第1回 ハカセの異能力研究所【ダブルクロス3rdで遊ぼう】
ハカセ「ふふふ…ついに私はやり遂げたのだ!」
???「ハカセ、どうしました? 割り箸でも綺麗に割れたんですか?」
ハカセ「山田くん、私をなんだと思っておるのかね! 私はこれでも人間に超能力をもたらすと噂の『レネゲイドウイルス』研究の権威なんだよ!」
やまだ「でも僕が来てからこっち、ろくな研究してなかった気がするし…」
ハカセ「それは昨日までの話だ! 見てみたまえ山田くん! 私はついにレネゲイドウイルスを活用して異能力の発現を制御する機構を開発したのだ!」
やまだ「えっ!? それってつまり、ダブルクロスのコンストラクションのルールを覚えt…
ハカセ「げふん! メタな話は無しだぞ、山田くん! ここはあくまでハカセの異能力研究所なんだからな!」
やまだ「でも被験体がなければダメじゃないですか」
ハカセ「・・・」
やまだ「・・・」
ハカセ「偶然にもここに被験体が…」
やまだ「僕はやりませんよ!?」
ハカセ「大丈夫だ、私が被験体を確保していないとでも思ったかね? あそこの施術台を見たまえ」
やまだ「…あの、あれは…」
ハカセ「二日酔いで倒れていたうっかりくんだ*1」
やまだ(うっかりさん…いい人だった…)
ハカセ「今から彼に、『私の考えた最強の異能力』を与える」
やまだ(なんだろう…悪い予感がビシビシ肌に突き刺さるようだ…)
趣旨の説明
やまだ「まぁうっかりさんが実験台になるのはたぶん本人も歓迎すると思うのでいいとして、どうしてこんな実験をするんですか?」
ハカセ「決まっているじゃないか。今私たちは『実践的に使える異能力』を計画的に生産する技術を手に入れたんだ。ではいったいどんな能力が強いのか、試してみる必要があると思うんだよ」
やまだ「ええと、つまり『ダブルクロス初心者がキャラクターメイクをするときの参考になればいい』ってことですね?」
ハカセ「山田くん! メタな話は無しだよ!」
やまだ(こうでも言わなきゃ伝わらないでしょ…)
今回の目標:私の考えた最強の能力
ハカセ「それで、私が考えた最強の異能力だが…」
やまだ(高速移動? 身体変化? 重力使い? いったい何が出てくるんだろう…)
ハカセ「『ケツから火を吹いて相手に突進する人間ミサイル』だ!」
やまだ「!!?!?!!」
ハカセ「うっかりくんは今日から物理的に鉄砲玉になってもらう!」
やまだ「ちょっ、ちょっと! ハカセ!」
ハカセ「どうした山田くん?」
やまだ「どう考えても、その能力強くないです!」
ハカセ「何を言っているんだ? 音速で人間弾頭が突進すれば、どんな敵も粉砕だ。結局質量攻撃に勝るものはないのさ」
やまだ(この人真面目ぶってるけど、うっかりさんに変な機能つけたいだけだ、これ)
データ的整備
ハカセ「さて、この機能をうっかりくんに実装するために、いまからレネゲイドウイルスの調整を行う」
やまだ「コンストラクションルールによるキャラクターメイクを行うわけですね」
ハカセ「まずケツから火を噴くためにサラマンダー(炎+氷使い)の能力を発現させよう。さらに肉体のまま高速移動を行うためにはバロール(重力使い)かハヌマーン(高速移動能力)あたりが必要になるな」
やまだ「なんか真面目にキャラクター作ってるみたいですね」
ハカセ「私はいつでも真面目ですよ、山田くん?」
やまだ「だったらどんなにいいことか…」
ハカセ「しかし、サラマンダーの詳しい能力(エフェクト)を見ていると、どうにも推進力としての炎を示す項目がないな」
やまだ「ケツから火を吹いて飛ぼうなんて考えるプレイヤーはダブルクロスをプレイしないんですよ…」
ハカセ「ふむ、仕方ない。この『炎神の怒り』というものを使おう」
やまだ(『全身を炎で包む能力』…うっかりさん大丈夫かな…)
ハカセ「やむを得ん。当初のコンセプトから少しだけ変えて、全身を燃やしながら体当たりする『火だるま体当たりおじさん』を作ることにしよう」
やまだ(『おじさん』… みじんもかっこいいもの作ろうとしてないじゃないか…)
そして武器がない
ハカセ「しかし山田くん。このおじさん、武器を持っていないね」
やまだ「支給してあげてくださいよ」
ハカセ「やだよ。『火だるま体当たりおじさん』に武器なんていらないでしょ?」
やまだ「でもダブルクロスでは、武器を持たないと素手の攻撃力はマイナスですよ?」
ハカセ「むむむ…やむを得ん。この『白熱』を習得させよう」
やまだ「『手先を高温にして武器にする能力』…ハカセ、その無駄なこだわりやめませんか?」
ハカセ「何を言っておるのかね、山田くん! 私はかつて(想像上の)偉い人に言われたのだよ! 『ダブルクロスはやりたい能力を実現するためにあるルールだ』とね!」
やまだ「いや、やりたい能力って言っても『火だるま体当たりおじさん』は想定してないでしょ、さすがに…」
ハカセ「私は信じておるとも! やりたい能力をデータ的に作り出したら、それが強いキャラクターになっているということをね!」
そして完成
シンドローム:サラマンダー/バロール
ワークス:UGNエージェントA
肉体6 感覚1 精神3 社会2
HP35 行動値5 戦闘移動10m
習得エフェクト
ワーディング リザレクト コンセントレイト
白熱1 /マイナー/素手を武器にする/侵蝕3
終末の炎2/マイナー/HP代償分攻撃力上昇LV×5点まで/侵蝕2
炎神の怒り1/メジャー/HP−3、肉体のダイス+LV+1個/侵蝕3
斥力跳躍2/マイナー/移動距離+LV×5m/侵蝕1
攻撃手段
【火だるま体当たりおじさん】
種別 〈白兵〉
コスト HP−13 侵蝕値 発動時9、以後6
命中ダイス 8r+4 攻撃力16【火だるま体当たりおじさん 覚醒】
種別 〈白兵〉
コスト HP−18 侵蝕値 発動時9、以後6
命中ダイス 9r+4 攻撃力22
ハカセ「完成した…この変異ウイルスを被験体に投与すれば『火だるま体当たりおじさん』がついに生まれることに…っ!」
やまだ「その前に! ハカセ、私が素晴らしいコンピューターを用意しました」
ハカセ「な、なんだねその見え見えの段ボール箱は!? 足が生えているぞ!」
やまだ「ち、違います! これは超未来的コンピューター『ベテ=ラン・プレイア』ですよ!」
ハカセ「…なんだか怪しいな。中に人でも入ってるんじゃないか?」
ベテ=ラン「中の人などいない!」
やまだ「ほら、いるわけないじゃないですか!」
ハカセ「それで、いったい何ができるというのかね、この超未来的コンピューターは」
やまだ「なんと、精製したウイルスがどれくらい実践で役に立つのかを判定してくれるのです!」
ハカセ「それは素晴らしい! 被験体を春日恭二(サンプルシナリオのエネミー)に叩きつける手間が省けるというわけだな!」
やまだ「そういうわけです。貴重な被験体を消費せずに済むんですから、さっそく『ベテ=ラン』にウイルスを見てもらいましょう!」
・・・ベテ=ラン審査中・・・
ベテ=ラン「…攻撃力は並。自分で勝手に燃え尽きて死んでいくタイプのクソザコナメクジです」
火だるま体当たりおじさん の評価
攻撃力 ☆☆☆
防御力 ☆−2
汎用性 ☆
ユニーク ☆☆☆
ハカセ「Nooooooooooooooooooooooooooooo!!!!!!」
やまだ「当たり前でしょうが!!」
ハカセ「なぜだ…私の考えた最強の能力が…」
ベテ=ラン「最大の問題は、リザレクトで復活した後、HPが1D10しかないので、《終末の炎》がほとんど機能しなくなることです。そして攻撃するたびに自殺するようなものなので、多分ラストバトルで最後まで立ってはいられません」
ハカセ「なんてことだ…私としたことが…」
やまだ「もうちょっと素直に組むべきなんですよ! 能力の種類とか、組み合わせとかをちゃんと考えて、ただがむしゃらに好きな能力を作ればいいってものじゃないんです!」
ハカセ「…そうだったのか…ダブルクロスは、自分が表現したい能力ならどんなものを作っても活躍できるルールじゃなかったのか…」
やまだ「それではこのウイルスは破棄して、次のウイルスの製作に入りましょう」
ハカセ「そうだな、山田くん。私の考えが間違っていたよ…」
ハカセ「私はただ、ケツから火を吹いて飛んでいく二日酔いのおじさんの姿が見たかっただけなんだ!」ウイルスブスリ
やまだ「あっ…」
うっかり「ん…?」
ハカセ「やあうっかりくん、二日酔いからの目覚めはどうだい?」
うっかり「ああ〜最悪ですわぁ〜 ゲロはきs
ガシャーン!
やまだ「この早さで人間が吹き飛ぶ光景を初めて見ました」
ハカセ「我々の方に向かって飛んできていたら危なかったな…」
やまだ「やはり『ベテ=ラン』の分析通りですね、この能力は使えないみたいです」
今回の教訓
ハカセ「山田くん、私は一つ学んだぞ」
やまだ「どうせロクでもないことですよね?」
ハカセ「炎は自分じゃなくて、敵を焼くためのものだ」
やまだ「たぶん9割以上の人が前から知ってました、それ」
ハカセ「つまりいまや私たちの敵は消え去ったのだ!」
やまだ「因果関係が逆転してませんか、それ」
ハカセ「真面目な話をすると、自分が面白いと思った能力を作っていては、ダブルクロスでは活躍の場を得られないということがわかった!」
やまだ「自由度が高いからこそ、丁寧に考えて作らなきゃダメってことですね」
次回予告
ハカセ「やむを得ん…今度は私の趣味は無視して構わん。データ的に一番安定して高火力を叩き出せる近接戦闘能力を作り出すぞ!」
やまだ「あの、はじめからそうしてくださいませんか…」
ハカセ「そうと決まれば…山田くん、被験体ひとつもってきて〜」
やまだ「そんな座布団みたいにやすやすと確保できてたまりますか!」
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*1:同人誌「やさしい狂気のはじめ方」シリーズでシナリオ扉絵の大半を担当。また「英雄志望と二つの剣」シリーズではロゴの作成から地図、キャラクター立ち絵まで幅広く制作している。