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クオラムセンシングとバイオコンピューター

生物は細胞から構成されています。

それゆえ、どうにかして細胞たちの間で情報を共有し、その分裂や活動を制御しなければなりません。

 

人間や他の多細胞生物の場合、ここで利用されているのはホルモン(内分泌物質)です。神経伝達物質はこれとは別のものとして呼び分けられています(厳密には、神経伝達物質もホルモンの一種です)。

つまり、多細胞生物と単細胞生物の一番の違いは、細胞間の連携があるかないか、というところ…

 

だというのは古い理解です。

 

単細胞生物はたくさん分裂することでコロニー(柔らかく言えば“群れ”)を形成します。このコロニーの中では、お互いの状況を伝え合うためにイオン化した物質が利用されています。

このメカニズムを「クオラムセンシング」と呼びます。

あまりにも細胞が増えすぎて栄養が不足したりすれば、増殖を鈍化させるように信号が発されます。コロニー内でその情報が共有されることで、単細胞生物の群れは自分たちの活動を制御しているのです。

 

クオラムセンシングとホルモンの違いはなんでしょうか?

定義的に言えば、生物の体内で利用されるのがホルモンで、単細胞生物が体外に放出して情報をやり取りすることをクオラムセンシングと呼びます。

 

もしかしなくても、単細胞生物の“群れ”と多細胞生物って、基本的に同じメカニズムなんじゃないでしょうか…

この疑問についてはまた今度、免疫系を扱う時にやるとして…

 

今日の話題はバイオコンピューターという発想です。

なんだかSFめいた単語ですね。でも、これが現実に研究されているのです。

 

バイオコンピューターという言葉に抱く印象は様々ですが、そのイメージを3通りあげてみましょう。

  1. 体内や体外に、脳と直接連携するコンピューターを作るイメージ
  2. 脳を組み込んだグロテスクな生体コンピューターを作るイメージ
  3. 生物そのものをコンピューターとして利用するイメージ

バイオコンピューター研究の正解は、3番です。

 

そもそもコンピューターはスイッチの集合です。二つの入力端子からどちらとも1が入力されたときにだけ1を出力するAND回路や、どちらかに1が入力されているだけで1を出力するOR回路など、基礎的な論理回路を組み合わせることで、高度な計算を実現しています。

計算の過程は水路に水を通すようなもので、一つ一つの関所で処理が行われ、最後の結果がディスプレイに流れ出てくるようになっています。

 

一方で、生物を使った計算は全く違った様相を呈します。

単細胞生物がクオラムセンシングで自分たちの状態を制御するとき、すべての細胞が同時並列的に状況判断を行っているのがわかります。さらに、ここで利用される化学物質は多様で、機械コンピューターで利用される0,1という2種類に比べれば、圧倒的な豊かさを持っています。

これらの性質をもしもうまく制御することができたら、それは情報処理における革新をもたらすかもしれません。

 

ここにおいて、バイオコンピューター研究が登場します。

この研究では、細胞たちの遺伝子を書き換え、様々な物質を利用することで、細胞の状態変化そのものを“計算”として利用する技術を研究しています。この複雑な計算メカニズムを解き明かすことができれば、そのシステムを機械コンピューターにも応用できるかもしれません。

集積回路の計算速度が20年程度で頭打ちになると予想されるなか、その一層の飛躍を担う鍵となる研究として、密かな注目を集めているのです。