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パズルをモデルにしたシナリオ構築法

 パズルは目標が明確で、論理的な手順で必ず解決に至ることができるゲームの形式です。TRPGシナリオを、明確な目標のある、システムに定義された手順で必ず解決(目標達成)に至ることのできるゲーム形式と考えれば、パズルをモデルにしたシナリオ構築も可能かもしれません。

 今回はシナリオ設計のモデルとして「パズル」を捉え、その構造を模してTRPGシナリオを設計する手法について整理してみます。

 ところで、TRPGシナリオの中には「リドル」と呼ばれる謎解きシナリオも存在します。パズル+シナリオというキーワードだけを見れば、リドルシナリオの作り方のようにも誤解されるかもしれませんが、今回はリドルを扱うわけではありません。あらかじめご了承ください。

 

 

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パズルの基本は充足問題

 論理学の用語に「充足問題」というものがあります。平たく言えば、論理式に空欄が用意され、そこに論理的に矛盾のない解答を埋めることを目標に据えた問題です。これは一般にはパズルとして知られています。

 抽象的でわかりにくいので、例を示してみます。

 

充足問題の例1:アリストテレスは死ぬか?

すべての人間は死にます。
アリストテレスは人間です。
さて、アリストテレスは死ぬでしょうか?
→解:死にます

 

 論理学的にこれ以外の回答がありえません。もしこれ以外の回答を作ろうとするなら、テキストの外から追加の情報をもってきて、ひねくれなければなりません。いちおうのところ、論理学ではそういうことがないように、このすべてを命題とか記号とかで表現して、誤解が発生しないようにします。

 その点、私たちが一番よく知っていて、誤解を生じにくい充足問題は「数独」かもしれません。すべてが数字で処理されていて、論理的にたったひとつの回答しかありえないように組まれています。

 

充足問題の例2:数独(一部)

すべての横列には要素{1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9}が含まれます。
ある横列には要素{1, 2, 3, 4, 5, x, 7, 8, 9}があります。
さて、要素xは何でしょうか?
→解:6

 

 充足問題パズルとは、このように解が一つに定まる論理構造を言います。

 

 

パズルのモデル化

 したがって、パズルのプレイ過程は、結論を導くために必要な命題を獲得する過程としてデザインされます。

 

 パズルの開始時点からパズルの答えを導き出す条件が全て揃っていては、プレイヤーは何の論理的手順も行うことなく結末にたどり着いてしまいます。これでは時間的な幅と順序のあるパズルというプロセスを楽しむことができません。

 

パズルの抽象イメージ:数字パズル

【問題の提示】
すべての横列には要素{1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9}が含まれます。
ある横列には要素{1, 3, 4, 6, 7, 8, a, b, x}があります。
さて、要素xは何でしょうか?

【論理的手順の進行】
手順1:要素aは2ではない
手順2:要素bは2である
手順3:要素aは9である

解決:要素xは5である

 

 したがって、理想的なパズルをモデル化し、シナリオの構造として理解し直すと、次のような構造が浮かび上がります。

 

パズルモデルシナリオの抽象構造例

【問題の提示】未完成の命題を提示する
 解決には複数の命題が追加で必要であることが望ましい。

【TRPG的手順の進行】解決に必要な追加の命題を得る
 システムが定義した「成功」に応じて、追加命題を得る

【解決】パズルの回答を示す
 パズルの解決と同時に、システムの求めるクライマックス処理を行う

 

 この構造は最も抽象的なものですが、それでもパズルをモデルにしてTRPGシナリオを描くことは十分可能なように思われます。次にパズルをモデルにしたシナリオの具体的な制作手順を整理してみましょう。 

 

 

パズルをモデルにしたシナリオの制作手順

シナリオの目標を設計する

 通常のシナリオと同様に、シナリオの目標を考えます。このとき、システムそれ自体の指向性にあまりこだわる必要はありません。世界観に反さないように最終目標を設定しましょう。

目標設計の例
ダンジョンの宝が隠された扉の鍵を開く
屋敷に潜んだ悪霊の正体を解き明かす

 

 

解決命題を定義する

 次に、解決命題を定義しましょう。プレイヤーが最終的にシナリオを解決したとき、どういう要素が解答に含まれているかを決めなければなりません。数独の例を前提に、練習として3つ程度の要素を用意してみましょう。

解決命題の例
解鍵されるとき{緑の石、赤の石、青の石}が揃う
悪霊の正体は{屋敷の前の主、魔術師、地下に潜む}と説明すればよい

 

最終命題xを選択する

 次に、数独の例で言う{a, b, x}を決めましょう。といって、ここで{x}とは、それさえあればシナリオを終わらせられる要素ではありません。むしろシステムが希求している展開を発生させるトリガーと認識しなおす必要があります。

 たとえば戦闘を指向したゲームシステムならば、要素xの獲得のためには戦闘を実施するのが望ましいと言えます。逆に情報収集による戦闘の回避を指向する場合、要素xの獲得のためには戦闘かあるいは戦闘を回避する情報収集の末の任意の手段が据えられるべきでしょう。

 逆に言えば、要素a, bを優先的に取得させなければ、システムの希求するクライマックスがセッション前半に発生してしまうことを意味します。このため、シナリオは全体として要素a, bの取得が先行するように組む必要があります。

最終命題xの選択
{緑の石}を獲得するためには強敵を撃破しなければならない
{魔術師}だと理解するためには多分に調査を行わなければならない

 

出題文を構成する

 ここで出題文を整えます。解決命題の要素を明言して伝達するとプレイヤーは遊びやすさを感じることでしょう。ただし、世界観の都合からNPCの発言やゲーム内テキストとして明示的に出題することができない場合もあります。その場合はゲームマスターの方でゲーム外発言としてプレイヤーに伝えておきましょう。

出題文の例
この先へ進むならば、この迷宮に隠された3色の石を捧げよ。
誰が、どういう能力で、どこから“悪霊”現象を引き起こしたかを解明せよ

 

解決手順の設計

 ここまで作ることができれば、あとはそう難しいことではありません。間違いなく要素xに一番最後にたどり着くことに注意しながら、シナリオ経路を設計しましょう。このとき、シナリオの経路構造には多様な方法が存在しますが、今回は最も単純な二つの方法を例示します。

解決手順の例
【ダンジョンの例】
赤い石→炎の罠。克服で赤の石を獲得し、赤の封印が解かれる
青い石→水の罠。克服で青の石を獲得し、青の封印が解かれる
緑の石→赤の封印と青の封印を解くと進める。ボスに勝利で獲得

【悪霊の屋敷の例】
潜む →地下を調べれば一定確率で謎の遺体に気づける
前の主→遺体の主を図書館で調べればわかる
魔術師→図書館で知った裁判について追加調査することでわかる

 ここで使われている単純な構造は、それぞれ次のようなものです。ダンジョンの例では、要素xにたどり着くために「aかつb」の条件が整わなければなりません。一方、悪霊の屋敷の例では、aがbの条件になり、bがxの条件になるという、単線的な調査経路が描かれています。

 

まとめ

 パズルは論理的な手順で必ず解決できる構造を持ったゲームです。パズルをモデルにしつつ、論理的手順をTRPGシステムの定義した手順に変更することで、シナリオ目標の達成可能性を確実に担保することができます。

 その点、この方法は厳密な意味ではパズルではありません。充足問題パズルのように空欄を埋めるという手順をTRPGで解決しているにすぎません。それでもパズルと同じように明確な目的意識を共有して確実な前進を感じるシナリオとして、楽しさを形作ってくれます。

 シナリオ制作の一つの考え方として、活用してみてはいかがでしょうか。