【クトゥルフ神話TRPGリプレイ】アンドロイドは名状しがたき夢を見るか?【part.13】
【前回のあらすじ】
ミーミル=西田説がいよいよ真実味を帯びはじめる中、今度は西田の自宅が全焼したとのニュースが入る。
猪瀬とともに今日の調査計画を組もうとする伏原だが、彼女のカバンに隠されていたスタンガンが、伏原の彼女に対する信頼を揺るがせにする。
ツァンの清められた刀身を巡って
伏原「猪瀬さん、驚かないでくださいね。」
猪瀬「…西田の家が焼かれましたか?」
伏原「ええ。昨日行っておいてよかったですね。」
猪瀬「いったい誰がこんなこと…。」
KPによる〈心理学〉ロールの代行→??
KP「猪瀬さんは次々に信頼できるものを失って、随分打ちひしがれているようです。」
伏原「おそらく、あの羽サソリでしょうね。といっても、猪瀬さんはご存じないのか。」
猪瀬「それです。その『羽サソリ』って、いったいなんなんですか?そんなものがこの世に実在するとでもいうんですか?」
伏原「それを今日たしかめようという話でしょう。」
猪瀬「わかりました。でも、私は一度、家に帰って貴重品を取ってきてもいいですか?幹部たちが死んで、西田の家も焼かれれば、今夜は私の家が襲撃されるでしょう。その前に、必要なものを取っておきたいので。それから…」
KP「そう言って、あなたが腰に佩いている『ツァンの清められた刀身』を見やります。」
猪瀬「その刀を、私に預からせてもらえませんか?それは私たちにとって重要な品なんです。もう、今の私には、それくらいしか信仰の形が残されていません。信者たちもバラバラになり、西田さんもいなくなり、私は何を頼って立てばいいのか、わからないんです。どうか、お願いします。」
PL「…ハカセ。これ嫌なんだけど、どうすればいい?」
KP「さあ?頑張って。」
伏原「…では、こうしましょう。これをあなたたちが、どういう儀式に使っていたのか、正直に話してください。一緒に調査する以上、信頼関係が必要です。」
猪瀬「…あなたが知る必要はないのではありませんか?」
伏原「いえ、私も命がかかっている以上、知っておきたいんです。」
猪瀬「…私が伏原さんと協力しているのは、西田を見つけ出すためです。それ以上のことは求めていません。その目的に照らせば、あなたに私たちの信仰について多くを語る必要があるとは思えないんです。」
伏原「つまり、この刀は、西田さんの件とは何の関係もない、と。そう仰るわけですね。」
猪瀬「はい。それはただの儀式用の宝剣です。信仰を持つ者にとっては宝石以上の価値がありますが、そうでない者にとっては、少し綺麗なナイフという以上の価値を持ちません。だからこそ、この信仰を伝えることのできる最後の一人として、その刀を、『ツァンの清められた刀身』を、信徒以外の方に持たせておくわけにはいかないんです。」
伏原「…いや、ダメですね。」
猪瀬「なぜ!?」
伏原「羽サソリが実在して、人間がアンドロイドに化けて出て、おぞましい悪夢が連日続いている状況で、この刀が『ただの宝剣』などという言葉を信じることはできません。」
猪瀬「…なら、その刀を使って何をしていたのか、お見せすればいいんですね?」
伏原「言葉で説明してくれれば十分だ。」
猪瀬「いえ。こういうことは、直接目にした方が早いというものです。行きましょう。」
KP「そう言って、猪瀬は立ち上がると、足早に玄関へ向かいます。」
伏原「『行く』って、どこへ!?」
KP「猪瀬は立ち止まると、勢いよく振り返って、あなたに睨むような視線を向け、言い放ちます。」
猪瀬「『血の結社』日本支部の焼け跡ですよ。」
火災現場
KP「というわけで、午前10時、新宿歌舞伎町から北に抜けた先にある、雑居ビル群に到着しました。移動の間、猪瀬さんは全く口をきいてくれません。それから、雑居ビル群に入ると、猪瀬さんはカバンからスタンガンを取り出して、懐に忍ばせますね。」
PL「おや?隠す様子もないの?」
KP「身を守るものを持っておけと指示したのはあなたでしょ?忘れてたの?」
PL「いっけね!忘れてた!」
KP「今回は本当に忘れてたっぽいね。」
猪瀬「では、私が関係者だと言って、残されている物品の回収のためと断って中に入れてもらいます。伏原さんは有名人ですから、顔を隠して、同行者のふりをしてください。」
PL「指示通りに顔を隠します。」
KP「では、猪瀬さんが警備をしている警察官に頼んで、警察官同行のもと、中に入れてもらえるようです。火災で脆くなっているので、くれぐれも注意してください、とのことです。」
PL「さて、どこに行くのか…まあ、地下だろうけど。」
KP「警察官と猪瀬さんが先を歩き、あなたが後ろから付いてくる格好になっています。」
警察「それで、どちらの部屋を確認したいのでしょうか?」
猪瀬「ええ、地下に用事があるんです。」
KP「そう言うと、猪瀬さんは懐のあたりに手を伸ばしますね。」
警察「…地下、ですか?」
KP「警察が訝しげな声を出します。」
シークレットダイス→??
PL「伏原は躓いたふりをして、警察官の体勢を崩します。」
〈芸術(演技)〉ロール→成功
KP「あなたが警察官にぶつかると、警察官が両手であなたを支えようとします。その瞬間、警察官は一瞬痙攣したかと思うと、力が抜け、その場に倒れてしまいます。倒れてしまった警察官に、猪瀬さんがさらにスタンガンを押し付けます。」
PL「すかさず携帯で写真を撮ります。」
KP「社会的抹殺好きねぇ。」
猪瀬「何撮ってるんですか?」
伏原「いや、面白かったからね。」
猪瀬「携帯、貸してください。」
伏原「まあまあ、ほら、削除したから。」
猪瀬「貸・し・て・く・だ・さ・い。」
伏原「仕方ないなぁ、はい。」
KP「猪瀬さんは、スマホのタッチパネルをスタンガンで突き破ると、スタンガンの高圧電流を流してショートさせます。その間、まったく表情が変わることはありませんし、壊れた携帯は警察官の頭の上にぽいっと投げ捨て、何も言わずに踵を返して地下室への階段を下り始めます。」
PL「ヒドい…(泣)」
KP「あんたがそれを言うか。」
猪瀬「さっきの警察官の態度、地下に何があったのか、知っているみたいでしたね。ということは、もう重要なものは持ち去られているかもしれません。」
KP「そう言いながら、猪瀬は地下の一室の扉を開きます。焦げたススの臭いの中、光の差し込まない地下に、二人の懐中電灯の明かりが投げ込まれます。」