【クトゥルフ神話TRPGリプレイ】忘却の結末【part.17】
【前回のあらすじ】
経津主神に刃向かった滝原が一瞬のうちに死亡した。経津主神は怒りをあらわにして伏原に襲いかかる。ハルカとともに経津主神に挑む伏原だったが、あえなく強烈な一撃をうけ、意識を失ってしまう。
目覚めた時、そこには経津主神以上に人間離れした、異形の存在が待ち構えていた。伏原は、ハルカちゃんを救うために、なにを捧げられるのか?異形の生物の問いかけに、伏原は応えられるのだろうか?
絶体絶命
KP「逃走を試みるべく、ハルカちゃんを抱いて後ろを向いたとき、あなたは目にするでしょう。そこには、穏やかな表情をした、経津主神があなたを真っ直ぐに見つめています。まるで心の奥まで見透かされるような、冷たくも深みをたたえた視線に、あなたはたじろいでしまうでしょう。」
SANチェック → 失敗 動揺を隠せず
伏原「な…無理だ…もう無理だ…。こんな状況…戦っても…。」
KP「突如、あなたの左足がすくい上げられます。」
??? 触手 → 成功
KP「あなたはその場に転倒してしまいます。1点のダメージです。」
???「貴様の命を捧げてみよ!」
伏原「待て!鬼子を収めるのに、私が必要なんだろう!?私を殺して何になる!?」
???「…つまらん奴だ。」
??? 触手 → 失敗
KP「再び、あなたの肩のすぐ上を、凄まじい勢いで触手が通り抜けます。」
伏原「ハルカは…守る。自分も…生き残る…そんな方法が、きっと…。」
伏原「わたしは争うつもりはない!」
???「ならば娘を救うなど、考えぬことだ!」
??? 触手 → 失敗
KP「再び触手がかすめます。その空気圧だけで、頬が切れてしまいそうなほどの速さで。」
伏原「大いなるシュブ=ニグラス!なぜその存在を知ったわたしを殺すんだ!わたしは儀式だってできる!眠りから目覚めさせることができる!」
???「経津主神も見誤ったな。」
暗黒の訪れ
KP「あなたの腕から、ハルカが飛び出して、唸り声をあげて異形の生物を威嚇します。」
伏原「ハルカちゃん!ダメだ!とても敵わない!」
KP(ここらが潮時ですね…。)
KP「では、再び触手があなたに迫ります。」
??? 触手 → 成功
伏原「回避します!」
〈回避〉ロール → 失敗
伏原「終わった…。」
KP「泣きの一回です。あなたへの攻撃に気付いたハルカちゃんが、触手を上回る速度であなたを突き飛ばすことができたか、DEX対抗をします。…なんなら、自分で振りますか?伏原さんの運命を決めますからね。」
伏原「…はい。」
DEX抵抗ロール → 失敗
KP「では、あなたの視界には、大きく目を見開いてあなたに駆け寄って手を伸ばすハルカちゃんの姿があります。ムチのように振るわれた触手にあなたは反応することができません。『死ぬ』そう感じた瞬間、あなたは右頬に強く水を吹き付けられたような感覚をうけるでしょう。」
触手 ダメージロール 5D6 → 19
KP「そして、あなたの視覚は…いえ、すべての感覚器が遮断されます。もう二度と、それが目覚めることはないでしょう。」
KP「…お疲れさまでした。セッション終了です。」
伏原「キャラクターロストしたーッ!」
伏原さん、ゴネる
伏原「ねえ!セーブ&ロードはないんですか!セーブ&ロードしましょうよ!」
KP「そんなに都合よくありません。」
伏原「あーっ、このキャラクターめっちゃ思い入れあったのに!」
KP「前回の肝試しシナリオから、生存主義貫いてましたもんね。」
伏原「でも、こんな状況無理じゃないですか!一体どうすればよかったんです?」
KP「そうですよ、まともに戦っても勝てはしません。勝てないとわかっていても、戦わなければならない時があるとは思いませんか?」
伏原「な…。」
KP「経津主神にしても、異形の神にしても、あなたが気絶している間に、いくらでも簡単に殺すことができた。いや、気絶なんてしていなくても、経津主神の一撃のダメージは5D6。普通にやれば即死です。でも、あなたは生きていた。」
伏原「確かに…。運がよかったのかとも思いましたけど…。あのとき、残りHPの方をダイスで決めましたよね?」
KP「そうですよ。ダメージの方を決めなかった。あれは、ハルカちゃんによる呪文の行使です。経津主神に気絶させられたあなたを、ハルカちゃんが治療したんです。そして、とおとふたつのかみの首領に謁見させられた。」
伏原「謁見!?」
KP「???のセリフをよーく思い出してくださいよ。あなたの覚悟を問うているとは思いませんか?そして後ろで穏やかに見ているだけの経津主神。あの場面では一度だって攻撃してないじゃないですか!」
伏原「たしかに…。じゃあ、実は謁見までは正規ルートなんですか?」
KP「はい。ただひとつ、滝原との共闘を除けば、規定ルートです。あとは命乞いをせずに、一度でも立ち向かっていれば、伏原さんは全く別のエンディングへ向かっていたでしょうね。」
伏原「ちくしょう…判断ミスか…。」
KP「でも、プレイヤーキャラクターを死なせたくない気持ちは、伏原さんという人間に大いにリアリティを与えたと思いますよ。実際、あそこで奮起できる主人公体質ばかりが人間じゃない。たかがプレイヤーキャラクターなのに、あんなに死にたくない気持ちが前面に出てくるというのも、キャラクターの魅力になったんじゃないですか?」
伏原「そうですね…。ただ、これ、ハルカちゃんがものすごく浮かばれないんですよ。かわいそすぎませんか?」
KP「なんなら後日譚でもやってあげましょうか?」
伏原「あー…聞きたいような、聞きたくないような…。」
KP「伏原さんは、休暇中に行方不明として処理されます。遺体が発見されない以上、行方不明が限界です。これは滝原さんについても同様です。」
伏原「行方不明は生存フラグ。」
KP「ハルカちゃんについては、読者の皆さんもちょっと知りたいでしょうから、ワンシーンを描写してあげますよ。」
後日譚:ハルカ
ハルカ(…。)
ハルカ(もう誰も…わたしのこと、知らない。)
ハルカ(十二神社からは追い出されちゃった…。)
ハルカ(お兄ちゃんも、滝原さんも…。)
ハルカ(私は鬼子。鬼子のハルカ…。)
ハルカ(でも、本当は違う。私の元の名前は…。)
ハルカ(そういえば、優しいおばあちゃんがいたな…。れきしはくぶつかん、だったっけ?)
ハルカ(でも、私のことは覚えてないだろうな…。)
???「ねえ、お嬢さん。」
ハルカ「!?」
???「あなた、今日は一人なの?いつも、誰か他の人と一緒にいたと思うけど…。」
ハルカ「おばあちゃん…わたしのこと…わかるの?」
???「…。ちょっと信じられないんだけどね。だって、全然おっきくならないんだもの。初めて見てから、もう何年経ったかしら。」
ハルカ「わたし、鬼子だから、おっきくならないの。」
???「…!?あなた…ひょっとして…。◯◯?」
ハルカ「…?なんで、わたしの本当の名前、知ってるの?」
???「嘘…そんな…本当に?もうどれくらい生きてるの?」
ハルカ「50年…くらい?」
KP「不意に、『おばあちゃん』と呼ばれた女性の目から、涙が溢れます。」
???「そう…じゃあ、生きてたのね…。生きていてくれたのね…。」
KP「ハルカはこの女性の元で、それから10年程度を過ごすことになります。」
・・・・・・・・・・
伏原「…って、まだ回収してないフラグあったの!?未登場の人物がいるレベルで!?」
KP「え?このシナリオなめすぎじゃないですか?まだ6割くらいしか拾ってませんよ?どうとでも動けるシナリオとして設計されていますから、情報量は長編小説並みかそれを超えます。」
伏原「マジかよ!!」
KP「まぁ、いつかリベンジしてみてください。まだプレイヤースキル的にこのシナリオのレベルには及んでなかったみたいですから。もう一度挑む時には、すべてのイベントを、滝原さんに頼ることなく、自分で回収していけるといいですね。」
伏原「できる気がしない…。」
KP「なお、経津主神様たち、一応あなたがちゃんと命を捧げたので、ハルカちゃんは勤めから解放されてます。」
伏原「喜んでいいんだろうか。。。」
KP「伏原さんが命を賭してやったことです。誇っていいと思いますよ。」
伏原「あーっ、なんにせよ、ものすごく時間かけて、熱中したシナリオでしたよ!絶対に再挑戦します。再挑戦して、ハルカちゃんと一緒に生き残ってみせます!」
KP「おお、そう言ってもらえると嬉しいですね。すでにアレンジも用意してありますし、なんなら、この伏原さんの事件の後、ハルカちゃんが女性と一緒に暮らしてて、他の鬼子がとおとふたつのかみとして遣わされるシナリオを作りましょうか。」
伏原「そこに伏原のライバル俳優が現れて、伏原失踪の謎を解くわけですね!」
KP「おお、面白そうですね。そういうことなら、シナリオ書いてあげますよ。キーパリング難易度も高くてかなり辛いんですけど、結構このシナリオ気に入ってますから、ぜひ続編は書きたいので。」
伏原「探索の途中、実は生き残っていた伏原に出会ったり…?」
KP「しません!」
KP「というわけで、他の謎については次回プレイにお預けということで、解説はしないでおきますね。」
伏原「はい。次こそやり遂げます!」
KP「では、高難易度かつ情報量爆発のシナリオにおつきあいいただきありがとうございました。」
伏原「いえいえ、シナリオ・マスタリングありがとうございました。」
クトゥルフ神話TRPGリプレイ
忘却の結末
完