【ソード・ワールド2.0リプレイ】苦悩と昏迷のアーク【英雄志望と二つの剣2nd season 3-15】
<前回 |第1シーズン|2nd−1|カシウス過去編|2nd−2|2nd-3|
クキバミ:「……我がフロンタ隊長から聞いた話はこれだけだ。いま、アークを中心に、この大陸が動き始めておる」
カシウス:「……わかった、ありがとう」
クキバミ:「……我はまだ付き合いも浅い。アークが目覚めなかったとき、どうするのかは我には決められぬ」
カシウス:「ああ、わかってる」
クキバミ:「……」
カシウス:「それに、俺は信じてるよ。こいつは……アークは、俺の友達なんだ」
GM:今回は、過去のセリフたちを切り抜いて、昏睡状態のアークの精神世界を描きます。
…………
アーク:「ねぇ、その首から下げてるの、かっこいいね」
フレデリック:「ん? ああ、これか? よくわからないが、父上に頂いたのだ。我が家系に伝わる一品らしい……」
アーク:「なんだか剣みたいだね。……剣といえば、魔剣の伝承って昨日言ってたけど、魔剣ってどんなものなの?」
フレデリック:「開拓の魔剣クラウ・ソラス! ひと薙ぎで蛮族どもをうちはらい、輝く刃は稲光のように数多の敵を貫く!」
アーク:「すごいなー! そんなすごい伝説の剣があるんだ……」
フレデリック:「そうだ、すごい剣なんだ!」
アーク:「うん、面白そうだ! 僕もその剣ほしい!」
フレデリック:「その意気だ、アーク! 一文無しであっても、魔剣さえ手に入れれば英雄になれる!」
アーク:「英雄!? うん、僕英雄になる!」
フレデリック:「お前が競ってくれなくては張り合いがない。そこで一つ頼みたいことがある。私が取りに戻るまで、これを預かっておいてくれないか?」
アーク:「僕が……これを?」
…………
アーク:(でも、僕一人じゃどうしようもできないか……)
サラー:「あなたは一人で蛮族を引きつけて生き残ったの。誇ってもいいくらいよ」
アーク:「……それは僕の求める強さじゃないよ」
騎士:「騎士団長ノイル侯爵の命によりこれを誅滅した。蛮族に聞く話などない」
アーク:「力があったらなんでもしていいの……?」
サラー:「力があれば何をしてもいいわけではないでしょうね……ただ、力がなければ何もできないわ」
アーク:「……」
…………
「人族! 貴様らの時代は、終わる! 目覚めの鐘が刻を知らせる!」
アーク:「フレッドォォォォォ!」
フレデリック:「アーク! この街で何が起こっておるのだ!? なぜ私が命を狙われねばならん!」
サラー:「落ち着いてお聞きください。あなたの父上は亡くなりました。いえ……殺されました。首謀者は第一分騎士団長のノイル。状況から、彼には蛮族とのつながりが見て取れます」
フレデリック:「ならば姉上がその反逆者を抹殺するまでの護衛ということか!? そうなのだな!!」
サラー:「正直に言うわ、フレデリック。あなたの姉上が勝つ可能性は限りなく低い。クリスティン様はたしかに優秀だった。だけど、時間がなさすぎたのよ」
フレデリック:「そ、そんな馬鹿なことがあるか! アーク! お前からも言ってやれ!」
アーク:「あの騎士様は強そうだったけど、戦いじゃなにが起こるかはわからないよ……」
サラー:「ここから脱出できるかもわからない。脱出できたとしても、あなたを巡ってたくさんの敵が現れる。……“覚悟”がいるわ。生き延びる“覚悟”が」
フレデリック:「覚……悟……?」
サラー:「アーク、あなたはまだ降りられる」
アーク:「フレッドはこの街に来て初めての友達。僕は友達を見捨てない」
サラー:「……」
アーク:「おにーさんなら、この状況をなんとかできたの?」
サラー:「無理ね。アタシ“だけ”では」
アーク:「なら僕も力を貸す! なにをしたらいいのかわからないけど、なにもしないままじゃいられない! お願いおにーさん、力を貸して! 僕も、僕“だけ”じゃ無理なんだ!」
サラー:「なら、死ぬ覚悟もできるわね? アタシも、あなたも、全員が、命を捨ててでもフレデリックを守らないといけないわ」
アーク:「違う! 誰も死なせない! だから守る。でも、僕一人じゃ守れないんだ。だから……サラー! 僕に力を貸して! どうしても友達を守りたいんだ!」
サラー:「アーク。あなたはアタシに言った。すべての者を守ると」
アーク:「言ったよ」
サラー:「でも、アタシたちは守れなかった。ダインハイトは堕ち、多くの者が死んだ」
アーク:「そうだね、僕たちが弱いからだ」
サラー:「そうね……けれど……
サラー:あなたが弱かったから失われた命に、あなたはなんと言うのかしら。それだけは、考えていなさい」
アーク:「……そうだね、僕はまだ未熟だ。多分これからも、もっと辛いこともあるんだろうと思う。けど……そのとき僕は……」
アーク:「僕は……」
農民:「難民の連中さえダインハイトでくたばってくれればよかったんだ! あいつらが来たばっかりに!!」
騎士:「この下郎! 従わなければ口減しもやむなしと皇帝陛下は仰せだ!」
農民:「なにが人族の危機だ! 自分たちで勝手にやられてタダで食いもんばっかり食いにきやがった!」
アーク:「黙れぇぇぇぇぇっ!!」
アーク:「騎士様に逆らったらダメなんだよ。誰が正しいかなんてわからないから、僕は騎士様に従うよ。もし騎士様が間違ってると思うなら、領主様に言うんだ」
レイラ:「あなたの言い分はわかります! ですが、暴力では解決になりません! 話し合いで解決するべきだったと思います」
アーク:「殺されるのに?」
コーラル:「そうだよ! この世界に力以外に何がある? 兵力も財力も権力も! ぜーんぶ力! 暴力じゃぁねぇか!」
レイラ:「違います! ……力で奪うことは解決にはなりません。暴力を暴力で解決するのは、間違っています」
サラー:「もちろん、アーク。あなたが彼を殴ってまで行ったことも、決して悪ではないわ。あなたの正義の思いから行動した結果なんでしょう?」
レイラ:「でも、誇りのために人を傷つけようなんて、間違っています」
サラー:「そうね、間違っているかもしれないわ。でも、だからといって、あの男をもう一度殴り飛ばすことが『正解』だったのかしら?」
アーク:「だって、仲間だから! あの農民より、サラーは僕の仲間だから!」
サラー:「あの日、お前は“全てを救う”と言った。その覚悟に、俺は憧れた」
レイラ:「アークさん! あなたが何に悩んでるのかなんて私にはわかりません。けど! いまやるべきことをやらないと! このままではみんなが危ないんです!」
アーク:「だって! 僕たちはまだ……」
サラー:「強くなりなさい。心も、知恵も、何もかも」
アーク:「うん、次は、間違えない」
レイラ:「あなたは英雄志望でしょう!! フレデリック殿やサラーさんに、あなたは託されているんですよ!」
アーク:「ッ……!」
レイラ:「私の分も託します。逃げてください」
アーク:「カシウス、ダメだよ、助けなきゃ……だって……だって……」
サラー:「あなたが弱かったから失われた命に、あなたはなんと言うのかしら」
アーク:「助けられなかった人……謝らなきゃ、謝りに行かなきゃ……僕は……僕は謝りにいかなきゃ、いけないんだ……」
カシウス:「おい、バカ! アーク! さっきから……何やってんだよ!!!」
アーク:「カシウス、ごめんね、いかないと……」