初心者用ソード・ワールド2.0シナリオを書いていて思うこと
極めて難しいです。
今回初めて、具体的な誰かのためにシナリオを書くのではなく、広く使える、使いやすいシナリオを考えようと苦心しているわけですが…これが困難を極めます。
その原因は、端的に言って、「僕のマスタリング方針」と「ソード・ワールド2.0というシステムが想定しているマスタリング方針」がいくらかすれ違っていることにあります。
今日はその辺りに焦点を合わせつつ、ソード・ワールド2.0というシステムを生かしたマスタリングについて、僕なりの考えを整理しておこうと思います。
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1.TRPGはデータゲーだ
2.データ外という御法度と面白さ
3.ソード・ワールド2.0はどこを向いているのか
1.TRPGはデータゲーだ
TRPGをプレイし始めた最初期には、僕もいくらか誤解していましたが、あくまでTRPGはデータを軸にしたゲームです。技能レベルや体力ステータス、武器の性能や会話術の巧拙、あるいは運命や意志、人とのつながりなど、システムによって様々な要素がデータ化されます。
なぜデータ化するのかといえば、これは明らかです。
ゲームとして楽しむためです。
様々な要素をデータとして形式化してはじめて、共有・競争可能な「ゲーム」として私たちは楽しむことができます。
この根本的な要素を忘れてはなりません。つまり、ソード・ワールド2.0で愛の力を戦闘力に変換するためには融合神リルズの特殊神聖魔法などが必要になります。また、誰かを口説いたり信頼を得るために必要なのはプレイヤーの交渉術ではなく、プレイヤーキャラクターの持つ能力を使ったなんらかの判定であるべきです。
2.データ外という御法度と面白さ
さて、ここで僕の初期のシナリオを見返してみましょう。
はじめに作り上げたシナリオである「はぐれ盗賊ザバン」では、ルート分岐は全てプレイヤーの意志に委ねられています。いわゆるモラリティを問うシナリオとして設計されているのです。
しかし残念ながら、ソード・ワールド2.0にはモラリティを問うステータスは存在しません。キャラクター設定のデータには含まれていないために、判定操作を行うことなく、プレイヤー間の相談で進行することになってしまいます。
これではソード・ワールド2.0のルール、そして何よりゲームから外れてしまっています。これではせっかくのセッションも楽しめ・・・
るんですよね。
これが厄介なんです。
そもそも、いくらルールが定まっているとはいえ、プレイヤーの能力を問わないゲームはゲームとして何の意味も持ちません。それはシミュレーターです。
たとえばソード・ワールド2.0でも、戦闘時の戦略を考えたり、知性ある敵を出し抜くための罠を設置したり、様々な部分でプレイヤーの発想力が問われます。この部分でゲームルールやシステムをうまく「乗りこなす」ことにこそ「面白い!」が生まれるのです。
つまり、シナリオライターにとっての課題は次のように整理できます。
- ゲームルールが想定している「問いたいプレイヤーの能力」を読み取り、
- プレイヤーたちがルールを乗りこなしやすいように障壁を設置することで、
- 楽しみやすいセッションを演出する
だんだん見えてきましたね・・・
3.ソード・ワールド2.0はどこを向いているのか?
かくてたどり着く問いがここにあります。
初心者向けセッションを設計していて、この問題にずいぶん長く直面させられることになりました。
シナリオはいつも小さな事件や依頼ではじまり、それに応じて冒険者が街の外に向かい、そこで活躍して強い敵を倒して終わります。
悪く言えばワンパターン。しかし戦闘をメインにしたTRPGである以上、戦闘要素とボス戦の要素を取り除くのは難しいと言わざるを得ません。
つまり、ソード・ワールド2.0は、やはり戦闘時の戦略を問う方向性に大きく伸びています。
しかし、闘技場で戦闘だけこなして成長するシナリオは、完全にワンパターンに陥って退屈します。だからこそ、きちんと探索についてのルールも定められているわけです。
私が好きなウィルダネスアドベンチャーでは、冒険者たちはリソースの管理をしながら探索系の行為判定ダイスを頻繁に振りながら進む必要が生じます。こうした展開についても、ルールが目指した方向性にマッチしたシナリオ展開ということができます。
つまり、資金による所持限界の中で、探索技能を使って安全な冒険を実現する戦略設計能力も、このルールが問うているプレイヤーの能力と言えます。
ソード・ワールド2.0というゲームを楽しみたいなら、楽しさの核心をこの二つの「面白さ」に置く必要があります。
シナリオ上の重要な決断は、これらふたつの戦略設計と重なるように配慮するのがベストです。ゲームシナリオにおける物語は、ゲームの面白さを演出するためにあるのであって、物語それ自体のためにあるわけではありません。
ここまでのことを把握できたなら、課題は次に移ります。
つまり、どうやってプレイヤーたちが乗りこなしやすいようにゲームを物語化するかという課題です。しかしそれについてはまた次の機会に。
整理してみれば本当に当然のことなのですが、それがなかなかできないのが未熟さということなのでしょうね。
というわけで、自分自身が考えていたことを再整理する雑記でした。
お目汚し失礼いたします…