【クトゥルフ神話TRPGリプレイ】忘却の結末【part.10】
【前回のあらすじ】
鹿神信仰と鬼子伝承の歴史は、弥生時代に始まる壮大な物語を予感させる。相次ぐ東国征伐と、移りゆく信仰の形…。あまりに複雑な情報群を前にして、伏原は一人の救世主に思い至った。
これらの歴史的な経緯を自らの著書で発表した人物、滝原馨。ハルカが言う『前の前の人』の名も、『タキハラ』だったことから、伏原は彼に連絡を試みる。
滝原の連絡を待ちながら眠りについた夜、夢の十二神社で目覚めた伏原は、今夜も夢の世界の探索を始めるのだった。
どこへ行けると言うのかね
KP「警告の手紙を受け取ったところで、どう行動しましょうか?」
伏原「夢の世界の探索がまだよくわからないんですよね。」
KP「そうですね…ちょっと慎重すぎます、と言っておきましょう。それと、夢の世界の重要性が増すのは、物語の後半です。」
伏原「前半は八宮神社に行っとけってことか。今からいけますか?」
KP「本来、八宮神社に行くなら市街地スタート、北部を探索するなら十二神社スタートという条件なので、今夜は無理ですね。」
伏原「あー、確かに、まだ十二神社付近についてあまり情報得てませんもんね。無計画に夢に入っちゃったな…。」
KP「二日連続で夢をロスすることになってしまいますが、どうしますか?」
伏原「ほんと、思考を止めちゃいけないシナリオですね。なんとなくとか、なあなあでは絶対にクリアできない。」
KP「はい。僕の用意できる最高難易度ですよ。全ての行動に意味を持たせないと、拉致ルート以外の後半に手早く進むのは難しいんです。」
伏原「今日いけそうな場所ってありますか?」
KP「さあ?だって、伏原さんはこちら側について何も調べていませんよね?とはいえ、一応〈アイディア〉振ってもらいましょうか。」
〈アイディア〉ロール → 成功
KP「では、地図を見たときに、この神社のすぐ北側に、山間の盆地集落、浅原地域が存在していたことを覚えていましたね。」
伏原「ほうほう、今回の探索地図の北限はここじゃないんですね!」
KP「そういうことです。それで、どうしますか?」
伏原「うーん、でも、何の情報も、目的もない状態で足を踏み入れていいのやら…。山の中は異界って、本にも書いてありましたし、その集落は現実世界で訪れた方がいいような気がするんですが…。」
KP「どうします?」
伏原「出直しましょう。今日もあまり動かず、十二神社の周りをウロウロするにとどめます。」
KP(慎重すぎるっていうのも、重要なアドヴァイスだったんだけどなぁ…。)
滝原馨からの返事
KP「では、朝になってしまいますね。ハルカちゃんとしては、十二神社に来てくれただけでも、大いに満足です。上機嫌に起こしてくれますよ。」
伏原「おはよ、ハルカちゃん。今日はどうしようかな…なんか手詰まり感があるんですよね。」
KP「え?わからないことがこれだけあるのに?」
伏原「多すぎるんですよ。何からどうやって手をつけたらいいのかわからないので、もう滝原さん待ちと言った方がいいです。」
KP「その点については、前半で焦りすぎましたね。もう少しゆっくり情報を集めていれば、一応道なりに進むこともできたんですが…。」
伏原「うん、最速でクリアして見せようと焦りすぎたのは事実です。」
KP「でもご安心ください。夜の間に、待望の滝原さんからの返信が来ています。」
From: 滝原 馨
To: 伏原 竜覇
伏原さん
いつも映画での活躍、拝見させていただいております。
大学教授をやっております、滝原馨と申します。この度は、私の研究に関することでメールをいただき、ありがとうございます。
伏原さんのメールを拝読いたしますに、おそらく、鬼の少女ハルカと出会ったのだろうと推察いたします。彼女が再び大間々に降り立っているというのは、私にとっては朗報です。というのも、幸いなことに、現在、私も大間々を訪れているからです。
実は、ハルカに関することで、やり残したことがあると考えておりまして、さらなる調査を行おうと意気込んでいたところでした。もし伏原さんがよろしければ、早速明日の昼にでも、お会いできませんでしょうか?
いつでも連絡を取れるように、電話番号をお伝えしておきます。
では、ご返信を心待ちにしております。
滝原馨
伏原「おお、これは思った以上にいい反応ですね。あまり狂っている様子もない。」
KP(人間不信が完治したみたいだな…。)
伏原「では、人気の多い喫茶店で待ち合わせましょう。例のショッピングモールに喫茶店くらいあるでしょ。」
KP「はい、あるということにしまそう。では、そこで待ち合わせるように連絡を入れますか?」
伏原「はい。昼の12時くらいで大丈夫でしょうか?」
KP「問題ありません。滝原先生も会いたがっているので、すぐに応答が返ってきますよ。快諾ですね。」
伏原「よし、これで前進できる!」
対滝原の準備
伏原「…でも、滝原さんが味方とは限りませんよね。」
KP「人間不信が治ったと安心したところだったのに(苦笑)」
伏原「少なくとも、ハルカちゃんに袴を着せた変態ですからね。ロリコンの可能性がある。」
KP「どの口が言うか!(笑)」
伏原「ねえねえ、ハルカちゃん。滝原さんって、会っても大丈夫?」
ハルカ「え?滝原さんがいるの?…うーん…。」
伏原「いやなの?」
ハルカ「私はそんなに嫌じゃないよ。滝原さんは優しい方だったから。でも、滝原さんが嫌じゃないかな、と思って。」
伏原「え?なんで?」
ハルカ「だって、滝原さん、最後、とっても辛そうだったの。」
伏原「最後って、鬼子を神社に納めたとき?」
ハルカ「…うん。」
伏原「そうか…。でも、ハルカのせいじゃないんでしょ?」
ハルカ「…滝原さんは、そう思ってるかも。」
伏原「そういうことなら、僕だけで会おうか。ハルカは、別のところに変装して隠れてよう。」
KP「お、ようやく服買ってくれますか。」
伏原「はい。尻尾があるので、ロングスカートは固定ですね。あんまりこの元気な子にロングスカートって合いませんけど。で、帽子と、ちょっとおとなしそうな女の子の格好を揃えてあげますよ。」
KP「ずいぶん見てくれが変わりますね。」
伏原「買い物は先にショッピングモールに行ってやってますから、この中の携帯売り場で、彼女に携帯を買ってあげますね。」
KP「携帯?なんでまた。」
伏原「通話状態を保って、テーブルのノック音を合図に、ハルカの意見を聞けるようにしたかったので。」
KP「なるほど。いいですよ。他に用意しておくことはありますか?」
伏原「先にテーブルの配置なんかを調べて、ハルカが一番安全な場所を確かめておきたいですね。店内の見取り図って描けます?」
KP「もちろんいいですよ。(ホワイトボードから大間々の地図を消し、店内の見取り図を用意する)」
伏原「…これなら、この奥の席で壁を背にして座って、ハルカちゃんはお手洗いに隠れるのが最適ですね。」
KP「そのあたりまで用意を進めたところで、待ち合わせの時間が近づいてきます。」
伏原「よし、たぶん大丈夫だと思うけど、慎重にやっていこう。」
滝原馨は狂信者か否か
KP「では、ハルカちゃんに通話状態の携帯電話を持たせ、自分は入り口の見える席で待っておく、ということですね。約束の時間になると、壮年に差しかかりつつある男性が、あなたの姿を見て、頭を下げて近づいてきます。」
滝原「お会いできて光栄です、滝原と申します。」
伏原「どうもこんにちは。ご足労いただいて、ありがとうございます。」
滝原「ハルカの姿が見えないみたいですが…。」
伏原「ええ、ちょっとね。」
滝原「まあ今は関係ないことです。それで、どの辺りまで調べがついたんですか?」
伏原「…鬼子を、十二神社に納めよ、というところまでは。」
滝原「…今、何日目ですか?」
伏原「4日目ですね。あなたの著作も読ませていただきました。」
滝原「…まぁ素人ならこんなものですか。まずね、伏原さん。鬼子を納めるのは、十二神社じゃないんです。木ノ宮神社といって、もっと北のほう、山奥にある神社に納めなければなりません。」
伏原「木ノ宮神社?それはまだ確認していませんでした。」
滝原「この地域でも伝承はほとんど消えてしまっているのですが、歴史博物館には、伝承を受け継いで、語り部として働いていらっしゃる方がいます。このことを知るのは彼女くらいではないでしょうか。もっとも、その監修も私がやっているようなものですから、代わりに私が話すこともできますけどね。」
伏原「心理学で、彼の気が狂れてないか、確認できますか?」
〈心理学〉ロール → ??
KP「少し焦りの見えるような、不必要な早口で話すことが気にかかりますね。また、この手の問題に非常に熱中しているようであることもわかります。しかし、平素の滝原さんの姿を知らないために、それが研究者としての性質なのか、狂信者ゆえの偏執なのか、判断することはできません。」
伏原「ぐぬぬ…。」