ソード・ワールド2.0のシナリオの書き方:難易度2
前回、ショートシナリオの大筋が完成するところまで進みました。
しかし、それだけではシナリオとしての品質がいいとは言えません。シナリオに必要な次の要素は、補助線と、選択肢、そしてゲームに最適な難易度です。
これらを適切に作り出すのは、前回に比べれば難しい作業と言えます。それでも、練習していけば、少しずつ、綺麗なシナリオを書くことができるようになるでしょう。
今日はそのうち、補助線と選択肢について、入門となる技術をお教えします。
手順6:補助線を引く
前回、「ゴルゴル退治」のシナリオを用意しました。
このシナリオのプロセスは、以下のようにまとめられていました。
■スタート「冒険者の酒場でゴルゴル討伐の依頼を受ける」
■探索1「ゴルゴルが群れで移住するのかどうか調べる」
■移動「被害の出ている村まで移動する」
■探索2「ゴルゴルの縄張りを探す」
■戦闘「森の生物たちと遭遇して、小さな戦闘になる」
■ゴール「ゴルゴルを討伐して目標達成!」
レール上のそれぞれのマスが埋まったら、次はこれを繋いでいかなければなりません。つまり、一つ目のマスから二つ目のマスへと、自然に繋がる流路を作らなければならないのです。
たとえば、ゴルゴルの討伐を引き受けた探索者が、その生態なんて調べないで、とっとと村まで移動してしまうかもしれません。それでも問題ないようにシナリオは構築しておくべきなのですが、冒険者の宿で以下のようなセリフを用意してみたらどうなるでしょうか?
【改変案】
ゴルゴルは目撃情報が少なく、生態はよくわかっていないので、突然集団で襲われるかもしれない。ひょっとしたら、大学の生物研究所に専門家がいるかもしれないので、聞けば何かわかるだろう。もちろん、君たちならどんな困難でもはねのけてくれるから、余計な心配かもしれないけどね。
このセリフがあれば、冒険者たちは少しだけ考えることができます。安全を期して、生物学研究所に足を運んでみるのか、気にせずに突入するのか、選択する必要に迫られるのです。この場合、研究所に向かうことにリスクが存在しないので、冒険者たちはきっと足を運ぶことにするでしょう。
このように、「次にこれをやっておくといいかもしれないよ」という情報が、ゲーム内で提示されるように、シナリオに補助線を組み込んでいく必要があるのです。
補助線を利用すると、シナリオは一層完成度の高いものになります。
■スタート「冒険者の酒場でゴルゴル討伐の依頼を受ける」
↓「生物学研究所で生態を聞いておくと有利だよ」
■探索1「ゴルゴルが群れで移住するのかどうか調べる」
↓「移住するときにはつがいだから、二匹いることに注意」
■移動「被害の出ている村まで移動する」
↓「縄張りはわからないが、○○の実を食べているところが目撃された」
■探索2「ゴルゴルの縄張り(○○の実の生る場所)を探す」
■戦闘「森の生物たちと遭遇して、小さな戦闘になる」
↓「動物に植物の種がくっついている!○○の種だ!」
■ゴール「ゴルゴルを討伐して目標達成!」
このように設計すれば、プレイヤーたちがイベントを踏み外すことなく、スムーズにシナリオをプレイすることが可能になります。
手順7:選択肢をつけよう
以上の作業が終わったら、もっと楽しめるシナリオを作るために、選択肢を用意してあげましょう。
選択肢の基本は、「AかBかを選ぶ必要があり、どちらにも一長一短がある」という構造を用意することです。
先ほどの生物学研究所を紹介する箇所にひと工夫してみましょう。
【改変案2】
ゴルゴルが村にも現れるようになって、人にも危害を及ぼすんじゃないかと心配されているんだ。すぐにでも向かって欲しいんだけど、不安事項が一つある。それはゴルゴルの生態がよくわかっていないということさ。この街の生物学研究所で専門家に話を聞けば何かわかるかもしれないんだけど、そうこうしている間に村人に被害がでてしまうかもしれないからね。君たちの方で判断してくれよ。
こう話すことで、選択肢が生まれます。
A. ボスについて情報を獲得する/村人に被害が出る
B. 村人の被害を避ける/ボスについての情報が不足する
という具合です。
選択肢を用意することで、プレイヤーたちの意思が物語に反映されることになります。慣れるまでは、一つのシナリオに最低一つの選択肢を入れることを目指して、シナリオを設計してみてください。
選択肢の利用に慣れていけば、もっと自由なシナリオ構築が可能になります。
たとえば、被害を受けている村に以下のようなイベントを組み込んでみましょう。
【改変案3】(冒険者が急いで村に向かった場合のみ発生)
村の狩猟会に所属する、血の気の多い若者3人が、ゴルゴルの討伐作戦に協力したいと申し出てきました。
「親切な冒険者さんに全てお任せっていうんじゃあ、俺たちも申し訳が立たないんだよ。あれは俺たちの山だしな。自分たちだけで奴を狩ることはできないが、道案内と露払いくらいなら任しておいてくれよ。」
さて、冒険者の皆さんはこの申し出を引き受けますか?
村の安全のために、急いで村へ向かったボーナスに見せかけ、冒険者たちに次の選択を迫るものです。ここでは利益だけが明言されていますが、賢いプレイヤーなら、彼らを危険にさらすことに気がついてくれるはずです。
彼らをどのように使うのかは冒険者次第ですが、場合によっては彼らに被害が出てしまうかもしれません(急いで村に向かった冒険者は、ゴルゴルが二匹いるという情報を知らないので、突然現れた二匹目に狩人たちが攻撃されるという演出を加えるものいいでしょう)。その場合のペナルティを密かに用意しておく一方、全員を生存させた場合のボーナスを用意しておきましょう。
選択肢を利用することで、このように、プレイヤーの判断が結果を大きく分けるようなシナリオに仕上がっていくのです。
次回、最後の仕上げとして、物語を付け足して、テストプレイを行うところまで進めることにしましょう。