかしいと気づいた方はこちらをご覧ください

 実は上のグラフ、とあるものを考慮しておりません。なぜならそれを加味した途端に制御型が圧倒的に強くなってしまうからです。すなわち《ファストアクション》(FA)です。

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 ご覧ください。《ファストアクション》を習得したタイミングで明らかに頭一つ飛び出てしまうのがお分かりでしょうか? このうえ最終的に【メテオ・ストライク】を習得してしまえば、もはや他の型では手出しができません。どうやら火力だけを見ればソーサラー+スカウトの人間で、運命変転を駆使して確実に先制をとって《ファストアクション》を発動するのが魔法使いとして最適な型と言えそうです。

 しかし実を言うと、魔力強化型には戦闘特技枠が2つも余っています。《魔法拡大/確実化》で抵抗を抜いて状態異常をばらまくのも一つの手ですが、《魔法収束》と《魔法制御》を習得して抵抗貫通【メテオ・ストライク】を放つこともできます。これが魔法制御+FA型に対抗しうる唯一のソーサラーかもしれません。

 

小結

ファストアクションに成功すれば制御型一強! そうでなければ魔力強化型もなかなかいいかも

 

 

ネタバラシとしての燃費効率

消費MP絶対値の比較

 ここまでを見れば、スカウト制御が強いとはいえ、他の型にも見るところがあるように思われます。しかし次のデータを見て見るとどうでしょうか。すなわちこれらの攻撃を繰り出すために消費しているMP量を比較したグラフです。

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 これを見ると明らかなように、鷹の目型(黄)は1RあたりのMP消費量が早期に尋常ではない水準に達します。基本的に1Rぶっ放してその後は行動不能に陥るか、すべて魔晶石でまかなって攻撃を続けるというスタイルになります。

 一方際立つのは魔法制御型のMP消費の少なさです。ブリザードを二発打ち込むようになっても消費MPが20にとどまるこの型は、明らかにMP効率で優れています。

 

MP効率の比較

 それをよく表したグラフが次のものです。

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 MP1あたりのダメージ量を示したグラフです。序盤でこそ魔力強化型に分がありますが、ファイアボール習得以降魔法制御型の高効率に匹敵する低燃費スタイルは存在しません。MPの回復が難しいソード・ワールド2.0のシステムでは、この高い効率性は十分に制御型を後押しするだけの理由になります。

 

小結

MP効率は制御型に分がある。 魔晶石を叩き割り続けるだけのコスト負担をどうとらえるかが他の2型の評価の分かれ目。

 

 

状況対応力について

 最後に検討するべき項目が状況への対応力です。こればかりはグラフで示すことができませんが、いくつかの一般的な規則を整理することができます。

  1. 敵の数が減れば魔力強化型が最も得をします
    魔力強化型はピンポイントアタッカーです。単独の強力なボスと戦うときには魔力強化型は他の型より圧倒的に優位に立つことができます。

  2. 熟練戦闘では鷹の目型が最も得をします
    範囲魔法に巻き込むことができないように距離をとって敵が配置される場合があります。この場合鷹の目型ならばまったく変わらない火力を発揮することができます。とはいえ、魔力強化型も巻き込みを前提としないので、変わらない火力を発揮することができます。

  3. 魔力強化型は補助魔法により相手を弱体化させることができます
    魔力強化型の最大の長所は相手を弱体化させる魔法を利用できる点です。補助魔法の多くは「抵抗:消滅」と設定されており、高い行使判定ボーナスがなければ利用することができません。その点魔力強化型ならば高い魔力に恃んで、敵の性質に応じた様々な補助魔法(特にウィザード魔法)で戦況を左右することができます。

  4. 探索能力を持たない魔力強化型は仲間との協力が必要
    魔力強化型は高い魔力を確保する代償に探索技能をもちません。セッション中様々な場面で仲間の活躍に依存することになります。これはパーティの行動を大いに制限することにつながるので、運用には注意が必要です。

 

 

まとめ

 というわけで、全4回を通じて扱ってまいりました「魔法使いを作ろう」シリーズ。これにて完結ということになります。

 

 今回のデータ編まで見ておけば、「どういう活躍をしたいか」に応じて3種類のソーサラー魔法使いを作ることができるようになるはずです。もちろんこれら3つの型は理念型に過ぎず、それぞれの長所をうまくやりくりして新しい型を作り出すこともできるでしょう。そうしたキャラクター設計の際にも、それぞれがもつ長所短所を考察したこのシリーズは役に立つことでしょう。

 

 全体の結論として特定の型が最良だと明言することはあえてしませんが、言えることが一つだけあります。それは「ファストアクションは強い」ということです。スカウトをメインにして成長させる必要がありますが、それ相応の火力を導き出してくれるようです。

 また、今回はすべての型でたった二つの技能だけを成長させるスタイルを採用しました。卓によってはもっとのんびりと成長させることもできると思われます。スフィンクスナレッジを採用したスーパー魔力強化型や、ゴーレムで視界確保して後衛にも範囲魔法を叩き込むコンジャラー併用制御型・魔力強化型など、いくらでも応用することができます。

 みなさまもこれをきっかけに、奥深い純粋ソーサラー魔法使いの世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

*1:厳密にいえば魔法拡大数を習得するまで。したがって他の戦闘特技の習得を遅らせて優先して習得すればここまで劣りはしない