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【ゼロから始めるゲーム作り〜TRPG編〜】第4回 判定数値の分解

 今回は役割分担についてさらに議論を深めるといったな……あれは嘘だ。

 

 うわぁぁぁぁぁ!

 

 役割分担について議論を深めるためにも、まずは判定について議論を深める必要があるのではないかと考えた次第です。というのも、TRPGでプレイヤーがゲームに介入する最も基本的な方法が「判定」だからです。どんなデータを用意していても、そのデータが判定に利用されなければ、データの存在意義はありません。

 今日は判定に利用される数値を大きく三つに分類することで、ダイス判定の構造への理解を深めようと思います。

 

 

ダイス判定を作り出す4つの値

 ここで仮説的に、ダイス判定で用いられる値を4種類に分類してみます。すなわち【システム値・ランダム値・キャラクター値・タクティカル値】です。

システム値

 システム値とは、システムによって特定の値が指定されているようなものを言います。たとえばクトゥルフ神話TRPGなら判定に利用されるダイスを指定する「1D100」における「1」と「100」はシステム値です。システム値はゲームの製作者側にのみ変更権限が与えられており、プレイヤーはこれを変更できません。算出される判定値の上限と下限を定めたり、それぞれの数値が出る確率を定義する目的からシステム値が利用されます。

ランダム値

 大きく分けてダイスとカードを利用するものがあります。ダイスを利用する場合、「1D100」や「2d6」など、「d」を含む数値として形成されます。または山札の一番上にあるカードの数値がランダム値として採用されるものもあります。ランダム値が判定に含まれることで、ゲーム内の行動の成否は確率で決まるものになり、ゲームにゆらぎを生み出すことができます。

キャラクター値

 キャラクター値はセッション中に変動しないキャラクターの固有ステータスです。技能の成功確率や判定の能力値ボーナスといった形で現れます。セッション中に変動しないものの、プレイヤーがセッション前に用意してきたキャラクターシートの構築によって数値は変動します。したがってキャラクター値を組み込むことで、プレイヤーに戦略的なキャラクターメイクを課すことができます。

タクティカル値

 一方のタクティカル値はセッション中複雑に昇降します。補助魔法を受けたり道具を利用したり、あるいは不利な戦場でペナルティを受ける場合、あるいは、手札からカードを選ぶことで判定数値を左右するような場合に登場します。タクティカル値はキャラクター値とは違い、セッション中のプレイヤーの行動によって変動させることができます。したがってタクティカル値を組み込むことで、プレイヤーに戦略的なセッション展開を課すことができます。

 

様々な判定の設計

D&DにおけるイニシアチブとDX3rdにおけるイニシアチブ

 戦闘が行われた際の行動順を指定する値として、イニシアチブというものがしばしば利用されます。

 たとえばD&Dでは、「キャラクター値」に「ランダム値(1D20)」を組み合わせる方法が採用されています。この方式ではキャラクターメイクの際にある程度早く行動できそうなキャラクターを作ることはできますが、確実に早く動くキャラクターは作れません。イニシアチブボーナスは「システム値」によって定められたダイス(1d20)により1あたり5%の先手確率上昇と解釈されます。

 一方DX3rdやCoCでは、キャラクターの行動順は基本的に「キャラクター値」のみで決定されます。それぞれ行動値・DEXと呼び名は異なりますが、キャラクター構築の段階で完全に決定しています。ただしDX3rdではエフェクト(スキル)を利用することで行動値を変動させることができます。つまり「タクティカル値」を組み込むことで行動順にもセッション中の即応的な戦略性を作り出しています。

ダイスの個数でさえもシステム値でない場合がある

 ダイスの個数や種類は、たいていシステム値として指定されているように思うかもしれません。しかし実際には、ダイスの個数がキャラクター値やタクティカル値で変動するゲームも多々あります。

 アリアンロッド2Eでは、誰でもフェイトというリソースを使ってダイスの数を増やすことができます。他にも事前に習得するスキルを組み合わせることでダイスの数を増やすことができます。さすがにダイスの種類を変更することはできませんが、ダイス個数それ自体が「タクティカル値」や「キャラクター値」で決定される典型的なシステムと言えます。

 

判定に見る役割の複層性

 判定値を4つの値の関数と捉えることで、判定値の算出規則を作り出す際に考慮するべき事項を理解することができます。すなわちTRPGにおいて判定を用意するとは、「ゆらぎの幅を設定し、キャラクター構築の戦略性を提供し、セッション中の戦術設計の重要性を生み出すために、システム的に数値を定義すること」だという基本をしっかりと理解することができます。

 この理解仮説に基づけば、役割分担を設計する際の具体的な方策も見えてきます。役割分担とはつまり、複数種類存在する判定の有利不利の分布として現れるものです。その判定値を操作する手段として、プレイヤーが意図的に操作できるのは「キャラクター値」と「タクティカル値」のみです。

 したがってTRPGにおける役割とは、大きく二つの要素により形成されるということができます。

 第一には「キャラクター値」です。キャラクター値による役割形成はセッション前やセッション間に数値処理が行われて形成されます。役割形成の基本であり即興的な戦術形成が必要ない分、プレイヤーにとっては比較的扱いやすい役割形成ということができます。

 第二には「タクティカル値」です。これはキャラクター構築時にそれぞれのキャラクターに提供される「行動選択肢」として提示され、プレイヤーはセッションのどのタイミングでどの「タクティカル値」を昇降させるかを判断しなければなりません。

 

 ここでようやく、なぜ役割形成の議論を深める前にこの話をしたのかが明らかになります。以上ふたつの役割形成は運用方法が全く異なるのです。それゆえ、まずは「キャラクター値による役割形成」についての様々なアイディアを勉強・整理することから始めようと思います。

 というわけで少し長くなってしまいましたが、役割について勉強し始める前段階の基礎知識その2として、ここに判定についてのノートを置いておきます。

 

【ゼロから始めるゲームづくり〜TRPG編〜】第5回 スキル制と役割形成 - TRPGをやりたい!