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シノビたちのハラハラの会話劇とアツいバトルを楽しもう!【忍術バトルRPG シノビガミ】

忍術バトルRPGシノビガミ基本ルールブック (Role&Roll RPGシリーズ)
 久しぶりにテーブルゲームの紹介をします。今回紹介するのは「忍術バトルRPG シノビガミ」です。
 「忍術バトルRPG シノビガミ」は、複数のプレイヤーが持ち寄ったキャラクターの背景を解き明かしあいつつ、争いに陥るというシチュエーションを楽しむロールプレイングシステムです。

TRPGとサイコロフィクション

 「忍術バトルRPG シノビガミ」は、ジャンルとしてはTRPGに属します。さらにその下位分類として、冒険企画局が製作した「サイコロフィクション」というシリーズの一種でもあります。まずはこの二つの用語について説明します。

TRPGって?

 テーブルトーク・ロール・プレイング・ゲームの頭文字をとってTRPGと呼ばれる遊びがあります。RPGの部分は広く親しまれていて、キャラクターを操作してゲーム内の世界で冒険をするゲームだというイメージは共有できるかと思います。

 TRPGはそうしたRPGを、コンピューターを使わず、複数人でテーブルを囲んで遊ぶゲームです。プレイヤーたちは一人一人自分の扱う担当キャラクターを用意して、共同で冒険の物語を描くことになります。

 このとき二つの要素が加わります。まずはゲームの進行や語り部を担当するゲームマスターと呼ばれるプレイヤーです。ゲームマスターはその日の1ゲームでプレイヤーたちが挑むことになる課題を設定し、プレイヤーたちの行動提案に従ってキャラクター達の行動の成否を裁定します。
 この裁定の際に用いられるのが、もう一つの追加要素であるサイコロやカードなどの乱数装置です。キャラクターがモンスターと戦うとき、勝利したかどうかをゲームマスターの一存で決めていては、単なるごっこ遊びになってしまいます。そこでキャラクターに能力値を設定し、サイコロを振って乱数を加味して成否を決定する方法がとられます。たとえば「戦いの能力が5あれば1〜5の出目で勝利する」などと定められているわけです。

 つまり、TRPGとは「キャラクターの能力とサイコロなどの乱数によって導かれる物語を集団で楽しむストーリーテリング・テーブルゲーム」と言うことができます。

サイコロフィクション

 TRPGの中にも複数のゲームが存在し、このブログでもその一部を紹介しています。今回紹介するシノビガミはその中でも「サイコロフィクション」という基本システムを採用しているものです

 サイコロフィクションとは、冒険企画局が製作したTRPGの基本システムの一つです。キャラクターの能力を一つの表で表現し、さらに二つの6面サイコロで遊べるように調整されています。このシンプルな設計は、元来コアなゲーマーに親しまれてきたTRPGをカジュアルな遊び口に変え、その門戸をまたひとつ大きく開く役割を果たしたと評価できます。

 特に優れている点は、ゲームシステムが複数のゲームで通底している点です。たとえば今回紹介するシノビガミのゲームシステムを理解すれば、サイコロフィクションに属する姉妹作品のゲームシステムをすぐに理解することができるでしょう。カジュアルな遊び口に加えて、複数の世界観やテーマを容易に行き来できるサイコロフィクションの展開は、多くのTRPGプレイヤーに愛されています。

シノビガミはキャラクターショウの舞台装置

 TRPGの中のサイコロフィクションという作品群に属するシノビガミも、これらの性質を継承しています。つまり、複数人でテーブルを囲んで、サイコロを使って遊ぶカジュアルな形式のストーリーテリングの遊びです。次に少しだけ内容に踏み込んで、シノビガミというシステムが切り出している面白さを紹介します。

キャラクターの見せ合いをしよう

 シノビガミのプレイの目的は、キャラクターの見せ合いに置かれています。一般的なTRPGが、ゲームの目的達成に重きを置くのに対して、キャラクターの見せ合いに重きを置いているのは明らかに特異な点といえます*1

 「忍術バトルRPG シノビガミ」というタイトルにも表れていますが、このシステムでプレイヤーが担当するのはいわゆる忍者、シノビたちです。キャラクター達は現代あるいは他の時代の一般市民の中に溶け込みながらも、闇夜に紛れて極秘の任務をこなしています。

 そうした「裏の顔」を持つキャラクターを創造して、テーブルの上で一堂に会させます。こうして、キャラクターたちの表の顔と裏の顔を巡ってのハラハラの会話劇を楽しむのが、シノビガミの最もシンプルな楽しみ方といえます。

演出のための装置:秘密・感情

 しかしそうした会話も何らかの展開がなければ退屈なものです。そこで会話にアクセントを添える機構として、【秘密】と【感情】という要素が加えられています。

キャラクターの過去や目的、アイデンティティ:【秘密】

 キャラクターは【秘密】を抱えることがあります。その名の通り、はじめそのキャラクターの担当プレイヤーだけが知っている情報です。そのキャラクターの本当の目的や戦う理由、あるいはキャラクター本人さえも知らない宿命などがしばしば用いられます。

 シノビガミのプレイは、それぞれのキャラクターが抱えている【秘密】を互いに明らかにすることで進行します。他のキャラクターが抱えた【秘密】を知ったときに、あなたのキャラクターがどのようなリアクションを取り、次に何を企むのかをプレイヤー全体で味わい深く共有していくことになります。

協力や敵対を表現する:【感情】

 そうしたやり取りの中で、特定のキャラクターに対して【感情】を抱くことがあります。それがポジティブなものであれ、ネガティブなものであれ、【感情】で結ばれたキャラクターの間では自動的に情報が共有されます。このシステムによって、互いの【秘密】がより速やかに伝達されるようになっています。

 ただし、【感情】のポジティブとネガティブはゲーム的にも重要な要素として機能しています。【感情】を結んだ相手には、そのポジティブ・ネガティブに応じてサイコロによる判定に補助や妨害を与えることができるのです。これによって、キャラクター同士の心の結びつきが成功を導いたり、逆に敵対的感情で失敗を引き起こすなどの“アツい”展開も期待できるのです。

キャラクター間の対立も演出できる

 これらの基本的なシステムの長所は、他のTRPGシステムでは嫌われているプレイヤー間の利害対立を許容できることです。実際には協力型や対立型など、複数の遊び方がありますが、対立型で遊んでもシステムが機能する点はシノビガミの長所と言えます。そしてこの点こそ、シノビガミが広く好まれる理由ともなっているのです。

目的の不一致が戦いを招く

 端的にいえば、シノビガミではプレイヤーキャラクターがボスになることが許容されます。たいていのRPGでは、コンピューターやゲームマスターが操る非プレイヤーキャラクターがボスとなります。しかしシノビガミではこの限りではありません。キャラクターたちの目的、特に【秘密】が利害対立を招けば、いつでもプレイヤーキャラクターが本当の敵になり得ます

 つまり、これまでに紹介していた【秘密】のシステムは、「誰が本当の敵なのかを暴くシステム」とも言えます。はじめ協力的に始まった会話が、互いの【秘密】を暴き合う中で大きく変化し、味方の中に隠れていた本当の巨悪に立ち向かう展開へと変化するのです。

 こうした展開は他のTRPGで楽しむのが難しかったこともあり、こうしたシチュエーションが好きなプレイヤーたちから厚い支持を受けているのです。

魅力的な戦闘ゲーム

 これまでキャラクター演出を主軸にして紹介してきましたが、シノビガミに欠かせない要素として戦闘があります。シノビガミの戦闘システムは、シノビ同士の間の読み合いを反映したスタイリッシュなシステムとして仕上がっています。

ヴェロシティ・プロット・ファンブル

 最大の魅力は、ヴェロシティシステムにあります。速度を意味するヴェロシティですが、これはシノビたちの戦闘態勢を抽象的に表した数値として運用されています。高いヴェロシティであれば決死の覚悟で戦闘に臨んでおり、低いヴェロシティであれば戦況を見定めて行動するゆとりがある状態と解釈できます。

 このシステム上で、プレイヤーはリスクと利益を秤にかけます。高いヴェロシティではサイコロによる判定に失敗しやすくなりますが、その代わり相手よりも先に動き、さらにより多くのコストを消費する高度な忍法を運用できるようになります。一方低いヴェロシティならそんな勇む相手から距離を取り、失敗のリスクなくそう強くない攻撃で堅実に攻めることができます*2

 ここにおいて、プレイヤーは読み合いの必要に駆られます。戦場に居合わせた他のプレイヤーが誰と敵対し、どういう戦略で挑むのかを予測し、自分のヴェロシティを決定しなければなりません。たとえ人数差があったとしても、読み合いに勝利すれば戦況を覆す可能性もあります。

忍法と奥義

 さらに戦況を左右するのが忍法と奥義です。クナイ投げを得意とするのか、はたまた脇差による近接戦闘を得意とするのかなど、キャラクターの戦闘における個性を忍法で表現します。分身の術や身代わりの術といったお馴染みの忍法も、それらしいものがしっかり用意されています(中には科学忍法火の鳥なんてものも……)。

 そうした忍法の中でも、最もシノビガミの目的にマッチしたものが「奥義」です。奥義の内容は他のプレイヤーには秘匿されているため、発動の瞬間に他のプレイヤーたちはワッと驚くことになります。そうした見せ場は、キャラクターを見せ合うというシノビガミの目的にも合致しています。戦闘の途中、ここぞという場面でかっこいい名前の必殺技として発動し、アツい展開の興奮を他のプレイヤーたちと共有しましょう!


まとめ

 シノビガミはキャラクターたちのハラハラの会話劇を楽しむロールプレイングシステムです。表現できる幅も広く、協力も敵対も含めたキャラクタープレイを許容する土壌があるのは、他のTRPGの中でも特徴的といっていいでしょう。戦闘システムでは他のプレイヤーとの駆け引きを楽しめるほか、大逆転の奥義が展開を盛り上げてくれます。

 シノビたちの思惑が交差する展開に魅力を感じるなら、ぜひ一度手に取ってみてください。


忍術バトルRPGシノビガミ基本ルールブック (Role&Roll RPGシリーズ)

忍術バトルRPGシノビガミ基本ルールブック (Role&Roll RPGシリーズ)

*1:ルールブックの冒頭でも、このシステムを通じてプレイヤーが体験できることの第一項目としてキャラクターの見せ合いが挙げられています。

*2:ヴェロシティは状況によってプロットとかファンブル値とかに名前を変えますが、ここでは簡単のためヴェロシティに表記を統一しました。