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ゲームブック型シナリオの基本構造【ソード・ワールド2.0】

 ソード・ワールド2.0のシナリオ構造として、ゲームブック型というものを提案します。

 

 ゲームブック型シナリオは次のような悩みを解決してくれます。

  1. セッション時間が長くなってしまう
  2. プレイヤーたちの行動が自由すぎて処理しきれない
  3. うまく探索関係の行為判定を組み込めない

 一方で、ゲームブック型シナリオは次のような課題を抱えています。

  1. プレイヤーの自由な発想の余地が少ない
  2. 高度化すれば、複雑な条件分岐を用意する必要がある

 

 この記事では、有用な代わりに少しだけ丁寧な用意を必要とするゲームブック型シナリオについて、その基本的な作り方と応用的テクニックを紹介します。

 

 

 

ゲームブック型シナリオとは?

 ゲームブック型シナリオとは、あらかじめシナリオの流れに沿って判定を設定したシナリオ構造で、各判定の成否による展開分岐を組み込むことで展開に多様性を持たせたシナリオです。

ゲームブック型シナリオの例

 たとえば、「サーベルタイガーを討伐してほしい」という依頼について、次のような設計を行います。

サーベルタイガー討伐シナリオの一部

1 依頼を受ける→2番へ

2 見識判定 目標値14の実施
 成功:サーベルタイガーの寝床の予測が立つ→情報を獲得して3番へ
 失敗:サーベルタイガーの居場所の予想が立てられない→4番へ

3 出発前にプレイヤーに装備確認の時間を与える→5番へ

4 聞き込み判定 目標値16の実施
 成功:行商人が教えてくれた。急いで向かおう→情報を獲得して5番へ
 失敗:だいたい北部の森のあたりということしかわからない→5番へ

5 森へ向かう冒険者たちの描写を行う
 情報を獲得している→獣道を見つける8番へ
 情報を獲得していない→手当たり次第に探そう6番へ

・・・・・・

 ルールブックに記載された公式シナリオの構造にも似ています。しかし獲得した情報に従って次の探索処理が指定されているという点で、より展開が限られ相談するべき点が減らされたデザインになっています。

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ゲームブック型シナリオの作り方

 ゲームブック型シナリオを作るにあたっても、通常のシナリオと同様、ボスエネミーの選定から始めましょう。ルールブックの指示通り、冒険者たちのレベル平均+2程度を意識しつつボスを選び、さらに数匹のエネミーを加えながら、冒険者たちのパーティ構成に沿ったエネミー構成を作りましょう。その用意ができたら、次の手順でゲームブック型シナリオを作っていきます。

舞台と主要な判定の設定

 エネミーの性質に合わせて舞台を設定します。エネミーの「生息地」の中から一つを選びます。「さまざま」となっている場合は自分で任意のものを選びましょう。

 続けて生息地やエネミーに合わせた行為判定を一つだけ選びます。自然環境での蛮族や動物相手なら足跡追跡判定や罠設置判定、探索判定などが候補になるでしょう。遺跡の中なら探索判定や解除判定などを通じて遺跡の奥に進むように設定してみてはどうでしょうか。

 判定に失敗したとしても、ソード・ワールド2.0には判定時間を延ばして再判定するルールがあります*1。このルールを利用することを前提とすれば、たとえ判定に失敗したとしても、何度も繰り返すうちに高確率でボスの元までたどり着いてくれるはずです。

〈作業1〉ボスにつながる行為判定の設置

行為判定の一覧から、ボス戦の開始条件になる行為判定を選ぶ。

 ここで考案するのはボス戦直前の一つの判定のみで構いません。「この舞台ならこんな探索の行為判定ができるかもしれない」とか「この場所でこういう判定をしてボスにたどり着けたら劇的だな」という想像を膨らませて考えてみましょう。

開始直後の判定を選択する

 次に、逆のスタート地点を考えましょう。大抵の場合、冒険者の宿から物語は始まります。依頼を受けたり遺跡の情報を得たりして、シナリオが開始されることでしょう。

 このとき、討伐対象や遺産の情報は断片的にしか得られないことにしてみましょう。同時に、残りの情報を得るための判定を考えます。遺跡の情報であれば文献判定や見識判定で情報を補うことが考えられます。あるいは、情報料の支払いなどを条件にするのも面白いかもしれません。

 同様に動植物が対象の場合、文献判定や見識判定、あるいは地図製作判定で古い地図を読み解いて生息地を推測するような展開を組み込むことが考えられます。より複雑なものでは、特定の天気でなければ現れない秘密の遺跡などを出現させて天候予測判定を利用したり、知恵の輪風の魔動機に封印された秘密の地図を読み解くために構造解析判定や解除判定を行うといった変わり種も面白いかもしれません。

〈作業2〉開始直後の判定の設置

行為判定の一覧から、オープニング直後の行為判定を一つ選ぶ。

 ここでもたった一つの判定を選べば十分です。それ以上の判定を設置したい場合には、応用的テクニック(執筆中)を参照してください。

中間探索イベントとペナルティの設計

 最後に、中間探索とペナルティを設定しましょう。現在の時点で、開始直後とボス直前の二つの判定が用意されていました。まずは開始直後の判定について、次の中からペナルティを選びましょう。

〈作業3〉ペナルティの選択

次の中から開始直後の判定に失敗したときのペナルティを選択する

  • 準備時間の減少(判定成功時は準備のためのアイテム購入が可能)
  • 報酬の減少(情報料を要求されるなど)
  • エネミーの強化(時間経過により戦闘状況が変化する)
  • 行為判定の増加(敵の所在がわからず中間探索が必要になる)

 以上のペナルティは裏を返せば判定成功の報酬を意味しています。

 

 次に、中間探索イベントを挟みます。エネミーの行動と関係ありそうな行為判定を行為判定の一覧から選択しましょう*2

 中間探索イベントでは遺跡の罠や自然環境の克服が中心になります。遺跡ならば罠感知判定や危険感知判定を行ったあとに解除判定で克服するとよいでしょう。一方自然環境は登攀判定や水泳判定などの冒険者判定が活用しやすい場面です。冒険者判定はやや難易度を高く設定し、一人が判定に成功したらロープなどで他のプレイヤーを導けるとしてみましょう。

 これら中間探索イベントにも失敗ペナルティを設置するのが望ましいのですが、これも上記の一覧から選ぶことができます。しかし、中間探索イベントでは冒険者のリソースを直接攻撃する次の選択肢が追加されます。

ペナルティ種別の追加

  • 冒険者のHPかMPに直接ダメージを与える(罠、落下など)

 ここでは練習のために、2種類の中間探索イベントを自作してください。ペナルティのより重いものを中間1番、ペナルティの軽いものを中間2番と呼ぶことにしましょう。

シナリオメモにしながらルートを整理する

 開始直後の判定、中間探索イベント、ボス直前の判定をそれぞれ選択したら、最後の作業行程に移りましょう。次のようなシナリオメモを用意して、書き込みを行います。

〈作業4〉シナリオメモの用意

(1)オープニングイベント→2番へ

(2)【開始直後の判定名と目標値を記入】
  成功:【成功した結果得られる報酬を記入】→4番へ
  失敗:【失敗時のペナルティを記入】→3番へ

(3)【中間1番の判定名と目標値を記入】
  成功→5番へ
  失敗:【中間1番の失敗時のペナルティを記入】→5番へ

(4)【中間2番の判定名と目標値を記入】
  成功→5番へ
  失敗:【中間2番の失敗時のペナルティを記入】→5番へ

(5)【ボス直前の判定名と目標値を記入】
  成功:【ボスエネミーの構成を記入】との戦闘→6番へ
  失敗:時間をかけて再判定を行う→5番を繰り替えす

(6)エンディング処理

 このシナリオ型に今までに決定したものを組み込むだけで、もっとも簡素なゲームブック型シナリオが完成します。あとはそれぞれのイベント時の描写を用意しておけば、セッションはスムーズに進行することでしょう。

 

 

ゲームブック型シナリオのまとめ

 今回はゲームブック型シナリオのもっとも基本的な構造を紹介しました。冒頭で注意を喚起したように、プレイヤーたちに行動選択の自由があまりありませんが、それによって相談の時間を減らし、テキストセッション環境下でのスムーズな進行を実現するというメリットがあります。短い時間の中で探索関係の行為判定を含むシナリオで遊びたいとき、この構造を念頭に置いて、スムーズなシナリオを作って運用してみてはいかがでしょうか。

 なお、今回紹介したのはもっとも基本的な構造にすぎません。今後このスタイルをさらに複雑化させる応用的な技術についても紹介しようと思います。

 

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*1:ルールブック改訂版1ー128

*2:ルールブック改訂版1ー108