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【ゼロから始めるゲーム作り〜TRPG編〜】第6回 クラス制とメタ役割による役割形成

 前回、スキル制による役割形成の長所と短所を整理しておきました。

trpg.hatenablog.com

 今回はスキル制とは別のシステムであるクラス制について整理していきます。クラス制とは、次のようなシステムをいいます。

クラス制

 ひとつのクラスを習得あるいはクラスへ配点することで、複数の判定に等しくボーナスを獲得することができるようなシステム。キャラクターはひとつまたは複数のクラスを習得した存在として役割化される。

 クラス制では通常、判定単位の役割とは別の「メタ役割」を作り出します。プレイヤーたちは判定の網羅性よりメタ役割の網羅性を意識することになります。こうした性質について、詳しく解説していきます。

 

 

クラス制の理念

 スキル制で済むところを、どうしてクラス制という別のシステムを搭載したのでしょうか? まずはこの点から理解する必要があります。

特徴1:役割分担の簡易化と検討候補の縮小

 前回、スキル制の短所として、役割分担意識の希薄化・スキル検討候補数の肥大化・活躍機会設定の困難さを挙げていました。それぞれへの応答として、合算スキル制や波及スキル制が誕生したことも説明しましたが、クラス制はより抜本的な解決策と言えます。

 例としてアリアンロッド2Eのメインクラスを見てみましょう。アリアンロッド2Eのメインクラスにはウォーリアー・メイジ・アコライト・シーフの4つがあります。それぞれ近接戦闘役割・魔法攻撃役割・回復補助役割・探索補助役割と大きなくくりで役割が設定されています。プレイヤーたちは役割分担を設定する際に、スキルリストとにらめっこする必要はありません。ただこの4つのクラスを分担して習得しさえすれば、自ずと役割分担が達成されるのです。

 クラス制を採用することで、役割分担の問題は判定リストの網羅制の問題ではなくなります。「束ねられた判定役割」であるクラスを分担するだけで、簡単に役割分担を達成することができるのです。

特徴2:活躍機会設定が容易に

 ひとつのクラスで実行できる行動が複数の判定にまたがっているため、活躍機会を設定するのも容易になります。

 たとえばスキル制では〈スキル:生物学〉を習得していても〈スキル:物理学〉を習得していないために物理学判定に参加できないという事態が発生します。このため、活躍機会を提供するには非常に多くのスキルに対して配慮を行う必要がありました。

 一方クラス制ではこうはなりません。〈クラス:学者〉さえ習得しておけば、生物学判定にも物理学判定にも参加することができます。このシステムなら、プレイヤーに活躍機会を提供するために多数のスキルに対する配慮を行う必要がありません。これもクラス制によって生み出される利点の一つと言えます。

 

クラス制の条件となるメタ役割

 例として〈クラス:学者〉を提示しました。これはクラス制が機能する例と言えます。ここでは逆にクラス制が機能しない例を示すことで、クラス制の設定に必要不可欠な要素を明示してみることにします。

無関係な判定を束ねた解釈困難なクラス

 ここで次の判定を束ねたクラスを想像してみましょう。

 【生物学判定・キック判定・操縦判定・水泳判定・法律判定】

 さて、このクラスに名前をつけ……られませんね。この例はクラス制に必要な条件をよく示してくれています。互いに関係のある判定を束ねなければ、クラスとして解釈することが難しいのです。

 たしかにクラスはゲーム製作者が自由に設計することができますが、その際「同系列の判定を束ねる」という条件がつきます。そしてこのとき見出される「同系列」の幅をどの程度の広さで定義するのかが極めて重要な意味を有することになります。

役割とメタ役割

 これまで役割を「特定の判定で他者より有利になる能力」として論じてきましたが、クラス制では役割の概念が変化します。

 先ほど提示したアリアンロッド2Eの例にも明らかですが、「束ねられた同系列判定」に対して「役割」の呼称が与えられるのです。この意味での「役割」はこれまで利用してきた判定分担としての役割とは異なります。そこでこれをメタ役割と呼んで区別します。

メタ役割=複数の判定を束ねたクラスがもつ役割のこと

メタ役割の技法:判定役割の重複による誘導

 クラス制で生み出されるメタ役割は、通常の役割と異なり重複が認められていたり、意図的に重複が組み込まれていたりします。

 たとえばソード・ワールド2.0では、命中力判定と回避力判定へのボーナスを獲得できる技能が3つ用意されています(ファイター・グラップラー・フェンサー)。もしこれが3つ用意されておらずファイターだけがあった場合、プレイヤーは誰か一人がファイターを取得すれば役割を網羅できると考えることでしょう。しかし実際には複数人が命中力判定と回避力判定にボーナスを得た方が良いため、これを重複させて複数人が習得するように誘導しています*1

 ここで重要なのは、実際には同じ判定役割を有しているクラスに別の名前を与えることでプレイヤーに異なるメタ役割だと誤認させる技術です。この技法はファイタークラス一つだけを用意して、特技習得や武器選択でそれぞれのクラスに対応する個性を作り出すシステムに比べれば、非常にわかりやすい形式と評価できます*2

メタ役割の技法:部分重複による協力の誘導

 メタ役割の技術は何も完全に重複させるだけではありません。特定のクラスにしかできないことと、他のクラスでもできることを組み合わせてメタ役割を作り出すことこそ、クラス制の要です。

 同じくソード・ワールド2.0を例にとってみましょう。このシステムには3つの探索クラスがあります。それぞれスカウト・レンジャー・セージと名付けられています。それぞれに固有の判定があり、重要な探索クラスと言えます。

探索クラスの固有判定

スカウト  = 先制力判定(戦闘時の先攻後攻の決定)
レンジャー = 回復アイテム使用時にボーナス
セージ   = 魔物知識判定(敵のデータを知ることができる)

 しかし、その他いくつかの固有判定を除けばその判定は大部分で重複しています。たとえば薬品学判定はレンジャーとセージで行うことができ、探索判定はスカウトとレンジャーで行うことができます。したがってクラス固有の役割は固有判定にのみ課されており、クラスのメタ役割は緩やかに他の技能と重複しています。

 このときソード・ワールド2.0が合算スキル制に対応する合算クラス制を採用していることの意義が明らかになります。クラスレベルと基礎能力値の合算値を判定に利用するため、〈スカウト+敏捷度〉の判定に強くとも、〈スカウト+知力〉の判定に強いとは限らないというメタ役割内でのアクセントが発生します。〈スカウト+知力〉と同じ判定を〈レンジャー+知力〉で行うことができるというメタ役割の部分重複により、こうした場面で連携を生み出すことができるのです。

 

クラス制が失ったもの

 総じてクラス制が優れているかのように記述してきましたが、当然失ったものがあります。クラス制はスキル制の短所を克服した画期的なシステムですが、それと同時にスキル制の長所を明らかに失ってしまいました。

判定指示の不明瞭化

 その典型が判定指示の不明瞭化です。判定名前と直接に対応していたスキル制と異なり、判定指示時に対応するクラスを参照するという手間が発生することになりました。

 たとえば「地図製作判定をお願いします」と指示をしても、キャラクターシートに地図製作力という値は書かれていません。ルールブックから地図製作判定の項目を確認し、利用できるクラスと能力値ボーナスをチェックして、判定を実施する必要があります。

 これは明らかにスキル制の長所を失ってしまった点と言えます。

クラス名称の説明が必要に

 同様の不明瞭さはクラス名称それ自体にも発生します。クラスの名称はいくつかの判定を束ねているため、その名前だけでは何ができるのかが判断しにくく、いちいち説明が必要です(グラップラーとはパンチやキック、投げ攻撃で戦う格闘家で……云々)。極めてシンプルに〈スキル:パンチ〉や〈スキル:キック〉と書かれているものに比べれば、明らかに用語の勉強をする必要のあるシステムに変貌しているのです。

キャラクターのデータ的差別化が難しくなる

 キャラクタープレイ全盛の今日において最も残念なことは、キャラクターの個性をデータ的に表現できなくなることです。

 スキル制では〈スキル:生物学〉には詳しいくせに〈スキル:化学〉には疎い学者を簡単に作ることができました。しかし〈クラス:学者〉しか存在しないシステムにおいてはこれを作ることはできません。〈クラス:学者〉に点数を配分した時点で、生物学判定にも化学判定にも判定ボーナスが発生してしまうからです。

 こうした差別化が難しいために、クラスシステム以外の部分でキャラクターの個性を表現する工夫が盛り込まれていることがあります。この工夫については今後アビリティ制として別に整理していくことにします。

 

今回のまとめ

 今日はクラス制がスキル制とは全く逆の長所と短所を持ったシステムであることを明示的に論じておきました。

 またメタ役割の概念を導入し、複数の判定にまたがって役割を持つことのできるクラス制における「役割」概念の微妙な違いを用語状の違いとして抽出しておきました。

 ゲームづくりをするときには、クラス制とスキル制、いずれの方法でキャラクター役割を設計するのかを早期に決定しておく必要があります。それぞれの欠点を把握しておき、欠点を補うようなサブシステムを組み込むことで、ゲーム自体の完成度を高めるよう意識しなければなりません。

 

 今日の考察では戦闘役割とアビリティ制という二つの新しい考察対象も登場しました。この辺りまで考察を伸ばしていくべく、次回はゲームの多重化について整理しておきましょう。

 

【ゼロから始めるゲーム作り〜TRPG編〜】第7回 ゲームの多重化とその弊害の処理 - TRPGをやりたい!

*1:戦闘中の役割が違うことについては、戦闘役割についての議論で扱います

*2:同様に、魔法使いの習得魔法を選択させてソーサラーとコンジャラーを差別化するよりも初めからソーサラーとコンジャラーを別のクラスとして用意した方が伝わりやすい形式と言える