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ゲームブック型シナリオの応用的技術【ソード・ワールド2.0】

 先日、ゲームブック型シナリオの最も基本的な構造を紹介しました。

 

trpg.hatenablog.com

 

 そこでは、ゲームブック型シナリオの最も基本的な構造を穴埋め式で再現する造り方を紹介しました。具体的には次のような構造を誰でも作れるようにしておきました。すなわち、一つ目の判定の成否が中間探索イベントの違いを生み出し、そのあとにボス前の行為判定を実施してボス戦に至るという単純な構造でした。

 今日はこのような単純構造をより複雑なシナリオに発展させる応用的な技術を紹介します。特にゲームブック型シナリオにおける分岐のあり方を多様化させることで、よりリアリティと物語展開に富んだシナリオにすることを目標としています。

 

 

 

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意思決定による判定なしの分岐

 判定の成功失敗だけで展開が変わってしまうだけでは、プレイヤーたちの主体的な選択が物語に反映されません。そこで判定を実施せずに、プレイヤーたちにどちらの行動をとるのかを尋ねることによってルート分岐をするという方法を取り入れてみましょう。

意思決定型分岐の例

街道を襲う蛮族を討伐してくれという商会からの依頼を引き受けた。
 →次の被害があるかもしれない。急いで現場に向かおう
 →依頼者の商会に赴いて、蛮族の目撃情報を収集し万全をきそう

 ここでは判定が一切行われていないにも関わらず、冒険者たちの行動次第で次に行われる判定が変化します。このとき、プレイヤーたちは意思決定を迫られます。

 ただし、意思決定の利用には注意が必要です。判定の場合には成功や失敗の責任をダイスのランダム性に負わせることでプレイヤーは免責されますが、意思決定となるとそうはいきません。セッションを楽しく終わらせるためには、プレイヤーの判断責任を軽くする工夫もまた重要なのです。

 そこで、意思決定をプレイヤーに行わせる場合、それぞれの選択が導く結果について、事前に情報提供するよう心がけましょう。この例では、たとえば以下のような情報がプレイヤーに対し開示されているのが理想と言えます。

意思決定のための情報開示の例

隣の町からの隊商は今日出発し、この街まで2日かけて移動する。
蛮族の目撃証言はこの町から1日はかからないところに集中している。
蛮族の種類と数、生息範囲の広さまではわからない。
急行すれば被害を抑えられるが、調査が長引けば隊商に危険が及ぶ。
隊商の被害がなかった場合、追加報酬をもらえる。

 意思決定を要求する場合、(メタ発言を含めて)この程度まで情報を開示しても問題はありません。プレイヤーたちは追加報酬のために情報不足で攻撃を仕掛けるか、追加報酬を諦めて敵の正確な編成を把握しようとするかを選ぶことができます。この例ならば、情報が不足していた場合、側面や背面から伏兵が出てきたり、適切に現地で調査しなければ首領を取り逃がすなどのイベントを用意するとよいでしょう。

 

 

複数の判定結果で分岐する

 次に紹介するのは、複数の判定結果からイベント処理を選択する方法です。以降、これまで扱っていたものを単一判定型分岐と呼び、複数判定型分岐と区別します。複数判定型分岐の処理方法にもいくつかのバリエーションがあるため、それぞれ分けて紹介します。

ポイント制の分岐処理

 複数判定型分岐のうち、判定の成功率で次の展開を決定することを、ここではポイント式と呼びます。たとえば3つの判定を課し、3つ成功の場合と2つ成功の場合と1つ以下成功の場合とで分岐を設けるような方法です。

 意思決定型分岐で用いた例で、商会に情報収拾に向かった場面を想定してみましょう。

複数判定型分岐ーポイント式

聞き込み判定 目標値16 商人たちへの蛮族の目撃情報の聞き込み
地図製作判定 目標値15 交易路の地図から生息範囲の推測
天候予測判定 目標値16 気候変化による蛮族の移動について

3成功→蛮族の編成開示+寝ぐらの位置の推測
2成功→蛮族の編成開示+寝ぐらの存在の把握
その他→蛮族の編成の一部開示

 判定と情報を1対1で対応させる方法とは、微細な違いがあります。この方法では情報を総合してわかる情報をプレイヤーに直接提供することになります。ゲームブック型がスムーズなセッション進行を目標にしていたことを考えれば、情報を読みあわせてその意味を読み解く必要がなくなるのは目標に適ったメリットと言えます。

イベント優先度処理

 複数判定型分岐では、すべての判定結果を参照するのではなく、採用結果に優先度をつけることで処理する方法もあります。この方法をここでは優先度式と呼びます。

 優先度式の最たる例は、複数の判定を連続的に行って、最後まですべてに成功しなければ失敗として扱われるようなものです。また、低度の判定と高度な判定があり、高度な判定が低度の判定による成果や利益を完全に内包し上位互換として機能している場合にも、優先度処理が採用されます。

複数判定型分岐ー優先度式

 連続判定 :変装判定→敵の真偽判定失敗→隠密判定→スリ判定
       途中で一つでも失敗すればボーナスの獲得は不可
      (分岐は成功と失敗の2通りのみ)

完全上位互換:聞き込み判定<<文献判定
       文献判定にさえ成功すれば聞き込み判定の成否は問わない
      (分岐は完全失敗と低位のみ成功・高位成功の3通り)

 それぞれ分岐処理に優先度が設定されています。いくらか処理が複雑になりますが、これらの要素を加えることで、セッションに緊張感やリアリティをもたらすことができます。

補足:リスク分担を課す

 複数判定型分岐の際、1人1つの判定にのみ参加できるとすることで、リスクの分担という戦略性を加えることができます。

 たとえばポイント式の説明で利用した例では、スカウト・レンジャー技能を持つプレイヤーは地図製作判定と天候予測判定の両方に参加できます。このとき同時に二つに参加することを禁じれば、地図製作判定をセージ技能の持ち主に委ね、スカウトとレンジャーが天候予測判定に、探索技能を持たないプレイヤーが聞き込み判定にと分担が成立します。

 全員がダイスを振る場面ばかりだと、プレイヤーはGMの指示でダイスを振るだけになってしまいがちです。それぞれの基礎点を参照しながら、どの配分が一番リスクが少ないのかを議論するだけの作業ですが、それでもプレイヤーたちが互いに相談して行動を決める場面をつくることは重要です。この相談を挟むだけでセッション進行のボールが一度プレイヤーに渡っているからです。

 ゲームブック型シナリオ特有のセッションの窮屈さを少しでも取り除くために、ボールを渡す場面を細かく作るよう意識するようにしましょう。

 

フラグを利用した分岐

 最後に、フラグを利用した分岐も紹介しておきます。フラグとは言うなればプレイヤーの行動記録で、過去の行動結果(フラグ)に基づいて分岐決定を行うことをフラグ型分岐と呼ぶことにします。

 フラグ型分岐を実際に取り入れるには、最低でも二つのイベントが必要です。先行するイベントでフラグの記録を行い、後発のイベントでフラグの参照を行います。必ず二つのイベントをペアで設計するということを覚えておきましょう。

フラグの記録

 フラグの記録は簡単に行うことができます。一つの分岐結果をゲームマスターが手元に記録しておくだけです。しかし、それがフラグとして機能していることはプレイヤーたちにも納得のいく形で伝わるようにしなければなりません。

 フラグを明示するのは案外簡単です。たとえば鍵や合言葉などを渡してしまうことでフラグが記録されたとプレイヤーに伝えることができます。それらの道具は明らかにそれなしでは到達できなかったイベントを開いてくれます。

 また、物理的に環境を変えてしまうのもフラグの一種です。水門を閉じて水の流れを変えたり、罠設置判定に成功したり、逆に構造物の破壊に失敗して逃げ道がなくなったりする事態は、すべてフラグとして機能させることができます。

フラグの参照

 必ずプレイヤーたちも納得できるような形でフラグを参照するよう心がけましょう。現実には全くの偶然も存在しますが、TRPGセッションはどちらかといえば物語の世界に近いものです。バタフライエフェクトとしか言いようのない無関係な2つの出来事を結びつけるのは愚策と言えます。

 したがって、フラグの記録と参照は、可能な限り直接的な関係が望まれます。たとえば謎の鍵を手に入れていたために秘密の扉の奥へ進めるとか、水の流れを変えたことで戦闘エリアが水辺ではなくなるとか、そういった関係です。

 仮にほとんど無関係な二者をフラグとして結びつけると、ゲームマスターの独りよがりなシナリオという印象を強めてしまいます。たとえば、商会で本を読んだからエネミーが1体減るといった事態は、ほとんど因果関係の説明ができません。

フラグ型分岐の例

〈フラグの説明〉
魔動機文明時代の遺跡を見つけたが、そこで拾った鍵を奪われた。
自分は漁る実力はないので情報料だけもらうことにする。
もしその鍵を手に入れたいなら自分たちでヤツから奪うしかない。

〈フラグの記録〉
 アイテム 魔動機の鍵の所持

〈フラグの参照〉
 大きな魔動機の扉に鍵穴がついている。
 魔動機の鍵を持っている→扉の奥へ
 魔動機の鍵を持っていない→解錠魔法に挑戦 目標値20

 

まとめ

 ゲームブック型シナリオで利用できる、様々な分岐の型を整理してみました。一つずつ取り出してみると単純ですが、これらを組み合わせることでかなり高度なシナリオを設計することができます。ゲームブック型シナリオの特徴である進行のスムーズさはそのままに分岐処理を複雑化することができるのは大きな魅力です。工夫を凝らせば、予定された軌道に沿って進む感覚から、自分たちの行動にシナリオがついてきてくれるような感覚に、プレイ感を変化させることができるでしょう。