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電源・非電源ゲーム全般の紹介・考察ブログ

七クソ粥2019

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毎年1月7日には、その前の年に遊んだクソゲーを無理やり煮込んだ「七クソ粥」を食べることで、その年に遊ぶゲームが全て神ゲーに見えるようになるという、古来から伝わる日本の伝統文化が存在します。

 

……存在します!!!

 

 

 

Happy New Year Clicker


Happy New Year Clicker Release Trailer 13-12-2017

 新年一発目のクソゲーはやはり新年にまつわるゲームであるべきでしょう。Happy New Year Clickerはあなたに最悪の新年を提供してくれます

 人型クッキーをクリックするたびに1つのギフトが手に入り、それを蓄えることで自動的にギフトを生産するアイテムを買うことができます。一時期流行したクッキークリッカーの劣化版……を一度ハンマーで叩き割って最低限の機能だけ残して、無駄な機能と最悪のグラフィックをねじ込んだようなゲームです。

 いいところは何もないので、問題点を紹介しましょう。まずはこのゲーム、ギフトのストック上限が決まっています。このためクリッカーゲームの王道である“放置”が通用しません。ストック上限の引き上げシステムは現在ストックが消滅する代わりに同量の上限上昇を得るというもので、つまり単に待ち時間が2倍になっているだけです。

 その点ゲーム画面のチェックが欠かせないのですが、そのゲーム画面に常時表示されている雪結晶の背景が曲者です。レイヤーを重ねて2枚の雪結晶背景が反対側に回転しており、30秒も画面を見ているとめまいを覚えること請け合いです。もはや画面を見ることすら困難で、現在どれほどストックが溜まっているのかなど考えたくもなくなってきます。

 そんな苦難を乗り越えたとして、15分ほどで限界を感じます。自動生産アイテムが5種類、アップグレードが各1段階しかないため、ものの5分でアップグレードが完了し、最上位自動生産アイテムの数を増やす体制に入ります。しかし一度アイテムを購入するとストック上限を超える高価格へとアイテム価格が急上昇します。2倍の待ち時間を経てようやく購入しても、アイテムの秒間生産力は頭打ちであり、価格あたりの生産力の著しい低下を感じさせてくれます。

 というわけで、一つ目のクソはHappy New Year Clickerに決定です。目眩を覚えながら人生で最も無駄な時間を過ごしたいあなたの耳に、ジングルベルのチープなサウンドをお届けしてくれる、素晴らしいクソゲーです。

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Grass Simulator


Grass Simulator - Steam Release Trailer

 芝再現機……とは名ばかりで、芝になんのこだわりもない悪夢のFPS(ファースト・パーソン・シューター)です。いや……えーっと……たぶんFPSです。

 そもそもゲームとはなんでしょうか。目標があって、課題があって、プレイヤーが操作を行うことで課題が克服され、目標が達成されたり失敗に終わったりして、報酬なりスコアなりが産出される……そういうシステムをゲームと呼ぶとすれば、これはゲームではありません

 ではそもそもシミュレーターとはなんでしょうか。何か現実世界にある現象を再現するために電算処理を行うシステムということになるでしょうか。しかしもしそういうシステムをシミュレーターと呼ぶなら、このゲームはシミュレーターではありません

 では一体なんなのか? 強いて言えば、「牧草地を歩けば牛に当たる」という体験を様々なバリエーションでプレイヤーに提供する、夢見の装置かもしれません。適当に並べただけの草木と牛たちの中で、銃を撃ち、牛が爆発する。それ以外に何も提供しません。

 Grass Simulatorは新しい概念です。この二つと無い体験は人類が全く経験する必要のなかったものに違いありません。しかし残念なことに、オンラインマルチプレイに対応するという愚昧の極みによってこの体験を仲間内に共有するべくギフト爆撃する輩が後を絶ちません。

 こんなゲーム以前の何かなど、鍋に叩き込んで炭になるまで加熱するに限ります。二つ目のクソゲーはGrass Simulatorに決定です。

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Press X to Not Die


Press X to Not Die - Trailer

 クソゲーの世界にも、ちょっとはマシなクソゲーというものがあります。味を整えましょう。Press X to not DieはQTEと選択肢で進行するビジュアルノベルゲームです。ゲーム画面の全体が実写で構成されており、安っぽい三文芝居を楽しみながら軍の開発した謎のウイルスによるパニックを生き延びます。

 このゲームは上の2作品に比べると明らかにゲームとして完成しています。全ての選択肢に対して応答が用意されているし、シナリオが存在しているし、QTEの入力の成否によってゲームオーバーが存在します(そのラインで評価できるって一体なんなんだ……)。その点、ゲームコンセプトに同意できれば、前二作に比べて神ゲーとまで感じられるかもしれません。

 それでもなお、このゲームはやはりクソゲーです。そもそも、画面中央に表示されたボタンを押すだけのものをまともなゲームと評していいのでしょうか。たしかにゲームとは画面に表示された状況に対して指定されたボタンを適切に押して解決するものかもしれません。しかし「どのボタンが攻撃でどれがジャンプで……この状況ならどっちを押して解決しようかな」という判断は存在せず、唐突に「Qを押せ!」「Eを押せ!」と迫るようでは、ただ反射神経の試験を受けているにすぎません

 さらに選択肢はシナリオ分岐を生み出さないというクソ仕様です。せいぜいクライマックスで恋人とのいちゃつきをヘルメットの男が邪魔するか空気読んでくれるかの違いしか生み出しません。シナリオは人間をゲーム脳にするウイルスが流出して、ゲーマーだけがそれに適応し、ゲーマーじゃない人が凶暴化したというものなのですが、突然現れる科学者やなぜかバスルームにある日本刀、服を頭にかぶせただけで気絶するラグビー部員など、全体にZ級コメディの趣を感じます。

 結果的に、「ギリギリ楽しむことはできるしネタにもしやすいものの、決していいゲームという評価を得ることはできないゲーム」という実に微妙なラインに収まっているあたりにクソ感が漂うことになります。価格があと500円高かったら間違いなく一級品のクソになれたでしょう。というわけで、Press X to not Dieを七クソ粥に叩き込んでおきましょう。

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Fidget Spinner Editor

 さて本編に戻りましょう。史上最悪の虚無、Fidget Spinner Editorの襲来です。

 これはゲームではなくエディターなので、エディターとして評価しましょう。そもそもFidget Spinnerとは、日本ではハンドスピナーとして親しまれているあのぐるぐるするやつです。

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 このエディターは複数のハンドスピナーの部品ごとのデザインを選択することで、自分好みのハンドスピナーを作ってその回転模様を再現できるエディターです。ハンドスピナー好きにはたまらないエディター……になっていればよかったんですが、そうはなっていません。

 そもそもエディターなのに部品は選択制です。部品装着部位も「軸」「本体」「末端装飾」の3箇所しか存在せず、それぞれ10種類弱が用意されているにすぎません。しかも本体の形が三叉の場合と十字の場合があるにもかかわらず、末端装飾はそれに対応して配置場所が変わることはなく、場合によっては中空に配置されて回転を始めます。

 そんな量じゃ思い通りのハンドスピナーが作れないって? そんなあなたのためにDLCが用意されています! たくさんの追加パーツでより豊かなハンドスピナーを! ただ回転軸はぶれるけどね!!!!!

 ……もし部品ごとの色を調整したり、素材を変えたりできれば、まぁまぁエディターとして評価できなくはなかったのですが、そうした機能が一切ない以上、エディターとしても失格です。あとそもそも、軸の画像は回転しなくていいんじゃないのか? そこも回ったら僕らの指はどうなっているんだ……。

 エディターとして今ひとつなのに、無駄にハンドスピナーの回転数を計測するカウンターだけが実装されているのも謎を深めます。しかも部品によって回転しやすさが変わるとかですらない!!!!!!

 もしこれが摩尼車エディターだったなら、回せば回すだけ功徳がたまるから価値もあったのですが、残念ながらハンドスピナーに功徳効果はありません。そっと七クソ粥の鍋に叩き込んでおきましょう。

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Wild Animal Sprts Day

 だいたいハンドスピナーの再現という着想が無駄だったんです。やっぱりゲームで再現するならスポーツに限ります。eスポーツが流行語になり、オリンピック開催も近づいて、スポーツゲームが面白くならないなんてありえません。というわけで、こちらをご覧ください。


Wild Animal Sports Day

 全然楽しめないスポーツゲーム、Wild Animal Sports Dayの登場です。極彩色の世界で精神的に不安になるデザインをした動物たちが、最悪の操作感で繰り広げるスコア競争を体験できます。

 このゲームの登場キャラクターは動物なので、このゲームは全体に非言語ゲームという特徴を持ちます。様々な競技が立て続けに開催されますが、ルール説明や練習は一切なく、突然トランポリンやタータントラックに投げ込まれます。どのボタンで何をするのか把握した頃にはその競技は終了し、また別の競技に放り込まれます。良く言えば周回前提のゲームということになります。

 しかし独特でチープなキャラクターやけばけばしいグラフィックがプレイヤーの周回プレイへの気力を暴力的に叩き潰します。小学生の紙粘土工作がそのまま動き出したような動物たちの不可解な二足歩行は、Wild Animal(野生動物)というカテゴリーを動揺させます。同時に劣悪な操作感で展開する不可解な競技にSportsの定義まで揺るがせにするあたりに製作陣の本気を伺うことができます。

 語ることはまだあるのですが、このあたりにして、鍋に叩き込んでおきましょう。クソゲーは単品で味わうものではなく、ぐっでぐでの粥にして山野にばらまくものなのですから。

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Masky

 まぁしかし、頭がおかしくなるゲームにだって、上があります。


Masky | Official Android Trailer

 ついにこいつを紹介するときが来てしまいました。バランスゲームのMaskyです。

 クソゲーかと問われると、クソゲーとは断じきれないあたりに、バランスゲーというジャンルに飛び込んだ稀有なバランス感を見て取ることができます。しかし間違いなく言えることは、もっと可愛いデザインをしていれば、怪奇ゲーム扱いされることもなかっただろうということです。つまりゲームシステム自体は優れていると評価するに値するのです。

 このゲームは左右ボタンだけを使ったゲームを開発することで知られたDigital Melody社が開発しています。このゲームもその例に漏れず、プレイヤーは崩れそうになるバランスを左右キーで保ち、左右にいるキャラクターたちと手を繋ぐことを目指します。大きいキャラクターと手を繋ぐとバランスは大きくそちらに傾き、小さなキャラクターでもわずかに傾きます。また、キャラクターが被っている仮面によっても特殊効果が発動する場合があり、バランスの崩壊を誘発します。

 このゲームの優れたところは、そのバランスメーターのリアルさというか、手に吸い付くようなバランスメーターの感覚です。本当に箒を手に乗せているような感覚でメーターが移動するため、画面上にも関わらず物理的にバランスをとっているような感覚を体験することができます。

 一方、このゲームの残念なところは2点あります。まずは明確な展開性を持っていないことです。左右のキャラクターと手を繋ぎ、数が増えたら次の部屋に移動するという要素しか存在しないため、最終的なスコアが上昇するとしても、ゲーム上で大きく何かが変化したという印象を受けません。インベーダーゲームのようなスコアトライアル型のゲームと認識するべきでしょう。

 もう一つはやはりそのデザインです。ずっと左右に体を揺らしている謎の仮面の集団と天井のシャンデリアは、アメリカの原住民の催眠術か何かに見えて仕方ありません。その幻惑効果を高めるようなつかみどころのない音楽もあいまって、プレイヤーに唯一無二の体験を提供しています。この体験をよいものと考えるか、クソと考えるかはあなた次第です。

 僕は個人的には高く評価している一作ですが、もうひと伸び欲しいのは事実。残念ですが七クソ粥の仲間入りです。少しは美味しくなりそうですかね。

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Horny Fighter

 ようやく最後の一つにたどり着きました。評価のぶれない確実なクソゲー、Horny Fighterです。


Horny Fighter 2018 Trailer

 まず何と言ってもそのワキが語ってくれます。人体とは異なる造形をした巨ワキ人による三次元格闘アクションです。ゲームプレイは簡単で、Qキーでターゲットを選択し、WASDで移動して接近して、クリックで攻撃します。スペースキーで緊急回避もできるので、その辺りを通じてこのゲームが何がしたかったゲームだったのかを推し量ることができます。

 そんな婉曲的な書き方しなくてもと思うかもしれませんが、実際珍妙なゲームなのです。格闘戦しかできないので格闘攻撃を繰り出しますが、相手のHPが0になると突然相手の骨格が消滅して軟体動物に変化し、かなりの勢いで吹き飛びます。ここまではまぁいいでしょう。次の瞬間、映像がスローモーションになり、何もいない空間に向かって連続キックなどの決め技を繰り出すことになります。お前は何と戦っているんだ。

 キャラクターが下着姿なのはこの際許容するとして、このゲームが表現したかった格闘戦の機微について評価してみましょう。格闘戦を描いたゲームとして格闘ゲームがかなり発達していて、打撃vsガードvs投げという三すくみがその基本として利用されてきました。プレイヤーは相手の行動を先読みして、有意な技を仕掛けるという格闘戦さながらの読み合いを経験することができたのです。そんなものこのゲームには全くありませんけどね

 このゲームは大きく開いたワキに愛着を見出せるプレイヤーにオススメできるゲームです。カメラアングルが暴れたり、必殺技発動前に敵が死んで、肝心の技が空を切るなんてものはご愛嬌でしょう。Grass Simulatorに比べれば、遊ぶ中身がある分だけましなゲームです。一緒に煮込むのは申し訳ないところもありますが、七クソ粥に叩き込んでおきましょう。

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まとめ

 完成しました。今年の七クソ粥です。昨年発売以外のゲームも含まれていると思いますが、初回なので良しとしましょう。ともあれ、こんなゲーム相手に1記事ずつレビューを書くのは屈辱的なので、これで良しとしようじゃありませんか。

 今年一年のゲームたちがこれに比べて良いゲームたちであるように祈念しつつ、ここに七クソ粥をぶちまけておきます。さらばクソゲー。