【うろ覚えSWノベル】山賊退治ミッション:3(掏摸)
「おい、タツのおっさん!やっぱりこんな奴らに頼むのはやめにしようぜ!金のことばかり言って、ロクに戦えもしない連中に頼むんなら、俺たちが戦った方がよっぽどマシだ!俺は初めから冒険者なんてお断りだったんだ!タツのおっさんはこいつらに守られて帰ってくれよ!その頃には俺が奴らを倒しているかもしれないけどな!」
何を隠そう冒険者の酒場であるいかづち亭で、カイトは冒険者たちに対して悪態をついた。その振る舞いは、キリトを挑発するには十分だった。
「おい、素人は黙っておけ。」
キリトは低くドスを効かせて、カイトを制した。タツになだめられながら、カイトはキリトを睨み返している。契約は不成立かとも思われたが、ぬいぐるみのじいさんが静寂を破った。
「いいだろう、350で受けようじゃないか。」
もう一人のおっさんもこれに賛同し、キリトだけが残された。こうなれば、しぶしぶ認めざるを得ない。
「仕方ないな。俺も引き受けてやろう。」
参加するメンバーの相談の結果、今日はルテティアで宿泊し、翌朝に出発することに決まった。カイトは不満げだったが、タツとタビットが懸命になだめると、翌朝の出発を受け入れたようだった。手のかかる素人は、これだから御免だ。
ここでキリトは席を離れ、先に宿に行っておいてくれ、とだけ言って、いかづち亭を後にした。彼にはやるべきことがあった。彼はとにかく金が欲しかったのだ。初めての依頼でこんな白けた報酬で仕事をするなど、この俺にあってはならないことだと憤慨していた。
急ごしらえの稚拙なものだが、キリトは変装を試みる。まだあまり顔も見知っていないのだから、きっと騙せるだろう。他人になりすましたキリトは、いかづち亭を出て宿屋に向かって歩き出す集団に前からすれ違った。
「おっと、失礼。」
カイトにぶつかった拍子に、カイトの懐に手を伸ばす。指先に当たる麻袋の感触。それを中指と薬指でつまんで、抜き取ろうと試みる。
しかし、その腕が懐を抜けるより少し前に、カイトの手がキリトの腕を強く掴んだ。
「おい、あんた、何しようとしてんだ?」
カイトは強く睨んでキリトを制しようとする。
「なんのことだよ?」
キリトは変装を恃んで強気に出る。しかし、その変装は人の目を欺くにはあまりに不出来だった。
「ん?お前、さっきの冒険者じゃ・・・」
カイトがそこまで言いかけたところで、ため息をついて頭を抱えていたぬいぐるみのじいさん、ボブソンがひらりとカイトとの間に入り、カイトを放り投げた。
「おい!てめぇ!なにしやがる!」
カイトは地面に打ち付けられ、その体をキリトがまさぐって財布を探すが、カイトの必死の抵抗は、財布の発見を未然に終わらせた。
「ちっ!」
キリトは捨て去るように舌打ちを残して、走り去っていく。これじゃぁ仕事に見合った収入が得られないではないかと苛立っていた。とにかく、次のチャンスを狙うほかない。
カイトが騒いだために、商会の衛兵が駆けつけたが、その時までにはキリトはすっかり現場から姿を消してしまっていた。キリトがやったという保証はどこにもない。これなら手配されることもないだろう。
その夜。カイトとタツの部屋を訪れる一人の冒険者の姿があった。