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ペアシナリオライティングで学ぶシナリオ製作【第4回】

↓前回

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ハカセ(以下 ハ)「それでキツネさん、腱鞘炎になってきましたか?」

キツネ(以下 狐)「なるわけないでしょ!?」

ハ「手首や指先に謎の痛みを抱えてからが、本当のシナリオライティングですよ…」

狐「身削ってんなぁ…それで、本当のテーマは何なの?」

ハ「今回は『クローズドリドルのための補講』です!」

狐「ドクタードリトル?」

ハ「クローズドリドル!」

 

クローズドリドルのための補講

狐「で、クローズドリドルとか横文字使ってきて、急に意識高くなったの?」

ハ「違いますよ、ただエビデンスのあるハイ=リライアビリティのソリューションで狐さんのシナリオライティングの結果にコミットしようとしているだけですよ、ははは」

狐(い、意識が高すぎる…)

ハ「ええと、クローズドリドルというのは『閉じた空間での謎解き』という意味です」

狐「はじめからそう言ってよ!」

ハ「なんかかっこいいじゃないですか。高尚なことやってる気分になれません?」

狐「ハカセ、その口ぶりは収録外で見せるいつもの皮肉?」

ハ「ま、まっさかー(棒) さて、実はわたしのブログにはクローズド構築ノートというものが公開されています」

狐「あー、あれか」

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ハ「お、チェックしていただきましたか?」

狐「いちおうね。でも自分で使うことになるとは…」

ハ「今回は密室を抜け出すまでの謎解きパートでこれを使います」 

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狐「たしか足し算がどうこうって話」

ハ「それです。謎解きが複雑になりすぎないように、謎解きの内容は二つの情報をくっつければ確実に明らかになるように設計しましょう、という話です。探索の過程は二つ目のピースのありかを示す情報を探す過程として特徴付けられますかね」

狐「二つ目の情報のありかを示すヒントを隠しておいて探索させれば、うっかり簡単に二つ目の断片が見つかることもない、と。なるほどね」

 

ハ「ちょっと考えたんですけど、せっかく死んだら元どおりなんですから、『一度は死なないと解けない謎解き』やりたくありません?」

狐「いいね。死んで時間を戻さないと、1回目では手遅れになる感じにしたい」

ハ「時間制限式ですか、いいですね…たしか密室の中に狂信者がいるんでしたよね?」

狐「うん、そこで小さな戦闘くらいははさもうかなって」

ハ「あとは、密室の扉を抜けるには記憶で引き継げる合言葉あたりがいいという話も出てましたね」

狐「うんうん。二つに分けるなら、アナグラムとかにしてみようか」

ハ「よし、では今回の足し算構造を整理してみます」

断片1:扉を抜けるための合言葉(狂信者に配置)

断片2:並び替えの順番(時間制限の向こう側に配置)

クリアキー:並び替えられた合言葉(1+2)

1の存在指摘:扉の近辺で合言葉の必要を示す文字を設置

2の存在指摘:部屋のどこかで探索の末獲得

1の手に入れ方:密室の中に敵対的人間がいる(ノートなど?)

2の手に入れ方:死ねばループする(一回死ぬ)

狐「それぞれの要素を並べかえて、シナリオとしてデザインすればいいってことか」

ハ「そうなりますね。この獲得情報の順番を決めて、それぞれに具体的な肉付けを行います」

狐「今?」

ハ「はい、今からやります」

狐「お、おう…」

ハ「それで、一見した限りで僕だったらどうするかと言いますと…」

スタート:扉の文字で合言葉が必要だと知る

探索:一つの部屋に入ると手記があり、狂信者の存在がわかる

イベント:狂信者に殺される=敵だとわかり排除する必要が有ると判断

スタート2:狂信者の隠れ場所を見つけてシメる=断片1の獲得

探索:並び替えの方法が水路の先にあるとわかる

イベント:始め冷たかった水路が沸騰していて通れない

イベント:自ら死んで時間を戻す

スタート3:冷たく戻った水路を通る=断片2の獲得

謎解き終了:クリアキーを使って部屋から脱出する

ハ「という感じに並べかえて、密室内での死亡回数は正規ルートで2回、たぶんなんか失敗してあと1回くらい死ぬだろう的な感じで組むかと思います」

狐「いいね、あそこ通ればいいとわかって振り返ったら煮えたぎる水」

ハ「そこで出てくる、自ら死ぬことで時間を戻せるかもしれないという絶望的閃き」

狐(ニヤリ)

ハ「それがクトゥルフ神話TRPGのキーパー特有の悪い笑顔です」

狐「こういう気持ちででてくるわけか、よくわかった」

 

ハ「で、狂信者の存在はぜひ日記か何かで示してしまいたいんですよ」

狐「ほう、なんで?」

ハ「それを読むだけで相手の居場所と目的がわかった方がいいからですね。それに…」

狐「それに?」

ハ「こんな演出をしたらいいかなって思うんです。」

日記の末尾に書かれた探索者の末路

「どうせやつはここに来る。扉が閉ざされ、アドラ=ナツア様の子たちが群がり、やつに毒をお送りになる。それまで、俺は扉を閉ざせばいい。そう、それだけでいい・・・」日記を読み終えると、小部屋の扉がバタンと音を立てて閉まります・・・

狐「おおっ、これはいいな、アイディアもらいます」

ハ「お気に召したようで何より…うあぁ、なんか狂気度が増してきたぞ…」

狐「だね! 実に素晴らしいものを書いている気がしてきた!」

ハ「…き、きつねさん?」

狐「ハカセ、これ書こう! 早く探索者の絶望に歪む顔が見たい!」

ハ(きつねさんのサディズムが目覚めてしまった…)

 

ハ「さてそれで、それぞれの肉付けと具体的な姿の記述についてですが…これはきつねさんにやってもらおうかなと」

狐「うん、ペアとはいえ俺の練習のためのシナリオだしね」

ハ「それで、まぁ普通にパラグラフライティングしてくれれば…」

狐「いや、待って。前回やって思ったんだけど、たぶんハカセが書くのと俺が書くので、時間相当違うよね? 概要を書くだけでもかなりかかった気がするし…」

ハ「え? ああ、まあ、記述は慣れというか…」

狐「…ハカセ! 今回は俺からも宿題を出すよ。どうやったら不慣れな人でもシナリオ資料を書けるのか。シナリオメイキングじゃなくて、シナリオ“ライティング”のコツを紹介しているっていうんだから、当然ノウハウがあるよね?」

ハ「・・・」

狐「・・・?」

 

ハ「か、考えたことなかったーーっ!」

 

狐「まじかよ」

ハ「だって、僕はもう書くのが好きで得意すぎて、日に3万字くらいまでなら指筋痛を代償にオリジナルの文章書けちゃうタイプだから、ほら…」

狐「いや、ハカセ…たしかにシナリオの組み上げ方とかの解説はありがたいし、今回もハカセの力がなかったらもっと苦戦したとは思うけど…でも、多くの人にとってオリジナルシナリオ作りの最大の障壁は『書くこと』にあると思うよ」

ハ「まじかよ」

狐「おうむ返しw」

ハ「でもわかりました…では、僕なりのシナリオ“執筆”の技術を整理して、誰でも公開シナリオが書けるような画期的な方法を開発してみせます!」

狐「お、言ったな? じゃあ今日のまとめと次回予告だ!」

 

 

今日のまとめ

狐「ええと、今日は『閉じた空間での謎解き』を組んでみたんだったね」

ハ「はい、その際には情報断片をパズルピースのように綺麗に切り取って、くっつけるだけで解決するようにするのが重要です」

狐「そのための方法は別で解説していて、今回は実践編ってことになるのかな?」

ハ「その通りです。抽象的な議論だけではわからなかった方も、今回のやりとりを見て、断片をつなぎ合わせる『足し算方式』の便利さがわかっていただけたなら幸いです」

 

 

次回予告

狐「そして密室の流れは決まってきたけど、ここから描写の問題に入っていくんだね」

ハ「はい、そしてきつねさんはきつねさんで執筆を進めるという宿題がありますが…」

狐「ハカセはハカセで、誰でも簡単にシナリオが書ける方法論を作ってくるっていう宿題があるね」

ハ「つまり次回の内容はこうなりますかね」

ハ「次回『描写するってなんぞや!?』乞うご期待」

狐「ついに暁に死ななくてよくなった!」

 

 

つづく