【クトゥルフ神話TRPGリプレイ】肝試しのあと【part.03】
【前回のあらすじ】
放棄された製材所で肝試しと洒落込んだ佐々木、伏原、斎藤の三人。
せっかく乗り込んだ製材所は、しかし、すでに訪れた人々によって興ざめのペイントが施されていた。肩を落としながら、さらに奥へ進み、かつての製材所社長宅という、平屋へ足を進めるのだった。
伏原の見た前兆
KP「平屋には幾つかの部屋があります。入って右手には台所、左手には風呂場とトイレがありますね。それらとは別に、正面には廊下が伸びていて、右手に二つ、左手に一つ、そして正面奥に一つの扉があります。」
佐々木「一番近い扉からいきましょう。」
KP「では、右の扉から。台所から繋がっているダイニングだったと思われる部屋ですね。すっかり床板が劣化していて、気をつけて歩かなければ踏み抜いてしまいそうです。こちらは工場とは打って変わって、あまり荒らされていないようですね。といって、家具などは何も残っていないという点は変わりありませんが。」
伏原「とりあえず〈目星〉していいですか?」
KP「あの、この時点で何をそんなに探しているんです?悪霊の一つも登場して欲しいんですか?」
伏原「いや、生き残るためにはどんなヒントも見逃せないかな、と。」
プレイヤーズメモ
たとえば、有名なサンプリシナリオ、『悪霊の家』だったら、あの屋敷の調査を依頼されていますよね?それなら、部屋ごとに〈目星〉するのも頷けます。あるいは、敵対的な謎の宗教組織の施設に侵入した時〈目星〉をしたくなるのもわかります。
しかし、今、この状況で、漠然とこの部屋に対して〈目星〉を振ることは妥当でしょうか?
この行動は、これがクトゥルフ神話TRPGだということを知っているプレイヤーの目線でしか発生しない事態なのではないかと感じます。もしも〈目星〉を行いたいなら、何を探し出したくて、どういった種類のものが見当たらないかとあたりを見渡すのか、具体的に宣言するとよいでしょう。
そうすれば、キーパーも探索者の意図を理解して、プレイヤーにとって少しでも有効な情報を提供してくれるはずです。たとえば、先ほどの「人がつい最近入ってきた痕跡がないかを〈目星〉」というプレイングは、まだしも頷くことができるのです。
そもそも、本当にシナリオクリアに必要不可欠な情報があるときには、キーパーの方からダイスロールを要求することがほとんどです(「ここで〈聞き耳〉ロールをお願いします」などと、私もしばしば口にしています)。シナリオを遊んでもらいたい、導入で死んで欲しくはない、という意思については、キーパーを信頼しましょう。
伏原「何かおかしなものがないか、目星を…」
KP「そういうことなら、ありませんよ。振るまでもありません。なんたって、家具の一つも残されていない部屋ですからね。」
佐々木「ま、次に進みましょう。」
KP「ええと、この部屋からそのまま隣の部屋につながっていますね。斎藤君が懐中電灯の明かりを頼りに、そのまま歩みを進めます。こちらの部屋は、畳の敷かれた和室ですが、すでにカビてしまった畳の匂いを感じることでしょう。やはり、部屋には家具が残されていません。」
伏原「じゃあ今度は、幽霊を見逃さないように、〈目星〉といきましょうか。」
〈目星〉ロール→成功
KP「伏原が懐中電灯の明かりとともにあたりを見渡していると、部屋の左奥に扉があり、恐らく玄関から正面の部屋につながっている扉だとわかりますね。そしてその扉を見たその瞬間、懐中電灯で照らされた領域の隅に、何か青白い煙のようなものが、ふわり、と漂って消えるのを目にします。〈アイディア〉ロールを行ってください。」
伏原「やっぱりいきなりお出ましになるじゃないですか!」
〈アイディア〉ロール→成功
KP「では、あなたはそれが気のせいなどではなく、間違いなくそこに存在していたように感じることでしょう。この場の雰囲気も手伝って、その推測はあなたをゾッとさせます。SANチェックの前に、〈聞き耳〉ロールを挟みましょう。」
伏原「わーっ、立て続けに!(汗)」
〈聞き耳〉ロール→成功
KP「伏原はふっと、一瞬、かすかに、水が腐ったような、沼のような匂いを感じます。ここで、こうした一連の現象に驚いた伏原さんは、SANチェックをお願いします。0/1D3です。」
SANチェック→成功 減少なし
佐々木「沼…?」
KP「さて、どうしますか?」
伏原「あー、いきたくないなぁ。」
佐々木「でも行かなきゃ始まらないでしょ。」
伏原「今何かそこにいませんでした?」と二人に尋ねてみます。
佐々木「え?どこに?」
斎藤「そんな、怖がらせないでくださいよ!」
伏原「ちょっとこの部屋を調べたいです。畳を返してみてもいいですか?」
KP「いいですけど、ちょっと過敏症じゃないですかね。」
プレイヤーズメモ
探索対象の選択には、根拠を持ちましょう。“思い込み”は最大の敵です。
クトゥルフ神話TRPG病を患っていると、すべての怪異には原因があり、それを解決することで怪異の動きが止まる、と考えがちですが、出会ってもない怪異の原因は探れません。行動を起こす根拠が足りなければ、キーパーに尋ねてみましょう。
さらに、忘れられがちなのですが、「沼のにおい」というのは、クトゥルフ神話ではよく用いられる「邪神のにおい」の形容表現の一つです。たいてい、物理的な「沼」は伴われません。実際の沼が登場しそうなら、おそらく探索中にそれっぽい名前が文献などから見出されることでしょう。
佐々木「というと?」
KP「いえ、まぁ続けましょう。特にロールは必要ありません。ただあなたたちにとって不愉快なカビの匂いが埃とともに立ち込めます。床板も腐食が進んでおり、畳がなければ踏み抜いてしまっていたのではないか、という様子ですね。」
伏原「特に何もないんですか?」
KP「ええ、特には、何も。腐食具合について生物学や化学で調べでもしますか?」
伏原「いや、大丈夫です。」
異様な放棄物
KP「さて、そんなわけのわからないことをしていると、斎藤君が奥の部屋に行こうと言い出しますね。すぐに彼が奥の襖に手をかけます。」
伏原「彼が先頭ならいいでしょう。」
KP「では、斎藤君が扉に手をかけ、奥の部屋を開き、足を踏み入れます。ロープで互いにつながったみなさんも、順に入っていくことになるでしょう。では、まず〈目星〉ロールと行きましょうか。」
伏原「やだなぁ。」
〈目星〉ロール→成功
〈目星〉ロール→失敗
KP「三人は懐中電灯で部屋の中を見渡します。目星に成功した伏原さん、あなたは、部屋の一角に意識が向きます。そこには、何も残されていないこの部屋にたったひとつだけ残された家財、仏壇が残されています。ここで佐々木さんは〈幸運〉ロールをお願いします。」
〈幸運〉ロール→失敗
佐々木「あ、失敗ですね。」
KP「では、伏原さんのライトが仏壇を照らしたまま止まったのを受けて、佐々木さんもそちらを目にします。そこには、仏壇が残されていますね。さて、その仏壇の中、目星に成功した伏原さんは見てしまうことでしょう。そこには、仏壇どころか、位牌までもが、しかも、3つも残されています。」
佐々木「なんと!」
KP「そうです、こんな大切なもの、絶対に残されることはあり得ません。さらに言えば、明らかに十数年も放置されていたような劣化が、この仏壇には見られません。この奇妙な残留物を見た三人は、ここでSANチェックです(1/1D3)。」
SANチェック→成功 減少値 1
SANチェック→成功 減少値 1
SANチェック→失敗 減少値 2