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《武器習熟A/スタッフ》で魔法攻撃のダメージは増えるの?【ソード・ワールド2.0】

 先日コメントでこちらの記事に質問をいただきました。

trpg.hatenablog.com

 質問の趣旨はタイトルの通りで、「《武器習熟A/スタッフ》で真語魔法・操霊魔法によるダメージは増えるの?」というものでした。コメントへの返信にも記載しましたが、基本的な僕の立場は「解釈による」というものです。というのも、どちらともの解釈を正当化するだけの理由があるからです。

 というわけで、今日はその二つの解釈を整理しつつ、ソード・ワールド2.0ルールブック改訂版のルールブックの細かい読みを行ないます。

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《武器習熟》で魔法攻撃のダメージは増える派

正当化するテキスト解釈

傍証1:カテゴリ〈スタッフ〉の説明

 カテゴリ〈スタッフ〉の説明には「魔法の発動体として使用することもできます」と書かれています。このとき『使用』という語が用いられていることが重要です。なぜなら、《武器習熟》の説明には「武器を使用した場合、ダメージを常に+1点」と書かれているからです。

 したがって、「魔法の発動体としてカテゴリ〈スタッフ〉の武器を使用した場合」に該当するため、ダメージを+1する効果があると主張できます。

傍証2:魔法効果などとの表記の違い

 操霊魔法のエンチャント・ウェポンの説明では、「対象が近接攻撃・射撃攻撃を行う場合、その武器を〜」という形で武器の属性とダメージ変更が指示されています。一方、《武器習熟》では「対象が近接攻撃・射撃攻撃を行う場合」との文言は書かれておらず、ただ「武器を使用した場合」と書かれています。これは「武器を使用」する状態として、「近接攻撃・射撃攻撃」以外の用法を想定していたからであると推測できます。このことから、それら以外の用法として、魔法の発動体として使用する場面が想定されていたのではないかと論じられます。

この解釈による波及的影響

 この解釈を採用すると、魔法の発動体としてスタッフを利用して発動する場合のみ、真語魔法・操霊魔法(深智魔法)について、《武器習熟》によるダメージを上昇させる効果が適用されます。

 このため、魔法の発動体加工は追加的な意味を得ます。魔法の発動体加工を行ったカテゴリ〈ソード〉の武器を使って同種の魔法を行使する場合、術者が《武器習熟A/ソード》を習得していれば、近接攻撃同様、ダメージを上昇させる効果が適用されることになります。《マルチアクション》を活用した魔法剣士ならば、こうした武器加工に大きな意義が生じます。

 一方、聖印・宝石・マギスフィアを使用して行使する別種の魔法はこの効果を受けられません。したがって、魔法を利用して攻撃する場合、真語魔法と操霊魔法を選択することにわずかなアドバンテージが生じてしまいます。

補足:魔法の武器加工など

 魔法の武器加工などを〈スタッフ〉に対して行った場合も、魔法行使によるダメージが増えるのでしょうか。答えは否です。

 魔法の武器加工の効果は、「武器の〜追加ダメージ+1」と書かれています。「追加ダメージ」とは、ダメージ算出過程で加算される数値のうちの一つです。そこにおいて、魔法攻撃の追加ダメージは「魔力」と定義されています。武器に関係する記述は「〈ガン〉以外の武器」の「追加ダメージ」が「戦闘系技能レベル+筋力ボーナス」と説明される箇所(および〈ガン〉に関する部分)のみです。したがって、「追加ダメージ」に関して言えば、魔法行使と武器攻撃は明瞭に切り離されています。

 一方、《武器習熟》による効果は「追加ダメージ」ではありません。その次のページに「ダメージを上昇させる効果」の一つとして掲載されています。それゆえ《武器習熟》によるダメージと魔法の武器加工によるダメージは別の処理を行うことができます。

 

《武器習熟》で魔法攻撃のダメージは増えない派

正当化するテキスト解釈

傍証:武器攻撃の項目

 「武器攻撃」という項目がルールブック改訂版1に掲載されています。それによると、「武器攻撃」は「武器による攻撃は、次のように分類されます」と述べられた後、「近接攻撃」と「射撃攻撃」という分類が提示されます。

 したがって、魔法の発動体として使用したとしても、それは「武器による攻撃」ひいては「武器攻撃」と解釈されません。魔法攻撃は武器攻撃ではありません。そうである以上、《武器習熟》の説明に書かれた「武器を使用した場合」には該当しないと論じることができます。

この解釈による波及的影響

 この解釈を採用すると、他のシステムへの波及的影響はほぼありません。ただし、武器に対する魔法の発動体加工の意味が小さく止まります。装飾品枠をひとつ空けるだけの効果しかなく、相当な高レベルで資金が有り余っていなければ効果的とは言い難いでしょう。

 

要点:「武器の使用」と「武器による攻撃」

 この議論は二つの言葉が同じ意味なのか違う意味なのかという一点に収束します。すなわち「武器の使用」と「武器による攻撃」です。

 二つの言葉が同じものの言い換えに過ぎないなら、《武器習熟A/スタッフ》で真語・操霊魔法のダメージは増えません。ただしこの場合、「魔法の発動体としても使用できます」という〈スタッフ〉の説明書きは誤解を招くとして書き換えられるべきかもしれません。

 一方、二つの言葉がルール上異なる用語なら、《武器習熟A/スタッフ》で真語・操霊魔法のダメージを増やすことができます。ただしこの場合、「武器の使用」という言葉がルール上の用語として一切定義されていないことに明らかな違和感を覚えます。

 したがって、二つの解釈はどちらとも正当化するだけの理由があり、同時にいずれも他の記述との間に違和感が残されています。それゆえ、最終的にはゲームマスターがいずれの解釈にするのか決める他ありません。卓で問題になった場合は、ゲームマスターが解釈を決定するようにしましょう。

 

 

注意 以上は2018年4月16日現在の情報に基づくものです。最新の情報については、ソード・ワールド2.0の公式ホームページのQ&Aやエラッタ、最新の出版物等を確認してください。