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TRPGをやりたい!

TRPGのトビラをひらこう!

道険し(TRPGシナリオをまだまだ面白くせねばならないという悩みについて)

久しぶりに筆の進に任せてこのところ考えていたことを書いてみます。

 

小説として書いてみて、また一つ自分のシナリオの弱さが見えてきたなというお話を主軸にしようと思っております。

 

 

 

TRPGシナリオとしての解説

 さて先日小説化し、そのうち電子同人出版を控えておりますシナリオ「秋の足音」。すでに小説版が公開されましたので、ネタバレを交えつつ、どういうシナリオなのかより詳細に説明していきましょう。

 

 その前に、カクヨムホラージャンル週間ランキング3位というところまで評価をいただいたこと、重ねて感謝を申し上げます。今日の時点で20人ほどが最後まで読んでくださったうえ、初投稿にもかかわらず7名の方が★評価を入れてくださいました。改めて御礼申し上げます。

 

 さて、小説版を見る限りでは、どうやら語り部である主人公がPCになるのだろうことはお分りいただけたことでしょう。他のどの人物がPC候補なのか。まずはそこを確認します。とはいえ手取り早く一覧で示しましょう。

  • 先生:TRPGシナリオとしては主人公格
  • 先生(サブ):小説版では先生万能説でしたが、PC二人でカヴァー
  • 助手:主人公で語り部だった人
  • 喜一郎:村人としてPC化、シナリオ参加が可能
  • 馬渕:単独行動が多くなるうえ処理する情報が最も多い高難度ルート

 この物語、TRPGシナリオとして見た場合、実は主人公は「助手くん」ではありません。主人公は「先生」です。先生が対処療法を発見して、みんなで酒飲んで東京に帰れば「ショートルート」の場合グッドエンドとして扱われ、紅播牙のB郷の襲撃が発生しません。なお酔狂なKPが「ロングルート」を選択すれば、主人公は馬渕になり、助手と喜一郎は蛇人間の疑いもかかってくる壮大な物語へと変貌します。

 したがってシナリオ本編を見れば、初めの犠牲者「千代さん治療ルート」や「梅子死亡ルート」、「喜一郎死亡ルート」、「蛇人間の子孫ではないルート」など複数の演出パターンに対応して、あの村を舞台とした自由度の極めて高い探索を楽しむことができるようになっております。

 

 

TRPGシナリオとしては“わりと”優れている

 これまでの記事で強調してきたように、今回のシナリオではそれぞれのPCに明確な「見せ場」を用意しておきました。「千代さんを救おうとするか、冷徹な学者を演出するか」あるいは「梅子との結婚を受け入れるか受け入れないか」さらには「喜一郎は先生と馬渕どちらを師として選ぶのか」などなど、それぞれのサブストーリーが仕組まれており、そこに焦点を絞ってロールプレイすることでそれぞれのPCが個人的な物語を紡ぐことができるのです。

 ここに配慮したシナリオというのは、私の持っている公式シナリオには存在しません。うまくシナリオの物語に絡めないプレイヤーであってもとっつきやすいシナリオになっているという点で、なかなか画期的なシナリオということができるでしょう。

 

 しかしなぜ“わりと”優れているという程度にとどまるのでしょうか? その理由は小説として書いてみたことで明らかになりました。

 

 

大きな物語の力不足

大きな物語をうまく演出できるかはプレイヤー次第

 プレイヤーキャラクター個人の物語はそれぞれのプレイヤーが体感して面白がってくれればそれで十分です。その一方、シナリオの本筋に仕込まれた文明と未開との対立を克服する物語をどうやってプレイヤーが体験し、演出するのかはまた別の話でしょう。

 ここでプレイヤースキルに依存する問題が発生してしまいます。つまり、自分のキャラクター一人の物語と並行して、セッション全体の物語にエネルギーを割くことがプレイヤーに要求されるわけです。もちろん、個人の物語を進める上でも本筋の情報探索が必要不可欠になるようにシナリオは設計してあります。それでも、どこまで全体課題を演出するようにプレイヤーが動けるかは、プレイヤースキルに依存してしまうことでしょう。

 

そして心に訴えかけるクライマックスの不足

 また「ショートルート」と「ロングルート」を並置した都合、各キャラクターの物語的クライマックスはそれぞれ別の時間に置かれます。これによって小出しに盛り上がるシチュエーションが生まれるのですが、その一方でクライマックスの力が相対的に弱まるという事態を生じてしまいました。

 この点で、力強く心に訴えるシナリオになっているかと言われれば、必ずしもそうではありません。物語としての力はやはり弱いのです。

 

 とはいえこの点はこれまでの私のシナリオすべてに言えることかもしれません。前号収録の「橙色燈火」やリプレイ公開のみでシナリオ未公開の「忘却の結末」などはまだしもその点に意識を向けていました。しかしその他のシナリオはあまり物語として強いものを持たせず、あくまでプレイヤーたちがキャラクターを表現する舞台に止めるというスタイルを採用していました。

 

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 もちろん公式シナリオを見ている限り、主軸は謎解きや演出にこそあり、物語性やメッセージ性には特にこだわりはないように見受けられます。その点ではここを課題にする必要はないのかもしれません。

 

それでも心に響くクライマックスが欲しい?

 先の引用記事で展開した議論は今回のシナリオにおいて一周したことになります。つまり物語を軸にしたシナリオを否定した先の記事から、プレイヤーが物語を作りやすいようにシナリオ設計するというアイディアが生まれ、その結果生まれた本シナリオの反省として、不確定な中に物語を織り込む手段の追求へと議論が発展しつつ循環しました。ちょうど渦巻きネジが一周巻かれて少しだけ進んだというところでしょうか。

 

 次にシナリオを書くときには、この点が課題に据えられることになるでしょう。すなわちショートルートからロングルートまで分散した小クライマックスを、シナリオ全体の大クライマックスと結びつけ、その大クライマックスの展開にプレイヤー全員が平等に貢献できるようにする仕組みづくりです。あとは大クライマックスに魅力的なアイディアを詰めることさえできれば、またわたしのTRPGシナリオは一歩前進したということになるでしょう。

 

 これからもシナリオ執筆にかかる時間はますます伸びていくことになりそうです。